注文の多いエロゲーメーカー

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身なりのよい若い紳士が2人、丸めたポスターを差し込んだリュックサックを背負って、
秋葉原を歩いていました。

「どうも最近のエロゲーはけしからんね」
「ょぅι゛ょの○色の○○○なんぞに二三発お見舞い申したら、ずいぶん痛快だろうね」

(中略)
「僕は帰ろうと思う」
「僕も帰ろうと思う」
しかし、どう行ったら秋葉原駅に戻れるのか、分からないのでした。
一緒に上京して案内してくれるはずだった自作オタともいつのまにかはぐれてしまっていました。

その時ふと見ますと、立派な西洋造りの建物がありました。そして玄関には、
--------------------
エロゲメーカー
○○○○
--------------------
という札が出ていました。
「君、ちょうどいい。はいろうじゃないか」
「もうハァハァしたくて倒れそうだ」


玄関のドアには金文字で次のように書かれていました。

【どなたもどうかおはいりください。
 ことに、絵買いの方や声優萌えの方は大歓迎いたします】

「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ」
「ぼくらは両方兼ねているから」

【当社は注文の多いメーカーですが、どうかいちいちこらえてください】

「これはどういうことだろう」
「このメーカーの作品はいつも大人気で注文が殺到している。
 注文を全部受付けできないことがあるがごめんください、とこういうことだ」

【主題歌のフルバージョンを聴きたい人は、ユーザー登録ハガキを返送してください。
 ただし期間限定です】

「おまけCD-ROMが無料で送られてくるとは。なんて良心的なんだ」

【登録ユーザーに無料で配布しましたおまけディスクを、ご要望にお応えして
 まとめて販売いたします。ぜひご購入下さい】

「オリジナルテレカも付いていることを考えると高くない」
「当然買いだな」


【販売店様へ。定価で販売してください】

「なるほど。考えてみれば、パッケージに印刷された定価と実売価格が
 異なっているほうがおかしい」
「それを考えて適正な卸値を決めたということか」

【ファンディスクの原画家は、都合により本編とは別になりました。ご了承ください】

「なんとか外注して元の原画家に書いてもらうことはできなかったのか」
「……」
「まあクリエイターという人種は皆個性が強いからな。何らかの原因で仲たがいすることもあるさ」
「誰が悪いというわけでもなかろう。しかたないよ」

【ファンディスクは買いましたか。通常版も忘れずに買いましたか】

「ここの主人は実に用意周到だね」
「あやうくオリジナル原画家によるパッケ絵を逃すところだった」


【いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。
 ロットアップした作品を再版いたします。声優を交代することによってリニューアルしました! 
 旧作をお持ちの方も買ってください】

「これはおかしいと思う」
「僕もおかしいと思う」
「注文の多いメーカー、というのは
 ユーザーからの注文が殺到しているメーカーということじゃなくて
 ユーザーにいろいろ注文をして、信者に仕立て上げて餌食にしてやるメーカー、
 という意味だったんだ」
「ブルブルガクガク」
2人は○○○たん萌えハァハァだったのですが、すっかり萎えてしまいました。

そこへはぐれていた自作オタが入ってきて、目を覚まさせてくれました。
気が付いたら建物は消え、秋葉原のど真ん中にいました。
自作オタに買ってきてもらった増設用ハードディスク(大容量エロゲーインストール用)を
受け取り、田舎に帰りました。
しかし、一度萎えてしまった萌えは、田舎に帰ってもお湯に入っても元に戻りませんでした。
というわけにはいかず、結局また信者に戻ってしまいましたとさ。

- 完 -

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