総合トップSS一覧>SS No.007-066
作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
月夜 |
626(31スレ目)氏 |
ジュディス×ユーリ |
2009/05/22 |
2009/05/24 |
すっかり日も沈んだ夕闇の中、ユーリはオルニオンの郊外で一人剣を振っていた。
日に日に近づく決戦への緊張感は、恐らく皆感じているだろう。
パーティの半分はまだ子供と言ってもいい年齢であるのだから、
それを払拭するのが大人の務めだと、ユーリは思っていた。
例え自身が恐怖に打ち震えようとも、表面に出してはならない。
例え誰かが命を落とそうとも、動揺してはならない。
望んでいた訳ではなく自然とではあるが、パーティを引っ張っている立場になったのだから。
「あまり根を詰めたら体に良くないんじゃないかしら?」
「ははっ。ジュディに言われたら終わりだな」
「あら、失礼だわ」
静かに、そっと近づいてきたジュディスに悪態をつきながら、それでもユーリは息を吐く。
確かに、その通りだろう。
2歳年下とはいえ、彼女の冷静さと度胸には毎度恐れ入る。
「…いよいよ、ね」
「ああ」
「終わったらどうするの?」
「終わったら、か……取り敢えず下町に戻って、考えるさ」
ユーリらしい答えだ、とジュディスは唇だけで笑った。
けれどきっと責任感の強い彼は、下町からまた世界へ飛び出すのだろう。
親友と共に、仲間と共に世界を支える為に。
そして――
「…あの子の気持ちには、応えてあげないのかしら?」
ピクリ、とユーリの肩が動いた。
一瞬の沈黙の後、静かな声で彼は言う。
「気付いてたのか…いや、ジュディなら気付かないほうがおかしいか」
「あなたのことだから、このまま流すのでしょうけど…」
けれど、とジュディスは思う。
本当にあの子のためを想うなら、言うべきだ。
けれどもそうしないのは、傷つけたいからとかではなくて――
「いつか忘れるだろうさ。それに、フレンもいる」
「…あなたはそれでいいの?」
「ああ」
迷いのない声だった。
否、あまりに迷いがなくて、どこか悲しかった。
「それで、だ。何か用だったのか?」
「いいえ。ちょっとした好奇心よ」
ユーリは剣を収めながら口端を持ち上げた。
いつか“彼女”にしたように、掌を差し出す。
「明日死ぬかもしれない思い出に、って訳でもねぇけど」
「…そうね」
お互い騙し合いも、もう慣れた。
文字通り草葉の陰で肌を重ね合うのはこれで何度目だろうか。
ユーリは数えようとしてやめた。
なんとなく、空しくなるだけだ――。
寛げた衣服の隙間から滑らかな肌をなぞり、柔らかな乳房を撫でる。
「んっ…」
「…悪いな」
周囲を気にして声を抑えるジュディスにそうユーリは謝った。
そして本来ならもっと清潔な場所であるべきだった。
けれど彼女は妖艶に笑む。
「あら、私のセリフだわ」
「これはこれは…失礼致シマシタ」
確かに立場が逆転することも少なくなかった、と思い返しながら、ユーリは啄ばむように唇を重ねた。
女性としてほぼ成熟している体はとても魅力的であるし、男の性を熱くさせる。
どこか、戦いに身を投じているあの狂気にも似た興奮を覚えながら、指先で吸い付くような肌を愉しんだ。
「あ、んっ…ぅ」
自然と舌が絡み、お互いの肌をお互いの指が這い回った。
熱い吐息を間近で感じながら、段々と上り詰めていく感覚は心地よいものだ。
そういう感性は似通っている、と二人は承知していた。
ユーリは片目で月を見た。
丸い満月だった。
一瞬浮かんだ顔を消して、声をかけてからジュディスの陰部に指を進める。
一層艶を含んだ声を聞きながら、丁寧に慣らしていく。
「…っと、どうする?」
そろそろ腰を下ろそうか、とユーリは持ちかけた。
ジュディスは少し考える。
「あら、レディの肌を土で汚すつもり?」
「確かに、失礼だな」
レディというにはお淑やかではないけれど、と思いながらもユーリは芝生の上に腰を下ろす。
ジュディスは満足そうに跨った。
「今日は私の番ね」
「レディの言うセリフか?」
「相手がジェントルマンじゃないんだもの」
皮肉混じりの会話だったが、二人は笑った。
そして再び唇を重ねながらジュディスは腰を下ろし始める。
女性の柔らかな肉に包まれる感触にどこか安心するのは何故だろう、とユーリは思う。
体が柔らかいのも、良い匂いがするのも、キレイなのも、可愛いのも、何故だろう――。
「ん、ぅっ…」
「大丈夫か?」
「ええ」
直接お互いの熱を感じ始めて、体の奥が熱くなった。
ジュディスが動くたびに結合部から水音が生まれる。
それは媚薬のように己を昂ぶらせて、まどろみの中に堕ちて行く様な不思議な感覚も同時に生んでいた。
男女とは、そういう風に出来ているのだ。
なんとなく、ユーリはそう理解した。
「あ、ぁんっ…ん、くっ」
「っ…く」
ジュディスはユーリの首に腕を絡めた。
存外サラサラと流れる黒髪を無意識に握りながら、首筋に頬を寄せる。
洗髪剤と汗の匂い、それとフェロモンとでも言おうか、雄の匂いが入り混じって、脳髄を痺れさせた。
この男に愛される女は幸せだ、とぼんやり考える。
粗暴に見えて情の深い、頼りになる男性なのだ。
きっと隣に立つことはないだろうけれど、背中合わせであればいい――。
ジュディスはそっと眼を閉じた。
「ジュディ…っ」
切羽詰ったような声に再び眼を開いて、ジュディスは笑った。
意識的に男のモノを締め付けながら、腰をぐっと落とす。
瞬間お互いに口を塞いだ。
胎内で白濁を受け止めながら、ジュディスはそっとユーリの背中を撫でた。
具体的に何故かはわからない。
ただ、少し。
ほんの少しばかり、哀れだったのだ。
この男も、自分も、あの子も――。
不意に力の込められた腕がジュディスの腰に回る。
眼を瞬きながらも、ジュディスは何も言わなかった。
サワサワと風が吹くたびにユーリの黒髪が揺れて、月が雲に隠れた。
「 」
「え?」
それは微かな声だった。
微かな声の、謝罪だった。
それきりユーリは何も言わない。
誰に対しての懺悔なのか、聞くのは野暮だろう。
ジュディスはただ、静かに頷いた。
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