総合トップSS一覧>SS No.007-062
作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
縛り愛 |
870(30スレ目)氏 |
ユーリ×女あたま |
2009/03/29 |
2009/05/14 |
細い手首を押さえつけて、ユーリは思う。この細い手首のどこに、あんな大剣を振るう力があるのだろうかと。
医務室のベッドに押さえつけて上に覆いかぶさっただけで、彼女は驚きを表情に出している。そして怪訝そうに眉根を寄せて、眼前に顔を近づけるユーリを見つめた。
「……ユーリ?」
どうしたの、と言いたげな視線がユーリの双眸と交じり合い、無意識にユーリは口端に弧を描いた。
知らないのか。否、気付いていないのだろう。世界樹から生まれたというディセンダーは、自分が男が持つ欲の対象になりうる存在であるということに。
誰もいない廊下で呼び止め、話しがあると言っただけで何の疑いもなくついてきた彼女をユーリは押し倒し、押さえつけ、今まさに文字通り手をつけようとしている。開花されぬ女の悦びを、教えてやろうと思った。
「ユーリ、なにを」
「いいから、黙ってな」
彼女の言葉を遮り、ユーリは唇でその口を塞ぐ。
「(…柔らけぇな)」
塞いだ薄桃の唇はふっくらとして柔らかそうだと思ったことがある。白い甘菓子のような感触を感じながら、味は、と舌を伸ばして形をなぞるように舐めるが、当然のことながら甘くはなかった。
「んっ…」
唇を舐められ、ぴく、と肩が揺れて押さえつけられる手に力が篭る。普段から身長以上の大剣を振り回す彼女だ、本気を出せばユーリの拘束など解いて逃げることも可能だろう。
それをしないのは、未だに動揺と混乱があるからか。
「(なんにせよ、あんま暴れんなよ)」
冷静な頭で思いながら、ユーリは彼女が今、格闘職でなくて良かったと安堵する。自己防衛の獅子戦吼など喰らいたくはないのだから。
――
「はぁ、はぁ…っあ、ぅん」
「いい声出すじゃねぇか」
「ゆー、り…っ」
深く長い口付け、舌を絡ませ、互いの唾液さえ味わうように交えさせて彼女の口腔を蹂躙するように舌を這わせるだけで、普段から見せる凛々しい表情は恥じらいに緩み頬は朱色に染まる。
抵抗する力がなくなると、ユーリは首筋に顔を埋め布越しに胸を揉みしだき、露出した脇腹を撫でてきた。ひく、と身体を震わせては体の底からわきあがるムズムズとした感覚の正体をつかめず、彼女は狼狽する。
ユーリの手が這う度に、肌が熱を持つ気がする。まるで自分の身体ではないような感覚に陥り、ディセンダーは震えた。
「だめ、…ユーリ…!」
もう触らないで、これ以上しないで、おかしくなってしまう。
制止の言葉を投げても、ユーリの手は止まらない。獲物を前にした野生の狼のように、深い闇色の双眸が欲を孕んで見つめてくる。こんな風なユーリを、彼女は見たこともなかった。
赤と黒のシンプルなデザインのインナーをめくり上げられ、双つの乳房が露わになる。適度な大きさと形のいい美乳はユーリの内に潜む更なる欲を掻き立てたのか、顔を近づけ桃色の乳首を摘み直に乳房を揉みだし、もう片方へ舌を這わせた。
「ひぁっ、やぁあ…っ」
形に沿うように、なぞるように舐めては吸いつき、その刺激は甘く腰へ落ちてきて身体が震えた。乳房にも吸い付かれ、赤い痕が散る。まるで所有の証でも残すかのような行為に、羞恥で思考が働かなくなる。
なんで、という疑問さえも、今のユーリは応えてくれない。振り払おうと思えば突き飛ばしてでも逃げられるのに、身体がそれを拒む。ユーリの目は野獣のようなのに、その手つきだけは自分をいたわるように優しいから、胸の内が切なくなる。
そんな感覚に捉われて、ぎゅう、と彼女は双眸を閉ざした。
塞いだ視界、何も見えない中で唇に優しく触れるものがあったが、彼女はそれでも目を閉じ、ユーリが浮かべる表情さえ見ることはしなかった。
実際拒まれるときついもんだ。――ユーリは淡々とそう思う。
触らないで、もうしないでと言われた時は少しばかり胸に痛みを残した。拒絶するように目を閉じた彼女に口付けても、童話の眠り姫のように目を開けてくれることはない。
「(野獣に襲われて目を覚ます姫なんかいねぇか)」
自嘲めいた笑みを零すが、止めてやろうという気にはなれない。
痕を残し、快楽を身体に刻み、それを忘れさせないために。順序が間違っていようが、今更正攻法じゃ時間がない。
ディセンダーは世界の危機を救えば、消えてしまう。この身体も、名を呼ぶ声も、浮かべる笑顔も、向けるまなざしも世界へと還って消える。
特殊な存在であるとわかっていながら、それでもここに生きている彼女は普通の女と変わらない。
だから縛り付けたい。どんな手を使ってでも、最後はここへ記憶を有して帰ってくるように。
スカートをたくし上げて下着をずらせば、女性器からは快感の証が溢れ出していた。
抵抗するかと視線を向ければ、彼女は両腕で視界を覆い隠し、硬く唇を閉ざしている。艶めいた吐息は漏れるが、抵抗する気がないのがユーリにとってまだ期待を抱かせた。
「ディセンダーでも濡れるんだな。やっぱり女は女ってか?」
「…っんぅ」
指を筋に這わせると、くちゅ、と濡れた音が響く。
羞恥に耳まで赤くする彼女は、何も言わずに震えるばかりだった。生娘のような反応に、ユーリはやれやれと肩を竦ませる。
焦るな、と自制の吐息を零し、彼女への愛撫を続ける。身体がとろけるほどの甘美な誘惑を残さなければ意味がない。
「身体、強張らせてたら痛くなるぜ? 力抜きな」
彼女の耳元で囁いて、ユーリは濡れた女芯へと指を挿入していった。
―――
「はぁ…はぁ、ひゃ、あぁっ…んぅ!」
どれほどの時間が経ったか、綻んだ彼女の口からは嬌声が溢れ出す。
肉芽を扱かれ貫く指は増やされ、体中から湧き上がる感覚に痺れて瞳が涙で滲む。
気持ちいい。パニールにマッサージされている時とはまた違う気持ちよさ。快楽で目が霞み、愛液によって潤うアソコが貫かれる度にもっと大きな熱で貫かれたら、どれほどの気持ちよさが得られるのだろう。
いつの間にか、恐怖は消えていた。むしろ、身体は新たな感覚に好奇心的な反応を見せている。
「はぁ、……あ…」
閉じていた双眸を開けば、真っ直ぐに自分を見つめてくるユーリと視線が合わさった。
涙で滲んで見えにくかったけれど、その表情に笑みが敷かれるのが見えた。
胸の奥が切なく痛む。
「ユーリ…」
「ん? 今更待ったはなしだぜ」
「違うの、……その」
今更やめられたら、この身体の熱と疼きをどうすればいいのかわからない。かといって、この先の行為を彼女は知らない。
「? 何だ?」
ユーリが言いよどむ彼女に先を促すと、少し迷ってから彼女は手を伸ばしユーリの服の裾を掴む。そして上目に彼を見上げて、言いづらそうに告げた。
「……欲しい、の」
何を、とも何が、ともわからないが、その一言だけでユーリには伝わったらしい。
驚いたように瞠目してから、緩める。
「…やっぱなし、ってのは聞かねぇからな」
そう告げた彼の口調は、どこか優しげなものだった。
「ひあぁ、んんっ…あ、やあぁぁっ!」
「…ッ、は」
珠のような汗が滲み、口からは喘ぐ声が止められない。
彼女の身体を抱きこめば、それに反応するように背中に腕を回されて服を掴まれた。
互いに肌を密着させて、揺さぶる。ユーリの猛る熱は彼女の中に埋められ、僅かな痛みと強い快感を彼女に刻み付けていた。
零れる吐息は艶めいて、双眸は潤み、ユーリを見上げる。
その視線を受け止めながら、結合部からはぐちゅぐちゅと卑猥な水音を響かせ、欲が求めるままに貪りあう。
「ひぁ、あぁっ、やぁ…ユーリ、だめぇ…っ!」
「はっ…ダメじゃねぇだろ、乳首もこんなんだぜ?」
「ひぁ、ぁあん…っ」
つんと尖る乳首を口に含み、舌で転がしながら吸い上げると呼応するように中が締め付けられる。快感に目覚めたディセンダーの身体はエロいと、ユーリは思った。
ギリギリまで引いて、奥まで貫く抽挿入を繰り返しトロトロに蕩けた肉襞が絡みつく快楽に酔いしれ、そして危惧する。
「(こりゃ、縛り付けられんのは……)」
「ユーリ、ユーリ…っ、はぁ、あぁぁ…もう…、だめぇぇ…っ!」
「…っ――!」
名を呼びながらユーリにしがみついて、彼女は初めての絶頂を迎えた。迫り来る強烈な快楽はすぐにユーリにも襲い掛かり、やべ、と思った頃にはもう彼女の中へ欲の塊を吐き出していた。
数日後。
頭上高く現れたネガティブ・ネストへと向かうための準備を整えている仲間たちから離れ、ユーリは一人甲板で空を見上げていた。
世界中の負の塊。あそこへ行って、あれをなんとかしたら、世界の危機は免れ再び世界は平和になる。ユーリもエステルをあるべき場所へ送り届け、自分のやるべきことの為に歩みだせる。
けれどそこに、彼女の存在はなくなるのだろう。
「ユーリ」
「お。準備が整ったのか?」
名を呼ばれて振り向けば、そこにはいつもと変わらない彼女がいた。
いつも通りの笑顔を向けて、光をまとうように伝説の武具を身につけ、ユーリへと手を差し出す。
差し出された手の意味がわからず、とりあえず手を取ると、彼女は微笑んだ。
「いってきます、ユーリ」
しっかりと握った掌に伝わる熱と、伝えられた言葉にユーリは瞠目する。
そしてしばらくしてから頬を緩ませ、笑みを返した。
「…オレにはちゃんと、おかえりって言わせろよ」
交わした手を離し、彼女は何も言わずに踵を返した。
その背中を見つめて、手を下ろす。
掌に残された熱を逃がさないように、ユーリは硬く拳を握り締めた。
縛り付けられたのは、果たしてどちらだったろうか。
【END】
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