総合トップSS一覧>SS No.007-045
作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
無題 |
318(29スレ目)氏 |
クンツァイト×リチア |
2009/01/05 |
2009/02/11 |
宿屋の一室。
はあ、とリチアはひそかに、されど重々しく嘆息した。
(……胸が、欲しいですわ……)
持ち上げるよりも、下から少しばかり脂肪の付いた皮膚をつまむといった方が正確だ。
重量さえ計れないとは一体どういうことだ。
牛乳だって毎日飲んでいる。生臭いレバーだって残さず食べた。
なのに、一向に胸が膨らむ気配は無い。これではまるで、十程の少女の肉体ではないか。
「リチア様?」
唐突に投げ掛けられた低い声に、ドキッと心臓が喉元まで跳ね上がった。
振り返ってみると、いつの間にやら傍にただ一人の守護機士が立っていた。
「クンツァイト! ……い、いえっ、べ、別に、何でも……!!」
「自分は、アナタはご自分の胸部についてお悩みだと予想します」
金槌で頭を殴られたようだった。
「どうして貴方はいつもそうズケズケとッ……!!」
こみ上げてきた激情のあまり握り締めた拳がぶるぶると震えて、
どす黒い濃霧のような闇念が渦を巻いてリチアの元に集う。
「お……お待ち下さい! 然らば自分にある提案があるのです」
その瞬間、リチアの周りにうねっていた闇念がピタリと停止した。
「……何ですか、それは」
「自分のソーマにはマッサージ機能が備わっています。その中に『豊乳コース』なるものがあるのですが、お試ししませんか?」
「――な、なぜ! なぜそんなステキ機能がある事をもっと早くに言ってくれなかったのです!」
「あの頃はいずれ成長なさるかと推測していました。しかし……」
切実な眼差しを胸元に感じた。クンツァイトの瞳の方が饒舌に諦めを語っていた。
「……しばいて海に捨ててやりましょうかこのセクハラマシン」
「申し訳ありませんでした」
リチアは熟した林檎のように顔を真っ赤にさせ、胸を抱き隠す。
「……閑話休題。リチア様、どうなさいますか?」
「……どうする、って……。…………」
目蓋の裏に蘇る、フローラやイネスのあの大きな膨らみ。
細やかな樹にたわわに実った二つの果実。
たっぷりと瑞々しい重量感を見せつつも、まろやかで優美なラインを描く。
落下したら窒息死するのではないかと思うくらい深い谷間。
憧れていたものを手に入れられる唯一のチャンスがここにある。
……しかし、ソーマとはいえどクンツァイトはまるで自らの手のように扱う。
まさしく腕の延長。つまり彼そのもの。それに胸を触られる訳なのだ。想像するだけで赤面してしまう。
男性に、よりにもよってクンツァイトにそんな破廉恥なことを……。
でも。でも、でも――
「…………お願いします」
羞恥心を大特価で売りさばいた。
「了解しました。では胸部の着衣をはだけてください」
「……なっ!? ……分かり、ましたわ……」
恐る恐る服に手を掛ける。ちらりとクンツァイトの顔を窺うと、脱衣を促すように見詰め返してきた。
リチアの胸にはまだ逡巡が蟠っていた。
衣服を脱ぐだなんて一切聞いてなかったし、考えてさえもなかった。
(……い、いいえ、これもボインへの道のりの第一歩! 羞恥を乗り越えてこそ、人は巨乳という奇跡の果実を鷲掴みにすることができるのです!! だから、だから……っ)
コクリと唾を飲み込む。意を決して、するりと衣服を下へと落とした。
かつて誰にも見せたことの無い、磨き抜かれた処女雪のようなまっさらの肌。
小さな掌でも容易く覆い隠せるほどの膨らみ。
「リチア様、こちらへ」
クンツァイトは寝台に座ると、いつの間にか伸長させたソーマで手招きをして見せた。
示されるがままにその膝の上に腰掛ける。
「マッサージ『豊乳コース』、開始」
ソーマの先端部分ががしゃんと展開して、人の指のように変形した。
伸びてきたソーマが、いきなりむにゅりと胸を揉みしだいた。
「ひゃあっ……!?」
その異質で冷たい感触に思わず短い悲鳴が迸る。
指が肌に沈むたび白い肌に淡い痣が散って赤い雪のように消えていった。
くすぐったいような、もどかしいような、なんともいえない刺激が背筋に走る。
(……うう、恥ずかしい……)
ぎゅっと唇を噛み締め、目をそむける。
左手の指はくるくるとゆっくり円を描くように乳首の周りに触れ、右手はふくらみを揉みほぐす。
「んっ、はぁ……こ、これ、本当にマッサージなのですか……?」
「肯定。後10分程度繰り返すと胸部の膨張効果が期待できます」
するりと、一番触れてほしいところをするりと避けて触られる。
唐突に頂点の突起を器用に摘まれて、ぴくんと肩が跳ねた。
「あっ……!」
変に甘く上ずった声は誰のものかと一瞬考えた。
その声が自分のものだと理解して、リチアは更に頬を赤く染めた。じんじんと胸の先端が熱く痺れる。
「なんだか……変な声、出てっ……んっ、恥ずかしい、です……」
「否、その音声は異常ではありません」
文字通り機械的に告げながらも、乳首を責め立てるソーマの動きは止まらない。
「ふぁあ……! やっぱり……わたくし、変、ですっ……! っあ、だめ、そこっ……ひぅっ……」
突起を抓んだり押しつぶされ、ぞくぞくと背筋に電流が走った。
木の実が色づくように段々と紅色に染まり、ぴんと屹立していく。
この刺激を感じているという明確な事実に恥辱を煽られる。
もしもこれで後に胸に変化が無ければ、速やかに彼を海に沈めることになるだろう。
「あ、うっ、んん……や、いやっ……!」
頂点の小さな赤い真珠を囲む、朱鷺色の花の溝まで丹念に愛撫される。
なぜだか、次第に下腹部もがうずき出してくる。あそこの奥からトロリと何かがあふれ出すような感触。
諌めるため、思わずもじもじと膝をすり合わせるリチア。脳に霜のような白い膜が張る。
何か、おかしい。その未知の感覚にスピリアを恐怖の感情が食む。
けれどもクンツァイトは按摩を一切止めてさえくれない。
それに――身体はそれを、快感だと受け取っていた。
「ああっ、やぁっ……クンツァイトぉ……! わたくし、おかしくなって……」
最早発音は切ない吐息に近かった。柳眉が苦悶に歪む。
ぷっくりと腫れ上がった胸の突起を弄ぶ指の動きが速まって行くにつれて、リチアの呼吸音の合間も短くなる。
頭蓋の中で警鐘が鳴り響く。
近い。何かが近い。遠くから何かが津波のように押し寄せてくる。
真っ白な怒涛が意識を連れ去る。
「……――っ!」
呼吸が引き攣った。
耳鳴り。気が狂いそうな激しい快感の閃光が音を立ててはじけた。
太い槍が頭を貫いたようだった。がくがくと震える身体を支え保つため、
クンツァイトの腕をぎゅっと握り締めた。
「……っ、はっ、はあぁっ……」
やがて力が一気に吸い取られるように抜けた。完全に脱力して、彼の身体に深くもたれかかる。
呆然と開いた唇の端から、荒い呼吸と共に一筋唾液が零れた。
しばらくはぬるい海の中を漂っている風だった。
身体中に染みわたっていた快楽がカーテンのように引いていく。
頭の中に張った白濁した膜が溶け去る。ようやくリチアの神経を麻痺させていた白い化物が帰っていった。
心地よい脱力感にいつまでも身を浸しても居られない。
リチアは荒い呼吸をやっとの思いで押さえつけ、着衣を整える。
役目を果たしたクンツァイトのソーマが彼の首元に収納されていった。
「……はぁ、はっ……。今の、は……?」
「性器の充血、筋肉の硬直を確認。オーガズムを迎えたと推測します」
「……お、オーガズ、ム?」
聞きなれぬ言葉に、リチアは思わず鸚鵡返しに聞き返す。
「肯定。性的快感の極地。俗語的な言い回しをすれば、『イった』」
「……!!」
顔が炎で炙られているのかと思うほど激しく熱した。
そういった単語は耳にしたことがあったが、まさかこの今自分が経験するとは思いもよらなかった。
先程のあれがそうだったなんて。あまりの恥ずかしさに目元には涙さえ滲む。
……このまま消えてしまいたい。
「しかし、それは『豊乳コース』の使用です。よってアナタが羞恥を覚える必要性は皆無です」
珍しく空気を読んだクンツァイトが、どこか慰めるように告げる。
「……そ、そうは言っても……」
とんだ痴態を演じてしまった。
ああも淫らに声を上げて、身体を捩じらせて、…………。
彼にあのようなあられもない姿を見せてしまったのだ。これからは視線さえも合わせられない。
「……とにかく! あ、ありがとう、ございました」
「問題ありません。更なる豊乳をお望みであれば、いつでもお申し付け下さい」
ただ、起伏の薄い何時も通りのクンツァイトの表情だけが救いだった。
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