総合トップSS一覧SS No.007-042
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
無題 881(28スレ目)氏 イオン×アニス 2008/12/01 2009/02/11

僕は…どうして生きている

体さえ失せた少年の意識は、静かに空を巡る。
死んで終わりかと思えた、だが
直前に見た…いや、感じた景色は、自分が望んだものとは違った。
何故か不思議と、安心感がこみ上げてきた。


『あんたはあんたでしょ!?否定しなくてもいいのに!』
『ウルサイなぁ。どうせお前たちも似たようなことしか考えてなかったんだろう!僕が模造品だって!この力も元の導師の片割れだってことをさぁ!』
『違う!お前はお前として生きてもいい!なんでそれが判らないんだ!』
『良く言えますよね。貴方は自分が導師と同じ存在だとでも思っているからそんな言葉が言えるのではないですか?』
『少しでも変わろうと思えば、変われるわ。それを自らしなかっただけ』
『誰かが止めたかい?アンタが導師イオンのレプリカじゃなくてシンクとして生きたいと思ったのならな』
『そうですわ!ルークも、最初はアッシュの存在に悩みましたの。だけど今は――――』

『一々ウルサイって言ってるんだ!この世界共々滅びてしまえばいいんだよ!死ねぇ!』

走馬灯
死ぬ直前に見るという記憶の欠片が、少年の脳内を奔った
だが、それは刹那の記憶。すぐに消えてしまった


しかし、

なんだ、これは

『もう僕を監視しなくても良いんですよ。アニス。ありがとう…僕の一番…大切な――――』
『イオン様…あたし…』

『ありがとうございます!ルーク殿は優しいんですね』
『ばっ…!だ、誰が優しいだ!アホな事言ってないで、とっとと行くぞ!』

『あら、お腹を冷やしてるくらいのほうが、可愛げがあるわ。………なに?』
『ふふっ、お似合いだと思いますよ』
そんな記憶が、身に覚えのない記憶が、蘇る。それと共に吹き上げる狂おしいほどの痛みとは取れぬ痛みに、少年は苦悩した。

なんだ、この感情は…?

流れ行く光の粒子の中、少年はある気配を身近に感じた
それは漆を塗ったような果てしない虚無の中、少年に向かって―――――――いや、それが進む直線距離の延長線上に、少年がいた。それだけだった
そして、少年に激突する。だが、実体を持たない少年は、

なるほど…引力に引かれて落ちたか…やっぱり、もう…

もう、戻ることはできない。あの景色に、力に、姿に、心に。
今更ながら何かを手に入れようとする傲慢な心自身に、少年は嫌気が指した

もうどうでもいいと誓ったはずだった。世界が変われば。自分が世界から離れれば、自分をニセモノと思う人はいなくなる。だから


だが、

っ……!

少年の心が、静かに溶ける。穏やかとは言いがたく、直接、心に針を刺したかのような痛みが、体中を稲妻のように駆け巡る。
そして、引かれ、落ちていった。
二度と帰ることができないはずの世界に。二度と手に入れることができない痛みを手に入れよと言わんばかりに、唐突に起こった、

一つの、奇跡

(世界暦)ベルケンド西部に、珍しくも譜石が落下した。
大きさは一抱えほどの大きさで、表面に記された譜文字の量と、発せられる膨大な光に、預言が廃止された世界でも人々は、この石に興味を寄せる。
 預言がなくなっても、世界にさほど変わりはない。政界は預言で動くものではなかったし、政界に預言を提示するのはローレライ教団である。
 その他の貴族界や平民界は預言を無くし、しばしの戸惑いはあったものの、なおさら人々の交流の拍車をかける火種となった。
 博打や賭け事。先の見えぬ不安があるが、その先に待つ幸か不幸かの行く末に人々は興味をそそられ、それぞれの首都、グランコクマとバチカル。ダアトを中心に人々の文化的エンターテイメントが発展を遂げていった。
それを嘆くものはいない、
が、

一人、明るい行く先を見せてきた世界の中で、
「ハァ…」
小さくため息をついた少年がいた。


場所はダアト。ローレライ教団の本部の導師室だった。
「んっ……!」
椅子に腰掛ける少年は大きく伸びをすると、くたりと再び椅子に寄りかかる。
目の前に広がった結構な数の紙。それらに目を通し、応か否かをサインしていくことが日課となりつつあるここ最近は、育ち盛りの少年には結構厳しいものであった。
その時、壁がコンコンとノックをされた。
「導師イオン、失礼します」
「どうぞ」
椅子に正しく腰をかけなおして、少年は客を迎えた。そこには、

「アニスっ!」
「やっほー、フローリアン」
黒いツインテールを耳より少し後ろで結った、溌剌な雰囲気の少女が顔を出した。
「どう?お仕事がんばってる?」
「うん!でも、今日は少し量が多いから、すぐには終わらないんだよね…」
「頑張ってね。あたしも後で手伝うから」
小さく顔を伏せた少年の頭に手が置かれて、少年、フローリアンは笑顔になった。
「ありがとう、アニス」
導師イオンのレプリカ、フローリアンと名付けられたこの少年は、
幼さが残っていたものの、以前にレプリカの育児経験者である、
ガイ・セシルと、愛情を持って接したこの少女、アニス・タトリン。
その他様々な人によって、無垢なほど素直な少年へと成長を見せた。

「それで?今日は何してきたの?」
「えーっとね、巡礼者がバチカルから3人ほど来てて、それの対応してた。面白い人がいたよ、今回は」
「へぇ…。どんな?」
「んーっとね、なんていうか。巡礼者には見えない胡散臭い人がね、紛れてた。どうみても巡礼目的じゃなくて世界めぐりの巡業に便乗して旅行してるようなおっさんが一人いたのよ。ったく、金の無駄だってのよ。金余業手当てで寄こせ畜生」
黒くなっていくアニスに、フローリアンはあははと笑って見せた。
既にこの性格は知ってはいるものの、「絶対に影響を受けちゃ駄目よ」と、
怖くて冷たいお姉さん(あくまで印象)のティアの言いつけで守るようにしている。
こうやってアニスがぶつくさ言っている間にも、フローリアンは「影響を受けない」と頭の中で復唱する。

そこに、

コンコン

「あ、はい。どなたですか?」
フローリアンが聞いた。背筋を伸ばし、その優しくも意思がはっきりしているという威厳は、ルーク達と旅をしたイオンに酷似する。
仕事上の礼儀も、あらかた覚えている。
「ケセドニア付近に、音譜帯から第七譜石が落下した模様です。今の所はそこの支部に預けているのですが、
それに書いてある預言が読めないようです。しかもそれから発せられる光が異常であるようで…」
と、神託の騎士の声がドア越しに響いた。
「判りました。すぐに伺います。導師守護役として、アニス・タトリンを連れて行きます。よろしいですね?」
「かしこまりました。すぐに、竜車の手配をします。外でお待ちください」
そういって、ドアが閉まる。
「うー…」
「ほぇ?どうしたの?」
「疲れるなー。まだこんなにお仕事残ってるのに」
「大丈夫だって。都合により処理し切れませんでしたってことで、トリトハイムに言えばいいじゃん」
「それでいいのかな…?」
「いいって、ほら、ケセドニアでしょ?もうそろそろ竜車来てると思うよ。だからほら、行こって!」
「あ、うん!」
アニスに手を引かれて、フローリアンは部屋から出た。


そして、竜車で移動している最中、
「うっ…」
アニスと向かいの席に座っていたフローリアンは、小さく頭を抱えた。顔が、微弱な苦痛に歪む。
「どうしました?導師」
アニスが、そう聞いてくる。アニスの隣と、フローリアンの隣に一人ずつ、神託の騎士がいることから、アニスは私語が使えない。
「大丈夫です。ちょっとした頭痛でしたが収まりました」
「そう…ですか。何かありましたらすぐに」
「はい、ありがとうございます。アニス」
そう言って微笑むフローリアンの笑顔を見て、アニスは笑った。が、内心、どことなくその面影に、
彼…七番目のレプリカであったイオンとの思い出が、胸を衝く。だが、それを表情に出してしまうほど、アニスも愚かではなかった。
(イオン様…)
そして、竜車は、ケセドニアへ到達した。

「譜石はどちらに?」
ケセドニアのローレライ教団の支部の待ち受け室で、フローリアンは目前に持ってこられた石に、思わず息を呑んだ。
「これは…なかなか大きいですね。含まれている第七音素の量も並半かじゃない」
譜石に手をかざすフローリアンの目が伏せられて、静かに瞑想に入る。
突然、
『―――――――っ!』
目を瞑っているのに、視界が白く、染められた。
そこで見たものは、

『君…誰?ここどこ?』
『まさかアンタが入ってくるとはね。何番目かは覚えてないけど』
光の粒子が交錯する空間で、フローリアンは自分に似た二人の少年を目撃した。周りの風景は、さながら地殻の中にいるようだった。
『もしかしたら、僕達の意識が混濁した音素が入り込んだ譜石に、彼が近づいてきたからでしょう』
先ほどの、見下したような少年とは違う、明らかに柔和な雰囲気の【意識】が、フローリアンの中に流れ込む。
『君たちは…?』
『初めまして。僕はイオンです。貴方と同じ、レプリカで、ルーク達と旅していました』
『あの人たちと?』
『えぇ。僕は途中で息絶えてしまったので、その後を良く知りません。彼は―――――――』
『シンクだ。僕も途中で死んでいる』
【死】という単語を直に受け止められないフローリアンは、ただそこに存在する畏怖の対象とでも言うべき言葉に、身を竦ませる。
『死んだ人…?え、でも、死んでるのに話してる…』
それは、とイオンの言葉が、フローリアンの言葉を制した。
『僕達が死んだ後に乖離した音素が、運良く、音譜帯の中に中に流れ込み、意識が混濁したことが始まります。判りますか?』
フローリアンがまるで、まだ経験が少ない子供だと理解しているように、イオンの口調は和やかだった。
『う…うん』
『そこで、オールドラントの引力に引き付けられた第七譜石は、その辺りにあった第七音素を取り込みながら、地上に落下しました。
その際、僕達の意識…即ち第七音素がその譜石に取り込まれてしまったのでしょう』
『む、難しいね』
 そう顔を顰めたフローリアンに、イオンはふふ、と笑った。とても優しい笑みだった。
『じゃ、じゃあ、君たち、死んで…?』
『そうだよ』
と、シンクがぶっきらぼうに言った。
『なら、少しだけ外の世界を見てみない?』
『何いってんのさ』
『え……だ、だから…僕の体を君たちに渡せば、見れなかったモノを又見れるわけだから』
『生まれてまだ間もない子供から説教ね。馬鹿馬鹿しい』
侮蔑の言葉は、フローリアンの心を深く抉った。
『シンク。彼の善意です。一度死んだ身の僕達が、また現世を体験するなんていうのは確かに奇妙な話ですが、僕はできるなら、
彼の善意を受けたいです』
『勝手にすれば?僕は止めないから』
『ありがとう、シンク』
フンと鼻を鳴らして、シンクはそっぽを向いた。イオンがフローリアンに近寄る。
『『本当にいいのですか?』』
イオンと、フローリアンの声が重なる。目を開いてポカンと呆けたような表情のイオンとは対照的に、フローリアンの笑みが零れる。
『言うと思った。僕も普段、そうしてるんだ』
『ふふっ、そうですか』
『いいよ。僕も少し仕事疲れてるから、三日くらいなら。大丈夫』
『導師の仕事は僕も慣れてますから、大丈夫でしょうね』
『うん。それじゃ、やってみるよ…』
そして二人分の意識が、音素が、互いに混ざり、溶け合い、心を入れ替えていく―――――――

「ン…うし…導師…導師イオン…イオン様っ!」
アニスの声により、イオンははっと我に返った。
「ア…アニス…?」
「大丈夫ですか?お顔青いですよ?」
「僕なら大丈夫です。心配をおかけしました」
僅かばかり青い顔に、無理のある笑顔を付けて、イオンは自分の体に目を向けた。
開閉する手。呼吸をする口。何より、全ての五感が働き、生きていることを実感できるこの瞬間。
「導師イオン。この譜石は…」
「そちらは、ダアトの本部にてお預かりします。音素の量が多いことから、
預言が必要ないこの世界にとって、ユリアシティ等の機関の原動力として動くことでしょう」
すらすらと、フローリアンでさえ知り得ない知識を、イオンは言い放った。
「判りました。では今日はこれで、宿を取ってありますので、そちらで休まれた後、ダアトへ帰国して頂ければ」
「はい、そうさせてもらいます」

「フロ…イオン様……ですよね?」
宿屋の道中、アニスの質問に、イオンの片眉が上がる。
「そうですけど。どうかしましたか?」
「い、いえ」
そう言って、顔をイオンから地面に戻す。
(フローリアン…?でも、この雰囲気、何だか…)

思案顔で宿屋に到着して、イオンは早々と寝室に入った。
「アニス。いるのでしょう?」
誰もいない部屋でそう呟いたイオンは、手に持った譜石を腹の上に乗せて、椅子に座っていた。
「入るよ?フローリアン」
 がちゃ、とドアが開かれ、おずおずとアニスが入ってきた。
「どうしました?」
「何か、今日のフローリアン、変だよね。譜石持ったまま動かなくなっちゃったり、ちょっと難しい知識すらすら言ってるし…まるで」
「イオン様みたい…ですか?」

「え?」
顔を上げたアニスの先に、椅子に腰掛けたまま、慈母の様な微笑を浮かべているイオンが、一人。

「イオン、様………?」

ただいま
アニス

そう動いた口元から発せられた声に応えるように、アニスの瞳から、滴が垂れた。
立ち上がり、近づいてくる少年は、アニスの目の前まで来ると、静かに、両手でアニスを抱きしめた。
「ただいま……アニス」

イオン…様

アニスの口元も、そう動いた。
声が出ずとも、イオンはその声を確かに聞いた。

「イオン様っ……!」
背中に回された両手の温もりを感じながら、アニスは、自分が愛したイオンが帰ってきたことを知った。
知って、その懐かしさと切なさに負けて、彼に抱かれながら、泣いた。


アニスの涙が止まった頃。それはベッドの中だった。
「でも何でイオン様がいるの?」
という彼女の質問に、起こりえている過程の全てを、イオンは話した。
途方もない話だね。と笑われて、イオンは苦笑した。こんな出来事は、誰にも予想されなかった奇跡だった。
「イオン様…三日後にはフローリアンに戻るんですよね…」
いつか来る別れ。それを想うと、アニスは辛かった。が、
「そうですね。でも僕もちゃんといますよ。譜石の中に」
「ふぇ?」
「譜石が、意識を留める装置なら、そこに互いの心を代わりばんこに入れ替えればいいんです。フローリアンもそれで納得してます」
「そう……なんだ」
はい、と笑顔で返され、ちょっと複雑な気分になった。
アニス、と呼ばれ、
「はい?」
顔を上げたアニスに、
「―――――――」
「っ――――!?」
イオンは、静かに口を寄せて、キスをした。
漸く離れた頃、
「イ…イオン様っ!?///」
真っ赤になってアニスは後退した。片で息をして、耳まで赤い。ここまでの羞恥心の体現はないだろう
というくらいの羞恥の現われ。
「アニス、僕がまだ生きていた頃、言い忘れたことがありました」
「は…はい?//」
おずおずと距離を戻してきたアニスの頬に手を寄せて、
「アニス、僕は貴方を愛してます。貴方は、僕の一番大切な人です。よければ、一生傍にいて下さい」
(微笑交じりの)真顔で言われた後、アニスは半ば茫然自失的な状態だったが、自ら両手でイオンの肩を掴むと、
顔を寄せた。互いの接吻が交わされる。
「んっ…」
口を離すと、互いの唾液が弧を描いた橋を作り、ぷつりと切れた。
「イオン様…」
アニスは自ら衣服の襟に手をかけると、それを静かにイオンに制された。
「僕に、やらせて頂けませんか…?」
「あ…はい」
ボタンに手がかかり、一つずつ、着実に外していく。自分を包み込んでいる衣服が外れていく気分に、アニスは浸っていたが、
「あ…」
ボタンを外し損ねた手が、小さく震えてるのを見た。
「大丈夫ですよぉ。あたし、こんな事じゃイオン様を嫌いになんかなりませんから。いや、むしろ、あたしも…その、イオン様のこと―――――」
「アニス、もういいです。いい難いのなら、無理しなくても」
そう言って、残ったボタンが外されていった。露になる赤く上気した首からかけて、徐々に白味を強くしていく上半身が、全貌が見れる。

「アニス…」
「大丈夫ですよ。そのまま、触れても大丈夫です」
 そろそろと、アニスの鎖骨部に触れた手が、ゆっくりと首を這って下に滑り降りていく。
「あっ…」
 胸の膨らみに触れた手が、一瞬動きを止めるものの、そのまま撫でることから手を広げ、掌前面で胸を包んだ。
「ん…ふっ…」
「大丈夫ですか…?アニス」
「いい、です。そのまま…」
「判りました」
 広げた手を下に穏やかに滑り落として、丁度人差し指と中指の間に突起が来たときに、イオンはそれを日本の指で挟んだ。
「んっ…!」
恐る恐るというのが一番しっくり来る動きで、イオンは両手でアニスの胸をほぐす様に揉んで行く。
「っ…んっ、あっ」
目を閉じ、顔を仰け反らせたアニスの頭に片手を伸ばし、イオンは紙を結ぶリボンをはらりと取った。
僅かに捻られた髪が、すとんと落ちる。
顔を寄せて、まだ小さいが、豊かな形を形成している胸に、イオンは下を這わせる。
「ん…あぁ…やぁ…」
周辺をなぞるように巡った後、立って硬くなったそれを、吸ったり、舌で転がしたりした後に、
首まで這っていく。
目が合ったアニスは、そのまま静かに微笑むとイオンと再度、唇を重ねた。液体を散らすような
奇怪な音が、部屋を満たす。
イオンは口を離すと、アニスのズボンに手を捻り込み、陰部に指をあてがった。
「ふぁっ!」
そのまま指を折り曲げたり伸ばしたりしながら摩った後、イオンは手を抜き、
穏やかな所作でアニスの下半身の衣服を外していった。
露になる下着は、陰部の箇所が薄っすらと色付き、それを見て微笑むとイオンが下着の間から指を直に陰部に入れ、愛撫を数十秒間、繰り返す。
「んゃっ…あ…はぁっ!ぁん…ひっ、あぁん!」
「アニス。僕、その…」
「ひぅっ…!んっ…来て、いいです、んっ!…よ…」
指を外し、指先が液体による反射で光っているのを見届けると、イオンも自らの衣服を脱ぎ、
アニスの下腹部に、自分のそれを同じように重ねた。
「ひっ…んゃぁぁあああ!」
根元まで深く挿し込み、イオンはアニスの陰部から流れる赤い滴を見て、顔を曇らせた。
「アニス、やっぱり、やめたほうが…」
そう言い掛けた、だが。
「―――――――」
自分を見て、薄く微笑むアニスを見ると、
「…いいんですね…?」
 小さく、首が縦に振られる。イオンは、それを見て一度深呼吸をすると、重そうに腰を動かし始めた。
「んっ!、中で、イオン…様っ…!もっと、んあっ!っ、ふ、ぁああっ!!」
髪を振り乱しながらも、自分を求める声に、イオンは更に早く動く。
「あっ、あん!…はぁっ、あっ!中で…んっ!だ、駄目っ…あああああぁっ!!」
アニスが大きく体を仰け反らせ、それと同時に、膣から液体が漏れ出てくる。
イオンはそれを見ると、体からくたりと力を抜いた。
「ゼェ……ハァ……く…ハァっ」
元の体はフローリアンのもので、やはりレプリカであり、体力の消耗はかなり激しかった。
「イオン様、大丈夫?」
「ちょっと…くっ…いえ、かなり…疲れました」
「な、なら。次はあたしがっ。イオン様、まだイってないし」
「…はい?」
「イオン様は、仰向けに寝てて――――」
「え、ちょっ、アニス!?」
「くださいっ!」
イオンはアニスに押し倒されて、ベッドに背中から倒れこんだ。

「入れますね。いいですよね?」
「え…えぇ、まぁ」
イオンの上に騎乗位であてがっていたアニスは、何をどう間違えたのか、徐々に、ではなく、腰ごと落としてしまった。
「っ!ひゃぁぁあんっ!」
「アニス!大丈夫――――」
体を震わせているアニスは、片手をあげて、イオンに「待って」のポーズ。
「――見たいですね…良かった」
「…いきなりなんでかなり苦しかったです…ふぅ」
復活したアニスは、自分の体がイオンと繋がっているところを見ると赤面し、その後、静かに体をゆすり始めた。
「んっ、あんっ…ふっ、あぁっ!ひっ…あん!」
ベッドが小さく軋む音を背景に、アニスは自らの陰部が奏でる奇怪な音に耳を寄せながら体をほぼ無意識に動かしていく。
「あぁぁっ…お、奥に…当たってる…!んっ、イオン…さまっ…!」
「くっ、アニス…」
「もう少し、強く、動きますね…んっ!」
腰を上げて、また落とす間隔が短くなり、それに比例してアニスの喘ぎ声が室内に大きく響く。
「はっ!っ、んん!…んっ!あ、あん!やっ、ああぁ!」
「アニス…僕、もう…!」
「ひっ、あぁ!イ、イキそう…ですかっ?くっ、あん!」
イオンは上半身を起こしてアニスを抱くと、一気にアニスの体を下に落とさせた。
「っ、ん!イオン様…っ!ひっ、ゃあああああああん!」
「アニス…!くっ、うぅ…!」
排出された精液がアニスの子宮を叩き、その度にアニスは体をビクリと仰け反らせる。
「はっ…んっ…あっ…イ…イオン様…」
「アニス…今度こそ…疲れました」
イオンに寄りかかり、イオンは耐えられずに勢いのままお互い正位置のベッドに倒れ臥した。
「イオン様…」
アニスはイオンの頬に、手を寄せる。さっきとは逆の光景。
イオンは、その手を愛しそうに掴んだ後、静かに、寝息を立て始めた。
「あたしも…ねむっ…おやすみ――――」
疲労のあまり、互いが、そのまま寝入ってしまった。
(一生続くといいな…)
(できれば、これからもアニスと一緒に…)
二人の思いが交錯して、夜が更けようとした。


『何の音ー?アニスどうしてるの?痛そうだよ?』
『子供は見るなっ!そして聞くな!』
譜石の中、シンクはフローリアンにせめてもの悪影響を与えないために必死だったとさ。


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