総合トップSS一覧SS No.7-019
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
私だけの聖騎士さま KIWo4a7h氏 ユーリ×リタ 2008/09/06 2008/10/29

風が吹くのはいつものこと、湿度と気温と気圧とエアル。それでどんな風が吹くか決まる。
簡単に算出可能な値に過ぎない筈のそれは普段と違って独特の厚みを持っていた。
ザーフィアス城の広広としたテラスで催される舞踏会には世界の首脳陣が集まる。
有力者達の友好と復興の進捗を話し合う重要なパーティー。
舞踏会ははじまったばかり。
なごやかで悪くない雰囲気。
それでもリタはどこか場違いだという感覚を抱いていた。
タルカロン墜落から半年、世界は様変わりし人の汗とつたない精霊魔術の研究が遅々として進む世界。
アスピオの復興は進んでいない。建築魔導器さえ存在しない今、人の手でかつての大量の文献を
サルベージすることは絶望視されていた。足元に眠る知識、未発表の研究成果、
いくら魔導器が使用不能に陥ったとしてその基礎的な科学理論は間違いなく人類の宝であった。
タルカロン内部の探索も機能停止した今となってはフロアは分断され墜落の衝撃で
大規模空間のほとんどが崩落しこちらも絶望視されていた。
人類の科学文明は向こう200年は停滞するというのが研究者間でのおおよその見解だ。
「・・・・・・こんなことしてる場合じゃない筈なのよね」
幸い自分の頭には知り得る限りの膨大な知識が蓄えられていたが、未読の書物や未開拓の分野は当然あった。
かつて開けていた新たな可能性への糸口は断たれたに等しい。知識を書物に起こすには大量の時間と手間を浪費する。
たとえどれだけの智恵を持とうともそれだけは変わらない。
アスピオに機能を一局集中させたツケで研究素材を手に入れることにさえ困窮する。
自分の才能が埋もれていくどうしようもない感覚。焦り。
「不自由な中でもがんばってる奴らだっているんだし、あたしがたそがれてちゃ話になんないわよね」
それでも今は、親友と呼べる人と、仲間と呼べる人たちとの関係が自信を与えてくれる。
そしてもう一人。
ただ最近は自分らしくない感情に振り回されることが増えた。
恐らくそれは人として当たり前の感情。
当たり前であることを認めるのにはまだ勇気が足りなかった。

「よぅ、リタ。元気にしてるか?」
振り返ったそこにはいつもと違う、さながら聖騎士とでも言うような衣装のユーリがいた。
後ろに結わえた長髪が動物の尻尾のようにも見える。
「研究のことでも考えてたのか?」
「それも考えてるけど・・・・・・最近は他にも。はぁ、ほんと歳とると嫌だわ、煩わしいことが増えて」
「ははは、違いない。エステルのとこには行かないのか?」
「あんたに心配されなくても、ちゃーんと話してきたわよ。
 ただ、今は皇帝補佐としていろいろ忙しい時期なのよ。本人もいつになく張り切っちゃってさ」
「そっか、がんばってんだな」
「帝都に住んでるんだからあんたの方が詳しいと思ってた」
「俺は下町の復旧やら、ていうか、主に井戸掘りとか雑用ばっかりしてるからな。騎士団は騎士団で、
 帝都を囲む外壁の建設作業に追われててんてこ舞いだ。話を聞くって雰囲気じゃねぇよ」
「ふーん。」
「みんなともしばらく会ってねぇなぁ」
「あたしは会ったわよ、ジュディスに」
「お、元気そうだったか」
「あいかわらず」
「そっか」
ユーリの微笑みはどこか懐かしそうだが遠くを見ているようだった。
「しっかしその衣装、演劇のときのだろ? まだ持ってたんだな」
「・・・・・・まともなのがこれぐらいしかなかったのよ。そういうあんたこそ、その格好は?」
「おれも演劇の服が一番まともだからそれで来ようと思ったんだけどな」
「・・・・・・信じられない」
「入り口でルブラン隊に拉致されて無理やり着替えさせられた」
「当然。・・・・・・でも、なかなか似合ってるわよ」
「そうか、ありがとな。そっちも、いつファイアーボール唱えるんじゃないかと不安になるぐらい似合ってるぞ」
「へ、変なこと思い出させないでよ・・・・・・ていうか魔導器ないんだからもう使えないわよ。
 その代わり・・・こっちはいつでも使えるわよ?」
どこからともなく取り出された分厚い書物には
犠牲者の怨念と生き血と呪詛が染みつき紅く変色して・・・・・・いるようないないような。
ユーリがついくだらないことを考えているといつのまにかリタの顔がすぐ近くにあった。
「ねぇ」
不意にかけられた言葉にユーリは一瞬戸惑ったがすぐに落ち着きを取り戻す。
(こうして見るとほんとにどっかのお姫様みたいだよな。。。。。。)
ついまじまじと見つめてしまったことに気が付き視線をそらしてごまかす。
リタはそんなユーリを見て可笑しくなりつい笑みがこぼれてしまった。
自分でそれに気付いて感情を打ち消すようにぶんぶんとかぶりを振った。そして言葉を続けた。
「・・・・・・二人で、出ない?」
自分の限界を越えるような一言は、意外なほど素直に言えたのだった。

 *

今の関係は気に入っている。
かければ必ず返ってくる返事と手ごたえと、
なんでもない時間と、
無駄なようで無駄ではないという無根拠な核心と。
ただそれだけで満足、
と言うには、
あまりにこの衝動は強すぎて、
確かであると信じられるものは、
いまは体の外側にあった。

 *

下町の噴水、というより今は単なる井戸と化したモニュメントのふちに二人は腰掛けていた。
「あたしの次の誕生日さ、けっこ、すぐなんだ」
「そうか、ならそんときはお祝いしないとな。腕によりをかけてうまい飯つくってやるよ」
「ぁ〜、そういう催促じゃなくて。今年はちょっと特別なの」
「どうしてだ?」
「まぁ、ちょっとね」
頬が僅かに上気する。
自分でもなんていうことを言っているのか、ただギリギリ気付かれまいというちょっとしたスリルがあった。
「その・・・・・・あんた、結婚とか考えたことあんの? もうしてたっておかしくない年でしょ・・・」
「あぁ、同期の騎士でしてるやつはけっこういるなぁ。見習いの頃からっていうせっかちなヤツもいたっけ。
 下町でも貴族連中でもそういうのが流行る時期はあったな。」
「そ・・・そういうの考えたことないの?」
「・・・・・・まぁそれどころじゃなかったからな」
「ユーリのことだからどうせ遊び呆けてたんでしょ」
「いや、騎士団辞めたりで、いろいろとな。フレンともしばらく顔合わさなかったぐらいだし」
「ぁ・・・・・・ごめん」
微妙に気まずい空気が流れる中、リタは自分の質問を後悔した。
「気にしてないって。昔は昔大昔だ。」
「そうよね、そんなこといつまでも引きずるほどユーリは繊細じゃないわよね」
「さりげなく、すごくひどいぞ。そんな風に思われてるのか俺は」
「じゃぁ、ユーリはあたしのこと・・・どう思ってる?」
意地悪半分で聞いてみる。ただあとのもう半分がなにかとは自分でも恥ずかしくて頭の中でさえ言葉にできない。
きっとまたすごい顔をしているのだろうと予想しながらユーリの方を振り向くと、そこには意外なほど真面目な横顔があった。
どこか遠くを見ているような。なぜこっちを向いていないのかと、僅かに胸の奥が軋んだ。
「聞いていいか・・・・・・?」
「な・・・・・・なに?」
不安と焦燥が胸の鼓動を早める。もう半分の心が少しづつ痛みを伴うものに変わっていく。
「オレでいいのか?」
心の中を見透かされていたと気付いたときにはもう遅かった。恥ずかしさとしまったという感情で頭が半ばパニックになる。
落ち着く場所をなくした感情が先走っていく。
「ばっ! ば、ば、ば・・・・・・バッカじゃないの! そ、そんなことあるわけ」
否定しようとしたところで、心の奥からそれをさらに否定する感覚が湧き上がる。
嘘をつくなと心が叫んでいるようだった。
息が止まるような感覚に言葉を続けることができない。
しかし、次に聞こえた一言でそんな逡巡は頭から吹き飛んだ。
「オレでいいのか・・・・・・? リタになら、もっといい相手がいる。。。んじゃ・・・な・・・」
何人もの生き血をすすってきた、かもしれない質量兵器、
もとい書物は天高く大上段も大上段に掲げられ、渾身の力で振り下ろされた。
「いっぺん。。。死んどけーーーーーー!」
その質量と鋭い角は的確にユーリの脳天目掛け無慈悲に直進する。
ユーリはすんでのところで上体をそらし死を免れた。
何か言い返したかったがリタの目元に浮かんだ涙がユーリに言葉を遮った。
「他の誰かなんて、考えたことなんてないわよ、考えられないわよ!
 他の誰かにって、それがどういうことかわかってんのっ
 あたしは・・・そんなの嫌。。。。。。嫌ったら嫌!」
リタは自分の両肩を抱くとうつむいて肩を振るわせる。

「あたしは。。。」
「・・・オレが悪かった」
リタはギッと歯を食いしばるとユーリに食ってかかった。
「どうせ・・・どうせ自分の手は汚れてるとか。。。そういうくだらないこと考えてるんでしょ、
そういうの、ほんっとにくだらない、そういうのだいっ嫌い! バカっぽい! うざったい!」
もう他の何にも邪魔されたくなどなかった。
「自分でも・・・・・・らしくないってわかってる・・・・・・でももうそういうくだらない気遣いなんて嫌・・・考えてられない・・・
 信じたいの・・・この気持ちの方を・・・・・・無責任でもいいから・・・・・・受け止めてよ・・・
 ・・・抱きしめて欲しいって、そう思っちゃうの、それしか考えられなくなるの・・・!」
「・・・・・・リタ」
「なによ・・・・・・」
リタは涙を拭いながらユーリを見上げた。二人の身長差は30cm近くある。
殆ど真上を向く格好になり拭いきれなかった涙が頬をつたい落ちる。
涙が地面に落ちるより早く、ユーリの手がリタの頬に指を沿え涙を受け止めた。
くすぐったいような、むず痒いような心地よい目元の感触と胸を刺すような痛みが同調する。
誰にも渡したくない。
この痛みも、頬に伝わるぬくもりも。
誰にも、仲間にも、親友にも。犬にさえ。
ぼやけた笑顔が眩しく映る。
「いざというとき守ってやれる、って・・・オレが傷つけてちゃ世話ないな・・・・・・」
「毎日代わりに料理作ってくれたら・・・・・・許してあげてもいい・・・・・・」
「どこかの誰かさんが栄養失調でぶっ倒れたりしないようにしないとな・・・・・・」
「あたしはそんなドジ・・・・・・いや、一回だけ・・・・・・って、そんな話はおいといて、
 私は、私はユーリがどんだけ悪人やっちゃおうとかまわないし・・・・・・ていうかどうでもいい。
 うん、ほんとどうでもいい。どうでもよすぎるわ」
「おいおい」
「でも、あたしは、あたしの気持ちはどうでもよくない。
 ユーリが誰に追いかけられて賞金首になろうと大悪党になろうと世界滅ぼそうと!」
「ちょっっっと待て!」
「あたしはユーリが好き、以上!!!」
精一杯聞こえるように大声でまくしたてた。
気持ちの大きさを表そうかというように。
最期になるほど声が大きくなっていくのは照れ隠しというよりも
張り詰めた気持ちが限界に近づいていたからだとリタは自分でも気付いていた。
自分には正面から気持ちをぶつけるしかないのだから。
最短距離を突っ走ることだけが想いの激しさに負けずに自分を支えてくれるのだから。
不意に頭に感じた重さが、自分が撫でられたのだと気付かせる。くしゃくしゃと髪と手が擦れ合う音がする。
あまりにも曖昧な返事に涙がとめどなくあふれる。
不安と恐怖が逃げろと命じてもきつく目を閉じて振り払った。
「逃げないで・・・・・・お願い・・・・・・」
搾り出した声は枯れそうだった。
続いた言葉は嗚咽。
目が痛くて開けていられない。
それでも顔だけはまっすぐ、そらしたりはしない。
続いたYESの一言が、どんな言葉よりも心をえぐった。
誰かの前で声を上げて泣いたのは、
生まれて始めてかもしれなかった。

キスから先はあっという間でリタは半裸のままユーリの部屋のベッドに横たわった。
肌と肌が触れ合う感触は窓から吹く風の冷たさを忘れさせる。
胸を舐められて僅かに声が漏れ、これが自分の声かと一瞬わからなかった。
いつのまにか下着だけになっている自分の体に絡まる足、手、首、肩、どれも見た目より重く力強く、安心する。
下着の中にユーリの手が侵入してくる。
焦りのような、待ちわびていたような、両足に自然と力が入る。
「震えてるな・・・・・・」
気遣いのわりに無遠慮なユーリの指が中に僅かずつ入ってくる。
声を押し殺しても高まる動悸と息苦しさから大きく息を吐いてしまう。
恐怖と不安と感情の高ぶりから下半身の震えが止まらない。力をこめても、侵入は防げなかった。
気を紛らわせようとでもいうのか体が自然と反っていく。足の指に勝手に力が入る。
自分の意志とは無関係に体の中で動くそれに意識が追いつかず次の覚悟が間に合わない。
軽く悲鳴をあげると、ユーリの手が止まった。
「痛いか?」
「いい・・・・・・から。。。。。。優しくしないでいいから・・・・・・ちゃんとして・・・・・・て、ちょ、広げないでっ」
「広げないと入れられないだろ」
お互いに触れる1cmほど手前で止まったユーリのを見てリタは言葉に詰まる。
「もう、我慢できそうにない」
入り口を押し広げた後は滑るような感覚が体内を進んでくる。亀頭が内壁をかきわけていく。
先端の潤滑感に比べて後に続いたのは内壁を押し広げられる感覚。先端ほど滑らない後の部分は熱っぽかった。
「ユー・・・・・・リ・・・・・・」
思わず名前を呼んだあとには恥ずかしさが続く。それでも自分らしい言葉をなんとか選ぶ。
「返事待たないとか非常識すぎ・・・・・・初めて会ったときから進歩してない・・・」
「リタの進歩の早さに比べたら、時が止まってるみたいに見えるかもな」
はにかんだ笑顔に頬が上気し眩暈がしそうになる。
長髪がユーリの肩から落ちてリタの顔にかかる。
一瞬しまったという顔をしたユーリに向かって、リタは長髪を両手指に絡め両目を瞑ってあかんべをした。
額と額が触れ合うのと同時に、ユーリはリタの中で動き始めた。
薄く息を吐く音が部屋に篭る中で
聞こえる互いの息遣いと体温と汗と匂いと時々吹き込む風とシーツが濡れていく感触と脱力感と肉のやわらかさと骨の硬さと
目に付く綺麗な黒髪と聞いたことのない自分の声と肌と肌の間に溜まる熱気と混ざり合う冷気と
徐々に楽になっていく体勢と少しずつ噛合っていくリズムと抱きしめた感触と同時に、体内に熱い感覚が注がれる。
少しずつ体の奥底に染み込んでいくような感触は唾液も涙も止められない自分の最期の羞恥心さえさらっていく。
唇を撫でてキスをねだると深く差し入れられた舌の感触に意識が遠のきそうになる。
「あと・・・・・・ちょっとであたしもいけるかもしれないから・・・・・・」
リタはユーリの背に回していた手をユーリの頬に添えた。
「手ぇ、握って・・・・・・最期まで離さないで・・・・・・」
繋いだ手から伝わったぬくもりがこれから先の浮遊感を忘れさせてくれる。
しっかりと繋がっているという実感がする。
何か耳元で囁かれた気がした。
「ぇ・・・?」
問い返すと答えは返ってきた。
「俺もお前が・・・・・・好きだ」
もう引き返せないし、引き返す気もないと互いに確認し合ったところで思わずこぼれた笑みは
「・・・・・・バカっぽい」
自分でも驚くぐらいに自然だった。

after one

「あぁあーー!」
リタがあげた大声でユーリは目を覚ました。
「どうした!?」
「舞踏会終わってるじゃない・・・・・・エステルと終わったら会う約束してたのに・・・・・・」
窓から差し込む真昼の日差しを呆然と眺めながら言ったリタの言葉に、ユーリは思わず笑ってしまった。
「・・・なに笑ってるのよ」
「いや・・・・・・なに、天才魔導少女にらしからぬ、と思ってな」
「もう"魔導"少女じゃないわよ。天才ってところは間違ってないけど」
「その天才さんは昨夜は大層お乱れになっ・・・・・・」
ギロリと睨まれユーリは自分の失言を悔いた。
「・・・・・・大層可愛かったです」
「ふふん、よろしい♪」
「まいったな、こりゃ」
主導権がどちらにあるかはもはや明白なのであった。


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