総合トップSS一覧SS No.7-009
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
無題 β氏 ユーリ×エステル 2008/08/26 2008/10/24

「良かった…ここも無事だったんですね…」
花の町ハルル。昼の橙色の空に映える桜の大樹の前で、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインは両手を握っ

た。
「あの時は、どうなるかと思ったけど…無事に又見ることが出来て何よりです」
と、その樹に語りかけている。
彼女は、つい数日前までアレクセイに囚われ、危うく世界と、仲間を殺しそうになっていた。しかしそれもま

た、アレクセイに操られてこそだった。
大樹の前まで歩み寄り、その立派な幹に耳を当てる。数刻置きに聞こえる水の滴る音は、生きている何よりの

証拠。聞こえている自分のそれもまた、エステリーゼの心を落ち着かせた。
「なにやってんだエステル?」
「あ、ユーリ」
坂の下から歩いてきた青年、ユーリ・ローウェルが、いつも通り礼儀も何もあったものじゃない持ち方で剣を

ぶら下げている。彼はそのままエステルの隣まで歩いた。
「樹を見てたんです…生きて、またここ、ハルルに来れたことが嬉しくて」
「そうか……もう体は大丈夫なのか?」
「はい、ちゃんと動きますし、異常があったら…あ、あってもなくてもリタが診てくれるんです」
「良かったな。あの時はどうなるかと思ったが、後はザウデでアレクセイをぶっ飛ばすだけだ」
「アレクセイ、彼は何をしようとしてるんでしょう…?」
「俺らの知る事じゃねぇよ。止めればいいだけだ」
「そうですね…明日は頑張りましょう」
目を眇め、眩しそうに樹を見る。それとは対照的に、
「…俺は………………くそっ…!」
ユーリは顔を歪め、忌々しそうに大樹を睨む。
「…どうしたんです…?ユーリ」
刹那、エステルの目前を、白い剣閃の閃きが通り過ぎた。舞い散る花びらを数枚切り落とし、ユーリは剣をエ

ステルに向けていた。
「ユ……ユーリ…?」
「エステル」
ユーリの業火を宿した瞳が、エステルを金縛りにする。
エステルはユーリの怒った顔をしばしば見たが、逸らしたくなる衝動に駆られる。
今までに無い、紅蓮の炎を湛えた怒りの表情だった。

そして、
「蒼破ぁ!」
と、蒼い輝きを放つ疾風がエステルを襲った。それを避け、反射的に横に飛ぶ。
「ユ…ユーリっ、何をするんです!?」
「追蓮!」
放たれた二撃目は的確にエステルのど真ん中を狙い、襲ってきた。
「ッ!…スターストローク!」
被害を避けるために、致し方なくエステルも反撃をする。
「幻狼斬っ!」
懐に潜り込んできたユーリの、神速の剣閃を、
「ディバイドエッジ!」
くの字に曲がる斬撃でやり過ごす。
「ユーリっ!何をするんですっ!?」
「はぁぁぁあああ!」
大上段に振りかざされた剣が、エステルに向かい振り下ろされた。それを剣のつばで受け止める。
「てめぇは死にてぇかっ!」
「……え?」
「死にたいのかって聞いてんだ!」
突如、剣が下に倒された。ユーリの踵落しが剣を弾き飛ばし、もろともエステルを地面に倒す。
「っ……!」
痛みに顔を歪めたエステルの顔の数寸横に、剣の刃先が突き刺さる。
「ユーリ……どうして…っ?」
ユーリは憤怒の表情のまま、
「てめぇは…誓ったはずだったよなぁ!二度と死ぬなんざ言わねぇって!」
「確かに言いました!でも…っ」
「それがなんだ!俺らがバウルに乗って助けに行った時、てめぇ何て言った!」
「っ…!そ…それはっ…」
「俺らは……お前は『助ける』ために向かったんだっ!殺しにいったんじゃねぇ!」
「!!」
ユーリは顔に苦渋の表情を見せると、剣を離して、地面にヘタレこんだ。
「今度こそ、誓えよっ…」
「………はい」
「んっとに頼むぜ…俺だってお前が死んだら、どうなるか判んねぇんだよ…」
「え…?」
「俺だけじゃねぇ、カロルだってリタだって、ジュディやおっさんだって、ラピードも悲しむぞ…」
そう言って、胡坐を組むその姿には、普段見られないユーリの内心が写っていた。

「ごめんなさい……」
確かに言ったはずだった。二度と死ぬなど言わないとフェローの岩場で。
しかし、禁を破ってしまい、そして、皆を悲しませてしまった。
反省で唇を噛み締めるエステルを、突如何かが包んだ。
「ユー……リ…?」
「今、言ってくれ。本当に、絶対死ぬなんざ、自分から言わねぇって…」
その声に震えを感じ取り、エステルは目頭が熱くなった。歪む視界の中で、
自分を抱くその力だけがはっきりと確認できる。その力が、
「本当に…ごめん…なさい…っ」
自分を必要としてくれているのだと、エステルはユーリの背中に、手を回した。

「んっ……」
「ぁ……?」
エステルとユーリの呻きが同時に聞こえた。
「何だ…?周り、真っ暗だな」
「ですね…そもそも私たち、どこにいるんですか?」
「判んねぇな。せめて周りの確認さえできればな…」
「あ…あの…ユーリ…?」
「なんだ?」
「もしかして…その…まだ、抱いてるんです…?」
「ん?…あぁ、そうみてぇだな。悪い悪い。今離すから」
「ちょっ…あ…あんまり動かないで下さいっ!」
「何でだ?俺ら何か変なもさもさした物の中にいるみたいだぜ?すぐ抜けられると思うけど」
「だ…だめですっ!…あ、ちょっ…駄目……!」
「さっきから何言ってんだ……っと」
―――――――――――――――バサリ
「何だ。ここじゃねぇかよ」
(…何なんです?)
と、奇妙にくぐもったエステルの声が聞こえた。
「うわ、すげぇ量だな」
と、ユーリはエステルを花びらの塊の中から引きずり出した。
「ぷはっ……わっ、すごい。私達、花びらのベッドで寝てたんですね」
両手を合わせて喜ぶエステルに、
「あのさ……」
「はい?」
「さっきは悪かった…カッとなっちまって…」
「あ…私も…ごめんなさい。本当に、今度こそ言いません。口が裂けても」
その言い草に、ユーリは少し噴き出した。
「ぷっ…」
「な…本気ですよ!?私は…」
「わーってるよ。俺も。それならいいんだ」
と言って、微笑む。
「でも、ありがとうございます。本当に、心配してくれてたんですね」
「ん?……あー、いや、リタがえらく寂しそうにしてたから同情しちまってな」
「ユーリ」
「ん…?…っ…」
ふわり、と花に包まれるような感触に、ユーリは目を白黒させた。
「素直じゃないですよ。本当に私、嬉しかったんです」
「あ……そう…」
ぎくしゃくと木偶人形のような動きで、ユーリもエステルを抱き返した。

そして数十秒。

「なぁ…いつまでこうしてればいいんだ?俺らは」
「そうですね…いつまでこうしてればいいんでしょう…」
「でも、なんだかなぁ…」
「ずっと……こうしていたい気分です…すごく、落ち着きます」
その発現で、ユーリの顔に火が灯った。
「ば…馬鹿。んなこと言ってないで、とっとと帰るぞ。皆待ってるだろうからな」
「ま…待ってください、ユーリっ!」
と、エステルは歩き出したユーリの腕を引っ張った。
「どうし……た……んっ…」
唇を重ねられたユーリは、ただ目を細め、エステルを抱いた。
口を離したエステルは、ユーリの手を引きながら歩いた。宿屋とは別の方向、
ハルルの樹のしなる根が入り組んだ所へ。
「もう、判ってるかもしれませんけど、私、ユーリのこと好きです…」
「俺も…同意見だな」
「もう…素直じゃないですっ。ちゃんと言ってくださいよ」
「ん?あぁ、その時に…な」
とユーリは自分たちがいつの間にか包まれていた桜の毛布を、その根の間に入れた。
「地面の上だと流石に嫌だろ。このベッド作ってくれた人に感謝しようぜ」
「そうですね。とても風情があって、素敵です」
二人は、そのベッドの上で、互いの姿をさらけ出した。

「んっ…ふ…ぁ…あん…」
唇を重ねながらも、ユーリはエステルの胸を探る手を休めなかった。
「ユ…ユーリ…っ…もう…そろそろ…んっ…」
「大丈夫だよ。心配すんな」
「そういう…っ…意味じゃ…ありません…私ばっかり…悪いですよ…ん」
抗議を上げるものの、キスをされる度に発言を中断せざるを得ない。
「ユー…リッ……いじわる…です…んっ!」
ユーリは胸を揉む力を強めた。そのまま泥の塊を崩すように、全体を揉みしだく。
「ふ…ん…っ!…あ……んぁ…!」
「色々とジュディに嫉妬してる割には、お前も悪いもんじゃねぇぜ」
「そ……そんな事…んあ…!」
「大丈夫、自信もちな」
とユーリは一旦手を休めた。
「は……ハァ…ユーリ…」
「どうした?」
「今度は、私が気持ち良くさせてあげますから…」
「なっ…無理しなくていいって」
「大丈夫です。ちゃんと、しますから…」

「これが…男性器なんですね…」
といきり立つそれを興味深げに眺め、エステルはそれを手で扱き始めた。
「あんま…じろじろ見るんじゃねぇよっ…」
「ユーリも私の胸見てたじゃないですかぁ…」
エステルはユーリを上目遣いで見上げ、再び視線をそれに戻した。
「そ…そうだけどよ…うっ…!」
苦悩の表情でされるがままのユーリは内心、
(本当にできるのか…?エステルって、お姫だろ…?)
「これを、続けてればいいんですよね…?
「まぁ…そうなんだけどよ…『いいんですよね』……ってどこで覚えやがった…っ!」
「ユーリ…?大丈夫です…?」
「大丈夫じゃねぇよっ…!そろそろ……!」
「大丈夫……じゃありませんっ…っ!」
「あ……?」
「しっ!」
エステルはユーリの口を片手でふさぐと、ユーリをそのまま押し倒した。
「なっ…どうした?」
「人がいますっ!喋らないでくだ…むぐ」
(お前の声のほうがでかいっての…)
「ムグムグ…(ごめんなさい…)」
二人は可能な限りベッドに体を埋めさせ、気配を殺す。その時、どこかで声が聞こえた。
「あれー?レットがなくなってるー。頑張って作ったのになー。まいっか。今度は何でレット作ろうかなー」
と奇妙に間延びした声を、二人はどこかで聞いた。
(この声…!)
(シシリーさんじゃないです?)
(やっぱりな…あぁなるほど。あいつなら作ってそうだな。ベッドとか)
(でも桜の花で作るって、ロマンチックです…)
(そのロマンチズムのかたまりを俺らが今使ってるけどな)
(後で返します?)
(いや…返す方が無理だろ。俺らの体重でぎりぎり原形留めてるしよ……てかもう普通に話していいだろ)
「そうですね…んっ」
起き上がろうと、エステルは体を起こす。

「っひゃあ!」
「なっ馬鹿っ…!んなでかい声出すなって」
「で…でも…」
「何だ…?なんかあったのか?」
と、ユーリは起き上がろうと、手を地面に付け、体を後ろに引いた。しかし、
「だ……駄目っ!…ふぁ…ああん!」
「…げっ…やべっ!」
体を引いたユーリの性器が、自然とエステルの中に入ってしまった。図ったかのように綺麗に。
「動くなよッ!今抜くから…」
「待って…下さいっ…!」
「は?」
「このまま…続けては駄目です…?」
「何言ってんだ。これ以上続けたら…」
「お願いしますっ!」
こういうエステルの度々見せる表情に、ユーリはお決まりに気圧されつつあった。
「危なくなったら…やめろよな…?」
「はい…それじゃぁ…動きますね…んっ…あ…あん…!」
騎乗位で体を上下に動かし始めたエステルを眺めながら、
(何で女にされてんだ…普通逆だろ俺…)
と思いながらも、何故かエステルの行動を否定できない。
「あん!あっ!ふっ…んっ!あ…ひぁっ…!あ!」
エステルはひたすら体を上下に動かし続け、喘いでいるが、不思議とその表情の苦悶は少ない。
(情けねぇ…こうなったら…っ)
ユーリは意を決すると、急に起き上がり、逆にエステルを押し倒した。
「ひぃあっ!な…何なんです…?」
「お前は流石にやりすぎだ。後は俺がやるから、な?」
「ま…まだ終わってません!私、まだ……っんっ…」
強制的に口付けで終止符をつけ、ユーリは体を前後に揺すり始めた。
「あっ!ふぁっ!だ…駄目っ!つ…強すぎますっ!んっ!ああ!」
「いや…我慢しろってのは無理だって…!」
「やぁ!…ん!ユ…ユーリィっ!わ…私…も…っ!駄目っ…!」
「俺のほうも…限界近いな…っ!どうするっ?そろそろやめるか…?」
「んあっ!だ…駄目です…っ!あん!さ…最後までっ!お願い…っ!」
「わーった…それじゃ、行くぞッ…!」
ユーリは最後とばかりに、腰の振りを早めた。
「あっ!ああんっ!!ひ!!ぅあっ!……ひゃあっ!!!」
「くっ…エステル……俺…っ!」
「そ…そのままっ…!ユ…ユーリっ!な…中に…っ!んああ!」
「エステルっ……!!」
「ひっ…んああああああ!」

そのまま、ユーリはエステルの上に倒れこんだ。

「良かったのか?あれで」
「え?……///えぇ…大丈夫だと思います」
「それにして、良く誰にも気付かれなかったな。あんだけ大声出しといて」
それを聞くとエステルが頬を膨らませた。
「ユーリが思いっきりするから危ないんです。もう少し優しくしても、と思いました」
誰のせいだよ…とユーリはぼやいた。
場所は宿屋。あの後、二人は何とか時間差で帰り着き、適当な理由を述べて戻ることが出来た。
ザウデへ行くための準備を済ませ、一行はバウルへ乗り込んだ。
その時、
「おーい」
と声が聞こえた。
「何かしらね…?」
ジュディスは首をかしげる。
「あ」
と声を発したのはエステルで、
「シシリーさんだ!」
と言ったのはカロルだった。
既に飛び上がったフィエルティア号の下で、シシリーが手を振って何か叫んでいる。
「―――――――――――――――!」
「何て言った?」
下を覗き込むリタが聞くと、
「あー」
と奇妙な声をレイヴンが発し、
「なんだっけか…ごちそうさまーだったような」
「あら、あなた彼の言葉がわかるの?すごいわ」
「いやね、ジュディスちゃん、あんま嬉しくないわ。知らぬ内に異次元語を覚えた自分に少し情けない…」
とレイヴンは肩を落とす。
「ご愁傷様、ね」
リタが笑った。

船室の端の手摺に寄りかかりながら、エステルとユーリは窓からそれを眺めていた。
「あ、ユーリ。私、まだ言って貰ってません」
と、昨夜の出来事をエステルが思い出し、少し怒った。
「覚えてやがった…まいいや」
とユーリは言うと、エステルに顔を向けて、
「俺も……その、好きだぜ。エステル」
「ありがとうございます、ユーリ」
外のメンバーに気付かれないように、二人は笑って、唇を一瞬重ねた。

後日談 チャット形式
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジュディス「ねぇユーリ…あら、エステルもいたの?」
ユーリ  「どうした?ジュディ」
ジュディス「さっきね、空に上がる前にシシリーさんを見かけたのよ」
レイヴン 「そうそう。そんで「ごちそうさまー」とか言ってたわよ。何これ?」
エステル  「そうなんです?…どういう意味でしょう…」
ジュディス「さあね?私にも判らないわ」

ユーリ  「知ってたのかよ…!エステル…確信犯じゃないよな…あの意味…」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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