総合トップ>SS一覧>SS No.6-091
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作品発表日 |
作品保管日 |
無題 |
232氏(26スレ目) |
アリス×デクス |
2008/06/30 |
2008/10/16 |
ほんのささやかな思い付きだった。
辺りをくるんでいたまばゆい白の光のベールが空気中に引いていく。
剣だこの出来ていたあの無骨な手ではなく、ほんのり桃色の小さなてのひら。
あのいかにも女の子の愛らしいふんわりとした洋服の袖。
「おお……!」
思わず感嘆の声を上げる。それさえも、あの甘いミルクキャンディのように可愛らしい声。
ぺたぺたと頬を触ってみると、以前の肌とは違い、
やはり柔らかですべすべしている明らかな少女のもの。
ほどよく膨らんだ白い胸の谷間が視界に入る。
思わず服の生地を引っ張って覗き込むと、
レース過多な服からは想像できないほどシンプルな白の下着が双丘を包みこんでいた。
しまった、と慌てて目を逸らす。
念のため近くの鏡に自らの姿を映してみる。寸分違わぬ最愛の少女の身体。
「ほ、本当にアリスちゃんの身体だ……!」
何度夢に見たかもう数え切れないその姿に、デクスは感動して涙すら浮かべた。
――まさかとは思ったが、女の、しかもアリスの姿にすらなれるなんて!
やはり物は試して見るものだ。デクスはソルムのコアの力の偉大さに感涙にむせぶ勢いだった。
手を組んでみると、鏡の中でアリスも手を組んだ。
笑顔を浮かべると、また鏡の中でアリスが微笑みを浮かべた。
どきどきしながら、こほんと咳払いを一つ。
「デクス君、だぁ〜いすきっ」
鏡に向かい、懇親の演技力を込めて言い放った。
アリスが満面の笑みで至上の愛の言葉を自分へ向けて言ってくれたのだ。
「し……しあわせだ……」
じーんと蕩けるような幸福に、今はいっそ神にさえ祈ろうという気分になる。
甘い声の残響が溶けて消えていくと、なぜか心にむなしい隙間風が吹き抜けていった。
次第に現実に引き戻されていき、はああああと深い溜息を吐き出す。
本当何やってんだ俺と自慰後のような感覚、いわゆる賢者モードに絶賛突入中。
(……あ)
ふと、思い出した。
(そういえば……。女の快感は男の100倍だって、誰かが言ってたような)
未知の身体に単純に興味が湧く。
けれども、アリスの身体を使ってそんな汚らわしい行為をやるわけには。
もし試したいのならば、適当な女にでも変身すればいい。
ああ! でも彼女のよがる姿をこの手で作ることが出来るのだ。
いやいや、やっぱりふしだらな行為で神聖な彼女を汚すわけにはいかない。
ああ、ああ、俺は一体どうすれば……!
(……す、少し! 少し触ってみるだけなら……バチは当たらないはずだよな。うん)
きっとそうだ。勇気は夢をかなえる魔法だ。
自分に言い聞かせると、ドロワーズに似たズボンの中に手を突っ込んでみる。
本来あるはずのものが無いことに違和感を覚えるが、構わず体毛一つ無いすべらかな部分をまさぐっていく。
男の性器とは違って沈み込むように柔らかだ。
(これが、アリスちゃんのあそこ……)
心臓が早鐘を打つ。元に戻れば、もう彼女とまともに顔をあわせられないかもしれない。
探るようにそこを撫で回していると、突起のようなものが指先に触れた。
「……んっ!」
ビリッと電撃のような快感が走った。普段のそれとは比べ物にならないほどの強い快感。
もっと。もっと欲しい。
再び指をそれに這わす。触れると溢れる快感を貪っていくうちに次第に呼吸音が荒く、大きくなっていく。
「はっ、っあ、ふあぁ……。すご……気持ちいぃ……」
声を殺しているのが苦しくなって、声を上げて快楽を貪る。
「んぁ、ふ、あっ……ああ、ん」
その声すらアリスのもので、彼女に嬌声を上げさせているのが自分のような気がした。
そう思うとたまらなく劣情が掻きたてられ、突き上げられる感情のままに声を出して喘ぐ。
いつしか脚をしどけなく開き、その快楽を生み出す突起を一心に刺激し続けていた。
物欲しげにひくついている内部から焦れるようにとろりと何かが溢れてくる。
淫らな蜜を垂らす秘所を細い指で割り開いて、中指を入れてみる。
ぬるりとしていて、暖かい。ただそれだけなのに、彼女を手に入れたような幻が淡く浮かんだ。
差し入れし、突起をもてあそぶうちに、頭に白っぽい靄が掛かってくる。
絶頂を頭や身体の奥底が告げていた。何も聞こえない。何も考えられない。
熱い、身体の奥で何かが沸騰しているようだ。
ただ、高みへと高みへと昇ろうとその行為を繰り返す。
「あっ、っ……ぁああぁっ!」
快感の波が身体中を痙攣させ、一際大きく甘い声を上げた。
それに重なって、がちゃ、と扉の開く音がした。
「……あんた、何してるのよ」
魔界の底から震えるような、されども可憐な声がした。
いつもならハーデスのおわす冥府に居たって振り向きたくなる声にも、今だけは振り向きたくはなかった。
肌にざわざわと嫌な予感が突き刺さる。
ぱし、ぱし、と鞭の先を掌に軽く打ち付ける音が背後で不吉にはじけている。
首が錆びついた機械になったようだった。おそるおそる、後ろを振り向いてみる。
「ア、アリスちゃん……」
――やはり、そこにはあの少女の姿があった。
アリスはつかつかとこちらへ歩んでくる。
顎を鞭の先で持ち上げられ、その琥珀色の瞳と視線を合わせざるをえなくなる。
「ねぇ、アリスちゃんの身体で何してたのかなぁ? デ・ク・ス?」
「それは、そ、そのぉ……」
デクスは頬がかぁっと熱くなるのを感じた。
その姿に変身して、なおかつ自慰をしていた所を最愛の少女に見られただなんて。
もう弁明の余地も無く、彼女の前に正座して頭を下げる。
「ご……ごめんなさい。でっ、出来心で……つい。は、はははは……」
苦し紛れに出した笑いも心成しか乾いていた。
「そっかぁ、出来心なんだぁ。だったら仕方ないかぁ、うふふふ」
にっこり、アリスは穢れを微塵ほども知らぬ天使のように微笑んだ。
安堵したのも束の間、すぐにその天使の仮面はボロボロと剥がれ落ちて、阿修羅の素顔が露になった。
「……なんて言うわけ無いでしょ!」
突如視界いっぱいになった彼女のブーツ。気がつくと床にじんじんと痛む顔をつけていた。
顔を蹴り飛ばされてうつぶせに転がったデクスに、残酷な声が毒蛇の真っ赤な舌のように耳朶をねぶった。
「お仕置きが必要ね」
問答無用でズボンを捲り上げると、掌で打ち鳴らしていた鞭で、今はマシュマロのように柔らかな尻を打った。
弾けた痛みにびくんと肩が跳ねる。
「あぅっ! あ、アリスちゃん、ごめんなさい!」
謝罪の声もかき消すような鋭い鞭の音が背で弾ける。
全く同じ顔の少女二人の繰り広げるSMという異常な光景に疑問を覚えないほど、彼女は怒りに我を忘れていた。
「アリスちゃんの身体でなんてことしてくれるのよ! このゴミ豚! 変態! ストーカー! 3K男! このっ、このぉっ!」
びしっ、ばしっ、びしぃっ、ばしんっ、と肌に打ち付ける音が一撃ごとに苛烈さを増していく。
その都度身体を震わせ、喉から悲鳴をほとばしらせる。涙が目に溜まった。
「あぁあっ! も、もう絶対しないって誓うから! ゆ、許してーっ!」
蹴りや鞭の容赦ない折檻の嵐。けれど、不思議とさっきよりも幸福だった。
変身なんかで彼女の身体を自由にするよりも、こちらのほうが余程幸せだと、デクスは頭の隅で感じていた。
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