総合トップSS一覧SS No.5-099
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
あて馬大あたり 646氏(22スレ目) ガイ×ナタリア 2006/07/28 2006/08/07

 運の悪さは折り紙付きといわれ続けた自分だが、果たしてこれは幸運か不運か。
 脳裏にはぐるぐるとそんな言葉が回転中だった。

「ガイ…目を閉じて居て下さいます?」
「あ、ああ…」
 白いワンピースの内側で息づく白い肌。染められた薄紅にうなじ。
 伏せ勝ちの眼差しは艶めいて美しく…
 しかし。世の男性諸子であれば極楽な風景も、自分にとってみては地獄の釜の
淵でのダンス。
 ドアの外には騎士達の足音、叫んで逃げ出したくとも、今此処で逃げ出せば恐
らく間違いなく、王女に不埒を働いた賊

として切り捨てられるのは自分である。
「ガイ」
 白い手が伸ばされ、上着の裾にかけられた。
 霞んでいく意識の中で、案外力強い腕に引っ張られ、スプリングの上に投げ出さ
れた所までは、正気が残っていた気が

する。

 後は。もう、目の眩むような混乱の中。
 そして、事の発端は僅か前にまき戻る。


「はぁっ?! お見合いを壊したい、ですか!?」
 間の抜けた声が出た口を、白い手にふさがれて、ガイことガイラルディア・ガラン
は目を白黒とさせる。
 此処はキムラスカはバチカル城。ナタリアの居室に友人として招かれたガイは、
神妙な顔をしたナタリアにとんでもない

告白をされていた。

 あの決戦から半年が過ぎ、世界には2人の英雄と引き換えた平和が戻りつつあ
った。
 しかし、それと引き換えにしたものは大きい。
 ナタリアの婚約者であった「ルーク」もその失われた者の一人である。
「いや、ずっと…アイツを待っていたいって言うのも判るけど、けどなぁ」
 ナタリアの表情が曇る。彼女はキムラスカの時期王位継承者だった。王族の血
を引かない彼女は、遠からず血縁の若

者から未来の夫を決めなくては為らない。
 王女である彼女にその覚悟が無いとは思わなかったが、買いかぶり過ぎだった
のだろうか。
 内心で僅かに穿った意見が顔を出した直後である。
 彼女の半ば実力行使な口付けに言葉の全てを奪われ、寝台へと引きずり込ま
れたのは。

 白い手が上着を剥ぎ取り、手際よくズボンを「引き裂いて」行く。
 ああラルゴ、あんたの娘は力強く逞しく育ってるよ。あんたに喰らった一撃は自
分が乙女になった見たいに重たかったけど、本物の乙女にそいつを喰らうなんて
俺の人生何処まで女に恵まれない?
 いやいや恵まれすぎてるのか!?
 ああ、ナタリアそんなトコ、大胆すぎるぜおい待ってくれ、待て待てそいつは流石
にどうよ、不味い不味い、不味いって…
「ギャ……っ! 〜〜っ!」
「ガイ、少し静かにして下さらない? 手元が狂いますわ」
 ズボンを引き抜き下着を裂いて、力任せに事を運ぼうしていた彼女に、小声で鋭
く静止され、思わずビクリとベッドで体が跳ねた。
 殺される。しかし、此処で引いては色々なものが終わってしまう。
「な…タリア。判った、逃げないから…手、緩めて。大丈夫だから」
 握りつぶされる恐怖をかみ殺しながら、震えるまだ自由な右手で背筋を撫でる。
彼女が泣くといつもしていたように、スカートの裾を持ち上げ、唇に触れさせて見る
と、驚いたように悲鳴を上げて馬乗り
になっていた体が寝台の上へと退いた。
「一体どうしたのか。質問しても答えては貰えないんだね」
 此処までの暴挙に及ぶからには理由があるだろう。しかし、何も言わないだま
し討ちにまでするという事は、答えはあらかじめ予測できた。
 コクンと頷き返されて、溜息が零れる。
 一体自分は何処までお人よしなんだと、ガイラルディアが脳裏で呟いた。しかし、
頬を染めて俯いている彼女は、ガイラルディアではなくガイ・セシルの幼馴染だ。
「今度は君が、目をつぶってくれる?」
 もう一度首が立てに揺れ、瞼が下りる。視界に晒される圧迫感が引いて、脂汗
と細かい震えがどうにか引いた事を確認すると、自身の下肢を見下ろしてパンと片
手で軽くはたいた。
 此処で尻込みするのは流石に男が廃るだろう。


「腰を上げて」
 夕日が揺れるカーテンの隙間から、オレンジの光りが寝台に差し込む。
 まだ明るい室内で、半裸の姿で絡みながら、ゆっくりと事を進めた。
 幸い、初めての行為ではない。
 今回ばかりは、荒療治として浮かれ宿に投げ込んでくれた、マルクト主従に感
謝する。
「っ…これくらい、で宜しいですの?」
 膝を立てて拳一つほど腰を浮かせた彼女の腰裏に、するりと膝を差し入れなが
ら、小声で、
「ありがとう」
 と囁いた。自分で同意して共に行為を進めているのだと、理解を促す為に静か
に辿る工程。
 下着を外した其処は少しも濡れては居なかった。好意を寄せての事ではない
のか。それとも、緊張故か?
 そんな事が思考をよぎるが、手を触れた途端に舞い上がる青い香気に意識が
奪われる。

 肉芽があるべき場所を探り、中指を沿わせて軽く上へと押さえると、ひたり、と
湿った部分が開き、肌色の通りに淡いそれがうっすらと開いて開帳された。
 ナタリアは動かない。
 ただ、目を閉じてじっとガイのする事にしたがっている。
「ガイ…?」
「ああ、いや。此の侭じゃ痛むからね、何かローションか…」
「構いませんわ」
 不意に目を開かれ、視線が絡む。
 ナタリアの目は奇妙な程静かだったが、声は僅かにかすれて居た。
「それとも…貴方はやはり、私を花飾りのようなものとして扱いますの?」
 そうではないと言いかけて止める。言葉は必要ないのだろう。頑固な所も相変
わらずだ。
 溜息が零れ、それと同時に意思とは別に立ち上がる先端から膨れた雫が白い
腿へと落ちた。
 ひたとした感触にナタリアの腰に力が入る。
 気が付かないふりをして、白い腰を抱えなおした。
「優しくしてやりたかったんだがなぁ…」
 腰を進めて、未だ何の準備もされて居ない其処へと押し付ける。白い喉が小さ
く反って、頬に笑みが浮いていた。
 それでも、最後の抵抗のように先端を押し付け、小突くように刺激を繰り返して
は、先走る粘液でぬめりを足す。
 細かい突きに、まだ固い門はじれるほどの遅さで一突きごと開く広さと深さを変
えていく。
「あ、あ…ぁっ、ひ!」
「ナタリア…」
 閉ざされた目じりから、コロンと一粒の涙が頬を転げた瞬間、グチ、と濃い泡が
はぜるような音と共に、先端が固い口を突き抜ける。
 ブルンと白い下腹が、感電したように痙攣した直後、パタリとシーツが何かに濡
れた。

 大柄な体に似合わず、初めて開かれた其処は浅く酷く狭かった。
 突きこむと奥のしこりに直ぐ突き当たり、その度体が震えて跳ねる。
 開ききった粘膜が、腰を付きこむ度捲れ上がり茎に絡んだ。
 まるで獣のように荒い息を吐きながら、彼の肉を受け入れている彼女には今や、
高貴な気配も無く只抱かれる女と言うだけの様子である。
「イッ…た、ぃ…」
 次第に早まる振動に悲鳴を上げかけながらも首筋に掛かる手は離れない。
「ナタリア」
 内股が引きつるような覚えのある感覚に、此方も掠れた声が出た。引き抜こうと
腰を引きかけると、ガシリと細いはずの足が腰に絡んで引き寄せる。
 しくったと思った次の瞬間には、溶けはぜる感覚が熱く胎内へとしみて行く。
 ナタリアも同時に達したのだろう。腰を押し付け仰け反りながら、鮎が跳ねるよう
にビクビクと寝台の上で全身を跳ねさせ、飲み込んだ雫を絞るように、下腹を震わせた。
 薔薇色に上気した頬が濡れるのを、拭ったガイの手はこのときだけは震えなか
った。


「それで。結局貴方は当て馬に使われた、と言う事ですか」
 一夜の情事は口裏を合わせていたらしい女官らに庇われ通して何とかばれず、
ナタリアと彼は再びマルクトとキムラスカへと分かたれた。
 一体どんな算段でナタリアが自分に迫ったのかはわからない侭。しかし、後に
発表されたキムラスカからの通達にガイは度肝を抜かれる事になる。

「当て馬じゃ無い! いや、当て馬だったらいくら良かった事かっ!」
 新聞の見出しには、昨今流行の週刊誌的なノリで、ナタリア王女の妊娠と出産
についての記事があった。父親は伏せられているが、時期からして自分である事
はほぼ疑いが無い。
「殺される…」
 呻いたガイにジェイドの意地の良くない笑みが降った。
「殺しに戻ってくると?」
「少なくとも、ナタリアはそう信じてるんだよ。いや、来るわきゃ無いんだが…なん
でだろうな、今背筋がすっごく寒くて仕方が無いっていうか」

 彼女は別れ際、彼に礼と侘びを言った。
 つまりはそういう事なのだろう。
 傷物の上母親になった、彼女の結婚問題は予定を越えて益々と難航するのに
違いない。その間伸びた猶予をもってして、彼女は只管にアイツを待つのだ。
 溜息が零れた。
「おや。幸せが逃げてしまいますよ?」
「良いんだよ。俺の幸せはどっち道、遠いお空の向こう側だ」
「おやおや。若い男が腐った事を。殴り合いをしてもモノにするとどうして言えない
んでしょうねぇ」


「ほっとけ!」
 鼻水交じりの一声は、情けなくも案外大きくマルクト宮殿に響き渡った。


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