総合トップSS一覧SS No.5-096
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
ロニナナ連作2 540氏(22スレ目) エロ無し 2006/07/24 2006/08/07

目の前が紅く染まる。
まるで破瓜の血のように。

白い衣服が風に翻り、溜まっていた洗濯物を吊し終えたころにロニが来た。
「わっ、ロニ兄ちゃんだ!」
「おう、ルー、元気にしてたか?相変わらずちっさいなあ」
「うるさーい!」
さっそくルーがじゃれついているのを見ながら、ナナリーは玄関に向かう。
「いらっしゃい。今日休みだったの?」
「ああ、ナナリーも元気そうだな」
そう言ってにいと笑いながら、ロニはナナリーの髪をくしゃくしゃと撫でた。
「ちょっ、さっき結んだばっかりなのにバラバラになるよ!
もう、お茶いれようと思ってたところだから、そこに座ってなよ」
そんなナナリーの態度にロニは苦笑しながら、ルーを促してテーブルについた。
「いやあ、お前はいつ来てもかわいげってものがないよな。
なあ、ルー、お前は姉さんの凶暴なところが似なくて良かったな」
「ロニっ!」
いつも通りのやりとりを続けながらお茶を飲み終えると、ロニは立ち上がった。
「よーし、ルー。今日は何する?」
「えーっと、僕ねえ……」
そう言いながら近寄ってきたルーを、ロニはひょいと担ぎ上げて肩車した。
その拍子、丈の短い上着がふわりとめくれて、まだ椅子に座っていたナナリーの視線に、
ロニの背中の下の方にある爪痕が不意に飛び込んだ。
魔物によるものでは決してない、人の、おそらく女の爪によるものが。
「ルー、お前、この前より重くなってないか?」
「そうだよ。僕はいつか、ロニ兄ちゃんより大きくなるんだ」
頭にぐっと血が上る。
耳の後ろがどくどくと脈打って、二人の会話はナナリーの耳には届かない。
呼吸の仕方を忘れてしまったかのように息苦しく、視界は一面真っ赤だった。
「……っあ」
「どうした、ナナリー?」
息苦しさから出た声にロニが振り向いた。
今の自分の表情を見られたくなくて、ナナリーは立ち上がり、戸口へと向かう。
その手は、手のひらに爪が喰い込むほど、ぐっと握り締められていた。
声が震えないように何度か息を深く吐き、呼吸が整うのを待った。
「ルーはロニと一緒に、薪割りを頼むよ。隣の家の兄貴のほうが風邪で倒れてるから、そっちの方もお願い」
「えー、姉ちゃん、人使い荒いよ」
「あたしは修理を頼んでた弓の引き取りに行くから」
そう言ってまだ不満げな声にも振り向かず、ナナリーは家を出た。


走って辿り着いたのは、町はずれにある倉庫だった。
人気のないここは、広くも狭くもなく湿った空気がこもり、
家具になる前の木材や、家を造る時に余った石材が無雑作に積み上げられている。
ナナリーは辛いことや泣きたいことがあった時には、決まってここに来た。
家の中ではルーがいて、幼い弟を心配させるようなことはできない。
乾いた地面をサンダルで走ってきたせいで、足の裏が燃えるように熱い。
悔しくて悔しくて、ぼろぼろと涙が流れた。
「馬鹿ロニ……、もう、やだぁ…」
しゃくり上げるのを抑えるために、ぎりりと歯を食いしばった。
ロニはきっと、自分が何も知らないと思ってるんだ。
知らないはずなんてない。ほんとは、ずっと前から気付いてるのに。
ここは子供の多い町だからこそ、そう言った知識は幼い頃から教え込まれる。
大人による無防備な子供への蹂躙から、若さ故の不用意な過ちから、自分達を守るために必要なことだ。
だから、あの爪痕の意味なんか分かりきってる。
そういうことが、ずっと前から続いていることも。
今の自分が、そういった意味で、ロニの相手にならないことも。
ナナリーは服の胸の辺りを、ぎゅっと握り締めた。
ようやく膨らみかけた胸は、服一枚着てしまえば、外からはほとんど分からない。
ここ数年で髪は背中に届くようになり、背も随分伸びたが、
体つきは同年代の女の子と比べると少年のようで、生理もまだ来ない。
友達の体が丸みを帯び、柔らかくなっていくのが羨ましかった。
気持ちばかり焦っても、体はまるで付いてこない。
どうして14も離れてしまったんだろう。
自分が16になる頃には、ロニはもう30だ。
『いくら側にいることが出来ても、いつ離れてしまうか分からない』
心の奥底から来る、体に染みついたような、誰のとも知れないその思いが、いつもナナリーをかき立てる。
ごわごわの手袋を嵌めた手で髪の毛を掻き回されるのも、冗談交じりに抱き上げられるのも、本当は嫌いじゃない。
けれど、それだけでは駄目なのだ。
もっと、ずっと、しっかり彼を結びつけるには。

走ってきたばかりで息も鼓動も荒く、体が熱い。
体の一点が、ふつりとひどく疼いた。
ナナリーはスパッツと下着を膝の辺りまでずり下ろして、しゃがみ込んだ。
少し湿り気を帯びて充血したそこが剥き出しになり、ひんやりとした空気が当たる。
いまだ何にも守られず滑らかな場所へ、ナナリーはそろりと手を伸ばした。
触れた瞬間、ぴくんと肩が跳ねる。
溜め息のような声を零しながら、ナナリーはさらに指を進め、ぬめる奥へと指を潜り込ませる。
いくつか年上の少女に教わった行為は、いつしか彼を思いながらするようになっていた。
中でもどかしげに動いているのは自分の指で、彼の指ではないのに、
ロニ、ロニ、とうわごとのように掠れ声で何度も呼んだ。
熱い胎内は自分の細めの指でもきつくて狭くて、
彼の浅黒くてしっかりした指も、ましてそれ以上のものなんて受け容れられるはずはないのに。
溢れ出た雫が手首をつたって、ぼたりと床に染み込んでいく。
知らず腰が揺れて指が深く埋め込まれ、その度に押し殺しきれない声が漏れる。
滴る雫の量が増え、どんどん床の染みの大きさが広がっていく。
泣きそうな声で彼を求めながら、与えられない体は、絶えきれずに上り詰めてしまう。
最後の喘ぎは言葉にもならず、ただそのくぐもって切れそうな音だけが、湿った空気に響く。
力の抜けた身体を支えきれずに、ナナリーは床に手を付いた。
引きつるような啜り泣きが、堪らずに漏れる。
こうやって昨晩ロニと他の女が交わっていた事が、どうしようもなく悲しかった。


家に帰ると誰もおらず、汗ばんだ肌を流すため、ナナリーは軽く水浴びをした。
着替えて出てくると、ルーは見当たらず、ロニだけがソファで眠っていた。
夕暮れの乾いた風が、さらりと肌を撫でて心地よい。
ナナリーはソファの前にしゃがみ、暢気に寝こけているロニの顔を眺めてみた。
「ロニの鈍感……」
薪を用意した後、いつものように近所の子供たちの相手をしてくれたのだろう、
気持ちよさそうに寝ていて、耳元に呟いても、起きる気配は全くない。
ほっぺをつまんで引っ張ってみると、ロニはぼんやりと目を開けた。
「…ったあ、ナナリー?帰ってたのか」
「ルーは?」
「薪届けにとなり二位ったら、お礼に夕飯ごちそうしてくれるってさ」
「そう」
返事をし終えても、ナナリーはそのままロニを黙って見つめた。
金色の瞳は起き抜けで焦点が定まらないまま、自分を見ている。
その金色があいまいで、また涙がにじみそうになる。
幼く拙いやきもちだけで済んでいたなら、どんなによかったろう。
「ナナリー?」
心配そうな顔の側に手を付いて、そっと唇を近づける。
「ぅあ、っん?」
低い声が自分の口を通って伝わってきた。
薄く目を開けると、ロニは驚いた目をして、はっきりこちらを見つめていた。
思い知ればいいんだ。
初めては入り込んだ他人の口内は生暖かく、舌は厚くて大きかった。
重力によって落ちる唾液が口の中から零れて、彼の輪郭に沿って流れ落ちていくのを、指でなぞる。
ロニの大きな手が、優しく頭を撫でた。


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