総合トップ>SS一覧>SS No.5-070
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チェンジしちゃった |
鳥氏 |
ゼロス×リフィル |
2006/03/25 |
2006/03/25 |
それは、乙女の絹を裂くような悲鳴で始まった。
ある朝のことだ。突然、悲鳴が宿中に響き渡った。悲鳴に驚いた、リフィルとしいなはその声のほうへと
急ぎ駆けつける。少し遅れてプレセアとコレットが後を追った。
「どうしたの?!」
「何があったんだい!」
二人が、悲鳴が聞こえた部屋の襖を開けると――そこには――驚く光景が広がっていた。
「ね…姉さん?! し、しいな?!」
その部屋に泊まっていたリフィルの弟、ジーニアスが姉としいなの姿を見て驚いて叫ぶ。
「ジーニアス? あなた、その声…あの悲鳴はあなただったの? 一体、何があったの? 話なさい」
「…何って…アレ見てよっ! みんなの姿がっ!! ぼ、僕まで……。…えっ?…姉さん…その姿……」
リフィルに何があったのか問い詰められ、答えかけたがジーニアスはそれどころではなかった。目の前の
姉の姿に腰を抜かしてへたり込んでしまう。
「私の姿がどうかして?」
弟の言葉を不信に思ったリフィルとはドアの脇にあった鏡を見た。そして、驚いた。
「な、なんなの? これは!」
「あっ! あたし…ここに映ってるのは、あたし…なのかい?」
リフィルは“男”になっていたのだ。そして“男”になっていたのはリフィルだけじゃなかった。しいなも
“男”になっていたのだ。二人は顔を見合わせ互いの変わり果てた姿を見つめた。
「なにかあったんですか?」
「せんせー。しいなー。どうしたんですか〜?」
しいなとリフィルが自分達の姿に呆然としていると、プレセアとコレットが漸くやってきた。
「あれー? せんせーとしいな男の人ぉ? どしたんですか〜?」
コレットが天然炸裂なことを言う。それを聞いたプレセアが少しも驚いた様子を見せず、実に落ち着いた
口調で淡々と言った。
「コレットさん。貴女も“男”の人になってます。…いいえ。貴女だけじゃない。私も…です。
…それに…ジーニアスは“女”の子になってます。……他の人達も“女”の人になってますね…
どういうことでしょう?」
プレセアの言葉にコレットは鏡を見る。
「あー。ホントだ〜。“男”の人になってる〜」
自分の頬を撫でたり、軽く叩いたりしながらコレットは言う。が、しかし、少しも動じた様子はなかった。
「あれー? ロイドが“女”の人になってるぅ。ほら、ロイドも鏡を見てみて〜」
コレットは自分の姿を飽きるほど見回した後、半ば寝ぼけているロイドの肩を揺する。
「ああ? なんだよ? コレット」
眠い目を擦りながらロイドはコレットに言われた通りに鏡を見る。鏡を見てる内に寝呆けた頭の中が
次第にはっきりとしてくる。頭の中がはっきりとしてくると、ロイドは腰を抜かした。
「……? …?! …!! なんだ? これは?? お、俺なのか? 俺が、“女”になってるーっ??」
ロイドの叫びと同時に、同室だったゼロス、リーガル、クラトスが一斉に鏡を見た。
「でっひゃーっ! これ、どういうことよ? 俺様“女”になっちまってるぜ。…しかし“女”になっても
俺様はやっぱ美人だな」
ゼロスは“女”となったことに初めは驚いたが、中々の美女っぷりに満足したようだ。
「これは一体、我々の身に何が起こったというのだ?! 何故、私が“女”になってしまったのか…
その原因は一体……」
リーガルも驚いてはいたが、何故、この様なことになってしまったのか? と原因を追究し始めた。
「…なんということだ。私までもが“女”になってしまったとは…」
自分の身体が“女”になってしまって一番ダメージを受けたのはクラトスだった。
(……ロイドにだけはこのような姿は見られたくは無かった……父親のこんな姿を見たらどう思うのか…)
クラトスは一人、心の中で呟きながらこれでもかと言うほど落ち込んだ。
男性諸氏が皆一様に自分の姿に衝撃を受けていると、リーガルの「何故、このようなことになったのか。
その原因とは何か?」と言う言葉を受けてリフィルがあることに気が付いた。
「もしかして…夕べのせいではなくて? 」
「夕べ? 夕べといえば…なりきりの世界からの土産で酒宴を開いたな。そのせいか!」
リフィルの問いに、クラトスは前日の酒宴の席で食した物のせいなのではと疑った。
「ええ。それしか原因は考えられないわ。後は…ゼロス…かしらね?」
クラトスの答えに頷きながらリフィルはゼロスを見やる。
「えーっ? 俺様ー? 俺様が何したって言うのよ」
ゼロスは、自分のせいと言われたが全く原因に思い辺りが無く、逆に原因はお前だと言われたことに口を
尖らせた。そこに話を聞いていたリーガルが夕べの記憶を手繰り寄せ、ゼロスが原因と決定付ける事を
思い出した。
「そう言えば、神子は夕べ、自分がなりきりしになったら女体化したいと言っていたな。それが原因で
我々は、このような姿になったのではないか?」
「それじゃ、俺たちが“女”になっちまったのはゼロスが原因だって言うのか?」
腰を抜かしてへたり込んでいたロイドは、コレットに支えられながらヨロヨロと立ち上がり、ゼロスの
方を見て言った。
「ちょーっとー。ロイドく〜ん。お前まで俺様を疑うわけ?」
ゼロスが少し傷ついた顔で言うと、それに答えたのはロイドではなくしいなだった。
「疑われてもしかたないだろ? あんたは確かに自分がなりきりしになったら“女”になりたいって
言ったんだから。あんたのとばっちりでこっちは“男”になっちまったんだよ! 責任取っておくれ!!」
しいなはゼロスが夕べ言ったことを思い出し、噛み付くように怒鳴りつけた。ゼロスは、しいなにまで
責められ、周囲に助けを求めようと見回したが、皆ゼロスを疑いの眼差しで見詰めていて、助け舟を出して
くれそうな者は居そうも無かった。
皆から冷たい視線を送られ、居心地の悪さを感じていたゼロスであったが、忘れていた大事なことを
思い出した。自分達の性別が入れ替わってしまった原因を作ったもう一人の存在を。
「あのさー。みんな俺様を疑うけど、リフィル様だって言ったんだぜ? 自分がなりきりしで“男”に
なったら男体を研究してみたいってさぁ。探究心が擽られるって言ったよな? リフィル様〜」
必死で思い出したもう一つの原因と思しきことを、ゼロスは言う。
「そうね。そんなことを言ったわね。…確か…言った…と思うわ」
ゼロスに言われてみて、リフィルは夕べ自分が言ったことを思い出した。
どうやら、原因は夕べの酒宴の席にあることが判明した。では、夕べ、酒宴の席で何があったのか?
それは、こういうことであった。
―件の酒宴の席でのこと―
なりきりの世界での目的を果たして、彼の世界から戻ってきたシンフォニア世界の御一行は、慰労会を
開くことにした。見知らぬ世界での冒険での疲れを癒す為にテセアラ温泉へと向かった。
彼らは温泉に浸かり心身ともに疲れを癒す。そして、湯上りの恒例と言ったら酒宴と決まっている。
「さあって、んじゃま恒例の宴会といきますか!」
「おおーっ!」
ゼロスの音頭で宴会は始まった。酒席に並ぶつまみや飲み物は、なりきりの世界から戻るときにフリオと
キャロが持たせてくれた向こうの世界の珍味や高級食材、上等の酒類、清涼飲料水などであった。
それらを飲み食いしながら、彼らは彼の世界での冒険譚を熱く、時にジョーク交じりに楽しく語り合った。
酒が入り、時間が経つにつれて盛り上がる宴会。皆、酔が回り無遠慮なほどに打ち溶け合って、自分の
活躍を自慢げに話し、そこに突込みが入り笑いの絶えない時間を過ごしていたが、ふいにそれが途切れ場が
静かになった。
と、その時だ。突然、ゼロスが言い出した。
「なぁなぁ。ちょーっと思ったんだけどー。俺様なりきりしになったら、ぜーったいに女になっちゃうね」
「はぁ?! 何言ってるんだい! …まさか、あんた善からぬことを考えてるんじゃないだろうねっ!!」
ゼロスの言葉に、素早く反応するしいな。流石にゼロスのことを良く知っている。ゼロスはしいなの予想
通りのことを考えていたのだ。
「善からぬってさー、しいなちゃーん。これも知的好奇心よ? 俺様、女体がどうなってるのか、すごーく
すごーく気になってたんだよねぇ。でひゃひゃひゃっ」
「やっぱり…そんなこったろうと思ったよ…」
しいなは想像通りのゼロスの思惑に、呆れ果て溜め息を吐きながら言う。誰もが、また神子の悪い病気が
始まったと思って擁護するものはいないと思われた。が、珍しく、有り得ない人物が擁護した。
「そうね。私も少し気になるわね。なりきりしになれるなら私は“男”になって男体を隅々まで調べて
見ようかしら。自分には無い物には探究心が注がれるもの」
「だろー? だろー? やーっぱ、リフィル様は話がわかるねぇ。でっひゃひゃひゃっ。どうよ? お前ら。
リフィル様も同じ事をお考えだぜー?」
リフィルが賛同してくれたことで、ゼロスの気は大きくなった。高笑いをしながら、ゼロスは勝ち誇った
ように、仲間達に言う。仲間達は、リフィルまでがゼロスと同じようなことを考えていたことに多少の
ショックを受けたが、皆、酒が入っていたせいもあって、そのまま軽く受け流してしまった。
唯一、酒を飲んでいなかったプレセアとジーニアスも場の雰囲気に飲まれて、他の仲間達と同様に酒の上
でのことと、本気にはしていなかった。
まさか、翌日になってとんでもない事になるとは思いも寄らずに……。
そう、原因はなりきりの世界の飲食物を口にし、なりきりしになりたいと言ったことが原因だった。彼らが
口にした、珍味のなかに「なりきりしの実」が混じっていたのだ。それを食した上で「なりきりしに
なりたい」と口走り、ゼロスが“女”にリフィルが“男”になりたいと言った為に、現在のようなことに
なってしまった。
「こうなったら仕方ないわね。折角だから“男”の身体について色々調べさせてもらうわ。よくって?」
リフィルは、今更どうしようにも仕方がないと“女”が“男”になる機会などこれが最初で最後だろうと
思い、見知らぬ性について調べようと決めた。
「とーぜん、俺様も“女”について調べさせてもらうよ〜ん」
元からそのつもりだったゼロスは、早速、衣服を脱ぎだし膨らんだ胸を揉み始めた。
「…っ? …なんだかくすぐったいな。女はみんなこうなのか? 俺様が揉んでやると、気持ち良さそうに
嬌声を上げるんだが…そんな感じがしないな」
自分が女性と情を重ねるときにするようにゼロスは乳房を揉み、乳首を摘んで見たが思ったような快感は
得られなかった。
「それはそうでしょう。乳房は開発されないと快感は感じないものよ。…いいえ。性感帯は開発されてこそ
初めて快感を得られるもの。開発されれば身体中の何処だって性感帯になってよ?」
リフィルは、ゼロスに女性がいかにしてエクスタスィーを感じるか熱く説明する。それを聞きながらゼロス
は何処が感じやすいのか身体中を撫で回す。
「なるほどなぁ。女体は奥が深いね。リフィル様も男体に興味があったんだろ? 俺様が一人エッチの仕方を
教えてやるよ」
ゼロスは、衣服が肌蹴たままの格好で、リフィルの衣服を脱がせる。そして顕になった股間のモノを自分の
手で触れるようにリフィルに言う。
「こ、こうかしら? な、なんだか…思ったより柔らかいのね。変な感じがするわ」
戸惑いながらリフィルは股間のモノを手に取り、軽く握ったり擦ったりする。すると徐々にそのモノの硬度
が増し、角度も上向きになり始めた。
「おっ! リフィル様〜。中々良いモノ持ってますねー。それを上下に扱いてぇ…」
と、そこまでゼロスが言った時だった。今まで唖然として二人を見ていた他の仲間たちが一斉に我に返り、
ある者は赤面し、ある者は顔を覆う。そんな中一人の男の怒りが頂点に達した。
「いい加減に止めないか! 二人とも!! 子供の前で何をするつもりなのだ? これ以上は
教育上良くないだろう! どうしてもというなら別室でやるのだな」
エスカレートするゼロスとリフィルに唯一、人の子の親であるクラトスが激怒して怒鳴りつけた。クラトス
に怒鳴りつけられて周囲を見渡し、急に恥ずかしくなりゼロスとリフィルは慌てて衣服を整える。
ゼロスとリフィルの怪しい女体&男体探索が終ると、再び性別が変わってしまった現実を突きつけられた。
「もう…もどれないのかな?」
コレットがポソリと言う。
「私たちはどうなってしまうのでしょう?」
それに続いてプレセアが言った。
「……そんな…ことはないだろ…」
ロイドが希望を持とうと言ったが、元に戻れる保障は何処にも無かった。
「兎に角、何か方法があるはずだ。なりきりの世界の飲食物を食したことに原因があるのなら、もう一度
試してみたらどうだろうか?」
「それが、良かろう」
リーガルの提案にクラトスが頷き、他の者達も皆、取り敢えず思いつく限りの方法を試してみることにした。
そして、その日は過ぎてゆく。
朝日が昇り、爽やかな朝の目覚めの時が来た。
朝の目覚めは少年の叫び声から始まる。
「うっ……うわーっ!!!」
ジーニアスの叫び声で、夕べ、再び酒宴を開いて元の身体に戻るれるまで酒を飲みまくって潰れていた
仲間達が目を覚ます。夕べは大人も子供も酒を飲みまくって、そのまま一つの部屋で酔い潰れてしまっていた。
「どうしたの? ジーニアス」
「ね、姉さん! み、見てよ! ほら!!」
「えっ? まぁ!!」
一番最初に目を覚ましたのはリフィルだった。目を覚ましたリフィルにジーニアスは嬉しそうに叫ぶ。ジー
ニアスのほうを見てリフィルは驚きと喜びの声を上げる。
リフィルが驚いていると、それに続いて、皆、二日酔いで頭痛のする頭を抱えながらのろのろと起き出す。
「あれ〜? みんな、身体が元に戻ってるよー」
コレットの言葉で全員、自分の身体を確かめる。
「ほ、本当だ! よ、良かったぁ…」
「元に戻ってます」
ロイドとプレセアも自分の身体を見てほっと胸を撫で下ろした。
「うむ。元に戻っているな」
「ああ。やはり、夕べ色々試してみたのは正解だったようだな」
リーガルとクラトスは落ち着いた様子で頷く。
「本当に良かったよ…元に戻れなかったらどうしようかと思ったよ」
しいなも心底、元の身体に戻れて良かったとほっとした。
「…ちょっぴり残念な気もするけど……俺様が女になったら世のハニ〜達が集団身投げしちまうからな。
元に戻れて良かったぜ」
相変わらず飄々とした風でゼロスは言うが、仲間内で一番元に戻れたことに喜びを感じていた。
「異世界の飲食物を口にするときは、これからは気をつけなくてわね」
リフィルが、今回の事について、これからは異世界の物を口にするときは慎重にならなければと言うと他の
皆も皆頷いた。
目的を達成したことで油断したせいだったのか、たまたま彼らに素質があったからなのか、誰かの陰謀
だったのか…「なりきりしの実」がフリオとキャロが持たせてくれた土産に混ざっていた事が今回の事件の
顛末であった。
しかし、異性になりたいと言った二人以外の者達も性別が入れ替わってしまった理由は誰にも解らない。
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