総合トップ>SS一覧>SS No.5-069
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幻の口づけ |
156氏(21スレ目) |
アニス×シンク |
2006/03/21 |
2006/03/22 |
「音素乖離が進行しています。長くもって30分……どどめは必要ないでしょう」
死霊使いの一言で、彼は放置された。
白い大理石の床に転がっている自身が酷く惨めだった。
確かに乖離は進んでいるのかもしれないが、とどめを刺さないとは理解し難い。
何らかの方法で回復し、再び邪魔をしないとも限らないのに……
実際、彼は動けない身だが、自動的にHPを小回復する装備をしている。
そのおかげで音素乖離しつつも傷は癒されていくという矛盾した現象に見舞われているが、あと数分もすれば歩けるようになるだろう。
奴らを追いかけるか――そのまま朽ちるか――考え、自嘲気味に笑った。
当然、邪魔をしに行くに決まってるではないか。
間に合わないかもしれない。奴らに追い付く前に消えるだろう。
だが、全力で戦い散っていった同志達に無様な死に様を見せたくはない――
シンクは力を振り絞って半身を起こし、近くの壁に身を寄せた。
瞳を閉じて体力の回復を待つ――つもりが、思わぬ横槍が入った。
何者かが砂利を踏む音に瞼を上げれば、一人の少女が眼前に立っていた。
いつも、自分が嘲笑っていた奴だ。
黒に近い茶色の髪を重たそうに二つにまとめ、不細工なぬいぐるみを背負った導師守護役。
七番目を好いていたはずだが、ロクでもない両親の命を救う代価とやらに、あっさり引き渡した最低な女。
自分を含めた6人のレプリカ達の命が支え、作り上げたも同然の七番目を――この女は騙されるだけしか能がないような屑と交換したのだ。
許しがたい――シンクは冷ややかに少女を見上げて言った。
「アニス……何の用?」
「……シンクが、悪いんだから……」
アニスは少し息を呑んでから、ゆっくりとシンクの傍に歩み寄った。
「だったら何? 謝って欲しいわけ?」
「……謝ってなんかいらない。謝ったって許さない……」
この時のアニスは明らかに様子がおかしかった。心なしか、顔が紅潮しているように見える。声も微かに震えていた。
「ボクを殺しに戻ってきた……ってわけじゃなさそうだね――っ!?」
まさか助けに来たとか?と言いかけてシンクは絶句した。アニスが自分の足をまたぎ、そのまま馬乗りにのしかかってきたのだ。
「シンクがっ……悪いんだから……」
先ほどと同じ台詞を吐き、シンクの破れた服から覗く素肌にぴたりと左手を添えて、顔をうずめる。
「――!?」
そして、右手でズボン越しに中心を撫で始めたのだ。シンクはびくりと身を竦めた。
感触に、ではなく、アニスの行動に驚いたのだ。
「お前……何を……!?」
アニスは答えない。手も止めない。表情から真意を読み取ろうにも、ぴったりとシンクの胸に頬を寄せていて見ることが出来ない。
「やめろ……!」
シンクはアニスを振り払おうとしたが、弱った今の力では無理だった。
こうしている間にもアニスの手は動き続けて熱い衝動を呼び起こし、更には――ぺろりと胸を舐めあげられた。
「……っ!」
シンクが息を呑んで歯を食いしばる気配に、アニスは何故かホッとしたように息を吐き、肌けた胸を撫で回し、舌を這わせていく。
唾液をたっぷり含んだ舌が胸の突起に触れると、シンクは再び身を竦みあがらせた。
「うぅっ……」
自分の意思に反して次第に身体が熱を帯び、呻く声が漏れる――不意に中心をなぞっていたアニスの手が止まった。
カチャリと金属の擦れる音がして――シンクの心臓が跳ね上がった。
アニスがベルトを外したのだ。そのことを理解した時は既に遅く、彼女の小さな手は滑り込んでおり、やんわりと握り締められていた。
「っ……やめ……!」
外へと取り出されるそれをアニスがぎゅっと握り締める。僅かに芯ができているが、まだ柔らかく勃つほどではない。
アニスは一息ついてから、身を屈め、それをゆっくり舐め始めた。
若いそれが否応なしに反応する。アニスが舌で突起を舐める度に熱い衝撃がシンクの身体を仰け反らせ、何度も壁に背中が擦れる音がした。
「お前……こんな……んぅ…っ……真似を……ふぁ……」
アニスは、まるでアイスクリームを舐めているかのように悪びれた様子もなく、
舌でぺろ、ぺろ、と小刻みに舐めあげ、右手で握ったそれを上下に擦り、左手の親指の腹で筋をなぞっていく――
他と比べようがないが、上手、なのかもしれない。何処でこのような淫乱な技を覚えたのか――
「くぅっ……!」
何度も理性が飛びそうになった。アニスがすっかり大きくなったそれを口に咥えこんでからは、思考がまともに働かなかった。
ぬるりと生暖かい口内の感触に包まれ、ちゅっちゅっと吸われる。
舌で転がされるように舐められたかと思うと、唇ではむはむと歯を立てずに噛まれる――その度にシンクは身をよじり、喘いだ。
限界が近い――だが、シンクの自制心が僅かに勝っていた。アニスに負けるなど絶対に嫌だ――!
アニスは焦っていた。
シンクのものは熱を帯びてかなり膨張している――にも関わらず、一向にイク気配がしない。
このままだと自分の方が先に力尽きるか、シンクが消えてしまう――
せっかく仲間たちが気を利かせて、とどめを刺さないでいてくれたのに……二人で居る時間をくれたのに……
モースがあっさり果てた技でもシンクは落ちない。
さすがだと、それはそれで嬉しいのだが……もう少し素直になってくれてもイイのに、と思う。
それとも、自分はイクに値しない存在なのだろうか……
だとしたら、女としてのプライドが許さない。そりゃあティア……ナタリアに比べれば遥かに劣るが……
イカないまま死なせてたまるか……!と、アニスはシンクのものを口から出すと、その根元をきつく締め上げた。
「な……!? んんっ……くぁっ……ぁ……あぁっ……!!」
それまでの柔軟な動きとは打って変わって、アニスは激しく攻め立てた。
素早く手を上下に動かし、乱暴に先を吸うと、今度は歯を立ててチクリとした刺激を与える。
「やめ……やめ……ろぉ……! ああぁ……あぁぁ……!!」
アニスの荒技にシンクの呼吸が乱れに乱れた。根元を締め上げられてはたまったものではない。
下からどんどん突き上げてくる熱い衝動が行き場を失い、全身に逆流する――今まで感じたこともない凄まじい感覚に意識が朦朧としてくる。
ひねくれ者の彼らしからぬ乱れた喘ぎ声に気を良くしたアニスは、もう少し苛めたい欲求を我慢し……一気に決めることにした。
再び口に咥え込み、激しく吸いながら根元の封印をパッと解く――間髪入れず、尖った先端の入り口を、舌でドリルのようにえぐった。
「はぁっ……!? ぅんんっ……!!」
シンクの身体が大きく揺れた――同時に、口内で弄ばれていたものがぶるぶると震え、溜まりに溜まったものを噴き出す――
喉の奥にまで飛び散ったそれに、アニスは弱冠むせた。
シンクのものを解放して、軽く咳き込むと、口の端から白濁した液体が、つぃ――と糸を引いて垂れる。
「ん……んく……」
「……!?」
脱力してぐったりしていたシンクだが、アニスが吐き出しもせず――苦しげに――呑みこんだことに驚愕した。
肩で荒い呼吸を整えつつ、何度も喉を鳴らして残さず呑み干してしまった少女をじっと見詰める――
理解できない――アニスは七番目を好いていたはず――なのに、何故このような真似ができるのか。
可能性がないわけではないが、もしや自分を七番目に見立てて……?
ふと、アニスがすっ――と膝立ちに立ち上がった。すっかり紅潮した気恥ずかしげな表情でシンクを見下ろしている――
「どういうつもりで……」とシンクが口を開けた瞬間、またもやアニスの手が、彼のものに触れた。
唾液に濡れたそれを嫌がる素振りもなく、硬くしようというのか――撫で始める。
若さからか、やはり反応してしまうが、先程よりは衝撃が緩い。これなら抵抗できそうだ。
今度こそアニスを跳ね除けてやろう、シンクはそう思ったのだが――目の前の少女に突拍子もない行動に出てこられ、それはあっさり阻止された。
自分の下着を脱ぎ始めたのだ――と言っても膝上くらいにまで下げ降ろしただけだが――シンクは絶句した。
まさか――まさかという思いだ。夢のような光景でもある。夢といっても悪夢だが。
アニスが腰を落としていく――スカートの中にシンクのものが隠れ――先端が、暖かいものに触れた。
「正気……?」
寸での所で動きの止まったアニスに、シンクが冷淡に声を掛ける――が返事はない。
アニスも怖いのか、紅く染まった顔に恐怖の影がちらついている。
「んっ……」
意を決したようにアニスが腰を落とした――強い抵抗はあったものの、弾けたように生暖かい感触が急激にシンクを包む――
「あぅ……ぅくっ……んん……!」
アニスの顔が苦痛に歪む――当然だ、とシンクは思った。
おそらくロクに濡れてはいまい――感触でわかる。シンク自身も入った部分が摩擦で痛いような気がするのだ。
ましてや前戯は自分が受けていたのであり、アニス自身は何も感じてはいないだろう。
それでも無理に挿入しようとは……馬鹿なのか、よほど飢えているのか――いや、両方か?
強いて言えば「馬鹿」だ。息を止めて力んだ時に腰を沈め、吐いて脱力した時に動きを止める――全く逆のことをしていた。
先端を挿れてから結構な時が流れたが、まだ半分も入っていない。
よほど痛いらしく、どちらかが僅かに身じろぎする度に彼女は目をつむり、唇を噛み締めて堪えている。
これで悦に入れるとしたら真性の変態だろう。シンクはすっかり萎えていた。挿れているアニスもそれは感じているはずだ。
焦りと惨めさと恥ずかしさが入り混じったアニスの歪んだ表情――冷然とそれを観ている自分も馬鹿か。
シンクはため息をつき、
「あ……」
アニスの腰を掴むと、引っ張り上げて強引に膝立たせた。
ちらりと自分のものに目をやると、少しだけ血で濡れている。やはり裂けていたようだ。口と違って下は未経験らしい。
「……そんなに七番目のイオンが恋しいわけ?」
「……!?」
シンクの痛烈な一言がアニスの心を容赦なくえぐった。ただでさえ激しく傷付いてたというのに……
アニスの瞳がじわりと潤んで、ポロポロと大粒の涙が零れだす――
「違う……違うもん……!」
「何が違うのさ? こんな馬鹿な真似までして、あいつとの繋がりが欲しいんだ?」
「違うよ……! シンクはイオン様じゃない……! わ、私は……」
「思えばいいよ……」
「!!」
シンクはアニスの着ている教団服の襟元に手を掛け、真下へと引き下ろした。
派手な音と共に彼女の着込んでいた全ての服が裂け、素肌が露になる。
もともと先の戦いでボロボロになっていた服だ。引き裂くのは容易だったし、気にすることもない。
どうもう――みんな消えるのだから。
二つに分かれた服を割り、アニスが抵抗するよりも先に胸元へと口を落す。
「……っ!」
アニスが息を呑み、両の手でシンクを離そうと押し返すも、がっちりと腰と背に手を回されており、びくともしない。
その間にもシンクの唇にきつく吸われ、紅い印が点々と広がり、舌で上へ上へと舐めあげられる。胸元から喉へ――喉から顎へ――
「はぁ……ぁあっ」
シンクは首を後方へ仰け反らせて喘ぐアニスの頭を掴んで、力任せに引き寄せた。
「ボクはボクで楽しませてもらう」
黒味がかった茶色の髪をくしゃりと握り潰し――アニスの口を覆うように塞いだ。
柔らかい唇の感触を何度も確かめ、舌でアニスの唇を舐めると、無理やり割って口内へと侵入させる。
アニスの身体がびくんっと竦む。生暖かいものが蠢いて、自分の舌と絡みつつ奥へ奥へと突き入ってくる。
「ん……んん……」
くちゅくちゅと、唇を吸う卑猥な音が響く――
「ひぁ……んっ……はぁ……っ」
シンクに嬲られるがままだったが、息苦しさにアニスは顔を横へそらし、息を吸おうとする。
しかし、僅かに空気を吸っただけですぐに塞がれてしまった。またもや舌を這わせられ、身体がびくんと跳ね上がる。
何度も同じようなことが続いた。苦し紛れにアニスはもがき、次第に呼吸が乱れ、零れる息に熱がこもる。
既に互いの口はどちらのものともわからないほど唾液に濡れていた。
唇を離す度に糸を引き、冷たくなったその感覚がかえって身体の芯を熱くさせる――
「まっ……んっ……待って、待ってよ、シンク……!」
シンクの肩を掴み、アニスがシンクの猛攻を振り切る。はぁっ……と熱のこもった息を吐きながら――
「違うよ、そんなんじゃないよ……」
何が違うのか――先程の会話の続きらしいが。
「シンクが……好き……なの……」
「……?」
シンクは眼を見張った。何か……聞き有り得ない言葉が耳を通過したような――
「シンクが好き……だから私……」
繰り返し言うアニス――幻聴ではなかった。
我が耳を疑うとはこの事だ――今、こいつは何を言ったのだ? 言葉は聞こえた。が、到底理解し難いものだ。
「嘘じゃないよ……?」
無言でいるシンクの心境を察したのか、アニスがその理由を話そうとした刹那――ぐらり、と身体が傾いた。
「いたっ……!」
平衡感覚がおかしくなったかと思えば、突然何かに打ち付けたような痛みが後頭部を襲う。
実際、アニスは床で頭を打っていた。シンクに突き飛ばされた――そうだわかったと同時に、アニスの背筋が凍り付いた。
床に転がされた自分を馬乗りに見下すシンクの瞳が、あまりにも冷たかったから――
「信じられるとでも? 嘘ならもっと上手につくんだね」
「ホ、ホントだもん……!」
予想していた通りの反応だった。簡単には信用してもらえない。
「ボクを見ていつも七番目――イオンを思い出していたくせに……よく言うよ!!」
「それは……当たり前じゃない! 同じ顔で同じ声なんだから……!」
開き直ったようなアニスの鋭い言動に、シンクは怒りを露にした――
「うるさい……!」
「ひぁ……っ」
乱暴に胸を吸われ、アニスは小さく悲鳴をあげた。
気に入らない……! シンクは暴れるアニスの両手を掴んで押さえ込み、完全に床へ組み敷くと、胸元へ舌を這わせていく――
緩やかに描かれた弧の先にある紅い実を弄ぶと、アニスの小さな身体が仰け反り、抵抗が激しくなる――が、構わずきつく吸い、歯を立てた。
全くもって腹立たしい。ケセドニアでの時もそうだったが、何も本気でイオンとして見て欲しかったわけではない。
嫌がらせなのだ。イオンの真似も、先程の「思ってもいい」発言も。こうして犯しているのも。
自分とアニスのこれまでの軌跡――やり取りを思い出しても不可思議な話だ。どこを間違えれば恋愛感情に発展するというのか。
これはもう主観から間違っているとしか思えない。すなわち――七番目と自分の混同である。
だが、基盤となっているのは七番目への感情のはず――行為を続けていれば、今に奴の名が口に出てくるはずだ――
シンクはアニスの手を解放した。自分も手が塞がっていては不便だ。
途端に、アニスは自由になった手で胸を隠そうとする。シンクは口で手袋を外しながら、思わず笑ってしまった。
隠すほどあるわけでもなし。むしろ生まれた時から全く成長していないように見える。
ああ、そうか。ないから恥ずかしいんだな。
――と、アニスの手を跳ね除けて胸を愛撫しながら、シンクは納得した。馬鹿みたいなことだが、少し腹の虫が収まった。
ヴァンの妹のように目立ってあるわけでないが、触っていると柔らかい膨らみを感じる。
「やぁ……やだ……」
コンプレックスのためか、あまり触って欲しくなさそうだが、やめる義理はない。構わず舌と手で攻め続けた。
「んっ……っ……」
余程恥ずかしいらしく、アニスは唇を固く結んで必死に声を堪えている。不意に、口内へ何かが割り入ってきた。シンクの指だった。
「はぁっ……やっ……あぐ……」
堪えようにも口を塞ぐことが出来ない。感じたままの声が外に漏れ、アニスの恥ずかしさは頂点に達していた。下腹部が、熱い――
無駄にあがくアニスの姿に、シンクは薄っすら笑みを浮かべた。もう片方の手をスカートの中へ忍ばせる。
だが、すぐには触らない。太腿を撫で回し、アノ場所へ徐々に近付いてゆき、アニスが抵抗しつつも、じれる様を楽しんだ。
「やだっ……やめて……ぇっ!」
アニスが半身を起こしてシンクの腕を掴む――瞬間、くちゅり――と熱い衝撃が全身を走り抜けた。
「ひゃうっ……!?」
アニスの身体が一際大きく跳ねる――再び床へ倒れこみ、手足をばたつかせた。
シンクはお構いなしに濡れた秘部を指で舐めるように撫でる。動かす度にアニスが面白いように乱れる。
次々に溢れる愛液を絡ませながら、ぐぷっと中へ指を押し入れた――
「やぁぁぁ!!」
アニスは絶叫して股を閉じようとひたすらもがき、その度にシンクの指の間を縫って愛液が飛び散る。
いきなり2本入れてみたが――大丈夫なようだった。アニスの様子を見る限り、もう痛くはないらしい。
前後に動かして、指の腹で中を掻き回すと、膣内が激しく収縮し、粒々した触感が吸い付いてくる――
なるほど、挿れたら確かに気持ち良さそうだ――と、シンクは指を抜いて、ぺろりと舐めた。
膝まで下がっていた邪魔な下着を破り取り、股を大きく開かせる――アニスがまた何か呟いたようだが――シンクは無視して顔を沈めた。
紅い花弁を指で剥き、露になった花芯をゆっくりと舐め、微かに血の味がしたが、吸ってはまた舐める――
「ふぅぁ……はぁ……んっ、はぁ……あっあっ……!」
音を立ててきつく吸い上げるものの、愛液は絶えることなく溢れる一方だった。
吸い付きながら舌先を源泉の中へねじり込ませる――と、
「あっあぁぁ…あぁ!!」
アニスが熱っぽい声を張り上げ、入り口の花弁が激しく痙攣し――ごぼごぼっと凄まじい量の愛液が噴き出した。
イったか……とシンクは顔を上げた。虚ろな瞳で荒い呼吸をするアニスの頬を優しく撫でる。
「さっきの借りは返したよ……」
そしてここからが本番――アニスの両膝を抱え、固くなった自分のものをあてがった。
びくっ――と、アニスの表情に恐怖の色が浮ぶ。無理強いして挿れようとした時の激痛を思い出したようだ。
「し……シンク……」
「さぁ……本音、聞かせてよね。アニス――」
アニスのふくよかな腰を掴み、ぐぐっ……と引き寄せ――やや強引に割って挿入した。
「やあぁ! ぁんっ! はぁっあぅ……!!」
まだ先の方しか挿れてられていないが、アニスが受けた衝撃は相当なものだった。
熱い――とにかく熱い。自分が熱いのではなく、入ってくるそれが熱い。
熱くて、大きくて、固くて……指などとは比べものにならない質量が突き上げてくる。
「くっ……」
予想以上に狭くて、思うように奥へ進めず、シンクは舌打ちした。
充分に濡れているはずなのに、とにかくアニスが力を入れて無駄に締め付ける上に、手を振り乱して暴れるから邪魔で仕方がない。
つくづく色気のない反応をしてくれる。良いと思ったのは鳴き声だけか。
アニスの手を掴んで自分の背中へと回す。途端にぎゅっと爪を立ててしがみ付かれたが、構わない。
アニスの呼吸に合わせて徐々に奥へと挿れていく――
「ぁあっ……ふぁ……ひゃぐぅっ……!」
「うぅ……っ」
どうにか根元まで挿れることができたが、腰を動かす度に愛液と肉壁に揉まれ絡みつかれ……えもいわれぬ猛攻に、思わずシンクも歯を食いしばった。
「シン……ク……んっあっ……シンク……!」
揺さぶられながら、アニスは何度もシンクの名を呼んだ――
信じてもらえないまま、こうなってしまったのは悲しいが……無理もない。
イオンの代わりとして見ていると罵られても――完全否定することができないのだから……
自分でははっきりと認識しているつもりだった。
イオンとシンクは同じ被験者から生まれたレプリカでありながら、全く違う存在だということを――
だが、今や二人はどちらも特別な存在となり、同じ髪の色、同じ瞳の色、同じ顔立ち、同じ声――違うのは体格と性格くらいか。
これで迷わない人間がいるだろうか……自分の気持ちを疑わない人間がいるだろうか。アニスだってそうだった。
シンクのことが気になる。ケセドニアでの一件が、ずっと尾を引いていた。
居ないとわかっていても、何処かの街に立ち寄ればシンクの姿を探している。それは何故か――
イオンの代わりを求めているからだと、何度も自分に言い聞かせ、その度に胸が締め付けられて苦しくなった。
そんな時だ。仲間の一人――ガイが助けてくれた。
胸が苦しくなるのは、自分に嘘をついているからだと――
本当の気持ちを知るもう一人の自分が、嘘をつかれて苦しみ、泣いている。胸の痛みはそのせいで――
似てるとか似てないとか、深く考えず、素直に行動してみたら?と言われた。
「あぁっ、あっ……」
素直に――感情の赴くままにシンクと今、繋がっている。
やっぱりシンクはシンクだ……イオン様じゃない……
「シンク……ぁあ……ふわっ……あぁぁぁ!!」
びくっびくん!とアニスの身体が弓なりに跳ね上がった。
初経験ということもあり、シンクが間隔を変え、深く突くと、アニスはあっさり果ててしまった。
急激な収縮にシンクもあわや巻き込まれそうになったが、何とか踏みとどまった。
先刻のような無様な醜態をこれ以上晒すわけにはいかない。アニスにはもっと苦しんでもらわなければ――
独りでイったことをせいぜい恥ずかしがるといい――動きを止め、気を失いかけているアニスの顔を覗き込む。
「う……ん……」
アニスは誰かの視線を感じ、朧気ながら意識を取り戻した。
真っ先に視界へ飛び込んで来たのは濃緑の髪――それでいて意地悪い笑みを浮かべるシンクだった。
「これで終わりだと思わないでよね」
「……!? あっあぁぁぁ……!」
シンクの攻めは続いた。満足していないのだから仕方ないとアニス思った。思ったが、酷い――とも。
シンクの、完全に人を見下した冷徹な瞳――自分は性欲の捌け口でしかないのか……
だが気持ちとは裏腹に、アニスの身体は悦びを感じ、熱く濡れる一方で――それがシンクに付け入られる隙となるのだから、また悔しくて悔しくて。
イオンとは違う。決定的だった。イオンならば、どこまでもアニスに優しく接してくれただろう。
もっとも、イオンがこのような淫らな行為に及ぶとは想像もつかないが……
自分はこのままシンクの玩具にされて終わるのか――シンクはもうじき消えてしまうというのに――
何も信じてもらえず、二人は終わってしまうのか――
そんなのは……絶対いや……!
「んっ……くぅ……!」
「……?」
せめてシンクをイカせたい。死んでも本当の事は何一つ喋らないだろうシンクの、本音を曝け出した瞬間の顔が見たい。
口でやった時は咥えるのが精一杯で見れなかったが、今度こそは……! とアニスは下腹部に力を入れた。
「くぅっ……! こいつ……!?」
急激な締め付けられ、思惑通り顔を歪めるシンクに、アニスは薄っすらと笑った。
「ゆ、油断、してるから……だよ……」
ぎりっ……!と、シンクの歯軋りする音が響いた。
アニスのとろんとした――完全に自分に堕ちた恍惚の表情が、一転して鋭くなったので、何かあるとは思っていたが。
「やってくれるじゃないか……!」
言うなりアニスの腰に手を回し、ぐいん、と強く持ち上げる――
「はぅあ!?」
図らずしも最初の形に戻ってしまった。アニスがシンクを襲った時と同じ体勢に。
ただし、あの時と違って二人に距離はない――シンクの両手はアニスの背に。アニスの両手はシンクの肩を掴んでいた。
鼻先が触れ合うほどの距離――アニスは意識していても、やはりイオンを思い出す――
「シンクが悪い……」
「またそれか」
「だって……矛盾してるよ……」
イオンとして見ると不愉快がるくせに、イオンの真似をして自分を惑わす――
あの時、シンクがイオンの真似さえしなければ、こんなに意識することもなかっただろう。
きっかけを作ったのはシンク――責任を取るのは当然のことだ。
「信じてよ……」
「しつこいな……!」
アニスを黙らせるかのように、シンクは腹に力をいれ、アニスの身体を突き上げた。
「あぁっ……ぁ……ん……シン……ク……!」
立て続けに突き上げられ、アニスの身体が激しく上下に揺れる。
「シンク……! シンク……!」
肩を掴んでいた手を首筋へ回し、シンクへ唇を重ねる――
軽い、本当に重ねるだけのキス――まだシンクが怖くて、それ以上はできない。
「んんっ……?」
てっきり拒絶されると思っていたが、力強く引き寄せられ、舌を絡めてくれた。
わからない――何を思って自分を抱いてくれているのか――
「ひゃ……ぁっ……ぁあっ、シンク……!」
アニスは喘ぐ――じきに呼べなくなる名前を叫んで――
何を思って――なんて、シンクにもわからなかった。わからなくなっていた。
アニスに名前を呼び続けられ、ふと気付いたことがある。
シンク――そう、ボクの名前だ……
名前……些細なものかもしれないが、自分であることを証明するたった一つのもの。
イオンは――七番目のイオンは「七番目」だ――自分もそう呼んでいる。
何故なら、イオンは被験者の名前だからだ。
七番目は代用品として選ばれた時に「イオン」を継いだだけで、彼自身のものではない。
もし、被験者が生きていれば七番目のレプリカには別の名が付けられていただろう。
イオンはあくまで被験者の名前であって、七番目を個体として識別できるものではない。
所詮はレプリカ――名もない七番目を哀れに思う――
もっとも、それ以上に大事なものを、あいつはたくさん持っていた。
名前がないことなど、気にも留めていないだろう。
名前以外何もない――空っぽのボクだから、気になったのか――
「シンク……?」
動きが止まっていたようで、アニスが不思議そうな顔で自分を見詰めていた。
紅く染まった頬に、涙と唾液でぐしゃぐしゃな顔――本当に自分の為にここまでしているのだとしたら……
「アンタも強情だね……」
自嘲気味に笑い、シンクは甘い考えを捨て去った。どう転んでも「未来」など、自分にはない――
「あっ……やぁっ……」
アニスの首筋から胸へと舌を這わせ、行為を再開する――
「あぁ……ぁ……シンク……ぅんっ……ふぁ……」
シンクの熱いものに突かれ、何度も意識が飛びそうになるアニス――だが、
「……!?」
何かの見間違いだと思いたい――ほんの少し、瞬きする合い間に、シンクの身体が透けて……向こう側の壁が見えた。
音素乖離も末期に入ったのか――終焉は近い。
「いやぁあ……! シンク……消えっ……ないで……!」
喘ぐというより悲鳴そのものだった。大粒の涙がシンクの胸元を流れていく――熱いが、すぐに冷めてしまうそれを、シンクは無言で感じ取っていた。
「シンク……あぁっ死なない……でぇ……! 消えないでぇ……!」
他ならぬシンク自身を受け入れ、誰よりも一番傍にいながらも、遠くに感じる――
信じて欲しい。信じてくれさえすれば……
「好き……大好き……! シンク……消えないで……!」
シンクにキスをする――今度はアニスから舌を絡めた。強く吸い、シンクがそうしたように、何度も口付けをする。
「もっと……ん……シンク……」
アニスは執拗にキスをねだった。覚えておきたい――この感触を、この感覚を。シンクがどう抱いてくれたかを、全てを心に刻んでおきたい――
首に回した手に力を入れ、ぎゅっと抱き締める――がくがくと身体を揺さぶられ、アニスはシンクの肩に顎を乗せながら喘ぎつつ、必死に訴えた。
「死なないで……シンク……好きなの……」
「遅い……んだよ……何も、かも……!」
或いは早すぎたのか――もっと時間があれば――
「もぉだ……ダメ……んんっ……シンク……はぁっ……ぁ……ぁん……あっあっあぁぁぁああ!!」
「うぅ……くっ!」
同時に絶頂に達した。お互いの全身が震え――力が抜けていく――
長い間、溜めに溜めていたせいか、一度では済まず、二度……三度と、シンクは放った。
朦朧とする意識の中、どくどくと熱いものが奥を突いて流れ込んで来るのを感じ、アニスは気を失う。
シンクが微かな声で「アニス」と呼んでくれた様な気がした――
その優しげな呼び声が、否応なく誰かの影と重なってしまう。
「!?」
アニスはハッとして、もたげていた頭を上げた。
私、どれくらい気を失っていた? そんな場合じゃないのに……!
しかし、まだシンクの呼吸は荒く、瞳を閉じて静かに整えている最中で……まだ2人は繋がったままだった。
ほんの数秒、意識をなくしていただけのようで、アニスはホッと胸を撫で下ろす。
甘えるように――別れを惜しむように――シンクの胸に顔を押し付け、頬擦りする。
筋肉質で逞しいが細いしなやかな肉体――もしかしなくても自分より細い……特に腰の部分とか……
ダイエットしよう、と他愛ないことを考えて、アニスは小さく笑った。
至福のひと時――このまま死んでもいい……死んでしまいたい……一緒に……
「わからないんだけど」と、シンク。
「なにが?」
「アンタがボクを好きになる理由さ」
「うーん……」
アニスはわざとらしく考え込むようなフリをして、
「厳しいところ?」
と、おどけたように答えた。
「あのね……」
そう言って、アニスは自分が如何に他人に甘えているか――甘えて育ってきたかを話した。
モースの言いなりになっていたダメな両親。実はそんなに好きじゃなかった。
何度も嫌気がして、家を出たいと思ったか……でも、できなかった。
両親も結局は親の義務を果たして、あれこれ世話を焼いてくれる。
アニスは、彼らの子供としている限り、楽な生活が出来た。贅沢は出来なかったけど。
モースの命令は嫌な仕事が多かったけど、お給料は良かった。
我慢して言うことさえ聞いていたら、とんとん拍子に昇格して、導師守護役になれた。
無論、スパイとして任命された訳だが、イオンはいつも教会内に居て、
危険な目に遭うことは滅多になかったし、見張っているだけの楽な仕事で……
何より、イオンが優しかった。鈍かった。
頭は良かったので気付いていたかもしれないが、バレたらバレたら許してくれるだろうと思っていた。
上手くいけば、バレないままモースだけが失脚して、自分の地位は安泰?なんて都合の良い事を考えていた。
現実は甘くなかった……イオンは自分が手引きしたせいで死んでしまった。
イオンだけではない……タルタロスやシェリダンの人達……数え切れないほどの人間が死んだ。
考えないようにしてきたが、限界だった……自分は最低の人間だ……直接手を下した訳じゃないが、そのことが責任転換の良い口実になっていて、嫌だった。
あの時だって、皆が助けにくると思って! ……だから、惑星預言を詠もうする彼を止めなかった……時間稼ぎすらしなかった……
なのに、誰も自分のことを責めない。どうして?
悪くないはずがない。悪いの! 私は悪いの! イオン様を売った!
おかしいよ、なんで皆……悪いって言ってくれないの……? 責めてくれないの? 私が……子供だから……?
だが、アニスは何も言えなかった。独りになるのが怖かったから――
皆が責めないのを良いことに、ぬけぬけとパーティに残留し続けた……
「あのさ」
シンクはアニスの話を遮って言った。
「アンタの生い立ちとボクと、何の関係があるわけ?」
「もぉ〜! 要するに、シンクははっきりものを言ってくれるから、嬉しかったってこと!」
簡潔に述べられても、話の接点がよくわからない。シンクは呆れた様に嘆息した。
敵対する以前はおろか、敵対した以降もアニスと会話らしい会話をした憶えはなく、嫌がらせをした程度の記憶しかない。それが嬉しいだって?
「そんなにボクに苛められたいんだ?」
「ち、違うよ!」
「じゃあどうして欲しいのさ?」
「……」
濃緑の瞳に見詰められ、アニスの胸がちくりと痛んだ。
言わなければ、わかってもらえないのか……
「好きになって……私のこと……好きになって欲しい」
「無理」
即答された。
「アンタに……興味ないね」
――言いつつ、シンクの顔が迫ってくる――前髪が触れ合った時、アニスは瞳を閉じた。
キスをしてくれる――そう思った。
しかし、いつまで経っても何もしてくれない。
いや、確かに唇に暖かいものが触れた。ほんの一瞬。
それすらも幻かと思うほど、やけに冷たい風がアニスを通り過ぎていく――
「……!!」
気付いてしまった。気付きたくなかった――身体が、寒い――
先程まで触れ合っていた部分が、風に晒されているという残酷な事実――
恐る恐る、アニスは眼を開けた。
目の前には、崩れかけた白い壁がそびえ立っているだけだった。
どこにも、誰もいない。自分だけがそこに居た。
「シンク……」
恐れていた事が現実になった――
覚悟はしていたのに、涙が止まらない。夢だと思いたい。
だって、普通に話していたじゃん、ついさっきまで……!
アニスがどんなに周囲を見回しても、シンクはいなかった。
徐々に嗚咽が大きくなって、アニスはいつしか張り叫ぶように泣いていた。
イオン同様、何も遺さないで……消えてしまった……
肝心の答えを聞いてないのに……死んでしまった……
あんなフラれかた、絶対に認めない。
シンクの言葉ほどアテにならないものはない。あいつが一度だって本心を口にしたか。
ひねくれたことしか言わないくせに、今の際になって真実を告げるとは考えられない。
だいいち! どうして最期にキスしようとしてくれたのか……わからない……
もしかしたら……と期待してしまう。
でも、本当のことはわからない――真実はシンクしか知らない。
そのシンクは、もうどこにも居なくて、もう何も聞くことができなくて……
アニスは一生、答えを求め、彷徨い続けるだろう――
あの世で――アニスがもがき苦しむ様を見て、シンクは意地悪く笑っているのだろう――
「……?」
不意に、何かが下腹部から腿を伝って流れ落ちた。
床へ視線を落すと、シンクと繋がっていた部分から、自分のものに混じって白いものが零れている。
「あ……シンク……」
思わず口を覆って、アニスは小さく泣いた。
シンクがいた。自分と一つになっていた。彼は消滅してしまったが、存在は消えていない。
自分の中にいる。シンクのものが残っている――
ほんの数十分の出来事だったが、シンクの残り少ない人生の全てをもらっていた事を悟り、アニスは涙を拭った。
死ねない……死ねなくなってしまった。シンクはこれからずっと先、自分と一つなって生き続ける――
アニスは道具袋から替えの服を取り出し、手早く身なりを整えた。
仲間が目印を残しつつ、アニスが追い付くのを待っているはずだ――
自分の中のシンクの為にも、生きなければならない。
物言わぬ存在に、故人を想い慕うのは愚かしいかも知れない。淋しいことかも知れない……
アニスだって実のところは嫌だった。本人が傍にいるほうが良いに決まってる。
だが仕方ない。彼が遺した唯一のものなんだから、大事にしなければ……
これでアニスはますます苦しい人生を歩むことになった。
いつまでもシンクの存在を感じ、例の答えを求め続ける――
どんなに辛くても、楽に死ぬことは決して許されない――
そしてやっぱりシンクは嘲笑っているのだろう……いつでも冷ややかにアニスを見下して……
「シンクのバカァ――!」
やり場のない怒りを込めて、アニスは叫び、その場を後にした――
振り返ることはない。シンクは、すぐ傍にいる――
「世界が滅ぶとか、本当はどうでもいい。ただイオン様やフローリアン……シンクを苦しめるアンタが大っ嫌い! だから倒す!」
何が何でも勝って、生き抜いてみせる。
自分が生きている限り、シンクも生きているのだから――
完
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