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作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
落日前 鳥氏 アーチェ×ユージーン 2006/03/21 2006/03/21

 ここはカレギアの首都バルカ。偉大なる王ラドラスが住まう都だ。国の首都だけあって街は栄え、住ま
う達は皆、心身共に豊かに暮らし、行き交う人々も多く賑やかであった。唯一つ、難があるとすれば地形
のせいで年中、濃い霧に包まれている為に空は曇り、薄暗く視界が悪いということだ。
 その街の通りを一人の男が歩いている。その男、国王直属の部隊「王の盾」の隊長を務めるユージーン
・ガラルドは、病の床に臥しているラドラス王を見舞った後、城での所用を済ませ帰途についていた。
 賑やかな通りを過ぎ、住宅街へと入ると次第に人通りも少なくなり、自宅の門が見え始める頃には周囲
に人は誰一人居なくなっていた。
 ユージーンは何時ものように家へと向かって歩いて行く。丁度、門の目の前まで来て取っ手に手を掛け
た時だった。曇っていた空が、急に生木を裂くような激しい音と共に眩しいほどの光を発したのだ。その
次の瞬間、ユージーンは後頭部に激しい衝撃を覚え、地面に叩き付けられるように前のめりに倒れ込む。
 地面に叩きつけられ、全身に走る衝撃と圧迫するような重さに息がつけくなる。息苦しさから意識が遠
退きそうになるのを必死に留め置きながら、状況を把握しようと思考を巡らせた。
 すると、背後――と、言うのか背中の上から若い女の怒ったような声が聞こえてきた。
「……痛ーいっ! 何よこれーっ!! もっと上手に着地出来ないわけ? クラースの下手くそー!」
「っ!?」
 ユージーンが痛みを堪えながら、こちらの方こそ怒りたい気持ちだという所をぐっと抑えて、首を捻り
後ろを見る。すると、そこにはピンクの髪を頭頂部で一つに結わえた少女が箒に跨ったまま自身の背中の
上に乗り掛かり、踏みつけるように座り込んでいた。
「って……あれ?? ここって、何処? ユークリッドでもローンヴァレイでもないよね??」
 その少女、初めは怒っていたようだが、目に入る景色に異変を感じたのか首を振りながら周囲をキョロ
キョロと見回す。そして、自分を見るユージーンと視線が合うと、酷く驚き、慌てて転がり落ちるように
踏みつけにしていた背中から飛び降りた。
「あ…あ、あああんた誰? ク、クラース…じゃないよ、ね? ……全然、顔が違うもん。クラースはそ
んなに色黒じゃないもん! 猫耳なんて着けてないし。あんた、誰よ!? クラースは何処? 何でこん
な所に落ちちゃったのよ!」
 半ば失礼な物言いを凄い勢いで捲くし立てながら、初めは警戒心を剥き出しにした表情でユージーンを
見ていた少女は、次第に青ざめ不安な様相を呈し始めた。
「…そう言えば、ここって…何時の時代なんだろう? アセリア暦4202年の世界じゃないよね……」
 自分が置かれた状況が尋常ではないことに気が付いたのか、少女の目は恐怖に慄き身体は震えている。
 今にも泣きそうになっている目の前の少女にユージーンは、戸惑いつつ声を掛けた。
「もしや、お前は別の世界から、この世界に紛れ込んだのか?」
「!! しゃべった?! あ、あんたしゃべれるの? って言うか、何で言葉が通じるの?」
 またしても失礼な物言いで、少女はユージーンの問いには答えず、逆に尋ね返してくる。尤も、少女の
疑問も当たり前なのだが。別世界の住人と思われる相手と言葉が通じるなどと、普通なら有り得ないのだ
から。少女の恐怖心は益々大きくなって行くばかりだった。

 そんな少女に腹を立てるでもなくユージーンは落ち着いた静かな口調で話を続けた。
「何故、お前と私の間で言葉が通じるのかは解らない。ここはカレギア。ヒューマとガジュマ、二つのヒ
ト族が共存する国、そして世界だ。恐らくお前の住む世界…アセリアと言うのか? その世界とは別の世
界だと思う。お前は何らかの時空間の変異に巻き込まれ、この世界に飛ばされて来たのではないか?」
「………そ、そうなのかな? あたしとクラースはエターナルソードを使ってアセリア暦4304年から
アセリア暦4202年へと時間転移をして過去の自分達の時代へと帰るはずだった…。その時、時空間の
中で何かが起こって私だけこの世界に飛ばされちゃったってこと……?」
 ユージーンの淡々とした態度に少女も次第に落ち着きを取り戻し、冷静に自分の置かれた状況と、事こ
こに至った経緯について考え始めた。
 自分は確かにクラースと共に元の時代へと戻る為にエターナルソードと時空転移魔法を使った。その時
に何が起こったのか? それまで何度か時空を超えて旅をしたが、その時は何も起こらなかったのに今回
だけは何故このような事になったのか? 自分だけがこの世界に飛ばされた理由は難であろうか? 一緒
に居たはずのクラースは、無事、元の時代へと帰れたのだろうか? ……考えても考えても少女には解ら
なかった。ただ確かなのは自分一人だけが異世界へと飛ばされてしまったのだということだ。
「あたし…これからどうしたら……」
 見知らぬ世界にただ一人きりという孤独感に少女は、心細さに涙が零れそうだった。
 エターナルソードがあれば元の世界へ戻れたかもしれない。しかし、エターナルソードは手元には無い。
クラースが持っているのだろう。今の少女にはどうやっても元の世界に戻る術は無いのだ。
「もう、チェスターにも、みんなにも逢えないんだ……うっ、ふっうぅ…えっうえっ…」
 少女は絶望した。自分の時代へと帰る別れ際に、旅を共にし好意を寄せていた少年、チェスターと交し
た約束も果たすことは出来ない。もう、二度と逢えないのかも知れないと。少女は、とうとう堪え切れず
泣き出してしまった。
「泣くな…俺が何とか元の世界に帰れる方法をさがしてやるから。……えーっと。そう言えばお前の名前
を聞いてなかったな。俺はユージーン・ガラルドと言う。お前は?」
 大粒の涙を零しながら泣きじゃくる少女の頭を撫でながらユージーンは慰めた。
「うっ…ひぃっく…えっくっ……アーチェ…アーチェ・クライン…ひっく…」
 異世界の少女、アーチェは泣きしゃっくりを上げながら答えた。
「そうか。アーチェと言うのか。ここは私の家だ。兎に角中に入ろう」
 ユージーンは少女を立たせると家の中へと誘った。
「………」
 少女も無言で頷き拳で涙を拭きながらユージーンの後に続いて家の中に入って行った。

 ユージーンはアーチェを居間に通すと、彼女を落ち着けようと暖かい飲み物を差し出した。
「ホットミルクだ。これを飲むといい。少し気持ちも落ち着くだろう」
「……ありがとう。いただきます」
 アーチェはカップを受け取ると静かにホットミルクを口に含み飲み始めた。蜂蜜入りのホットミルクは
アーチェの心を少しばかり癒してくれた。暖かい飲み物を飲んだ事で気持ちが落ち着き始めたアーチェは
ユージーンに自分が居た世界のこと、自分の居た世界にはエルフと人間、そして二つの種族の混血である
ハーフエルフが住んでいて、エルフとハーフエルフは魔法が使えることを話した。そして自分はハーフエ
ルフだと。
 そこまで話すとカップに口を付けホットミルクを一口啜る。軽く息を吐き出し、続けて、これまで世界
を救う為に過去から未来へと時間を越えて旅をしていたこと、そして旅の目的を達成し自分のいた時代へ
と帰ろうとして、今回のような事になってしまったことを話した。アーチェは最後まで話し終わると口を
閉ざし俯く。
「そうか。お前の住む世界も我々の住む世界と似通った所があるのだな。一つの世界に二つの人種とその
混血種、我々の世界で言うところのフォルスとお前の世界で言うところの魔法。聖柔と精霊。異なる世界
なのによく似ている。そういう世界もあるのだな…。ん? と言う事は、もしかするとこちらの世界にも
時空を超える方法があるかも知れんな」
 ユージーンはアーチェから異世界の話を聞き自分の住む世界との共通点に感嘆した。続けてこれからの
ことについてユージーンは話そうとしたが、アーチェの表情が曇ったことに気付き、止めた。
「私の住む世界……」
 そう、呟くとアーチェは頭を振りきつく目を閉じ頭を抱えた。改めて自分のことについて口に出して話
してみると、忘れかけていた恐怖心に襲われてしまう。それを必死に打ち消そうとしていた。
「もう、休んだほうがいいな。今、寝床の用意をしてくる。少し待っててくれ」
 黙って俯いてしまったアーチェを気遣い、ユージーンは客間の準備をしに席を立つ。受け入れ難い現実
に疲れきってしまったアーチェはその背中をぼんやりと見送った。

 客間のベッドに毛布を頭まですっぽりと被り、アーチェは横になっていたが眠ることが出来ずにいた。
こんなことなどある筈が無い、忘れてしまおうと必死に心を閉ざそうとしたが、不意を付いて脳裏に浮か
ぶ現実にアーチェは悩まされていた。何度も何度も繰り返すそのどうにもならない現実に、アーチェは再
び涙が零れ堪え切れずに泣き出してしまった。
 部屋の外に漏れるアーチェのすすり泣く声に気が付いたユージーンは、彼女の様子を伺いに客室のドア
をノックして声を掛けた。
「アーチェ? 大丈夫か?」
「……」
 しかし、返事は無い。それどころか鳴き声すら聞こえなくなった。そのことに不安になったユージーン
は、ドアを開け中に入って来た。
「…お前…」
 ユージーンの目に映ったのは毛布を頭まで被り、顔を枕に押し付けて肩を震わせ泣くのを必死に堪えて
いるアーチェの姿だった。
「無理をするな。泣くことは悪いことじゃない。泣いて不安な気持ちも恐怖心も流してしまえ」
 アーチェの姿があまりにも哀れに見えてユージーンはそっと抱き締めてそう言った。
「…ユージーンっ!」
「ア、アーチェ?!」
 甘えるようにアーチェはユージーンに抱きついた。抱きつき身体を摺り寄せる。控えめだが柔らかなア
ーチェの乳房がユージーンに触れ、甘いような香りが鼻腔を微かに突く。その時、彼の中で何か別の感情
が突如として生まれた。
「アーチェっ!」
 ユージーンは、突然芽生えた感情の赴くままにアーチェをベッドに押し倒した。
「?! ユージーン?」
 いきなりベッドに押し倒されたアーチェは、自分の身に何が起こったのか理解するまで少々時間がかか
った。
「アーチェ…アーチェっ!」
 アーチェが何がなんだか訳がわからずにいるのもお構いなしにユージーンは、欲望のままに彼女の寝巻
きを剥ぎ取る。
「なっ! 止めてよっ! ユージーン止めてっっ!!」
 自分が何をされようとしているのか漸く察したアーチェは必死に抵抗したが、ユージーンの大きな身体
の前には歯が立たなかった。力の限り足掻いても組み敷かれた身体は、自分の意思ではどうにもならなか
った。
「んっ…ふっんんっ…やぁっ…」
 嫌がるアーチェの唇をユージーンは自身の唇で塞ぎ、それを開放すると唾液で濡れた長い舌を首筋へと
這わせてチロチロと舐める。そのまま舌を乳房へとねっとりと舐め回しながら這わせ乳首を口に含み軽く
噛み、吸い、舌先で転がす。それと同時に片手で乳房を揉みしだき、もう片方の手で秘所を弄る。
「あっ! …あぁんっ…いやっダメっ!」
 自分の意思とは無関係に快楽に支配されていくアーチェは、尚も抵抗をする。しかし、それも短い間だ
けだった。ユージーンの指の動きから与えられる快楽にアーチェは身体だけではなく心まで囚われていった。
「あんっ! ひぅっ…はっぁあっんっ!」
 気が付けばアーチェは貪欲に快楽を得ようと、ユージーンの指の動きに合わせ腰を動かし始めた。する
と益々強い快楽がアーチェの身体を突き抜ける。強い刺激は麻薬のようで、より強い刺激を求めてアーチェ
はもっと別のモノが欲しくなり始めていた。

「ユ…ジーン…は、早く…ココにソレ入れ…て…」
 アーチェは足を開き自分の指で肉襞を割ると、ユージーンのモノが欲しいと強請る。
「あぁ…アーチェっ!」
 誘われるままにユージーンはアーチェの秘所へと欲望の塊と化した自身のモノを突き刺した。
「ああっっん!」
 嬌声を上げその衝撃に堪えるようにアーチェはユージーンにしがみ付く。ユージーンもアーチェの背に
腕を回し身体を抱きかかえる様に押さえると、腰を回しながら前後に動かし彼女の中を掻き混ぜ始めた。
「ひっんっ…あっ…んぁっ…あんっ」
 ユージーンの律動に合わせアーチェの口からは快楽の吐息が漏れる。ユージーンの腰の動きが激しくな
るにつれ、それに合わせる様にアーチェも激しく腰を振る。激しく腰を振ってはいたがアーチェは、それ
を意識してやっていたわけではない。身体中に走る刺激に支配され無意識に動かしていた。
 激しい動きとは裏腹にアーチェの表情は干満として、別世界へと心を飛ばしているようだった。最早、
達する直前まで上り詰めていた。
「アーチェッ!」
「っ?! あっ! あっああああぁぁぁっ!!!」
 ユージーンが一際大きく腰を振り上げ、アーチェの奥へ自身のモノを突き上げ熱い精を吐き出す。同時
にアーチェは脳髄を突くような快感を得、そのまま意識を飛ばして気を失ってしまった。
 精を放出し、熱が冷めて冷静になったユージーンは、自分の仕出かした事に愕然とした。異世界に一人
飛ばされ恐怖と不安に泣き、怯えている少女を、自身の欲望のままに蹂躙してしまったのだ。アーチェが
途中から逆に積極的にユージーンを誘っていた事など、既にユージーンの頭の中から消し飛んでいた。
ただ、今、ユージーンの頭の中には激しい後悔の念だけが存在していた。
「俺は…俺は、なんて事をしてしまったんだ!」
 ベッドに横たわるアーチェを前にユージンは自分を責めた。自分を責めて、その場に居ることに居た
堪れなくなってアーチェが気を失っているのをいい事にその場を急ぎ離れた。

 翌朝、ユージーンはアーチェにどんな顔をすれば良いのかと頭を抱えながら、朝食の準備をしていた。
朝食の準備が整った頃になってもアーチェは起きて来ない。やはり、自分とは顔を合わせたくはないのだ。それ

も当然だと苦笑交じりに溜め息を吐くと、ユージーンはアーチェへの言伝を書き始めた。
 その内容は、朝食を勧める言葉から始まり、彼女の身体への気遣い、夕べの行為への謝罪、そして自分
は一週間ほど仕事で城詰めになる為、留守にすること。その間、家の中を自由に使って良いという事を
書置きして家を出た。
 家を出たユージーンは、とぼとぼと王城への道を歩いて行く。夕べのことへの罪の意識に苛まれながら
も、アーチェの為にこれからどうすれば良いか考えていた。アーチェの為に自分がしてやれること。アー
チェを元の世界へと戻す方法を探してやることが、自分に出来るただ一つの事だと思った。その思いは
贖罪の意味も込められていた。
 城へと辿り着いたユージーンは、一度、王の盾の顔を出して挨拶をすませると、すぐに城の書庫へと
足を運ぶ。大量に保管されている蔵書の中から手始めにフォルス関連の書物から調べ始めた。フォルスと
魔法。二つの似通った「術」に関連するものから調べれば、時空転移の方法が解るのでは? と思った
からだった。
 ユージーンは一文字も漏らさぬように丁寧に書物を読み調べていった。


 一方、アーチェはユージーンが登城して大分立ってから目が覚めた。夕べのユージーンとの情事の
お陰でアーチェはぐっすりと眠ることが出来た。夢すら見ないほどぐっすり眠ったアーチェは、多少の
不安感が残っていたものの何時もの前向きな性格を取り戻していた。
 ユージーンの残した書置きを読み、アーチェは軽く笑うと独り言を言う。
「そんなに自分を責めなくてもいいのに。ユージーンのお陰であたしは気持ちが楽になれたし。すごく
気持ち良くて、途中からはあたしが誘ったようなものなのにね。今度はあたしから誘って慰めてあげよう。
……ユージーンのアレ…あんなの初めてだった。…また、したいな…」
 夕べのことを思い出すとアーチェの秘所は熱を持ち蜜がじんわりと染み出してきた。そして、堪らなく
なったアーチェは自身の秘所に手を忍ばせ蜜を絡め取り、その指を見る。指にはアーチェの蜜と夕べの
名残のユージーンの白い精液がとろりと絡みついていた。アーチェの脳裏に夕べの情事がフラッシュバック
する。欲情した、アーチェは疼く花芯を蜜を絡め取りながら円を描くようにゆっくりと擦り、次に上下に
スピードを加えて強めに擦る。片方の手は乳房を掴み、握るように揉み、乳首を指で摘みながら刺激を
与える。
「ぁあっ! はっっ。あんっあああぁんっ」
 アーチェは激しい快感に立っていられなくなり床に崩れ落ちた。そのまま床に寝転がると、秘所を弄っ
ていた指を蜜壷の中へと進入させていく。初めは一本だけ入れたが、物足りなくて指を二本、三本と増やし
ていく。しかし、アーチェの指は短くて奥までは届かない。そのことにもどかしさを感じていると、自分が
武器としても使っていた箒が目に入った。箒を掴むとアーチェは柄の部分を蜜壷の中へと挿し入れる。
「ひぁっ! ああぁんっ!!」
 箒の柄はユージーンのモノほど太くはなかったが、アーチェが快楽を得るためには十分な太さだった。
夕べのユージーンの腰の動きを思い出しながら、箒の柄を何度も抜き差しする。箒の柄には溢れた蜜が
絡みつき出し入れする度に、空気との摩擦でじゅぷじゅぷと嫌らしい音を立てた。アーチェは夢中で箒の
柄を抜き差しする。その速度も次第に速くなり、快楽からの開放の時が近付いていた。
「んっあああぁぁぁーっ!」
 そして、アーチェは快楽の頂上へと上り詰め一気に開放すると、箒の柄を抜くことすら忘れて恍惚とした
表情で中空を眺めていた。

 暫く、その状態でいたアーチェであったが、身体の熱が冷めると意識も取り戻し、箒の柄を抜くと
近くにあった紙で柄の汚れを拭き取り壁に立てかけて、その後に衣服を整える。そして何事もなかった
かのようにテーブルの上の朝食へ視線を落とした。冷めてしまった料理を温めようとアーチェは辺りを
見回したが、この世界に来たばかりの為に、どの道具を使えば良いのか解らなかった。
「魔法…使えるかな? 試してみよう。ファイアーボール!」
 取り敢えず調理台らしき物に向かってアーチェは炎の魔法を唱えた。
「あっ! 使えるみたいだね」
 加熱調理台に火が灯ったことを確認すると、鍋やフライパンと思しき調理器具で料理を温めた。
…が…あのアーチェには、それすら無理なようであった。温めるだけのはずの料理が全く別の物へと
変貌してしまった。流石「××料理人」の称号を持つだけはある。
 なにやら怪しい物質へと変わり果てた朝食を食べながら、アーチェはあることに気が付いた。
「この世界でも魔法は使えるってことは…道具さえ見つければ時空転移の魔法も使えるって事?」
 そう思ったアーチェは急いで「怪しい物体」を食べ終わらせ後片付けをすると、取り敢えず、家の中
からエターナルソードに変わる物がないか探し始めた。まずは書棚を開け、それらしいことが載っている
本がないか探す。しかし、そういった文献らしき本は一冊もなく、それどころか男の一人暮らしらしく
「色本」が数冊出てきた。
「あははっ。ユージーンもやっぱり男の人なんだ」
 出てきた「色本」を眺めながらアーチェは妙に納得してしまった。そしてつい、その「色本」を読み
ふけってしまう。中には興味深い性技に付いて書かれてあった。
「そうだ。ユージーンが帰ってきたら、コレ試してみようかな。その為には使えそうな道具を探さないとね」
 アーチェは最初とは全く違うことに家捜しの意義を見つけてしまったようだ。その道具を探して家の中を
探していたら一つは台所にあってすぐに見つけることが出来た。もう一つは絶対に無いだろうと思っていたら、
意外なことに、自分が使わせてもらっている客間のクローゼットの奥に隠すように仕舞われてあった。
「見ーつけたっ。へぇー、ユージーンってそんな趣味があったんだ」
 発見した道具を見てアーチェはユージーンの意外な一面に、と思って可笑しな気分になった。
「道具も揃ったし、後はユージーンが帰ってくる日を待つだけだね」
 そして、アーチェは見つけた道具で「色本」に書いてある性技の練習をしながらユージーンの帰りを
待つことにした。

 ユージーンが城詰めの間に調べた本には時空転移については記載されていなかった。その手掛かりすら
載っていなかったのだ。何一つ手掛かりを得られず、城詰めの仕事を終えたユージーンは気落ちしながら
帰宅した。そんなユージーンの気持ちを晴らすかのようにアーチェは明るく元気よく彼を出迎えた。
「お帰りなさいませ! ご主人様!」
「…アーチェ? お前、その姿……」
 目の前に現れたアーチェのメイド姿にユージーンは腰を抜かして玄関先に座り込んでしまった。
「ふふっ。どう? 似合う? ユージーン。今日は沢山、ご奉仕してあげるね」
 そう言うと、アーチェはユージーンの手を引き居間へと誘った。
「ご奉仕? まさか、お前…アレを見つけたのか?」
 ユージーンにはアーチェのこの姿と態度に思い当たることがあった。そう、アノ「色本」と「道具」の
メイド服だ。嬉しいような困ったような気分で戸惑いながらアーチェにその事を問いかけた。
「うん。そうだよ。ユージーンって、そういうのが好きだったんだ。ユージーンも隅に置けないね」
 楽しそうに笑いながらアーチェは答える。
「さあ、ご主人様。こちらへお座りになって下さいませ。お酒のご用意をいたしますね」
 ユージーンを居間の椅子に座らせると、アーチェはその隣に座り、スカートを捲り上げてきつく閉じた
内股にテーブルに置かれた酒を注いだ。
「ご主人様。お酒をどうぞ」
 にっこり笑ってアーチェは内股に注いだ酒をユージーンに勧める。ユージーンがソコを見たまま固まって
いるのに気付くとアーチェは明るく言った。
「コレって“わかめ酒”って言うんでしょ? ほら、ココの毛を“わかめ”に見立て。…ちゃんとお風呂に
入って丁寧に洗ったから綺麗だよ。遠慮しないで飲んで。ユージーン。早くしないと零れちゃう」
「あ? ああ。い、いただこう」
 あまりにもあっけらかんとしてアーチェが言うので、言われるがままにユージーンはアーチェの内股の
酒を顔を近づけて啜った。
「ちゃんと、残さずに飲んで下さいね」
 酒を飲み干し顔を上げようとしたユージーンの頭を押さえ込み、アーチェは自身の茂みに染み込んだ酒も
残さず舐め取るように言う。
「あ、ああ…」
 ユージーンは舌で絡め取るように茂みを舐め、口を寄せて吸い付き酒を綺麗に飲み干した。その舌の
動きと座れる感覚に、アーチェは快感を覚えた。そして秘所からは新たな美酒が湧き出でる。
「あっん…ユージーン…ご主人様…こっちのお酒も飲んで…下さいませぇ」
 アーチェは足を開きユージーンの両肩に乗せて、芳しい美酒の溢れる秘所を顕にした。
「いいのか?」
 その誘いに生唾を飲み込み、濡れそぼる秘所を儀視しながら躊躇いがちに問いかける。
「うん…はい。お願いします。ご主人様」
 アーチェが頷くと同時にユージーンは、彼女の秘所にむしゃぶりついた。舌先で器用に茂みと肉襞を
割り、硬くしこった突起を舐め上げる。舌が突起を刺激すると、奥から蜜が溢れ糸を引きながら滴り落ちる。
それを零さぬように、ユージーンは口を寄せ吸い上げた。
「ああっんっ! ご主人様ーっ!」
 アーチェはユージーンの頭にしがみ付き、その刺激に堪えた。アーチの秘所がが美酒を流せば流す
ほど、それを隠す花弁もヒクヒクと蠢く。

 刺激を受けて快楽を得ていたのはアーチェだけではなかった。ユージーンもまた股間のモノに血液が
集中し、焼けるほどに熱くなっていたのだ。ユージーンはアーチェの秘所を舐め上げながら、片手で
ズボンのベルトと止め具を外す。そして、中から硬くそそり立つモノを取り出すと、自身の手で扱き始めた。
「あっ…待って…ご主人様…ユージーン。あたしがして上げる」
 アーチェはユージーンから離れると彼の前に跪き、熱く硬い欲望のモノを口に含み扱き始めた。唾液を
絡め、彼のモノから零れる液と混ぜ合わせながら舌と唇を使って上下に扱く。ネチョネチョと舐め上げては、
ちゅるちゅると吸い上げ、頭を上下に動かしユージーンのモノに快感を与える。
「くっ…はぁっ……アーチェ、もう止めろ。でないと…」
 激しい快楽にアーチェの口中に精を放ってしまいそうになった、ユージーンは彼女を引き離す。
「どうして? 別に口の中に出しても構わないのに」
 不思議そうにアーチェが言うと、ユージーンは少し困ったように言った。
「…俺は…お前の口中ではなくて、お前の中に出したい」
「そうなの? じゃあ、お願い…あっ!!」
 ユージーンの言葉を聞き、アーチェは椅子に座る彼の股間に跨るようにして、はちきれそうになっている
モノを自身の中へと咥え込んだ。
「んっ…うっくっ……はぁはぁっ…はぁっ」
 アーチェの中へと自身のモノが入り込むと荒く熱い呼気を吐きながら、ユージーンは下から彼女の
秘所の奥を突き上げた。
「あんっ。あんっ! ああぁん…はんっぁぁん」
 アーチェも腰を上下に動かしながらユージーンのモノを自身の中で蜜を絡ませながら締め上げ扱く。
 二人の動きはより強い快感を求め動きを激しくしていく。ユージーンが腰を突き上げ、アーチェが腰を
落とす、二人の肉がぶつかる音が部屋中に響き渡る。その音が次第に高く大きく早くなっていく。そして、
二人同時に悦楽の頂上へ達するときが来た。
「アーチェっ。くぅっ!」
「あっ! ユージーンっ!! あっあああぁぁぁぁっ!」
 二人が頂上へ達した、その時だった。部屋中に目も眩むほどの光が発し、落雷に似た轟音が響いた。
 次の瞬間、ユージーンが目を開けると、目の前で繋がっていたはずのアーチェの姿は無かった。どこかへ
飛ばされたのかと、辺りを見回したが何処にも居ない。あれほどに深く熱く交わり繋がっていたアーチェが
忽然と消えてしまったのだ。

 ユージーンが何が起こったのか解らずに、呆然としていると玄関の音を叩く音と自分を呼ぶ声が
聞こえてきた。
「…誰だ?」
 何が起こったのか理解できぬまま、取り敢えず衣服を着るとユージーンは玄関先に向かった。
「こんな時間に、何か用か?」
 ドア越しに用向きを尋ねると、外からは部下の声がした。
「隊長! 大変です。陛下が…陛下の一大事です!」
「何! 陛下の容態が悪化されたのか?」
 部下から陛下の身に危機が迫ったと知ったユージーンはドアを勢いよく開ける。そして、報告に来た
部下に掴みかかるようにして問いただした。
「く、詳しくは解りませんが、ミルハウスト将軍が隊長に急いで城に戻るようにと」
「解った。すぐ行く」
 ユージーンは部下と共に急ぎ走りながら、王城へと向かった。王城へと到着すると門のところで僚友の
ミルハウストが待っていた。
「急げ! ユージーン!」
「ああ!」
 ミルハウストはユージーンと共に王城の祭壇へと急いだ。二人が祭壇へと向かうと、そこにでは、病に
臥しているはずのラドラス王が、空に向かって自身のフォルスを解放しようとしていた。
「お止め下さい! 陛下!」
「陛下! 何をなさるのです。そのような事をしたら世界は…」
 二人が止めに入ったが、時既に遅しであった。ラドラス王は自身の持てるフォルスの全てを開放して
しまったのだ。フォルスの全てを開放したラドラス王は、そのまま倒れこみ息を引き取った。

 ラドラス王がフォルスを開放したことにより、世界は未曾有の大惨事を招くことになった。本来なら
持つことが有り得ないヒューマ族にもフォルスが現れ、使いこなせず暴走させる事件が多発した。多くの
悲劇が各地で引き起こされた。
 この日を後に、ラドラスの落日と人々は呼んだ。ラドラス王が、フォルスを開放するという暴挙に
出たのは、満月が赤く怪しく光る夜のことだった。
 そして、ラドラス王の病が悪化し始めた時期に現れ、フォルスを開放した夜に消えたアーチェ。アーチェと
この悲劇の関連性は誰にも解らない。しかし、時空の歪みを生んだこととは何らかの関係があるのかもし
れない。


−終り−


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