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作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
酒は○薬の長なり |
水王氏 |
ルーク×ティア |
2006/01/18 |
2006/01/20 |
マルクト帝国・首都グランコクマ。
その宮殿に、ピオニー9世の賓客として二人が迎え入れられていた間の出来事。
――――始まりは、青年の何気ない一言からだった。
「なあ、ティア。酒って美味いモンなのか?」
グラスに注がれたキルマフルーツのジュースをちびちびとストローで吸い上げながら、ルークは
幸せそうな面持ちでファンシーショップのカタログを読み耽ける眼前の女性へとそう問いかけた。
「なぁ、ティア。聞こえてるかー?」
「――――え?ご、ごめんなさい。つい夢中になってしまってて」
「ったく。お酒だよ。お・さ・け!あれって、美味いモンなのかなー、って聞いたんだよ」
恍惚の溜息を漏らしていたところを急に現実に引き戻されたティアは、その質問に首を傾げた。
「さあ・・・わたしに聞かれても、実際に飲んだ事がないから答えようがないわ」
「あ、そっか。ティアってまだ未成年だもんな・・・なんか、お姉さんぽいから、つい忘れてた」
「そういう貴方は、もう二十歳なのよね。わたしもすっかり、忘れてたわ」
「へいへい・・・・どーせ、俺はガキっぽいですよーだ」
半眼になり、ずず、とわざとらしく大きな音を立ててグラスを空にしてルークは答える。
「年齢的な点で見れば、貴方はもう立派・・・・とは言い難い気もするけど、一応の飲酒も許されて
いるのよ。気になるのなら、試しに飲んでみてもいいと思うけど」
「・・・それもそうだな。じゃあ、ガイにでも頼んでみるか!あいつも結構、飲んだりしてるし」
ティアの言葉に頷いてから、言うが早いか、ルークは腰掛けていた椅子を蹴る様にして立ち上り
部屋を後にしようとした。
「ちょっとルーク、ガイはまだ仕事中かもしれないのよ。邪魔しちゃいけないわ」
「平気だって。それにもしガイのヤツが忙しくても、ジェイドだっているし。じゃ、行ってくる!」
カタログを閉じて引き留めるティアの言葉も空しく、声を引きずらせながら駆け出すルーク。
「あ、ルーク!・・・・・もう、思いついたらホント、止まらなくなるんだから」
ティアは呆れる様に呟いて再び手にしていたカタログを開いたが、妙に心に引っ掛かるモノを感じ
ルークが飛び出していった方向に視線を移した。
「――――大佐に相談って・・・何か可笑しな事にならないか、ちょっと心配だわ・・・・」
過去の経験から、少し不吉な予感に襲われたティアであったが、結局は悩んでみても仕方がないと
判断したのか、結局はすぐに手元に広がる夢の空間へと没頭していくのだった。
「と、言うわけで・・・・ルークの奴、一丁前にも大人の仲間入りがしたいといってきたわけなんだが」
マルクト軍基地本部、ジェイド・カーティス大佐の執務室にて、ガイは事の顛末を説明し終えた。
「なるほど。先日の一件といい、彼も順調にステップアップを果たしている様ですねぇ」
手にした書類へのチェックは怠らぬまま、ジェイドは満足気に頷いてみせる。
「楽しそうだな、旦那。―――――話は変わるんだが・・・・最近、ピオニー陛下が使われている専用の
酒蔵に入っていく、アンタの後姿を見たって噂を耳にしてね」
「おやおや。この私が、人に見つかる様なヘマを仕出かすとお思いですか?」
壁に寄りかかりながら白々しい態度で問いかけてきたガイに、やはり書類から手は離さずに大仰に
肩を竦めてみせてから、ジェイドは質問で返してきた。
「後を・・・・つけましたねぇ、ガイ」
一度言葉を区切ってから、にたりと笑みを浮かべてみせながら、ジェイドはガイへと視線を移す。
「ご名答。偶然だったんだけどな。ま、そういうわけで・・・大佐殿に協力を頼みに来たって次第さ」
「仕方ありませんねぇ。本意ではありませんが、御協力致しましょう」
「ノリノリの表情をしておいて、よく言うわ・・・」
相変わらず、喰えない男だとしっかり付け加えておいてから、ガイは壁から身を離した。
「いえいえー。他人にストーカー紛いの行為を行う方よりは、よほど善良だと思いますよ」
「ス、ストーカーだなんて、人聞きが悪いぜ、旦那。―――それよりも、今はまずルークへの贈り物を
検討してやるべきだと思うんだが」
後ろ暗い部分があるのか、その言葉に動揺の色を見せつつも、ガイは話題を元に戻した。
「――――まっ、それもそうですね。丁度、仕事の方も片付きましたし、早速・・・潜入と行きますか」
意外な程にあっさりとガイの提案を飲むと、ジェイドは音も立てずに椅子から腰を上げた。
「おー・・・・・流石は、マルクト帝国皇帝専用、というだけの事はあるわ。これは」
「関心ばかりしていないで、手を動かして下さいよ。陛下は夜以外、余りここへは訪れませんが・・・・・・
だからといって悠長に構えている暇もありませんので」
日の差さぬ、ひんやりとした空気に満たされた巨大な酒蔵の中で、二人は既に物色を開始していた。
「しっかし、また数が多いなー・・・・鬼教官に、ライガ殺し・・・他も錚々たる品触れだな、こりゃ」
「水質の良い、グランコクマならではの銘柄ばかりですからねぇ。エンゲーブライスの品種改良も
近年は盛んになってきていますし、新しい銘柄の方も見逃せないところですよ」
「風土的にワインよりは、清酒の方が向いてるってわけか。・・・・お、こりゃ凄いのがきたぞ」
嬉々とした表情でガイは一際大きな瓶を手に掴み、そのラベルを確認する。
「その様子だと、ガイのオススメは決まったようですねぇ」
「そういうアンタだって、とっくに一押しは決めてあるんだろ?避暑地の王者あたりか?」
「それは見てのお楽しみ、という事で」
「ほーう・・・・それなら、俺の方からお披露目といかせてもらうか」
自身有り気な表情のジェイドに対抗するかの如く、ガイは手に取った酒瓶を高く掲げてみせた。
ドンッ!
「・・・・・やはり、それで来ましたか」
やってくれますね、と独白する様にジェイドは呟いた。
「大魔王――――俺はこれを出させて貰うぜ」
出すも何も、自分の所有物でもない物をやたら手荒に扱うガイ。
古い木製のテーブルの上に置かれた酒瓶を間に、二人は対峙する。
「それでは・・・・・私の方もこれを出させて頂きましょうか」
くい、と右の中指でもってかけた眼鏡を小さく押し上げると、ジェイドはもう片方の手を傍らに
あった大きな木棚の方へと伸ばし、そこに安置されていた一本の古ぼけた酒瓶を取り出した。
無論、こちらも出すと言っても、当然自分の所有物ではないわけだが。
「そ、それはもしや――――預言壊し、か・・・・」
「ご存知でしたか。流石はガイ、と言わせて貰いましょう」
とん、と軽い音を立ててその瓶がテーブルの上へと置かれる。
「・・・・・・ふふ・・・・ふふふふふふ」
暫しの静寂の後、どちらからとも無く低い笑い声を洩れ出せて、二人は互いの意思を確かめる様に
してゆっくりとした動作で頷きあう。
「混ぜるか、旦那」
「いいですねー。きっと、悦んでくれるでしょう」
さながら悪魔の笑みを見せると、二人は静かな、そして心底楽しそうな足取りで酒蔵を後にした。
無論、半分は混ぜて、残り半分は自分達で美味しくつもりで。
「じゃっじゃーん!ティア!見てくれよ!」
ピオニー達との和気藹々、と一言では片付けられぬ何度目かの夕食を今日も済ませ、入浴を終えて
寝室で丹念に髪を乾かすティアの前に、同じく風呂上りのルークが姿を現した。
「ルーク。きちんと髪を拭かないと、また身体を冷やすわよ」
「わーってるよ、毎日うっさいな・・・。それより、これを見てくれよ、ほら!」
濡れ坊主な姿を咎められてルークは一瞬口をへの字に曲げ、すぐにまた大げさな様子で手に持った
透明な瓶をティアの目の前の机の上へと置いてみせた。
「あら・・・・これってもしかして、昼間に言っていた・・・お酒?」
「そ!ガイのヤツが、ジェイドと一緒に俺用に選んでくれたんだ。すっごい上物なんだってよ!」
「それにしては、銘柄を示すラベルも何も貼ってないようだけど・・・・」
目の前で今にも小踊りしだしそうな様子のルークを余所に、ティアは机の上に置かれた瓶を怪訝な
表情で眺めていた。
「それに、蓋だってもう開けられているのもおかしいわ」
「細かいことなんか、気にすんなって。それよりティア、一緒にコイツ飲まないか?」
どこに隠し持っていたのか、陶器製のコップを二つ取り出して、ルークは机の上にそれを並べる。
「わたしは・・・・・まだ未成年だし遠慮しておくわ」
「堅い事言うなって。風呂上りの一杯は格別だって、ガイが言ってたぜ」
「・・・・そういう事ばかり、教えてもらっていたら駄目よ。貴方」
やや冷たい調子でそう返すと、ティアは手にタオルで再び自分の髪を乾かし始めた。
ティアのその様子に、ぷーっと頬を膨らませてルークむくれてみせた。
「へーんだ。じゃあ、俺だけ楽しませて貰うからな。折角、ティアのコップも持ってきてやったのによ」
不機嫌そうにそう言い放ってから、ルークは酒瓶を手に取り蓋を外すと、その中身の液体を並々と
コップに注ぎ始める。
「ちょっと・・・・注ぎ過ぎじゃないの。それ」
「俺の勝手だろ。飲みもしない人間に、一々指図されたくヌェーっての」
ティアの忠告の言葉も無視して、ルークは溢れんばかりになったコップを口元に運んだ。
ぐっ、ぐっ、ぐっ・・・・・・
冷えたはずの液体に、喉を焼かれる感触を感じながらも青年はそれを一気に喉内へと流し込む。
「――――っぷはぁっ!しみるぅ〜っ!」
一息に半分程の量を飲み干して、ルークは「はぁ〜っ」と大きく息を吐き出しながら目を伏せた。
「・・・・・大丈夫、ルーク?」
「ん?何がだよ。結構、辛いっていうか、刺激的だけど・・・・これ美味いぞ」
心配そうにして青年の顔を覗きこむティアに、ルークは平然とした面持ちで答えた。
(ルークって、お酒に強いのかしら・・・・それとも、あのお酒が特別だとか)
ルークの誘いを建前から断ってはみたものの、本心では少なからず飲酒行為というものに興味が
あったティアは、嬉しそうな表情で尚もコップを傾ける青年の姿をまじまじと眺めた。
「・・・・そんなに美味しいの?」
「美味い美味い。流石ガイのオススメは、一味違う!」
他に酒を飲んだ事もない癖にそんな事をいう青年に、ティアはおずおずと声をかけた。
「ルーク・・・・わたしも、ちょっとだけ飲んでみたいのだけど・・・いいかしら」
僅かに鼻先へと漂ってきた、えも言われぬ酒気に引き寄せられそうになりながら、ティアは既に
その視線を机の上にある酒瓶へと移していた。
「えー。未成年はダメなんだろ。今頃になって、都合がいいっつーの」
「そんな事言わないで。さっきは、わたしが悪かったわ」
「だーめーだ。大人の特権ってヤツだから、子供は大人しく寝てろよ」
「何よ!自分だって子供みたいなものじゃない。いいからわたしにも、の・ま・せ・な・さ・い!」
しっし、と片手で追い払う仕草をしたルークの態度に、ティアはカチンときてしまい、声を荒げて
酒瓶とコップを強奪しようと机に向かって身を乗り出した。
「あ、こら。まだ俺が飲むんだから、勝手に取るなっつーの」
「一口くらい、いいじゃない。ほんのちょっと、味見してみたいだけよ」
口論しながらも、ティアは酒瓶を首尾よく手にし、素早い挙動でその中身をコップに注ぎ始める。
―――とっ、とっ、とっ、とっ・・・・・・・
「・・・・なーにが、一口だ。この、強欲女」
「もう、うるさいわね・・・・・んっ・・・」
その様子を横目で見ていたルークのツッコミを無視して、ティアは自分の口元へ容器を傾けた。
・・・こくっ・・・こくっ・・・こくっ・・・・
透明な液体が流し込まれる度に、ティアの細い喉元が小さく動きをみせる。
(・・・・なんか、ティアのお酒飲んでる姿って、妙に色っぽいな・・・・)
「―――っん・・・・はぁー・・・・っ」
ことんっ。
その仕草にルークが目を奪われている間に、彼女は一気にコップの中身を空にして、元あった机の
上へと戻して終えていた。
「うお、もう全部飲んじまったのかよ。ティア・・・・」
「ええ。―――確かにどうという事もなさそうだけれど・・・ルークの言う程には美味しくもないわね」
「あんだけ凄い勢いで飲んでおいて、その感想かよ・・・・」
けろりとした顔で青年の驚嘆の声に返しておいて、ティアは再び机の上の酒瓶へと手を伸ばす。
とっ、とっ、とっ、とっ・・・・・
「・・・・いや、お前、美味しくないと思うなら別にそんなに飲まなくてもいいから」
待て、といった感じで左手を出して制止の声を上げるルークを完全に無視して飲酒を続けるティア。
「いいんです。わたしは貴方よりもお姉さんなんですから、これくらいは当然です」
「言ってる事、可笑しくなってきてるよ。この人・・・・」
恐ろしい勢いで杯を傾けていくティアの迫力に押され、ルークは自分が飲むことも忘れ、唖然として
その様子を眺め続けた。
「なあ、ジェイドの旦那。一つ聞いても構わないか?」
ガルディオス家の一室、まだ碌に客人も招待した事のない応接間で、二人は杯を交し合っていた。
「はい。なんでしょうか、ガイ」
「あのルークに渡したお酒の事なんだが・・・・・・あれって、やっぱ飲み慣れてないヤツには強烈すぎる
様な気が、今更ながらにしてきたんだが」
「何を質問なさってくるかと思えば、そんな事ですか。―――――ご心配には、及びませんよ」
珍しく私服で訪れてきていたジェイドが優雅にグラスを傾けながら、預言壊しを口に含んで答える。
「あのお酒は、確かに度数もそれなに高く、酔いも回りますが・・・・悪酔いする様な事はないでしょう」
「そうか、安心したよ。つまんない事を聞いて悪かったな。ルークの事だから、誰かが止めないと調子に
乗ってがぶ飲みしたりするんじゃないかと、少しばかり心配になってな」
「そうなる前に、普通に酔い潰れて寝てしまうと思いますよ。この時間ですしね。ま、予想以上に酒に
強かったとしても、あちらにはティアもいる事ですし」
ガイとは対照的にさして心配もせぬ様子でジェイドはそう言うと、既に空になっていたガイの杯へと
酒瓶を差し出し、傾ける。
「お、悪いね。―――ま、アンタの言うとおり、ティアもいるし大事にはなりはしない、か」
「ええ。・・・・・・飽く迄、普通に飲む分には、話ですが」
「ん?今、何か言わなかったか?」
「はいー。彼女がいれば安心です、と言ったんですよ」
涼しい顔で再度グラスを傾けてそう言うジェイドに、ガイは「そうか」とだけ返して自分の杯を傾けた。
―――そしてガイが安堵の表情を浮かべながら酒を大きく呷った、その一瞬。
『死霊使い』と畏れられた男は、会心の笑みを顔に浮かべて宮殿の方角へとその視線を向けていた。
人間というモノは、常日頃経験している事態に対しては割と容易に、対処できるモノである。
逆をいえば、常日頃経験していない事態に対しては・・・まあ、言わずもがな、である。
「ばかるーく。そこどいて。わたしが寝れないでしょう」
「へいへい・・・・って、おい。ティア、酒瓶持ったまんまベッドに入るな!」
「ひとの勝手でしょー。いちいちうるさいー」
「ちょ、ちょっと待てよ!・・・・・あー、もう、スリッパくらいちゃんと脱げよ〜」
既に目を完全に据わらせた状態になってわがまま放題の彼女に、ルークは完全に翻弄されていた。
「うひー・・・・中身もう半分以下じゃねぇか。こら、寝るんならちゃんと着替えてから寝ろって!」
寝台の上にちょこん、と内股座りの体勢になって酒瓶を抱え込むティアを相手に奮闘するルーク。
(なんつーか、酒癖が悪いとかじゃなくて・・・・子供に戻ってるっていうのか、これ・・・・)
結局あれから、ルークは次第に様子をおかしくしていくティアの面倒を見る事に追われ、自分は碌に
酒も飲めない内にこの状況へと流されていたのだ。
「ほら、酒瓶よこせって・・・・・・ったく。あ、おい!だから着替えろって・・・寝るなっ!」
「ぐー・・・・・」
「だーーーーーーっ!頼むから、人の話聞けよ!」
支えにしていた酒瓶を取り上げられて、そのまま寝台の上に崩れ込むティアに、青年は両手で自分の
髪をガシガシと掻き毟りながら天を仰いだ。
「・・・・・・・・・」
「お・・・・着替えてくれる気になってくれたのか。ティア」
唐突にむくり、と身を起こし自分の方を見つめてきたティアに、ルークは思わず安堵の声をあげる。
「―――着替えさせて」
「・・・・・は?」
それだけを言うと両腕をだらん、と前に差し出してまた動かなくなるティアに、ルークは唖然とした
表情でその動きを停止させた。
「きーがーえーさーせーてー。めんどうくさいーっ!」
「な、なななななっ!?」
一向に反応を見せぬルークに業を煮やしたかの如く、寝台に倒れこみ手足をバタつかせるティアと
その口から発せられた言葉の意味をようやく理解し、慌てふためくルーク。
「な、な・・・何言ってんだお前!そんな恥ずかしい真似、できるわけねーだろっ!」
「・・・・・るーくの、わたし着替えさせてあげたもん」
「古い事を引っ張り出すな!」
全然、古くない話だったりするのだが今のルークにはそんな事よりもティアの無理難題をなんとか
回避する事の方が重要であった。
「ぶーーーっ・・・・・・もう、いいもーん。じぶんで、きがえるから」
そっぽを向いてからそう言うと、ティアは定まらない手付きで自らのガウンの裾へと手を掛けた。
「わーーーーーっ!タンマっ!お前、そういうの恥ずかしい事だって自分で言ってたじゃねーかよ!」
「んー・・・・・るーく」
緩慢な動作でもって服を脱ぎ始めたティアが、その動きをピタリと止めてルークへと声をかけた。
「わ、わかってくれたのか、ティア」
「うでがつかえて、うごけない。るーく、こっちひっぱって」
「・・・・・・・勘弁してくれよー」
しかし、泣き言を言ったところでこの状況が好転するわけでもない。
仕方なくルークは彼女のガウンへと手を伸ばして脱ぐのを手伝おうとした。
「灯り消して。まぶしい」
「わーったよ・・・・・ほら、これでいいんだろ」
眩しそうに顔をしかめて見せたティアの言葉に従って、ルークは譜石照明のスイッチを切った。
「ほら。腕動かして・・・・・よしよーし、いい子いい子」
「子供あつかいしないで・・・・・んっ・・・・・・・」
ルークの誘導に従って、ティアはガウンを脱ぎ終えて下着だけの姿になると、そのままごろんと
寝台の上へと倒れ込んでしまった。
「おーい、着替え何処に置いてんだよ・・・・俺、わかんねーぞ」
「ぐー・・・・」
「風邪引くぞ、ホントに・・・・・ったく、だらしねえなぁ」
額に手を当てて溜息をつくルーク。
(それにしても、やっぱティアって綺麗な身体してるよな・・・・)
先程から否が応にでもその視界に入ってくるティアの白い肌を前にして、彼女との初めての夜の
出来事を起こしたルークは、自分でも知らぬ内にその股間の一物を大きく盛り上がらせていた。
―――自分の手の中で、狂おしく、切ない声を上げ、痛みを堪えていたティアの表情。
―――艶やかに、けれど敏感に反応するやわらかな肢体。
その情景が鮮やかに脳裏に思い起こされて、ルークは自然、湧き上がってきた生唾を飲み込む。
(この間のでもう子供ができちまうんなら、もう一回ぐらいしても問題ないよな。・・・・多分だけど)
ジェイドから聞いた話で、子供が産まれてくるにはもう少し時間がかかる事をと知らされていた
ルークは、勝手にそう結論付けて自分を納得させると、寝台の上に横になって寝息を立て始めた
ティアの肩へと手を伸ばしていった。
「っん・・・・」
(―――やべ、色っぽいぞ・・・・これ)
肩を揺さぶられてくぐもった声を洩らすティアの寝姿に色気を感じ取り、ルークは胸を高鳴らせ
ながら寝台へと自身の身体を滑り込ませていった。
「しっつれいしまーす・・・・」
微妙に悪い事をしてる気分があったのか、こっそりとそんな事を口にしながらもルークは彼女の
背後に位置取る形でその腕を彼女の身体に廻していく。
「ゃ・・・・・・・んぅ・・・・・・・」
ぴと、とその肌に手が触れた瞬間にティアは微かに声を上げて身を捩らせたが、それ以上の動きは
みせずに、すーすーと静かな寝息を立てるだけであった。
「・・・なんか反応ないのも、つまんないな・・・・・よーしっ」
そんなティアの様子に身勝手な感想を洩らし、ルークはその顔に悪戯っぽい笑みを浮かべながら
彼女の下着を脱がし終えると、その掌を大胆に動かし始めた。
身体の上側から右手でむに、と柔らかな感触の乳房を掴み、左の掌はベッドと腰の間に滑り込ませ
彼女の一番大事な箇所へと、その指先を持っていく。
「やっぱ、ティアの身体ってやわらけー・・・・ふれてるだけで気持ちいいな、ホント」
うっとりした面持ちになりながら、ルークは右手で溢れそうになる胸の柔肉を優しく揉みしだき
左の中指を使って薄い繁みをかき分け始めた。
「あ、あれ・・・・おっかしいな・・・この間みたいにここ、濡れてねえぞ」
「んー・・・・なにしてるの、ルーク・・・・?」
「わ、ティ、ティアっ」
予想外の事態と、突如目を覚ましたティアに驚き、慌てふためいて焦りの声を上げるルーク。
「こ、これには深いわけが・・・・・・ないけど・・・・ちょ、ちょっとした出来心で、つい」
以前、彼女に忠告されていた「興味本位や欲望で行ってはいけない」という言葉を、今更になって
思い出したルークは必死に言い訳を考えてみたが、中々にいい言葉が出てこずに語尾を濁した。
(どーしよう・・・ティアって潔癖なとこあるから、約束やぶったのがばれたりしたらもう二度と俺に
身体触れさせてくれないかも知れない・・・・)
蒼白になってそんな事を考えるルークに向かい、ティアはくるり、と体勢を入れ替えて口を開いた。
「ルークの・・・・えっち」
「な、何言ってんだよオメー!別にそういうつもりでさわってたわけじゃねーよっ」
「・・・・したくないなら、べつにいいよ。さわんなくて」
ルークの言葉を聞いて、ぷい、と顔を背けてティアは瞳を伏せる。
「し、したくないってわけでもないんだけど・・・・・」
意外な反応を示すティアに、ルークは狼狽しながらも素直に返事を返した。
「ん・・・・・じゃあ、どうぞ」
そう言うと、ティアは薄く目を開いてルークの動きを待つように、肘を折り曲げて両腕を胸の前に
添える形で突き出してみせた。
その腕に挟まれ、二つの乳房がこぼれ出す様にしてルークの眼前に姿を現す。
「あ、ああ・・・・しかし、本当にこうして見るとメロンみてーだよな、ホント」
「うるさいっ・・・・めろんってゆーな」
余計な事を言ってから、ティアのたわわに実った果実へとそっと口を運ぶルーク。
(てか、実は二年前よりも大きくなってねぇ?これ・・・)
舌と指でもってゆっくりと愛撫を行いながら、ルークはそんな事をちらっと考える。
「・・・・んっ・・・・もうちょっと、つよくして」
酒が回った影響なのか、ルークの与えてくる刺激を弱く感じてティアはそんな事を言い出した。
「つよくって・・・・ちょっと、乱暴になるかもしんないぞ、ティア」
「・・・痛いのは、いや」
「・・・・ワガママだなー・・・・・ま、いいや。それじゃ、いくぞ」
要望に答え、ルークは自分の口にティアのまだ硬さを見せぬ胸の突起を含み、強く吸い上げてみせた。
「んっ・・・・い、たっ・・・・っ!」
苦悶の表情を浮かべるティアを無視して、ルークは舌先を素早く動かし、押し付け、舐め上げていく。
ぴちゅ、ぺちゃ・・・・ちゅ、ず、ちゅ・・・・・
「―――んぅ・・・・ルーク・・・・そんなに、音たてちゃダメ・・・」
舐め上げる際に発せられる濡れた音が気になるのか、ティアは先程までより少しだけはっきりとした
口調でルークに抗議の声を上げる。
「ルーク・・・・・・っぁ!?」
ちゅぽんっ、と一際大きな音を立てながら勢い良く先端から唇を離され、ティアは小さく叫びを上げ
半身を仰け反らせた。
「ん。ごめん・・・・・ちょっと夢中になってた。何か言ったか?」
「・・・・音、恥ずかしいからあんまり立てないで」
「うわ、マジワガママ・・・・音立てずに痛くせずに強くしろって、そんなん無理だっつーの」
つい洩らしてしまったルークの正直な思いを耳にして、ティアはまたもぷいっ、と顔を背けて瞳を閉じ
不機嫌そうな表情になった。
「だって、すごく痛いんだもん。アレするの」
「そ、そんなに痛いんなら・・・・無理には言わねえよ」
「・・・・ルークに、さわってもらうのは、すき」
顔を逸らしたまま、ほんの少しだけ頬を赤くさせながらティアはそう言った。
(ティア・・・・・)
元より気丈な性格の彼女が「痛い」というのであれば、それは相当なものなのだろうと予測する事は
ルークにもできていたが、それでも尚、自分とこうしている事を好きと言ってくる彼女に対して青年は
胸の中に温かい気持ちが溢れてくるのを感じていた。
「でもよ、ティア。俺、お前とこうしてると、その・・・・また、最後までしたくなるし」
「最後、痛いのいや。痛くしないって約束するなら、最後までしてもいい・・・」
「あのなー・・・・」
しかし、結局は調子を変えずにわがままな事を言い続けるティアに、ルークは肩を落として嘆息した。
(でも、まあ・・・・・さわるのは嫌じゃないんなら、ふれるだけでもいいか)
こちらも結局はティアの身体の魅力と自分の欲求には逆らえず、振り出しに戻るルーク。
「そんじゃー・・・取り敢えず、この間みたいな体勢に変えるぞ、ティア」
「んっ・・・・・うごくの、めんどい・・・・」
「へいへい・・・・んじゃ、勝手に動かさせてもらうぞー」
そう言うとルークは横を向いて寝たままのティアの身体に両腕を伸ばして仰向けにすると、今度は
自分がその上に移動してから、再度ティアの脇の下を正面から抱える様にして力を込めた。
「痛い」
「そりゃねえだろ・・・・・って、うんしょっと!」
「・・・・っん・・・・」
身体の力を抜かれたままではやりにくいので、ルークは彼女の身体を寝台の上で座ったままにさせ
そこから抱き抱える様な姿勢に移行し、ティアの身体を自分の方へと預ける形へと変えた。
そして少しだけその身体を上に持ち上げ、唇と掌を使って最初に行った様に入念な愛撫を開始する。
「・・・んっ、ぜんぜん、気持ち・・・よく、っ・・・・ない」
「へいへいへい。上手でなくて悪かったな」
憎まれ口を叩き合いながら室内には暫しの間、ぴちゃぴちゃという湿り気を帯びた音だけが響いた。
「ん・・・・・ぅふ、へた、・・・・くぅ、そ・・・・・ぁ・・・・んぅっ!」
「ティアだって・・・・・ん、くっ・・・・をれがへたくほか、ほうほか・・・・・分かるのかよっ」
「あっ・・・・・すったまま、っ・・・・喋らない・・・ぅあっ!」
カリ、と胸の先端の突起に軽く歯立てられて、ティアは遂に甘く切ない声を上げさせられた。
その反応を好機、と見たルークはすかさず掌をティアの下腹部へと這わせていき、そこが熱く濡れ
そぼっている事を直に指先でなぞらえて確認した。
「見ろよ、ティア。これってなんでこんなに濡れてんのか、教えてくれよ」
ティアの今までの反応から大体の予測はついていたが、ルークは彼女の雫で濡れ、ぬらりと光りを
放つ指先をティアの目の前に、わざとかざして見せた。
「・・・・・知らない」
「強情だなー。・・・んじゃ、ちょっと手荒にいくぞ」
つい、と頬を赤らめてそっぽを向いたティアを一瞥して、ルークは体勢を変えていった。
「ゃ・・・・っ・・・痛くしないで言った、で・・・・しょ、っ・・・きゃっ・・・」
唐突に腰を持ち上げられて、ティアが驚きの声をあげた。
「ん。これで準備よし、と」
「・・・・なに、この厭らしい姿勢」
不満げな声を上げるティアを尻目に、ルークは目の前の高さにまで抱え上げられたティアのお尻と
両脚の間を縫うようにして舌先を這わせ始めた。
「っ!く、あ・・・・・そこ、きたなっぁ!いぅ、んっ―――!」
「綺麗だって・・・・んっ・・・それに、美味しいよ。ティアのこれ・・・・ん・・・・」
「―――あっ!飲まない、で・・・・っ、やぁ!」
くちゅ、ぴちゃ・・・・ちゅるっ!ぬちゃ・・・くちぃ・・・・・
ティアにわざと見え、聞こえる様に位置を調整しながら、ルークは更に大きな音を立てて彼女の泉
から湧き出る、粘り気を持ち出した雫を飲み干しにかかった。
「んぅ・・・・・ぷぁはっ!ティア、こんなに溢れさせても、俺飲みきれないよ」
「・・・・・・ばか、知らない」
ティアのその答えを聞いて、ルークはにかっと勝ち誇った様な笑みを浮かべて見せた。
「ティアが知らないんなら・・・・溢れない様に止めておかないといけないな、これ」
―――ずぷぅっ!!
「―――――ぃ、ひぁ!?」
突如として露わにされていた濡れた割れ目に、青年の指が深々と突き立てられ、ティアは悲鳴を上げ
その身体を大きく弓なりに仰け反らせた。
「い・・・っ!・・・くぅ・・・ぁうっ!ダメ、痛いっ・・・!おねが、い・・・抜いて、ルー、ク・・・・ひっ!」
「ごめんな、ティア。でも、こうして慣らしておけば・・・・・最後までする時に、痛くないよな?」
「そ、そんな・・・・約束、が・・・ぁ・くぅ!・・・ぅぁ・・・・ひぅっ!」
(やべっ・・・・また興奮してきちまったかな、俺・・・)
先程までは知らず知らずの内に股間を大きくしていたルークだったが、いまは目の前のティアが高く
鳴き声を上げている事に反応し、熱くたぎっていく自分の分身の存在をはっきりと自覚していた。
―――ずちゅ、ぐちょ、にちゅ・・・くちぃ・・・・
「すっげぇ光景・・・・・これって、ヤラシイって表現でいいのかな。ティアのここ、俺の指飲み込んで凄く
ヤラシイ音出してるよ・・・・・」
痛みと恥辱に耐えて身を震わせるティアへと耳打ちする様にルークは囁いてから、その指先の速度を
少しずつ速めていく。
「・・・・・・・・・」
「黙ってるってことは、もう痛く感じない?―――それとも、気持ちいいのか?」
「っ!ちが・・・・・ぅあ!くぅ!ぃや、く・・・はっ、いっ、たい・・・・っぁあ!」
否定の言葉を口にしかけるティアを見て、ルークは指を付け根近くまで花芯に捻じ込んでそれを遮る。
「わりぃ。加減間違っちまった。・・・ごめんな、ティア」
先刻にも増して深い、最早邪悪とさえも言える笑みを青年はその顔に刻み付け、今度はその指の動きに
しかし確実に回転を加え始めた。
「ぅあっ!はっ!も、やめ、くぅ・・・っ、はっ・・・ゆ、ゆるし・・・うぁぁっ!!」
「ん。大分、滑りも良くなってきたみたいだ。―――じゃあ希望通りに一旦、抜くよ。ティア」
「――――っ!」
わざと大きな音を立てる様に奥まで捻り込んだ後、ルークは勢い良く、一気に指を引き抜こうとする。
じゅぽっ!
「んぅ!」
明らかな準備の言葉と挙動に、口を真一文字に結んで身構えていたティアは、その大きすぎる刺激に
耐え切れず意味を成さない甲高い声を発していた。
「―――はぁっ、はぁ、はっ、はぁっ」
束の間の安息の時間に、ティアは喘ぐ様に大きく息を吸ってから、ルークへとその視線を向けた。
「ルーク・・・・・これ以上されたら、わたし・・・・わたし――――」
「ごめん、今のティアを見てると俺・・・・・止まれそうにないよ、やっぱ」
もっと、愛しい人が自らの手で悶え、息を荒げて乱れる姿をみたい――――指と、舌だけでここまで
激しい姿を曝すのであれば、自分の猛り狂う分身でならば、更に咲き誇る様を見られるのではないか
その思いに、渇きにも良く似た強い衝動が自分の身体を支配していくのをルークは感じていた。
「さっき約束、守れそうにない。けど、許してくれなくったって、いい」
「・・・・・・・・・」
熱を帯びたルークの言葉をティアは耐える様に俯いて聞き続ける。
「正直、また痛くしちまうと思うけど。俺、ティアと繋がりたいんだ」
「・・・許さないとか・・・・そんなこと、ない・・・・・・」
「――――ん。じゃあ、続けるよ。ティア」
頬を上気させたままで、こくんと小さく頷いた彼女の髪を優しく撫で、ルークは微かに身体を震わせる
ティアの蜜壷へ向けて、愛撫を再開させた。
「ふ・・・・ぅ・・・・くっ・・・・・ひぅっ!?」
舌先での刺激が与えられ始めて程なくして、荒くなる息を押し殺して堪えていたティアの身体が大きく
仰け反り、強い反応を見せ始めた。
「あっ、あぅっ!る、るー・・・く、そこ・・・・ぃ、ぁあ!へ、へんに・・・・なり、そ・・・んんっ!!」
それまで、まるで細波にさらわれていたかの様な優しげな感触が、突如として荒れ狂う嵐に呑まれた様な
変化を見せ、正常な思考を押し流す強烈な快感へと変わっていき始め、ティアはそれに翻弄される身体を
押し留めるように寝台のシーツを強く両手で握り締め、その肢体を小刻みに躍らせた。
「んっ・・・・ティア、この部分がキモチイイのか?」
その反応を見たルークは、今しがた舌先で責め上げていた部分を指先で軽く押し上げる様にして撫でた。
「―――――っ!!」
その刺激にティアは腰の辺りを痺れさせた様に戦慄かせて、声もなく仰け反ってしまう。
ルークが触れていたのは、ティアの秘裂に埋もれていた陰核―――クリトリスと言われる器官であった。
今まではその姿を隠していたのが、ルークによって再三愛撫を繰り返されて、もたらされた快感により
僅かにその姿を見せ始め、それをルークは知らぬ間に舌先で責め上げていたのだった。
「ティアのここ、なんか少しずつ大きくなってきてる・・・・・」
「や、ダメっ・・・・・っ!へんになる、ルーク、わ、たし・・・くるっ・・・・ちゃ・・・んぅっ!」
「いいよ。狂っちまえよ。俺、もっといやらしくなっていく、ティアの姿見てみたいよ」
瞳を潤ませ始めて身体を跳ね回らせるティアの両脚の付け根に顔をぴたりと寄せて、ルークは止め処なく
熱い雫を溢れさせる、その泉の中心をきつく吸い上げた。
「ぁく、ぁっ、あっ・・・やっ・・・ひっ・・・――――――んぅっ!!!!!」
僅かに残った思考能力と、理性を全身に雷が疾ったかの様な鋭い快感に砕かれてティアは生まれて始めて
絶頂へと達し、一際高い鳴き声を上げ、その動きを止めた。
「!ティア!?」
その反応にルークは、ばっと顔を上げて、全身を小さく痙攣させるティアの様子を伺う。
「・・・っは、はぁ、ふ、ひゅ・・・・はっ、はっ、んぅ・・・・!」
「だ、大丈夫かっ!ごめん、俺、また無茶させちまったのか!?」
未だ絶頂の余韻に身を震わせて荒い吐息を吐き続けるティアの顔を覗き込みながら、ルークは焦りを声に
滲ませて彼女の肩を強く揺さぶった。
「ご、ごめんなさい・・・・わたし・・・いまので、いってしまったみたい・・・・・」
青年のその必死の表情に気付いてティアは自分自身の反応への動揺を隠せないまま、返事をしていた。
「いって・・・って、きもちよかったってことか・・・・?」
その言葉に声は出さずに、こくりと大きく頷いてティアは心配そうに顔を寄せていたルークの頭を両腕で
優しく抱きしめた。
「うん・・・・・心配させて、ごめんなさい」
「い、いいよ・・・・・元はと言えば、俺が調子に乗りすぎた所為だし・・・・」
ぎゅっ、と力強く抱きしめられながらルークは照れた表情を隠す様に、目の前に押し付けられたティアの
豊かな胸へと小さな子供の様にしゃぶりついた。
「や・・・・もう、今、反省したばかりじゃなかったの?」
「気持ちよかったんなら、話は別だろ。・・・・それに、さっきのティア、すんげぇ可愛かったし・・・また見たい」
「ばか・・・・・んっ!」
性急な手つきで扱われ、ティアは軽く顎を仰け反らせてルークを抱え込んでいた両腕を解き解いた。
「なぁ、ティア・・・・・そろそろ、しちゃってもいいかな」
「駄目・・・・・って言ったらどうするのかしら?」
声にいつもの調子を取り戻して、ティアは余裕有り気な表情を見せてその問いかけに返してきた。
「・・・・言っても、する」
「きゃっ!?」
底意地の悪い対応に憮然とした顔つきになったルークに身体を抱えられ、ティアは驚きの声を上げた。
「ティアだけ気持ちよくなるなんて、やっぱ不公平だ。そんなんずるいっての」
「ちょ、ちょっとルーク!やっ・・・・」
強引に体勢を変えさせようとするルークに、ティアは手足をバタつかせて抵抗しようとする。
だが、それの労力も空しくティアは再度その姿勢をルークによって変えさせられていた。
「な、なにこれ。・・・こんな状態でどうするのよ、ルーク」
不安を隠せない様子でティアは疑問の声をルークへと投げ掛ける。
「いや・・・・これなら、ちゃんとティアの顔見ながら繋がれるかなー、って思って」
ティアはルークと向かい合わせになる形で、青年の腰の上に座り込む様な体勢にされていた。
所謂、座位と称される状態になり、ルークはティアの背中と腰へと自分の腕を絡ませていく。
「わ、わたしは恥ずかしいだけだわ、こんなの!」
「いーじゃん。それにこれなら――――」
「―――んぅ!?」
抗議の声を上げるティアの唇を瞬く間に奪い、貪るルーク。
「んっ・・・く・・・ふぁっ・・・」
「・・・ん・・・・っぷはぁ!」
たっぷりと十数秒に渡ってティアとの濃厚な接吻を行ってから、ルークはにやり、と誇らしげな笑みを
浮かべてみせた。
「この前より、巧くなったろ?俺」
「・・・・もう、こういう事ばかり、飲み込みが速いんだから・・・・」
「にひひ」
呆れる様な、しかし青年の問いかけを肯定する彼女の返事を聞いて、ルークは満足気な表情を見せた。
「んじゃ、そろそろ・・・・いくぜ、ティア」
「―――――――はい」
纏った雰囲気を変えて、強い口調で最後の行為を求めてきたルークに対し、一瞬の戸惑いを見せてから
ティアは目を薄く閉じると、身を固くしてその瞬間を待ち構えた。
「わりぃ、ちょっと動かす」
それだけを言うと、ルークはぎゅ、と身を小さくして微かに震えるティアの身体を持ち上げる。
「あっ・・・・」
優しく、それと同時に有無を言わさぬ強い力でもって彼女の全身が僅かに宙に浮く。
「じっとしてろよ、ティア」
「うん・・・・・」
その言葉に従い、ティアは息を殺して青年の動きに全神経を集中させる。
そこからすぐに、くちゅり、と濡れた音を立てて何か熱く硬い物体が、自分の花弁に触れるのを感じて
ティアは反射的に瞳を固く閉じた。
「やっぱ、綺麗だ」
え?と青年が洩らした呟きに彼女が気を取られた、その瞬間。
じゅぷぅっ!!
「ひぅっ!!」
僅かに生まれたその心の油断を狙うかの如く、ルークの猛り狂った熱い剛直がティアの花芯の奥にまで
突き立てられていた。
「あ・・・・かはっ・・・・く・・・・・んんっ!」
「ごめん。ティアの身体全部、綺麗だって言おうとしてた」
苦悶の表情を露にしながらも、艶を帯びた鳴き声を上げるティアの耳元にそっと囁いて腰に腕を絡ませ
緩やかなリズムでもって、ルークは下半身を前後に動かし始めた。
「いっ・・・・あぅ、るぅ・・・く・・・・はぁ、あっ・・・・んぅっ!」
その言葉と、先程までとは打って変わって穏やかに訪れてくる熱を孕んだ肉茎の動きに、ティアは切なく
さえずる様な声を室内へと響かせていく。
「うくっ・・・・やっぱ、滅茶苦茶キツイな。ティアの中」
「ごめん、なさいっ・・・・巧く、出来なくて・・・・っあ!」
「謝るなって・・・・んっ!・・・嫌なんじゃなくて、ホント、溶けちまいそうなくらいなんだよ」
やや余裕を失った声音で、ルークは申し泣けそうに顔を伏せてしまったティアの涙を滲ませた目元へと
唇を這わせていった。
「ん・・・しょっぱいや。・・・でも、美味しい」
「ルーク・・・・ありが―――あっ、ぁくぅ!ひ、あ、やぁ―――――っ!!」
「く、ぅっ・・・・ほら、お喋りに夢中になってっと、舌噛んじまうぜ。ティアっ・・・!」
彼女が礼の言葉も言い切らぬ内に、ルークは突如として注送を速め、両腕でティアの腰の括れた部分を
掴んで強く引き寄せていた。
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ―――――
その激しい行為とは裏腹に彼女の体重の軽さ故か、やや軽快な音がリズミカルに鳴り響いていく。
二人の身体が極度に密着している為かその結合部からは、ずちっ、ぐちぃ、と小さく、そして重い水音が
漏れ出し、シーツの上にじわじわと透明な染みを広げていった。
「ルーク・・・・っ、るー、くっ・・・!」
「・・・うん。俺、ここに、いるよ・・・・ティア」
己の中の昂ぶりを確かに感じつつも、余裕を失い自分を探そうとするかの如く名前を呼び続けるティアに
ルークは必死の思いで、絶えず襲ってくる快感を堪えながら包み込む様に声をかけた。
「く、んっ・・・・!ルークっ、わた、しで・・・・キモチよく、なれる?」
「――――こんな時くらい、そういう無理の仕方すんなって、お前・・・っ!」
初めての時と同じく、そう言って気遣いを見せるティアの健気な姿に、ルークは今まで堪えてきた何かを
ぶちんと断ち切られる様な感覚を与えられ、前後に行っていた体の動きを腰を中心にして突き上げる様な
動きへと変えていった。
そして、一瞬打ち寄せた波にさらわれたかの如く大きく身体を揺らした彼女が、安定したのを確認すると
ルークは両脚に力を込めて一気に己のペニスをティアの最奥へと向けて突き上げる。
「人のっ、心配してる・・・暇、あんのならっ・・・・もっと自分の身体に、気ぃつかえよ、この馬鹿!」
「んぅっ!あ、やっ・・・・キモチ、いい?わたしっ・・・貴方のが、熱くて・・・キモチいいよ・・・・くっ!」
その言葉とは裏腹に、ティアの発する言葉と乱れる黒髪に如何しようも無い、煮え滾る様な衝動を掻き立て
られ、ルークは一層と行為に熱を込めていった。
「いた、いっ・・・けど、あっ、くぅ・・・・・はっ、でも、すごく、しあわ、せ・・・・よ・・・っ!ぁくぅ!」
激しく身体を揺らしながら、ティアはそう口にすると青年の背中に腕を廻し、強くしがみついてきた。
――――じゅぷっ!ぐちゅっ!ずちっ!みぢっ!じゅちゅぅ!
媚肉が強く押し広げられ、濡れた音が一際激しさを増し、それにつれてルークの限界も近づいてきていた。
「ティア・・・・っ!俺、お前の中に・・・・出したいっ!」
「うん。いいよ・・・・あっ、ふっ・・・・イクところ、わたしに見せて・・・おね、が・・・い・・っ!」
「わかったっ!」
その返事に、大きく頷くとルークは自分の身体へとしがみついて来ていたティアの上半身を精一杯優しく
引き離すと、互いの結合部の様が良く見える様にして腰の動きを更に速めていった。
「やっ、あっ――――るーくっ、お願いっ、わたしで、わた、しで・・・・・っ!あぅ!」
「出すぞ!俺のを全部っ、お前の中に出すぞ・・・ティア!・・・ぐぅ!」
ティアのお尻の両側を掌で強く引き寄せ、極限まで怒張した己の分身を叩き付けて、低く唸り声を上げて
ルークは全身を鋭く硬直させた。
――――びゅくっ!びゅるっ!どぴゅぅ、どくぅ、びゅぅ、びゅっ・・・!
迸った性を最後の一滴までも、怒涛の様な勢いでもって注ぎ込むと、ルークは大きく息を吐いてティアを
胸の内に、強く抱きしめた。
「っん・・・・ルークの、わたしの・・・お腹の中に・・・流れ込んできてる・・・・あっ・・・・」
熱い吐息を漏らしながら、ティアは愛しい人のモノを受け入れられた感動に身を震わせ自身の下腹部を
穏やかな手つきで触れていた。
「ふ・・・・はぁ、はぁ・・・・なあ、ティアはまだ、気持ちよくなりきっていないんじゃないのか?」
「え、そんなこと――――」
問いかけられ途中まで返事をしかけたところで、ティアは自分の膣内で、未だに青年の熱い剛直が衰えを
見せずに硬さを保っている事に気が付いた。
(え・・・お、男の人って、一度出してしまうと、また元の大きさに戻ってしまうものじゃないの?)
自分の知る知識とは全く異なる反応を示すルークの一物に、ティアは戸惑いを見せながらも心の何処かで
現実に萎えを見せていないことに、自分が嬉しさを感じている事に気付いた。
「なんか、まだ全然、俺のコレ・・・・・元気だったんで。・・・・ごめん」
「・・・ううん、貴方の気遣い・・・とても嬉しいわ」
本当に嬉しいのは、自分を求めて逞しさを維持し続けるルークを嬉しく思うのだが、流石にそれは口には
出せずに、はにかむ様な笑みを見せてティアは青年の胸板をそっと指で撫でてみせた。
「・・・・なあ、ティア。本当のところは、まだこっちじゃ気持ちよくは成り切れないんだろ?」
「そ、そんなことはないわ。今だって、凄く・・・そ、その、す、素敵だったし」
自分の身体を気遣ってそんな事をいってくる青年に、ティアは頬を赤らめながら答えを返した。
「うーそーだ。だって、さっき俺の舌で――――――いった、ってヤツかな。ティアが気持ちよくなった時は
すっげぇ身体ひくつかせてたもん。俺が出しちゃった時みたいにさ」
「は、恥ずかしいから、そういう――――くっ!ひぅっ!・・・あ、やぁ!」
「ホレホレ。こっちはやっぱまだ苦しそうじぇねーか。いう通りにしろって・・・・・よっと!」
先程までよりも更に頬を真っ赤に染めて否定するティアを、唐突に下から突き上げてから、ルークは身体を
彼女の下から移動させ、舌先で責め上げて絶頂へと導いた時の体勢へと戻っていった。
「ルーク。本当に、わたしのことは――――あっ、も、もう・・・・んっ、ぁあっ!」
またしても言い切れぬ内に青年の舌で秘裂を責め始められ、ティアの唇は甘く切ない悲鳴を奏であげた。
ぴちゅ、にちゃ、くちゅ、じゅるっ、ちゅ・・・・・
「ん・・・・俺の匂いと混じって・・・・ちょっと変な感じだ」
「やぁっ・・・・んぅ、るーくっ・・・・飲んじゃダメぇ・・・・・」
「いいじゃん。だって飲まないと・・・・・・あっ!」
不意に何かを思いついたかの様に、愛撫を中断して顔を上げたルークを見て、ティアはほっとした様な少し
残念な様な気持ちになってしまっていた。
(わ、わたしったら、一体、何を考えてるのかしら・・・・・別に、このまま終わったって、いいじゃない)
心の何処かで愛撫を続けてもらいたがっていた己を叱責する様に、ティアは軽く自分の頬を叩いてみせた。
「ティア。ちょっとそのまま、動かないでいてくれよ〜」
悶々となりながら葛藤を続けるティアの耳に、突然ルークの声が届いてきた。
「え、何?どうしたの、ルーク?」
「いいからいいから。いい事思いついたんだ、俺」
動くな、と言われてしまい何となくその言葉に従いつつも、ルークの動向と――――――何より、その妙に
明るい声が気になり、ティアは首を左右に振っていつの間にか、眼前から姿を消していた青年を捜し求めた。
「たっだいま〜。んじゃ、続きといこうか」
続き、と言われてティアの心臓がどきり、と跳ね上がり、同時にルークが自分の下へと戻ってきた。
「ルーク、わたしの事は本当に気にしないでいいから・・・・あんっ!」
「とか何とか言って、可愛い声出してると、全然説得力ないっつーの」
抱え上げられたお尻の外側から、二本の指を秘裂に差し込まれティアは小さく嬌声をあげてしまっていた。
――――クチュゥ・・・・クチッ・・・
差し込まれた指がティアの蜜壷の中で左右にゆっくりと開かれ、泡だった水音を上げながらそれは少しずつ
その空間を大きく押し広げていく。
ルークの言ったいい事とはこの事であろうか、と思いながらもティアはその淫猥さを一層と増した音と感触
そして、拓かれていく自らの肉体の感触に戸惑いを感じながらも、その行為を静かに受け入れていた。
「よーし、いい感じに開いたぞ。じゃあ・・・・いくぜ、ティア」
一体、どの様な刺激と快感が青年によって与えられるのか――――――荒々しく、強くか、それとも優しく
溶かすようにされるのか・・・それを想像して、ティアは期待と不安に微かに身を震わせていた。
チョロロロロロロ・・・・・・・
「きゃあっ!?」
「わ、動くなって。・・・・もーちょいで一杯になるから」
「やっ!何!?何してるのよ、ルークッ!!」
自分の身体を襲ってきた予想外の感触にティアは必死でもがこうとするが、身体を強く抑え付けたルークの
左腕はそれを一向に許してくれない。
(なに、これ・・・中に流れ込んでくる・・・・冷たい・・・・・・あっ!?)
「よーし、これで最後っ・・・・と」
「いやぁ・・・・・熱い、アソコが、あつい・・・っ!」
始めはひんやりと冷たく感じていたそれは、突如としてティアの膣口で熱く燃え盛り始めていったのだ。
「じゃ、いっただきまーす・・・・・んくっ、んっ・・・んっ・・・・」
「ひぅ!ルーク、ルークっ・・・・いや、わたしのなか、あついのっ!」
悶え狂うティアの秘裂に口を寄せ、ルークはそこに注がれた液体をごくごくと音を立てて飲み干し始める。
「ふぅっ・・・・!る、ルークっ・・・・・あっ、やっ――――っ!!」
飲み続けながらも、ルークの舌先によってクリトリスへと愛撫が行われて、火が付いた様に熱くなっていた
そこは、先刻のものとは比にんらない、強烈な刺激をティアに与えていったた。
「んっ・・・・可愛いよ、ティア・・・」
「やーっ!!あっ、ぃや、ルークっ!やけちゃう、助けて、たすけ―――――や、ぁ、っぁぁあ!!!!!!」
ルークの囁く声を朦朧とする意識の中で聞きながら、ティアは甲高く悲鳴を上げると全身をくんっ、と強く
張り詰めらせて再び絶頂へと上り詰めていった。
やがて、じゅるっ、と大きな音がルークの唇とティアの秘裂の間から響き、その行為はついに終結を見せた。
「ぷはぁー・・・・・・美味かったぁ・・・・」
ルークの満足気なその声がティアの耳に届くと同時に、快楽の余韻に浸り力なく投げ出された彼女の左足に
何か硬質な物が触れる。
(・・・え・・・・あ、あれって、まさか・・・・!)
荒い息をつくティアがその方向に視線を向け、目に入ったのは、寝台の上に転がる陶器製の容器が一つ。
それを見て、彼女はルークによって自分が何をされたのか・・・その答えにようやく辿り着いていた。
――――自分の身体へと流し込まれたのは、あの正体不明のお酒だったのだ、と。
「これで味の方も良くなったし、続きを・・・・・って、あれ、ティア?」
相も変わらず、自分が一体何を仕出かしたのか皆目検討もついていない青年は、異常な程に息を荒げて
肩を震わせるティアの様子に気付き、首を傾げた。
「ルーク・・・っ、貴方って人は、何でこう何時も何時も・・・・・!」
「え、な、なに?今のって、なんかやばかったのか?」
「ばかっ・・・・・・!」
ぱっしーーーーん。
夜の戸張を引き裂いて・・・・というか、先刻からの行為でとっくに宮殿内は静けさを失っていたのだが
ともかく盛大な音が辺りに響き渡ったのだった。
この後、ルークは火照りの収まらぬティアの身体を長時間に渡って奉仕する羽目になる。
後日。
ガイラルディア家にて。
「ふぅー、昨日はルークの奴、楽しんでくれたかな」
ぴんぽーん。
「はーい、空いてますよー・・・・・って、ティアじゃないか。どうしたんだよ、急に・・・・」
「こんにちわ、ガイ。突然で悪いけど、単刀直入に聞かせてもらうわ。昨日、ルークにあのお酒を渡した
のは貴方の仕業ね?」
「へ?いや・・・・ジェイドの旦那と相談してって・・・ティア?なんか、怒ってない・・・か?」
「大佐の方には、既に確認は取ってあるわ。貴方に脅されて、無理矢理片棒を担がされた、って」
「か、片棒?ちょっと待ってくれ、俺には一体何の事かさっぱり・・・」
「言い訳はいらないわ。・・・・大人しく罪を認めていれば、まだ情けもかけられたのに」
「や、だ、だから・・・・ちょ、まっ、落ち着いて、訳を聞こうじゃないかっ!」
「――――貴方には、少し・・・劇薬が必要なようね」
「お、おわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そして、幸福の聖櫃が開かれる。
「ぐ、ぅ・・・・・も、ももチラ・・・・・・・ごふっ」
げしぃっ!
更に後日
陛下専用酒蔵にて。
「・・・・・無いっ!俺の可愛いブウサギ達の、取って置きが無いっ!!」
――――おしまい、っていうかご愁傷様――――
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