総合トップSS一覧SS No.5-003
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
無題 961氏(18スレ目) エロ無し 2006/01/09 2006/01/15

「し〜いな〜v」
「んな!?」
真夜中、部屋に響いた脳天気な声に、しいなはふとんを吹っ飛ばす勢いではね起きた。
窓が、開け放たれていた。
「ぜ…ゼロスっ?」
「よっ。まぁ〜た、結構な驚きようでないの。」窓辺に座る男がひとり
「だってあんた…!」
真の世界再生の旅から数年。しいなは次期頭領として忙しい日々をおくっていた。

「なんであんたこんなとこにいるのさ!?」
「ん〜?なにって、今日は特別な夜だしよ」
開け放たれた窓からは冷たい風が入ってくる。
二つの月の光がゼロスの髪を照らしていた。
意味の解らないことを言って黙り込んだゼロスにしいなは困惑する。
「夜這いに来た…つったらどうするよ」
背中に走った震えは、寒さのためか、目の前の男のせいなのか。
よく知る男の知らない言葉に抵抗は出来なかった。


目が覚めるとしいなはあたりを見回す。
朝日がさしこむ部屋に、昨夜求めあった男の姿はなかった。
(当たり前か…
なに…夢見てたんだろうね…あたしったらさ)
自嘲しようとしたしいなの目に、自らの胸に咲く、紅い花が映る。
あの男が植え付けた花が。
「まったく…こんなもん残していって…」
それだけ声にのせると、しいなは声を殺して泣いた。

「しいな何なの、それ」
「これかい?」
急に尋ねてきた仲間…コレットの問いに、
「ミズホじゃあ、今の時期には亡くなった人が帰って来るっていわれててね
これはあの世に帰る道行きをゆっくり帰ってもらうための乗り物なのサ」
ミズホの風習を、かつてより落ち着いた青年と
相変わらずぼんやりした少女に語って聞かせながら茄子に箸を刺してうしを作る。
そんなしいなの目の前をかすめて、黒アゲハが飛んでいった。
黒い羽に想い人の色をちらして。
「そういえばあんたには羽があったっけね…」
「何か言ったか?しいな」
「いや何でもないさ」
まったく、帰りくらいゆっくりして行けばいいのにねぇ…

移した視線の先に咲く花は、紅く、先ほど飛び去った蝶をおくるように咲いていた。


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