総合トップSS一覧SS No.4-085
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
幸福 鶏氏 ルーク×ティア 2005/12/28 2005/12/30

俺たちが護り抜いた被験者の世界は、時間をかけて、大きく変化していった。

プラネット・ストームの停止による、世界中のエネルギー供給に対する不安が顕著になってきたり。
アルビオールの量産が現実味を帯び始め、新たな輸送機関として期待が持たれつつあったり。
フォミクリーの有効利用方法を検討する会議が、一介の軍人を議長に据えて定期的に行われたり。
預言によって世界を導いていたローレライ教団が、導師フローリアンとその守護役によって徐々に改革されたり。

・・・・・・数え上げればキリがない程にある、変化たち。

今や世界は新たな指針の下に動き出した。
ユリアの遺した預言ではなく、この世界に人の意思という羅針盤の下に。

そんな慌ただしい世界を、俺はぼんやりと眺めていた。

世界の流れは確かに激流。
だけど、俺という存在が持つ小さな世界は、穏やかな流れでしかない。
どうにも絵空事のような、他人事のような。
一線張って頑張っているアイツらには怒られるかもしれないが、正直なところそんなもんだ。
俺はといえば、時々父上から公務の手伝いをさせられる程度だし・・・救国の英雄という名も落ち着きはじめたし。

そんなことを考えながら天井をぼーっと眺めていると、ぴょこぴょこという足音が聞こえた。

「ご主人様、おはようございますですの!」
「お、ミュウ。おはよう。そんなに慌てて、どうかしたのか?」
「ティアさんが呼んでるですの!寝てるようだったら起こしてねって頼まれたですの!」
「・・・ティアが?」

はて、と一瞬考えて、すぐに隣がもぬけの殻だということに気付く。
・・・なんか寒いなと感じたのはこのせいだったのか。
―――ついでに思い出した光景のせいで、思わず頬に熱が宿る。

「・・・わかった。すぐ行くからって伝えておいてくれ」
「はいですの!みなさんも待ってるから、早く来てくださいですの!」

ミュウが部屋を出て行ってから、俺はひとつため息をついて着替え始めた。
そういえば、今日は来客がいるんだってことを思い出して、つい逸る気持ちを抑えながら。

部屋を出て、ティアがどこにいるのか聞きそびれたことに気付いた俺は、とりあえず応接室に足を運ぶ。

「やっほ〜!ルーク、久しぶりっ!!元気だったぁ〜?」
「おわっ!あ、アニスっ!?」

入るなり、突進のような抱きつきが俺を出迎える。
そのテンションも変わっていなくて、あの頃を思い出させる。まぁ・・・ちょっと感触は良くなったかもしれないけど。

「・・・・・・」
「おやおや、怖い顔はいけませんよ?ティア。心配しなくても、ルークはあなただけのものです」
「!―――た、大佐っ・・・もう、からかわないでくださいっ!」
「おーおー、朝からおアツイことで。ルークも幸せモンだなぁ、うんうん。使用人兼心の友としては嬉しい限りだねぇ」
「う、うっせぇつーの!ったく・・・」

そんな他愛の無いやり取り―――空間に、あの頃の俺たちが過ぎる。
使命、責任、約束、罪、命・・・重過ぎる荷物を分け合って背負い続けたあの頃。
でも、それでも・・・・・・あれは楽しかった日々でもあったと、今ならそう言える。
・・・今、記憶の底にある『あの頃』を思うと、先にいいところばかりを思い出せるのは人間の性なのかもしれない。
もちろん、自分が犯した罪を忘れてしまったワケじゃないけれど。

「それにしてもさー、想像以上に上手くいってるみたいだね。
 ・・・ティアが呆れておしまいかと思ったりもしたんだけどなぁ。なーんか、納得いかないかも」
「ははは。ティアはそんな短気じゃないってことは、アニスだって知ってるだろう?
 間近で見てても、そりゃあいい雰囲気で・・・・・・こっちが参っちまうくらいの、な」
「「ガイっ!!」」
「ととと、これは失敬致しました・・・ってな」
「はっはっは。どうやら心配無用ですね。
 ファブレ公爵家の未来も安泰、といったところでしょうか。やぁー、よかったよかった」

「・・・・・・おまえら、何しに来たんだよ・・・」
「・・・・・・・・・もう・・・」
楽しそうに笑う三人、呆れつつも赤くなる俺とティア。

その後しばらく、ファブレ家の応接室から笑い声と怒声が途絶えることはなかった。

「―――あ、そうだ。ねぇ、ティア。ちょっと秘密のお話があるんだけどさぁ〜・・・」
時間を忘れて談笑している中、ふとアニスがそんなことを呟いた。
そして席を立ち、ティアの耳元でなにかを囁いてから、戸惑うティアの手を引いて応接室から出て行った。
「純情な乙女の内緒話だから、ぜえったいに聞きにこないでね!」と忠告を添えた上で。

「・・・なんだ、アレ」
「さぁ?アニスのことですし、とても面白そうなことだとは思いますが・・・」
「ま、放っとおこう。触らぬ神に崇りなし、って言葉もあることだしな」

確かにガイとジェイドの意見には、一応、賛成。
・・・でも、なんていうか。

「―――心配ですか?ルーク。それとも、ティアが居ないというだけで落ち着かないと?」
「ばっ―――んなワケねぇだろ!き、気になっただけだ」
「ははは。・・・今や、四六時中一緒に居るような仲になったもんな。
 おまえが公務なんかで居ない時は、ティアがけっこう上の空になってて面白いぞ。逆もまた然り、だけどな」
「・・・・・・」

思い当たる節がない、とは言えないので、閉口。
それより、ティアも俺と同じ様子だと知ったせいで、なにかとんでもなく気恥ずかしくなる。

「と、いささか口が過ぎました。ご無礼をお許しください、旦那様」
「だーっ!やめろ、冗談でも寒気がするっつーの!」
「おやおや。随分な嫌われようですねぇ、ガイ。
 どうでしょう?ピオニー陛下はいつでもあなたを待っていますよ。帰ってきてはいかがですか」
「・・・丁重にお断りさせて頂くよ。ブウサギの世話はもうこりごりだ」
「つれませんねぇ。ブウサギの方が素直で何倍もかわいいと思いますよ?あなたの主人よりも」
「・・・てめ、追い出すぞ」

「ルークの部屋に入るのは初めて・・・じゃないっけ。
 あー、でも今はルークとティアの部屋、って言わなきゃいけないんだろうけどさぁ〜♪」
「ア、アニスっ!・・・もう。それで、秘密のお話ってなにかしら?」
「んふふ〜。それはもう、この愛の巣で夜な夜な行われてることについて、根掘り葉掘り聞き出そうってことー!」
「っ―――――そ、そ、そんなの、い、言えるワケないじゃない!!」
「きゃー☆真っ赤だよティア、かわいい〜♪ルークもそうだろうけど、ティアもやっぱり純情だねー」
「アニスっ!い、いい加減にしないと怒るわよっ!」
「きゃ〜、こわーい。
 ・・・・・・じゃあ、ちょっとイイコト教えてあげるから、それで許してほしいなぁ〜☆」
「?・・・イイコトって?」
「んふふ。それはねぇ、とりあえずルークが喜ぶってことだけは確かだねっ」
「え・・・ル、ルークが・・・?」

ガラーン、ガラーン・・・―――――澄んだ鐘の音が、バチカルに響く。

「おや、もうお昼ですか・・・ルーク。私はそろそろお暇しますね」
「へ?もうすぐメシだから、家で食っていけよ。すぐ作らせるからさ」
「いえ、実はこれから国王陛下との謁見がありますので。
 ・・・アニスとティアが何をしているのかは気になりますが、私はこれで失礼します。ごきげんよう」

相っ変わらず淡白だな、とガイが言う。
そうかもしれませんね、と返すジェイド。そして軽く笑う三人。

玄関に消えていく青い軍服の背中が、あの頃よりも少し小さく見えた気がした。

「・・・ところで、ホントになにしてんだろうな。あの二人はよ」
「さぁな。気になるなら行って・・・みない方がいいな。アニスがキレたらどうしようもない・・・」
「私がキレたらなんだってぇ、ガ〜イっ?」
「うわっ!」
「うわわわっ、ば、やめ、やめろって!!」
―――噂をすればなんとやら。
ガイの背後からアニスが現れたかと思いきや、しっかりとその背中にしがみついている。
・・・あの頃よりマシにはなったけど、やっぱりまだ癒えていないようで、急にやられたりするともうアウトだ。

「あ、それよりルークっ!ティアが部屋で呼んでるから、行ってあげて」
「ティアが?・・・・・・分かった。じゃ、ちょっと行ってくる」
・・・恐らくアニス絡みの何かだとは思うけれど、どうなんだろうか。
それ以上は見当もつかなかったが、とりあえず走って行くことにした。

「・・・ティアになにか吹き込んだのか、アニス?」
「えへへ☆伊達に子悪魔ちゃんの役をやってないよっ。ま、立ち入り厳禁覗き見推奨ってことで♪」
「・・・・・・・・・アニス。賞金くれてやるから、一緒に闘技場でも行こうか」
「ゔっ・・・・・・ちぇっ、ガイはカタいなぁ。せっかくティアの暴走(オーバーリミッツ)が見れるかもなのにぃ・・・」

カンカンっとふたつ音を鳴らしてから、部屋に足を踏み入れる。
「ティア。用って―――――」
なんだよ、と言おうとした口は、開いたまま動かなくなった。

「ルーク・・・」

ベッドに腰掛ける女性。
確かに、そこにいたのはティアだった。
でも、俺はこんなティアを知らない―――いや、知ってはいるんだ。
だけど、それは本当に僅かな時間だけ。
少なくとも、こんな昼間に見せることがないはずの姿。

濡れた瞳、熱を包んだ息遣い。
―――俺を駆り立てる、魔性にも似た姿。

「お、おい!どうしたんだよ、ティア!?」
「・・・アニスにね、ちょっと・・・・・・イイコト、教えてもらったの・・・」
ティアの声に、妙な艶が含まれている。
それは譜歌を詠う時とは対極の、昂ぶりを呼び起こす声色。
しかも、その―――。
「イイコト・・・?ってかそれより、その服はどうしたんだよ!それって確か、ナタリアの部屋で・・・」
「覚えてたのね。そう、あのときのメイド服・・・」
すっ、と浮ついた様子からは想像出来ない機敏な動きでティアは立ち上がった。
そして、深々と一礼。いつも、屋敷のメイドたちが俺にするように。

「―――ご主人様。どうか、私を・・・・・・」


「ティアっ!!」
「っ―――――」
がしっ、とその華奢な肩を掴み、声を荒げる。
「どうしたんだよ!?いったい何があったんだ!誰がどう見たっておかしいぞ、今のおまえは―――――おわぁっ!?」

がく、と支えを失って、倒れた。
いや。正確に言えば、俺がティアに引きずり倒されたというのが妥当。
―――でも、それは結果的に見れば、俺がティアを押し倒したようにしか映らない。
混乱し戸惑う俺に、すっ、と白い手が伸びてきて、頬を包むように撫でる。


「お願い、ルーク。夜までなんて待っていられない・・・今すぐ、ここで、愛して」


―――――熱に浮かされたティアの懇願に、疑問も抗いも全て捨ててしまった。

「・・・分かった、ティアの気が済むまでな。済んだらアニスのところに行くぞ。ワケを吐かせないとな」
「ルーク・・・・・・今はアニスなんていいの。私だけを見て・・・」
「ティア・・・―――――」

示し合わせたような、舌を絡める深いキス。
それでもう、俺の方も完全にスイッチが入ってしまった。

「ん、あぁっ・・・はぁ、っ・・・!」
「いい声、可愛いよ・・・ティア」

スイッチはキス。
そして最初は胸から、というのがなんだか決まりごとみたいになりつつある。
けれど、決して飽きることなんてない。
触れる度、色を含んだ声で鳴いてくれる。
俺が感じるのは、心地よくておかしくなりそうな感触。
弾力があって、綺麗で、とても淫ら。

それにしても・・・ティアのこの服は、ちょっとマズい。
―――『忠実で淫らなメイドを犯す』なんて考えるだけで、かなりゾッとする。

だけど。
同時に芽生えるのは、なにか、黒い感情。
これは背徳感とでもいうのだろうか。
それとも危険や禁忌を冒す時に覚える、えもいわれぬ快感めいたモノなのか。
・・・どちらにせよ、危なすぎる。

「ふぁあっ!・・・、ルーク・・・まっ、て」
「え、な、なに?」
と、切れ切れにか細い哀願が聞こえて、狂いかけた思考を止める。

―――――その途端、世界が逆転した。


「っ!?」
背中に当たるのは、慣れ親しんだベッドの柔らかな感触。
目に映るのは、見慣れないティアの―――妖笑。

「ふふ・・・今日は私がして差し上げます、ご主人様」
「ばっ、おまえなにを―――――!?」
なにか、とんでもない台詞をのたまった。それだけは理解できた。

―――それ以上の思考は、突然襲った快楽によってシャットアウトされた。

「・・・あ、っつい」
「っあ―――!ティ、アっ・・・!」
俺が戸惑っているうちにティアがジッパーを開けたらしく、その手には剥き出しになった俺のモノが脈を打っていた。
触れられる、それだけで、けっこうな刺激。
達するには遠いにしろ、ずっと続けば長く持ちそうにない。

「ご主人様・・・私が楽にして差し上げます。どうぞ、お好きなときに、出してください・・・」
「―――――っ・・・!」
心此処に在らずな、でも、そんなティアのその台詞にひどく掻き立てられるのは、劣情。

そして掌は徐々に動き始める。
それを愛しそうに眺めるティアの蒼瞳。互いの息が上がる。

「っつ、あ・・・・・・ティア、ティアっ・・・!」
「ご主人様、かわいい・・・」

ふっ、と。暴れつつある俺のモノに、吐息がかけられた。
それに堪える―――間隙なく、ティアの唇が俺のモノに触れる。
「〜〜〜っ!!!」
それは今までなかった、新たな快激。
指で触れられるのとも、膣内に挿れるのとも違う強烈な一撃。
「んっ、・・・あむ」
「っく!?」
それに酔う暇も与えられず、今度は未知の温もりに包まれる。
その中でチロチロと臆病に触れるのは、ティアの舌先。

―――――なんだ。この、どうしようもない、快楽は。

「・・・ん、ふっぅ・・・んっ、んっ・・・」
「や、ばい・・・って!く、あっ!」

―――湧き上がってくる、吐き出したいという欲望。

「・・・・・・ぷはっ。ん・・・そろそろ、かしら・・・あむ」
そんな独り言がして、再び銜えられた―――途端、もっと乱暴に、淫らに、ティアの舌が俺を蹂躙する。
加えて、ティアはそのまま頭をゆっくりと前後に動かす。手を添えて、まるで吸い上げるような。
「くは、っ・・・ティ、ア・・・・っ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
明滅する半眼と、蒼瞳の視線がぶつかる。
・・・静かに伏せた蒼に、拒絶の意思はないように思えた。

「駄目、だ・・・ティ、アっ!!」
「っ!?」

―――――ドグン。

堪えた欲望を、とうとうティアの口内に吐き出す。
それは、これ以上にない快激の時。
視界も意味を無くして、感覚全てが快楽にもっていかれるような。

びゅく、と最後の一筋が放たれてから、身体がどっと重くなる。
はぁ・・・っと大きな息をひとつついてから、すぐにティアへ目をやる。
「・・・ぁっぃ・・・んんっ、ぅぇ・・・」
「あ・・・・・・ご、ごめんっ!その、我慢できなくて・・・」
「・・・大丈夫です。んぐっ・・・」
微笑のあとで、ティアの白い首筋が脈動する。
苦しそうな顔でしたそれは、つまり。
「ティ、ティア・・・まさか、飲んだ・・・?」
「・・・」
無言でコクリ、と頷く。耳まで赤くして、俯いて。
―――その仕草に、また、自分が熱くなるのを感じた。

「あっ・・・ご主人様。まだまだご満足いただけてないみたい、ですね・・・」
「や、違ぇ・・・・・・ことも、ない、けど・・・」
足りない、なんて素直に頷くことは出来ずにもごもごと漏らす。
するとティアは服を脱ぎだして、あっという間に見事なプロポーションをさらけ出す。
何を思ったか、上だけを脱いで下はそのままというアンバランスな格好。
それに呆と魅入る俺に―――目が覚めるような、強烈な刺激が襲った。

「う、っ!?」
「・・・ご奉仕、いたしますね」

また、俺の知らない感触。
見れば、ティアの豊かな胸に、俺のモノがきゅっと挟み込まれていた。
―――口とも膣内とも違う。どれも優劣なんてない、三者三様の快激。
「あつい・・・どう、でしょうか?ごしゅじん、さま・・・」
「っ・・・すげぇ、気持ちいい」
思ったことを素直に口に出す。もう、理性という鎖は粉々に砕け散っている。
するとティアは満足そうに微笑んで、俺に起きるよう言った。
ふらつく身体をぐっと起こすと、今度はティアがベッドに沈む。位置の逆転。
「・・・ここに、その・・・」
言いたいことは分かったので、意地悪せずに従う。
ティアの胸にいきりたったモノが包まれて、今度はゆっくりと擦りはじめた。

「く、っ!」
手とも口とも膣内とも違う、言いがたい刺激。
―――自然、腰が動く。ティアの律動では足らずに、前後にゆっくりと。
「・・・んっ、んっ・・・ふ、ぅ・・・」
「ち、やば・・・っ。ティ、アっ。もう・・・」
このままだと、顔に―――口内に出しておいて今さら、と思うが、それははばかられた。
・・・・・・純粋を欲望で穢す、その最たるもののような気がして。

「・・・このまま、出したいですか・・・?それとも、その・・・私の、中・・・」
律動を止め、ティアの口から聞こえたのはとんでもなく淫靡な問いかけ。
くらり、とアタマの中が揺れるが、持ち直して・・・中がいい、と短く返した。
「分かりました。ご主人様・・・もう一度、横になってください」
「へ?ど、どういう・・・」
「・・・・・・・・・」
かぁ、とまた真っ赤になったティア。
どうやら聞いても無駄らしいので、素直にベッドに身を沈める。

「ん、っ・・・ふふ。いつもと逆になったご感想は、いかがですか・・・?」
「っ!?」
眼前に、濡れた蒼があった。
とろ、と揺れる淫靡な眼差し。
思わず唾を飲み込むと―――くちゅ、という水音が聞こえた。

「ふあっ・・・!」
「っ、・・・!」
先が触れ合っただけなのに、互いに身悶えする。
首だけ起こして、繋がりかけているところがどうなっているのかを覗き込む。
「んんっ!」
ティアも身体を起こし、まず膣内に咥え込むことに集中する。
―――――数秒後、しっかりと捉えたようで、膣内に押し入っていく感触があった。
「はぁっ!あ、っ・・・!」
「ティ、ア・・・ゆっ、くりでいい、から・・・」
聞こえるか怪しいが、声をかける。
こっちはこっちで、このとんでもない快楽にどう抗おうかと必死だったりするのだけど。

「っ・・・は、いっ・・・たぞ」
「・・・え、え。すご、く・・・あつくて・・・ご主人様のが、私の膣内に・・・―――動き、ますね」

控えめに、律動が始まる。
こんなはじめての格好だから、俺もティアも要領なんて分からない。
それでも手探りで、互いに快感を与えようとする。得ようとする。

「っは、ぁ、あんっ、あっ!」
ティアの身体が跳ねる度、肉がぶつかる音と卑猥な水音が聞こえる。
さらに、俺の視界には半端な格好で乱れに乱れたティアが踊るのがよく見える。
熱のこもる息遣い、弾む胸―――空いた両手で、揺れるそれをがしっと掴む。
「ひゃぅっ!?」
完全な不意打ち、ティアの身体がひときわ大きく跳ねる。
「っと・・・止まっちゃ、駄目だろ?動いて、ほら」

ふと口をついて出たのは、ティアにかけるべき種類の言葉ではなかった。
―――これじゃ、ティアを愛したんじゃなくて、ティアというメイドを犯しただけじゃないのか。
・・・・・・・・・・・・。

「―――申し訳、ありませ、ん・・・っ」
そんな俺の想いなど関係なく、ティアは忠実なメイドの冠を捨てようとはしない。
再び律動が始まる。今度は、激しく俺を攻め立てる上下運動。
「・・・っは、く・・・!」
「やぁっ、こ、れ・・・きもち、いいっ・・・!」
―――どうやら、どちらも快楽を掴んだらしい。
俺の方もそろそろ限界が近い。せり上がってくる欲望を押さえ込むのが、厳しい。

「ティ、ア・・・出す、ぞっ・・・!」
「は、いっ・・・・・・どうぞ、なかに・・・っ」
「―――――くっ・・・!!!」
「ルー、ク・・・っ!!」

ティアの言葉が最後の引鉄。
―――俺の欲望は奔流となって、ティアの膣内に放たれた。


「―――――・・・・・・落ち着いたか?ティア」
「・・・ええ。なんとか、マシにはなったわ」

ティアの声色は元通りに戻っていた。
ついでにその服装も、いつも通り教団の制服に。
ただ、顔色だけはまだ赤い。だから記憶がトんでいるワケじゃないんだろう。

「・・・じゃあ、教えてくれないか?どうして、あんな―――――」
あんなに乱れて、しかもメイドなんかを演じたのは・・・と聞きたかったが、それはなんだかはばかられた。
でも言いたいことは伝わったようで、ティアは俯いて押し黙る。
ちょっと無神経な質問だったかな、とは思うが、やはり様子がおかしかったことだけはどうしても気になる。

「やっぱり、アニスがなにかしでかしたんじゃないのか?」
恐らく関係があるであろう子悪魔の名前を出すと、ティアはコクリと頷いた。
・・・・・・・・・アニス、覚悟しておけよ・・・あとでイタイ目、見せてやる。

「・・・でもね、ルーク。アニスは悪くないの」
「へ?」
どんな風に懲らしめようか、と考えるアタマに、よく分からない言葉が届く。
どういうことだよ、と尋ねると、やっぱり真っ赤な顔でティアは答えた。
「アニスは教えてくれただけ。ああいうコトをすれば、ルークがすっごく喜ぶよ、って・・・。
 だから、あんな風にしたのは私自身の、意思・・・だから、アニスは、悪くないわ・・・・・・」
「―――――え?」

待て、待て、待って。
じゃあ、ティアは自分の意思で、あんな風に?

―――――しかもそれが、俺の為に?

「ティア・・・なんか、クスリを盛られたとか、じゃ、なくて・・・・・・?」
「・・・・・・うん」

―――ガツン、と殴られたようなショック。
次いで心に浮かぶのは、気恥ずかしさと、幸福の実感。

「・・・ごめんなさい、ルーク。逆に困らせちゃったわね」
ティアは苦笑する。

―――その唇に、ひとつキスをする。

「ルー・・・ク?」
「違う。ちょっと戸惑っただけで、困ってなんかない・・・その、嬉しいよ。そんな風に想ってくれるだけで」
 それにティアが主導になるのも、悪くないっつーかさ・・・あぁもう、とにかく、その、ありがとなっ」
言いたいことがよく分からなくなってきたし、何よりハズいので、強引に打ち切る。

「・・・ありがとう、ルーク」
優しい笑顔から、優しい声と、優しい口付けが落ちてきた。
それを受け入れて、ゆるりと流れる幸福に意識を委ねる。

―――これ程までに想う人が居て、これ程までに想ってくれる人が居る。
―――そんな、穏やかで愛しい世界を楽しむことが出来るという、この幸福に。

「・・・・・・ティア・・・ホントにやりよった・・・それにしても、いいなぁ・・・あの胸・・・うぅ」
「―――やれやれ、居なくなったと思ったらこんなところにいるとはな。感心しないぜ?アニス」
「はうあっ!ガ、ガイ・・・あうあう・・・」
「せっかく稼いだ賞金も、これじゃああげられないな。これは今度売り出される音機関の購入費用にでも充てるか」
「やーっ、やーっ!もう(たぶん)しないからーっ!!」

「ん?なんか・・・外が騒がしいな」
(それにしても、ルークのメイドになりきるの・・・・・・悪くなかった・・・かも、しれない・・・・・・やだ、私ったら・・・)
「・・・ティア?どうしたんだよ、ぼーっとして」
「え!?や、ち、違うのっ!!な、なんでもないからっ!!」
「・・・?」


おしまい。


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