総合トップSS一覧SS No.4-077
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
無題 671氏(17スレ目) ガイ×ナタリア 2005/12/24 2005/12/30

「何作ってんだ?」
「見てわかりませんか?惚れ薬です」
「へえー意外や意外。そういう非現実的なものに興味あんだな。まあ常時バスローブとスリッパって地点でかなり非現実的だが」
「海猿は黙ってなさい。……おや、その目は信じてませんね」
「当たり前だろ。…はぁ。で?使い方はどんななんだ?」
 ジェイドはにいっと口角をあげ、待ってましたと言わんばかりに頷く。
「意中の女の夕食に少量混ぜるだけです。すると相手の意識を混濁させて熱〜い一夜を共にすることができます。
猫にまたたび嗅がせるようなものです。肉球触り放題です」
「そりゃまあ…随分お手軽だな…。というかそれは惚れ薬じゃなくて媚薬じゃないか」
「朝になれば相手は悪い夢を見た、程度にしか思ってませんから」
「無視かよ」
 ジェイドは惚れ薬をランプに透かす。美しいアメジストのような色。……見た目だけは。
「ふーん……」
「……。なんだかまだ信じていないみたいなので実験しましょうか?あなたで」
「そ、それは勘弁!!」
「冗談ですよ」
「(こいつの冗談は全然冗談に聞こえねえ……)」
 ジェイドは小瓶に惚れ薬を取り分けると、ガイに無造作に放り投げる。
「うわっ」
「一回分タダで差し上げます。どうぞ御自由に。……あ、でも男に使ったことないのでその辺りは自己責任でお願いしますよ」
「つ、使うか!!誤解を招くようなこというなよ!」


 自室でガイは一人悩んでいた。その手の中には例の薬の瓶が、まるで魔力を持っているかのように煌めいている。
(多分…冗談なんだろうなあ…。ジェイドは嘘の天才みたいなもんだし)
 薬を掲げる。
(何よりタダってのいうのが怪しさ満点だぜ。……まあ冗談ならのってやってもいいか)
「……イ…。ガイ!?」
「うわっ!!!」
 ドアごしにアニスが話し掛けて来た。
「何ぼ〜っとしてるの?あ、ちゃんとノックはしたからね!もうご飯だよ」
「い、今行く」
「早くきなよ〜?お腹減ってんだから。じゃ他の人もよんでくるからね」
「わ、わかった」
 ぱたぱたとアニスの足音が遠ざかっていき、ガイは溜息をつく。
「(アイツに使うやつは……犯罪だな)」
 約一名、心当たりがない気もしないが。

 ガイは皆が来る前に慌てて食堂へ降り、人数分並んだ皿の前に立ち尽くす。
「(ど、どこに誰が座るかわかんねえ…。ええいままよッ!)」
 六枚のうち一枚に瓶の中身をシチューに注ぐ。どこか禍々しいその色はあっという間に消えて、シチューの色と同化した。ガイは驚きを隠せない。
「(これ、まさか本当に本物か?)」
「ガイ?お前早いな〜、そんなに腹へってたのかよ」
 ルークに背後から肩を叩かれ、びくっとする。慌てて袖に薬の入っていた瓶を隠した。
「!……まあ、そんなとこだ」
「おっ!今日チーズシチューじゃん!早く食おうぜ!」
 どこかそわそわしたガイの様子に気付かず、ルークは早々に席に座る。既に右手にスプーンを持って待ちきれない様子だ。
 遅れてやってきたアニスたちに混ざったジェイドがニヤニヤしている。
「ガイ!早く座りなさい」
 考え事をしている間に皆着席してしまったらしい。
 振り向くと、先程いれたシチューの前に座っていたのはナタリアだった。
「!!!!!!!!」
 ガイの背中にぶわっと冷や汗が吹き出た。よくよく考えるとあの薬は使うべきではなかったのだ。
「(俺はとんでもない思い違いをしていたようだ )」

ティア→バレたらルークにボコ
ナタリア→王女
アニス→ロリ

 ガイは茫然としながら席につく。ジェイドがニヤニヤしている。
「ねえガイ。さっきから全然食べてないけど大丈夫?」
「あ、あぁ…ありがとう。ただ少し食欲なくてな……。…ルーク食うか?」
 先程からガイの皿をちらちら見ているルークに皿を差し出した。髪を切る前は遠慮も何もなく勝手に皿を奪い取っていたものだが、変わるものだ。
 ルークは明らかに顔が輝かせたが、ぐっとスプーンを握りなおして、
「い…いいのかよ?」
「ああ。勿体ないしな」
「やった!!」
 ルークは喜々としてシチューを貧りはじめる。
 普通ならここでいつもナタリアが一喝するはずだが…と内心祈りながらナタリアをちらりと見た。
「ナタリアも…顔色少し悪くないかしら?」
 ティアの声にナタリアが弱々しげに顔を上げる。
「いえ……少し、眠くて」
 アニスが声を荒げて、
「えーっ!さっき弓の訓練に付き合えってアンタが言ったんじゃーん!」
「無理をしないほうがいいわ、もう寝たら?」
 ナタリアは声もなく頷き、席をたった。ティアは眉を下げて、心配そうに見送った。ジェイドがテーブルに肘をつけながら、
「ガイ、あなたもお休みになられては?」
 ニヤニヤしてこっちを見ている。いやがらせか?殺すか?
「(野郎……)……。そうさせてもらうよ」
 ガイは非常に疲れた顔をして、ナタリアの後を追った。

「ナタリア様、大丈夫ですか」
 丁寧にノックをするも、反応がない。半ばやけくそ状態でドアを開ける。
 部屋には明かりがついておらず、ただカーテンから漏れる星の光が、辺りを照らしていた。
「ナタリア………様?」
 ガイはベットの上でぐったりしているナタリアに恐る恐る声をかける。
 ナタリアの息は荒く、事情を知らないものが見たら風邪でもひいたのではないかと思う程だ。
「はぁ……っ…は…」
 だが知っているものならば彼女の声の性質が苦痛でないことがわかるはずだ。喘ぎ声に雑じる、快楽を求める声―――。
「ナタリア様!!」
「……っあ…ガイ…?」
 うっすら開けられた淡い黄緑の瞳が熱で潤んでいた。ガイは少しどきりとする。
 熱を測るために、失礼のないようにそっと額に手の平をあてると、ナタリアがその手をとって、まろい頬へ導く。
「つめたい……」
 甘えるようなうっとりとした声が耳に絡み付く。これがあの媚薬の効果か、と不謹慎にも感心してしまう。
「…………ナタリア」
 女性恐怖症といえど、やはり女の体には興味がある。ガイが試しに細い首筋に指を滑らすと、長い睫毛が震えた。
「っふ………」

――――明日には悪い夢になるのか。

「(じゃあ行けるとこまで行っちまってもいいってことか…?)」
「ガ、イ…?」
「…………すみません」
 ガイはその柔らかな唇の間にするりと舌を滑り込ませる。熔けてしまいそうなほど熱くて、夢中になって口づけを施す。
「ン……んん、ッ……あ…」
 逸る気持ちを抑え、破かないようにナタリアの上質な服を剥いでいく。
 これが本来のナタリアだったらどう反応するだろうか、………おそらく脳天を貫かれている。
 だが今のナタリアは濡れた瞳で、服を剥くガイの指先をゆらゆらと追い掛けている。不安と期待が混じった目だ。
 それに応えるように露になった形のよい胸を撫でる。時折、指と指の間に、尖った頂きを挟んで。
「あ……っ、やあ……」
「ナタリア」
 彼女が悶える度に柔らかな金の髪がきらきら揺れて、とても綺麗だった。
 行為に対する嫌悪のない、陶酔しきった表情。まるで恋人同士のような。
 馬鹿馬鹿しい、とガイは首を振る。
 届かぬ立場にある彼女が今自分の前で痴態を曝している。それで充分だ。
「きゃ……!あ、だめ…」
 へそまわりを舌でくすぐると、魚のように跳ねた。ガイが面白がって、何度も繰り返すと、切なげにしゃくり始める。
 すっかり濡れそぼった秘所に指先を入れれば、ナタリアは少し眉をひそめて、苦しげな喘ぎ声をあげた。
「ひぅ……っ、もっと……やさしく……んんッ」
 人差し指をきゅうきゅうと締め付ける膣は彼女が処女だということを如実に示していた。
「あっ、あっん!…っは、ぅ…!ガイ……ガイっ…や…ぁぁ」
 引っ掻くように指を曲げると、より高い声で鳴いた。
 媚薬が効いていても羞恥心はあるのか、嬌声を抑えようとシーツを必死にはむ様子がガイを煽る。
「(さすがに、本番はまずいか…)」
 彼女は王女なのだ。
 ルークか、それともアッシュか…地位あるものの所へ嫁ぎ初夜を迎えるのだろう。
 その時に守ってきたはずの純潔の証がないとわかった時、ナタリアはどんなに嘆くだろうか。
 ガイはきつく目を閉じる。失ったものは大きかったことに。

「ガイ…?」
 突然指を抜いた後何もしてこないガイに違和感を覚えたナタリアが、ガイの表情を覗き込む。
 金の髪に指を差し込んで撫でると、気持ち良さそうに目を閉じる。
 どうすべきか悩んでいると、ナタリアがふいにガイのいきり立ったものに拙く触れた。
「ナタリア…様…っ!?何をっ…」
 ガイは次の瞬間にくるであろう快感に堪えようと、きっと歯を食いしばった。だが、
「…………」
「……………」
「…………………?な、ナタリア様…?」
 ナタリアは両手を添えたまま、動かない。少し困った顔をしてガイを見つめている。
「…ぁ……わ、私、次にどうしたらいいか…その…」
「っ…」
 普段のナタリアと違うしおらしい彼女を見ると、なんだか胸が痛む。いずれ他の誰かに同じ言葉を囁くのか…。
「では、……ナタリア様、舌で舐めてください」
 ナタリアは頬をそめて頷くと、言われたとおりに舌を沿わせはじめた。
 たどたどしいが、薬の熱に浮かされているのか、夢中で舐めているのが逆にいやらしい。
「ん……ちゅ……んむ……」
(そういやジェイドがまたたびを嗅がせた猫って言ってたか。……随分高級な猫だな)
「ガイ……気持ちいいのですか…?」
 小さな口で丹念に愛撫され、ガイは目を細めて頷く。
「は…ナタ、リア様……くっ」
「はぁ…ん、…かたい……」
 つ、と形に沿うように舐め上げられたとき、耳にかけていた金髪がさらさらと零れ落ちてガイを擽る。
 背筋に走った尿意にも似た感覚に、
「ナ、ナタリア様、口を、離してくださ―――ッ!!」
「んッ!!」
 勢いのついた白濁がナタリアの顔や胸を汚す。ナタリアはぼうっとした表情でかけられた熱い精を見ていた。
「す、すみませんっ」
 何を謝っているんだろう、この状況を引き出したのは自分なのに。
 ガイは慌てて従者らしく、タオルでナタリアの体を浄め、冷たい水を与えた。表情はやはりどこか虚ろで、幻を見ているようだ。
 その姿にはひどくそそるものがあったのだが……。
「ナタリア」
「…………」
 ガイは空しくなった。
(何やってんだ……俺)
「今日は、本当に……すみませんでした。………もう、お休みになってください」
 声を絞り出し、やっとの思いでノブに手をかけた。ナタリアが顔をあげる。
 世間知らずで、無垢な新緑の瞳。
 ガイはベッドに腰掛けるナタリアに近づき、跪いてそっとキスをした。抵抗はない。
 口端から漏れる甘い声に、ガイは少し反応する。
「――――――俺の気持ちです。……また明日」

 部屋に戻るとバスローブ姿のジェイドがベッドを占拠していた。ガイのこめかみが引き攣る。
「おい……お前…」
「おやおやガイ君。お早いお帰りですね〜。今夜はもう戻ってこないかと。どうでした?本物だったでしょう?」
「まあ惚れ薬ではなかったな……」
「熱い一夜でしたか」
「………それは無かった」
 ジェイドはおや、と眉をあげる。少し考えて、
「ああ、勃ちませんでしたか、肝心のとこで」
 若い頃にはよくあることですと、納得したように深く頷く。本気で殴りたい。
「もう黙れよ。つか俺のベッドからどけッ!!」
「今いい具合に温まってるので出て行きたくないです」
「オイふざけんな」
「君が出てけばいいでしょう。あなた、私の温もりが残ってるベッドで寝たいですか?」
「絶対嫌だ」
「でしょう」
「……はっ!騙されるところだった」
「じゃあ今なら惚れ薬もう一回分差し上げますから」
「……………いらねえ!」
「なんですか今の間」

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 爽やかな朝の空気、祝福するような鳥の囀りが今は妬ましい。
「くそ…っ、全然寝れなかった」
 やっぱりジェイドが眠っていたはずのベッドだと思うと胸糞が悪い。ガイは舌打ちして、傍らの剣をとる。
「肩が…痛ぇ。…久しぶりに素振りでもするか……」

 階下へ降りると、食堂にナタリアが一人座っていて、心臓が口から飛び出そうになった。
(ジェ、ジェイド…本当に大丈夫なんだろうな?!)
 ナタリアはそろそろと階段を降りるガイに気付いたのか、くるっと振り向いて、
「ガ、ガイ!こちらにきなさい!」
「……はい」
 がっくりと肩を落として、ナタリアの席に近づく。
 心の中で何個も何個も十字を切りつつも、「終わった…俺の従者人生」と諦める。
 彼女の表情は赤く、真っ直ぐ人の目を見つめるナタリアにしては珍しくガイと目を合わせようとしない。
「貴方、昨日……私に……」
「は、はい」
「……っ、何でもありませんわ!」
「はい。……お茶…でも汲んできましょうか?」
「け、結構です。途中で呼び止めてしまって…。もうお行きなさいな」
「はい」
 そそくさと外に出ていってしまうガイをナタリアは視線で追って溜息をついた。
(私……!なんて淫らな夢を見てしまったのでしょう!……嫌だわ、こんな私は…)
 熱い頬を押さえて、昨夜の夢を振り払うように首を振る。
(ガイが優しかったから……あんな…)

そっと唇に触れる。

(あんな風にキスされるなんて………)


FIN


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