総合トップSS一覧SS No.4-051
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
極北の春 841氏(16スレ目) ティトレイ×ヒルダ 2005/11/27 2005/11/29

モクラド村は、年中豪雪に閉ざされた僻地の村である。
空を翔る翼を持つシャオルーンの力を借りてなら、楽々行ったりきたりできたが、聖獣が去り、その
翼をも失ったヒルダ達には、思いついたからといって、じゃあ行こう、というわけにはいかなくなった。
時間をかけ、仲間たちの力を借り、苦労してオスミナ山地を越え、ユリスを倒して以来初めてとなる
北の隠れ里で、やっと母の墓前に参ることができた。
宿をとっておかみさんの心づくしのパエリアをご馳走になり、ヒルダだけは母が生前暮らしていた家
にやってきた。母の暮らした家で、母の家族として、母を思って、ここで過ごしたいと。
みんなは気を利かせて、ヒルダを一人で送り出してくれた。
家は、村人たちの厚意で、いつでも生活が再開できるように管理が行き届いていた。
年老いたこの村の人々は、村の住人であった母ナイラの子であるヒルダを歓迎し、それこそ自分の
娘や孫のように気に掛けてくれる。
母の寝間着に袖を通してみると、ガジュマの母の体格はヒルダのものより縦も横も大きめで、
襟ぐりも袖も裾も余ってしまう。そんなささいなことにあたたかさを感じられる幸せに、くすくす笑い
ながら寝床を整えていると、来客を知らせるノックの音を耳が拾った。
こんな時刻に誰だろうと思ったが、住民はほとんどが顔見知り、よそ者も仲間たちと稀に訪れる
行商人しかいないこの小さな村では、怪しい者もないだろうと、扉を開ける。
夜の闇に包まれて灰色に沈む雪景色を背に、白い息を吐き出しているティトレイが、一人でいた。
訝りつつも屋内に迎え入れ、来訪の訳を尋ねると、話があると手短に彼は言う。その口調がいつもの
ティトレイらしくない落ち着きと深刻さで、見合うと何事か腹を据えている者の決意のようなものをうか
がわせた。
彼は不思議なほどに静かな目をして、静かに言った。
「お前……ここに残るのか?」
「えっ?」
「ほら、この村の婆さんに、いつかこの村に戻ってくる、って言ってただろ」
確かに言った。母を葬って、聖獣の試練に向けて旅立つ時に。
ユリスを倒し、過去に因縁を持つ敵もいなくなった。旅の目的が果たされた今、母の暮らした家があ
る、この閉ざされた村に残るのか。
彼はそれを気にして、わざわざ尋ねに来たのだ。思い立ったら即実行というところが彼らしい。
彼がそれだけ自分を気に掛けてくれていると思うと、嬉しかった。
「いや、さっき皆でその事話したんだよ。もしかしたらお前そういうつもりなんじゃないかなーって」
「だったら、自分からちゃんとそう言ってるわよ……今はまだ、残る気はないわ。しばらくは、あんたた
ちと旅を続けるつもり。楽隠居には早いわよ」
「……まあ、そうなんだけどよ。皆ともそういう結論になったし。ただ、どうしても気になっちまって……」
しばしじっと見つめ合う。就寝間際の彼女はいつもの化粧をした顔ではない。
口元を妖艶に見せていた派手な色の口紅のない唇は、初めて見る者にとっては初々しく思えて新鮮で、
冷たい色のアイシャドウに押さえつけられていた目が、ぱちりと大きく開いて見えるだけでも、その印象
は普段と大分違う。

ヒルダがかすかに頬を染めて目を逸らした。化粧をしていないことに思い至ったのだ。
それが好機とばかりに、ティトレイは思い切ったように足を踏み出し距離を詰めて、ヒルダを抱きしめた。
お前が好きだと。驚くより早く告げられた言葉に、拒否の言葉も抵抗の動きも解かされて、ヒルダはしばし
彼の腕の中で呆然とする。
徐々に強張りが解けて、彼の肩に頬を寄せてみた。
ヒルダの胸を押しつぶさんばかりに押し付けられるティトレイの胸は、まだ寒空の空気に染まって
ひんやりしていた。けれども、赤ん坊の時以来の、両親以外の人間からの抱擁はあたたかく懐かし
く感じられる。
「ヒルダは?」
柔かい産毛に包まれた耳に息を吹き込むようにして問う声の低さに、頭の芯が痺れる。
「私…?……うん…私も……」
突然のことに何もかも信じがたく、ただ今は身を包み込むその感覚にうっとりと目を閉じていたヒルダ
だったが、互いの胸板で擦りあわされて潰れていた乳房にティトレイの指が這わされると、怪訝な顔
で目を見開き、全体を大きな掌に揉みしだかれるに至って、完全に我に返った。
「…な!?ちょっと!ティトレイ!」
突然のことに反射的に身を捩り、腕が上がって密着した身体をもぎ離そうと試みる。
わけがわからず、問いただすように顔を見上げて、視線を絡め取られた。
「な……いいだろ?」
なんでそうなる。
「好きって言ったじゃねえか」
頑是無い少年の物欲しげな、あるいは欲を知る男の目をした、初めて見る顔で熱っぽく囁かれると
胸の奥がきゅうと疼き、力が抜けそうになってしまう。
しかし、年上の矜持が彼女を我に返した。焼かれそうな程熱い視線に炙られ、焦りに突き動かされる
ままもがく。
が、ティトレイの腕は彼女をがっしりと捕らえたまま、びくともしない。片腕で封じたまま、何事もな
かったようにもう片手でヒルダの侵食を開始した。
形よく盛り上がったやわらかな胸が、男の無骨な掌にいいように弄ばれる。
「あ!…こら、ティトレイ、よしなさ……ひゃ…いや…!」
「あったけぇな……それに、すげーやーらけぇ」
外の夜気を宿していたグローブを外した素手もまだ冷たく、ヒルダの寝間着のぶかぶかの襟元から
滑り込んだティトレイの指が女の素肌と触れ合う都度、温度差がヒルダを苛み呻きをこぼさせた。
同時に、ぞくりと、女の最奥の部分から背筋を震わせ駆け上ってくる別の何かを知覚し、うろたえる。
指先が乳首を捕捉すると、ティトレイは性急にそこを責め始めた。
胸を覆っていた下着をずり下げ、露になった白い身体に見惚れることもせず、立ち上がりかけている
そこを指先でつまみ、くぼみをひっかく。
「あ…!…ちょっと、もう…やめなさいったら……ふ!」
ヒルダの体内に不意に生じた快楽が、次々と下半身へ落ちていく。

びく、と腰が跳ねる。強張る身体はその動きの全てを一瞬止めてしまう。その回数が増すほどに、抵
抗がままならなくなっていく。
ティトレイは己の肩でヒルダの身体を手近な壁に押さえつけて動きを封じ、着衣をくつろげていく。
元々サイズの大きかったガジュマ用の寝間着は、肩にしがみつききれず滑り落とされてしまった。
無防備に晒された肌に夜気がことさらに沁みた。
その間も、ヒルダの胸は絶え間なくティトレイの責めに翻弄されていた。
熱い吐息で肌を撫でながら顔を寄せ、肌寒さも相俟ってぴんと立ち上がっていた乳首を唇でついばむ。
技巧も柔かさも二の次の、ほとんど乱暴といっていい所作で何度も舌先で舐り、強く吸った。
「…んん!…くぅ…おいたが、過ぎる、わよ……やっ…あ、ぁ!」
それでも敏感なところを執拗に、熱いぬめりに翻弄され責められれば、身体が順応してきてしまう。
皮膚はうっすらと汗ばんできて、それ以上に、体の中は熱くなっていた。
「んっ、ふ、いい加減……やめ…は…」
拒む声も、徐々に鼻にかかって切なく透き通ってくる。
ティトレイもヒルダも、呼吸が定まらなくなり、はあはあと息を荒げていた。
長くうねる黒髪が宙を舞っては、逃れようとよじる身体にまとわりつき、まるでそれに囚われているかの
ようにも見える。
のしかかる男の身体を押しのけようとあがく腕は震えるばかりで、今やすがるようにしがみ付くありさまだ。
「ぁ…、ふ…、ティト、レイ…だ、め……ん!」
ヒルダが濡れた声を吹きかけると、ティトレイも昂りを増して体を震わせた。眉をしかめ、何かを堪え
るように呻いて、また、双丘に顔を埋める。
胸と腹をまさぐっていた掌を茂みへ向けて滑らせ、とうとう腰周りを覆う下着に手をかけた。
彼女の秘口はまだ、一度も触られていないというのに、体内の泉から湧き出してくるものがある。
このままでは本当に、成すがままに押し流されてしまう。なぜこんなことになっているのかも定かで
はないのに。
ティトレイの肩を押し返そうとの試みを繰り返していたヒルダの腕が、がむしゃらに暴れて背中に辿り
着き、ボーボーに伸びた髪をすがるように引っ掴んで引っ張った。
「いてっ! いてえ! ちょ、待…やめろって!」
随分と勝手な言い草だ。人を好き勝手に触っておいて。
「やめろって言ってるのはこっちでしょう! さっさとどいて!」
流石にティトレイの動きの止まった隙に、もがき出たもう片手でも握った髪を質に取った。
半裸で、やってることはそんな情けない状態で、年上の威厳をかき集め断固として要求する。
今ならまだ許してあげるからと。
まだ間に合う。
この度の過ぎた悪ふざけも、束の間乱された自分自身も、まだ、忘れてやることもできる。
これで駄目だったら雷のフォルスを使ってでも、と、いつしか自らに禁じていた、人を傷つけるための
発動を考える。
しかしその発動には暴走でもしない限り、意識の集中と予備動作が必要だった。
もっとも、それが可能かを悠長に考察している暇など与えられない。
ヒルダの肌に這わされていた手が身体から離れ、目が安堵に緩む間もなく、ものすごい力で両手首
を掴まれたのだ。

「……っ!痛っ!やめて、なんでこんな……」
ユージーンやヴェイグに比べると軟弱に見えても、バイラスを拳で殴り倒す男の筋力は侮っていい
ものではなかった。握り潰されそうなほどの握力でもって、痛みに耐え切れず開いた手を彼の髪か
ら引き剥がされる。
覗き込まれた若い双眸には凶暴といっていい光が宿り、狂おしく眼前の女を欲している。
こんな熱情を彼がしまいこんでいたなどと誰が思っただろう。あまりのギャップに沸き起こった感情
は恐怖にも似ている。
実はこの男、思いを遂げようと……まあ、つまり、ヤってしまうつもりで来た。
残るという意思が彼には揺るがせぬほど固いなら、ならばせめてものよすがにとの気持ちもある。
思いを告げてみれば、思いがけずすんなりと色よい態度と返答。煩悩一気に燃え上がり、自分でも
とどめられなくなっていたのだ。
というか、今はもう隙を作ったお前が悪いと言いたい心境。
「これしかねぇと思ってたからよ。……今更止めらんねえよ」
「は?」
何のことかと尋ねる間もなく、両手を掴まれたまま引き立てられた。
腰まで落とされていた寝間着が更にずり下がって足に絡み、手を引かれたまま倒れこみそうになる。
膝を付きそうになった体が床に転がるより前に、不自然な感触が彼女を柔かく受け止めた。
根を張れる土もない足元からざわざわとうねくり、急速に繁茂していく緑は、この男の仕業だ。
ティトレイの顔を見上げて真意を窺うまでもなく。爆発する勢いでヒルダの身体に向けて伸びた無数
の蔦が、宙でより合わさり太い縄となって彼女の四肢を捕らえた。それだけではない。
「…!きゃああっ?!―――――いやああぁ!!!」
強靭な力で伸び続けるそれは彼女を絡め取って吊り上げ、両足を大きく開げて、ようやく止まった。
いくらもがいてみても、いや、もがこうとしても、身じろぎすら叶わぬ力で完全固定されている。
空中で脚を開いたあられもない格好で。最後の一枚だけはかろうじて身につけているとはいえ、恥ず
かしい姿で開かれた秘部の、愛液に透けた様を、見世物よろしくティトレイに見られる。
「ぁ……いや……み、見ないで……」
遠慮なく突き刺さる視線に耐えられず、羞恥に頬を染め、精一杯顔を逸らすことしかできない。
「いやってことないだろ。お前、さっきからそればっかだな」
自らも服を脱ぎ捨ててヒルダの前に膝を付いたティトレイは、まずは手を伸ばして下着に手をかけ
た。恥丘の下へと力なく垂れ下がっていた尻尾が抗議するように上下に振られ、ぺちぺちとその手を
叩くが、全く効果はない。
ティトレイは少し考えて、サイドの片方を両手で掴み、力任せに引き千切った。
繊細なレースと薄いシルクの破ける無残な音に、ヒルダが引きつった顔で恐怖の吐息を零す。
放り出されたそれは、ただの濡れた布切れとなって白い脚に張り付き、もはや顧みられることはない。
「ほら、ここ見ろよ。女って感じなきゃ濡れねえんだろ」
「そ、それはそうだけど……」
防衛のために濡れることもあるとはいえ、前戯で解かされた今はそうとも言えず反射的に正直に答
えてしまい、更に顔を紅く火照らせたヒルダをよそに、ティトレイの指先は愛液を湛えた泉のほとりに
滑り込み、大きく育った芽に指の腹を押し付けた。
「…ひぁぁ!」

撫でられただけだというのに、その奥にまで突き抜ける何かを覚えるそこは、意に反して刺激を
貪欲に取り込んだ。
「な、イけそうだろ」
我勝てりとばかりに嬉しそうに言ったティトレイは、彼女の女を指で開き、彼の男を宛がった。
ヒルダの媚態に中てられて、それはティトレイの昂りを映して熱い塊となっている。
若さと熱血な性格をそんなところでまで主張しているかのようなそれは、並外れてというほどでも
ないが、水準以上に立派ではある。
「いけるわけないわよ! こんな……」
「おれはお前が好きで、お前もおれが好きで、おれはお前が欲しくて、お前は濡れてる。それで何か
問題あんのか?」
この男にかかると、何もかも単純化していく気がする。しかしながら、そういう問題でもない。
「…だめ、待っ…!」
無駄と知りながらも、再び体を捩り逃れようとした。塗りたくられた唾液に濡れた乳房が艶かしく揺れ、
ぬらぬらと光る。
「待たねー」
それに震い付き、ティトレイの雄は勢いよくヒルダの内に侵入した。愛液を垂れ零している部分にまっ
すぐ、ぬるりと呑み込まれていく。
ヒルダの腰がずり上がって逃げようとした。
しかし、元々動けない上、腿の付け根を押さえ込んだティトレイの手が、自分の方へと押し落とした。
熱いものが、子宮の入り口を一撃で抉る。
「あああぁ! いやあぁ!」
いきなりの座位での、秘められた最奥の性感への容赦ない責めに、ヒルダは普段の彼女からは絶対に
聞けそうにない、透き通りそうに甲高い悲鳴を上げた。
ティトレイは真逆に、普段の彼からは聞いたこともない、極限まで低められた声で呻いた。
「く……!っあー……すげ、いい……!」
ヒルダの中は温かく、満たされた液体と溶け合いそうなほど濡れた襞がうねって絡みつき、引き込んでは
彼自身を包みこもうとする。
ヒルダが食いつきたくなるような無防備な白い喉を仰け反らせ、悶える様を凝視していたティトレイはますます
嬉しそうな顔になると、彼女に息つく間を与えぬタイミングで律動を開始する。
「は!……ぁ…あぁっ…あああ……!」
感じやすい粘膜を強い力でこすられる感覚が、ヒルダに声をあげさせた。
せっかちに己の快楽を貪り、ただがむしゃらに最奥を乱れ突くやりようは、愛撫と同じで巧みとは呼
べぬものだったが、とにかく力強く彼女の内をかき回しては突き上げる。
羞恥と愉悦が灼熱と化して身体の内を焼き、熱く紅く色づかせ、踊る黒髪が二人の身体に絡んで彩りを
添えていった。
動けぬヒルダの華奢な指が、すがるものを求めて苦しげにのたうつ。どうにか自由になる膝から下
が、何度も宙を蹴った。
頭が割れ鐘にでもなったかのようだった。絶えず高い音を打ち鳴らされ、耳鳴りと衝撃で急速に視界
と思考が閉ざされてゆく。呼吸がままならない。
女の皮膚をまさぐるティトレイの手と唇。激しく動く腰。
羞恥と快楽に染まって、潤み喘ぐ顔は淫美で愛しく、甘やかに香るかのようだった。

震える体、乱れる髪、わななく唇、吹き零れる涙、濡れた嬌声、全身全霊で拒もうとしながらも、
それに勝る力と快楽に支配されるしかない、か弱い女の姿そのもののヒルダの全てが今、ティトレイ
の欲望を際限なく加熱する。
いつもすました顔と物言いで自分をやり込めるこの女を、もう年上面などできないくらいに支配して
しまいたいと膨れ上がり、破裂する時を今や遅しと待っている。
「ああ…や…っ、…ぁっ…あっ…あっ…」
二人とも体中が汗に濡れ、流れては溶け合い雫となって落ちる。二人の不規則な呼吸が絡み合い、
体液と汗の匂いが部屋の中を満たしていった。
「…ヒルダ…っ」
荒々しく内襞を乱していたティトレイの動きが小刻みになった。頂点が間近に迫っている。
「くあ……イく…っ……出す、ぞ…」
「…な、ぁ……なか、ティ、ト…や…」
中には、出さないで。
そう言おうとするヒルダの舌は言葉を紡ぐための震えを成さない。
声にすらなり切らず、喘ぎ混じりの忙しい呼吸を繰り返しながら、かぶりを振ることしか出来ぬまま。
「くう、ぅ…っ!」
「あああぁぁ…っ…!」
ティトレイが果てた。身体の奥にぶちまけられる白濁の色は見えねど、代わりに頭の中で白光が飛
び散るのを硬く閉ざした目の奥で見る。
ティトレイの吐き出される灼熱の奔流に押し流され、ヒルダもまた快楽の果つる地へと達する。

(…終わった…)
ヒルダの中にあったモノは引き出され、伝わり落ちる液体の混合物は尻尾の根本を濡らし、真下に
滴り落ちて、未だ彼女を捕らえている蔦のあちこちにあやしげな照り返しを作った。
全身を覆う痺れはやまず、追い払われた快楽以外の感覚も今しばらくは戻るまい。
フォルスまで使って捉われ、抵抗できない身体を視姦され、容赦なく蹂躙された。
「…はぁ…はぁ…」
仲間として信じていた相手からの突然の告白と行為はとにかく突然すぎて、ヒルダの中で実感を
伴って据わるにはまだ少し時間が必要だった。
自分からも好意めいたものを感じていた相手だけに、尚更衝撃は大きかった。
早く身を清めて、何もかも忘れたふりをして眠りたい。起きたら何もかも夢だったらいい。
手足をだらんと投げ出し、愛液と精液を滴らせ続けるそこも、まだ全開にされたままのあられもない
姿で呼吸を整えつつ、そう思った。
しかし、依然快楽に侵された神経が、触れてくる他人の指先を敏感に感じ取った。同時に戒めがす
るすると解けていき、その姿勢のままゆっくりと腕の中に下ろされるのも。
「……どうだった?」
「ティ、ティト、レイ?」
ヒルダの眼前には、未だティトレイがいる。嬉しそうで愛しそうな笑顔の中にぎらつく狂熱の残り火を
見、それに触れられていた体の奥が、懐かしむように疼いた。
こんな目に遭わされて尚、この男の笑顔に心掴まれる自分がいる。
これが互いに求め合っての情交だったならどんなによかっただろう。彼が好きなのに。
好き合って、合意の上で事に及ぶなら、混乱もしないし、拘束などされないだろうに。それが哀しい。
そしてその時の訪れまで待ってもらえなかったことが哀しいのだ。
自分を想う光をその目に認めたティトレイは、優しく笑うとヒルダを引きよせ、まだ整わない呼吸を繰
り返している花びらのような唇に、己の唇を寄せた。
まだキスを済ませていないことに思い至ったのだ。

しかしヒルダは、悲鳴にも似たか細い吐息を吐き出しざまに、思わず横向いて避けてしまった。
実はヒルダは、キスは未経験だった。身体は求められても口付けを求められるような愛を向けられ
たことがなかったからだ。
ゆえに、つい少女のように頬を赤らめて咄嗟にそっぽを向いてしまったのだが。
「強情だな」
まさかそうとは思わないティトレイの機嫌を損ねるには充分な反応だった。
前触れもなく、柔かく腰を抱き止めていた手が、足の付け根に押し当てられ、思わず喘いでしまう。
しかし今触れられているのはその入り口に過ぎない。それだけでも、絶頂を迎えたばかりで過敏に
なっていたヒルダには、耐え難い刺激となった。
「――――は…ぁあ!」
濡れている場所を左右に割り広げた指が軽く沈み込むだけで、ヒルダの全身がわななく。
やめてという一言すら言えず、ただ大きく息を吐き出した。
「ああ、は、ぁ…!……っもう、いい加減に、して…!」
「このまま、もう一度…イく、か?」
ヒルダが何とか蓄えた息で断固として叱りつけた。また酸素が足りなくなって声が切れ、濡れた目で
ティトレイを睨んだ。
この期に及んでまだそんな態度で、そんなことを言う。
少し沈めた指で襞をさすりあげると、中で混じり合っていた二種類の液体、ヒルダの中から新たに溢れ
出る液体がどろりと下って来た。
「ひ!……っ!…や、め……やぁ……まだ…ああぁ!」
悶える身体を支えていた腕を少しくつろげて、二人の身体の間に隙間を作り、さっきまで繋がっていた
部分が見えるようにしてやる。
「こんなにどろどろになってるぜ。よかったんだろ?」
このままでは今まで以下の、顔も合わせられない仲で終わってしまいかねない。今ここで自分のものに
しておかなければという焦りに急き立てられたティトレイは、早急に陥落させようと意地の悪い追い詰め方で
畳み掛けていった。
指をクリトリスに移し、押し潰して捏ねる。更なる愉悦が、そこだけを責めたて始める。
敏感になりすぎた肉芽は、指一本動かすだけで脳天に向けて、雷のごとく迸る快楽信号をヒルダに送り
続ければ、彼女はなすすべもなく、かぶりを振り、身を捩って切ない声で啼き続けた。
逃れようと身を捩っても、否、体が震えるだけですら、触れる位置のずれる粘膜と、いたぶるように耳を
打つ大きな水音が、ますます彼女の身体と精神を追い詰める。
「ほら、感じてるじゃねーか。これでもまだ、いやだってのかよ」
「や…、ぁ…ああ…ティトレイ…あぁぁ…私、まだ…っ、やめ…」
ティトレイがこのまま自分をイかせようとしているのを察し、ヒルダは少しでも彼から離れようと身悶える。
しかし業深い女の身体は気付く間もなく、抵抗の動きから、ティトレイの残酷な指を受け入れるものとな
っていた。
己の意思とはかけ離れたどこかで快楽を求めて、華奢な腰が、熟れきった肉芽をティトレイに押し付け、
こすりつけようと、ガクガクと揺れ動く。

これほど追い詰められているのに、肉の歓びは更に貪欲に下腹部の奥に流れ込んでは疼かせた。
もっと奥に欲しいと。
その矛盾がヒルダの精神を蝕み、乱す。
「…あ、あっ…ティト、レ、イ…やぁ……ひぁ…あ…っ!!」
痛いほどに尖った乳首に再び吸い付かれた。そのままヒルダを突き上げる快感の大波に、更なる
一滴を加えだす。
肉芽と入り口を苛む指は容赦を知らず、硬く閉じられたヒルダの視界は白く霞みもう何も見えない。
粘り気のある水音とティトレイの呼吸と、人事のように自分のものでないようだと感じられる嬌声もまた、
徐々に彼女の五感から遠ざかっていく。
大波は快感以外の全ての感覚を流し去った。
「…あ!…あああ、あ…!あっ、あっ、あっ…!」
壊される。
バイラスや、ハーフだからと虐げる者の手にかかるでもなく、自分を好きだと言う男一人に、彼女を構成
する何もかもを奪い去られる。
それは愛されたことのなかった彼女にとっては幸せでもあり、たまらなくみじめでもあった。
ヒルダはただ啼き、どこか悲痛な嬌声を迸らせる。
「もう…もうダメぇ…!ああ!ティトレ…!」
「…イけよ…ヒルダ」
「……!……ひぁあああ、あぁぁ…!」
再度脳天を撃つ眩い雷。脳内を埋め尽くす光は欲の色に冒されて。
体全体が痙攣を起こし、体の中に蓄えられた大波が、あふれ出る絶頂の証となって二人の内腿を
しとどに濡らした。
「ぁ……ひっ…?!」
息つく暇さえなくヒルダは、感じる熱さに痙攣ではなく身体と喉と舌をひきつらせることとなる。
尚も追い詰めるかのように、肉芽を虐待する指が止まらない。
それどころか大波に荒されて濡れそぼった茂みに乗り上げている硬い物は、再び力を得ていた
ティトレイの雄だった。
それがなぶるようになめらかな下腹部にこすり付けられ、身体の内外に熱を移す。
「あぁ…!ティ、ト、レイ!やめ…てっ…あっ…ああ!おねがい……!」
まだ絶頂の放物線をわずかたりとも下降していない身体だというのに、この上どうしようというのだ。
「まだいやだって言うんだな。いつまで続けたら、よくなってくれるんだろうな……?」
それなのに、暗に、彼女から受け容れてくれるまで、朝まででも責め続けてやろうと言う。
今までに聞いたことのなかった声で耳元にそっと吹き込まれ、性懲りもなく奥が疼いて欲する。
この男は、自分を完全に屈服させるまでやめないつもりだ。

体だけでなく心でも彼を求めたいのに、それが叶わないのは誰の所業のせいだ。
行き場のない悲痛が涙となって滂沱とあふれ出る。
「ティトレイ、お願いよ…」
ヒルダは矜持もこだわりもかなぐり捨てて、涙ながらに懇願した。
私もあなたが好きだと。受け容れるから、今はもう許してと。
すると、やっと秘部を解放したティトレイは、春の陽気みたいな嬉しそうな笑顔になった。
卑怯者。ヒルダは諦めと敗北感と、そして愛しさに唇を噛み締めて思う。
この男ときたら、子供みたいに笑ってみせればヒルダを黙らせられると思っているのだ。


なんとかわずかばかりの猶予を貰った後、復活していたティトレイのモノを鎮めるために、寝台の上でもう一度肌を重ねた。
身体を落ち着かせながら二人で並んで寝そべり、事の発端を聞いたヒルダは、頭を抱えた。
彼は端っからヤるつもりで訪ねて来たのだというではないか。
扉を開けた時点で、どう転んでもこうなることが決まっていたのかと思うと、無性にみじめになってきた。
「けどよ、腹ん中に溜め込んだ挙句、暴走した誰かさんよりはマシだろ」
そんな例を引き合いに出されても。
「……」
「おれもいっぱいいっぱいだったけどよ。ほんとは、まだ他にも色々やってみたいことあんだよな」
これには今度はぞっとした。
「今度にして……今は、もうダメ……とりあえずもう帰って。眠りたいの」
「帰れ?!今から帰っておれ明日の朝どうすんだよ!」
「……知るもんですか……」


前のページへ戻る

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル