総合トップ>SS一覧>SS No.4-022
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作品発表日 |
作品保管日 |
邪神降臨・遭遇 |
丼兵衛氏 |
Lを除くP〜Rまでの登場人物(+α) |
2005/10/31 |
2005/10/31 |
かつては、獣王山と呼ばれた奇山が聳え立っていたが、今は瓦礫の山と化した地。
夜の帳が落ちようとしている夕暮れの頃、空に渦の如き黒い歪みが生じた。
“ユリスの領域”にも似た歪みから何かが落ち、そのまま地表に激突した。
荒地にうず高く積まれた瓦礫が円形状に吹き飛び、クレーターを形成した。
土くれと草の焦げた匂いが辺りに立ちこめる中、一つの影が現れた。
影は、遠くに見える煌々と光る町の明かりに向かって歩き出した。
*
カレギア王国の首都バルカはテイルズ世界でも有数の大都市であり、人間型のヒューマ族
と獣人型のガジュマ族が共存している他民族国家の中枢でもある。
仕事帰りや買い物帰りの市民で表通りがごった返す中、銀髪が色黒の肌に映える青年は、不景気そうな顔をして裏通りをぷらぷらと歩いていた。
この青年は、「他の世界の住人と交流を直に深めたい」とナンパに精を出していた。
・・・勿論、ヒューマ・ガジュマ共に“戦果”は皆無であった。
いい加減宿に戻ろうとした時、物影に女性が佇んでいるのを目ざとく見つけた。
青く長い髪から覗くその顔から推測するには、中々の美人の様だ。
(駄目元で、最後に声かけてみっか)
青年は踵を正すと、妙に気取った動作で女性の元に歩み寄った。
「・・・お嬢さん、俺と一緒にお茶でもどうですか?」
振り向いた女性は、青年を赤い瞳で凝視すると、少し戸惑いながら軽く会釈を返した。
(やった・・・ツイてるぜ!)
「じゃ、早速・・・」
銀髪の青年は鼻の下が伸びそうになるのを必死に抑えながら、女性の手を取った。
ひやりとした冷たい感触が、青年の掌に伝わってきた。
「・・・私の事、好きになれますか?」
突然、女性は豊かな双丘を、青年の胸板に押し付けてきた。
「うわ!、い、意外と積極的ですねぇ・・・」
銀髪の青年は顔を真っ赤に染めながらも、しっかりと膨らみに手を伸ばしていた。
女性も求めに応じるかの如く、首筋のホックに指をかけ、ゆっくりと下ろした。
(おおぉ・・・、俺にもとうとう春が来たかぁ!?)
青年は喜びとスケベ心の高まりと共に、己の置かれた状況を判断出来なくなっていた。
女性は青年の首筋に両腕をに回すと、上となる様に圧し掛かり、唇を合わせてきた。
(お・・・重い!、それに、息が・・・)
青年は、圧し掛かられて女性が100キロはあるかという重さである事に気付いた。
・・・しかも、女性は全く呼吸を行っていなかった。
(な・・・何だこれ・・・く・・・くそ・・・意識が・・・・・・)
目の前に光る赤い目だけが視界に写る中、青年の意識は次第に漆黒に染まっていった。
裏通りを歩いていた金髪の青年は、道端に奇妙な人形が落ちているのを見つけた。
「何だこれ?・・・うわ、何て不細工な人形なんだ」
青い髪の女性を模った樹脂製の人形は、どう贔屓目に見ても不気味な造型であった。
見つめていると吸い込まれそうな見開かれた赤い瞳、能面の如き硬い顔・・・。
強いて例えるならば、呪いのこもった“呪術用の人形”とでも形容すべき異形であった。
青年が人形をその場に置こうとした時、何処からか声が響いてきた。
「私を捨てると呪います」
「だ、誰だ!?」
「・・・貴方のすぐ側にいます」
青年は辺りを見回したが、何処にも人影は見えなかった。
・・・それもその筈、声の主はその不恰好な人形からであった。青年が恐る恐る人形の顔面に
目を凝らすと、ほぼ見開かれた人形の瞳はギロギロと動き、妙に大きい唇が目立つ口も
パクパクと動いていた。
「うわぁ!!」
驚いた青年は人形を地面に叩きつけるな否や、一目散に駆け出した。
宿に近い横丁の路地までたどり着くと、青年は息を切らして立ち止まった。
「あ〜、びっくりしたぁ・・・」
「・・・私を、捨てましたね」
「!!」
恐る恐る振り返った青年の目前に、捨てた筈の人形が佇んでいた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
夜の帳が下りた頃、バルカ市内でも高級住宅に相当するアパートの一室では、金髪の少年
が帰宅した銀髪の青年を出迎えていた。
「お帰り、ロニ!、・・・あれ、その人形は?」
「・・・貰った」
青年・・・ロニ・デュナミスはいつもの陽気な調子は失せ、口調もどこか機械染みていた。
「あ、リアラは母さんと買出しに行ってて父さんは風呂に入ってる。3人で待とうよ」
「・・・かえ」
「は?」
「・・・疲れた、先に休む」
ロニはひどくおぼつかない足取りで寝室へ姿を消した。呆気に取られながらもロニの
後姿を見送った少年・・・カイル・デュナミスは腑に落ちない気分であった。
(確かに、ロニは何かを口走っていた。でも、何を?)
「お、ロニが戻ってきたのか?」
風呂から上がった長い金髪の男性が、長い金髪をタオルで拭いて出てきた。
・・・彼はスタン・エルロン、カイルの父親にしてデスティニー世界の英雄でもある。
「ロニの奴、何だか様子が変だよ」
「ガジュマはおろかヒューマにも振られて落ち込んでるんだろ。そっとしておいてやれ」
「だろうね。ふられマンの称号返上はまだみたいだね」
親子が陽気に笑っているのを他所に、ロニは寝室に入った後もその場に立ち尽くしたまま、
しきりに何かを口ずさんでいた。
「・・・を・・・えよ・・・を・・・讃えよ・・・を・・・」
見開かれたロニの瞳は、徐々に赤く染まっていった。
カイル達が泊まっているアパート程ではないが、中流階層向けの堅実な作りのアパートに
は、十字の意匠が目立つ法術服をまとった長い金髪の女性が連れの帰りを待っていた。
この女性はミント・アドネード、ファンタジア世界の伝説となっている人物である。
突然、金髪の青年がよろめくように扉を開け、そのままへたり込んだ。
「お帰りなさい・・・クレスさん!、どうかしたのですか!?」
金髪の青年・・・クレス・アルベインは怪物(この世界では“ヴァイラス”と呼ぶのだそうだ)にでも襲われたのか頭部から僅かに血を垂らし、酷く具合が悪そうであった。
「僕の中に・・・入ってくる・・・あぁ・・・た・・・た・・・」
「クレスさん!、しっかりして下さい!! クレスさん!!・・・」
ミントは必死にクレスに呼びかけた。
クレスは暫く痙攣していたが、やがてそれが止まるとゆっくりと顔を上げた。
・・・クレスの表情は、人間のそれではなかった。
*
その夜、バルカ市内では原因不明の集団ヒステリーによる大規模な暴動が発生した。
王位が空白という事もあり、ミルハウスト将軍が大権を発動して戒厳令を発令したが、
深夜だったこともあり避難出来ずに犠牲となる市民が続出し、市内は大混乱となった。
王国軍と王の盾が暴動鎮圧の為に出動したが、ヒステリーに感染する者が続出して各所で
同士討ちが多発し、混乱に輪をかける結果となった。
「ラドラスの落日」や「ユリスの出現」でも体験し得なかった恐怖が急速に都市を覆い隠した。
シンフォニア世界の神子であるコレット・ブルーネルは、異変に気付いてからというものの、
生ける屍の襲撃を何とか退けつつ、必死に市街地を逃げ回っていた。
所々血糊が付いて刃こぼれの生じたチャクラムと、薄汚れて所々に鉤裂きが出来た着衣が
彼女の苦難を物語っていた。
「ロイド、何処?・・・会いたいよぉ・・・」
コレットは、心細さに泣き出しそうになる衝動を何度も抑えていた。
ふと、気配がする方向を察知して警戒していると、女性が独りさ迷い歩いて来た。
「あの、大丈夫ですか?」
女性はコレットの方を向いた。赤い瞳ではあったが、生ける屍とは異なる生きたヒトの
瞳である事を確認してから、コレットはようやく安堵した。
青い髪と所々衣服から覗く透明の肌が風変わりであったが、かなり美しい女性の様だ。
「・・・あなたは?」
「私はコレットと言います。あの、もしかして避難していてはぐれたとか」
「あなたも、一人ぼっちで寂しくありませんでしたか?」
「・・・正直に言えば、とっても怖かったです」
女性はコレットを見据えると、彼女の頭を優しく撫でた。
コレットに女性のひやりとした掌の感触が伝わってきた。
「大丈夫です、これからは怖い思いをしなくて済みます」
ようやく連れ合いが出来て安心できた半面、何処か違和感を感じていた。
(あれ?、この人、何処かで見た様な気がするけど・・・)
・・・コレットの背後に、女性と同じ姿の人形がコレットを凝視していた。
カイルは、両親と落ち合う手筈をつけた避難場所に向かっていた。
途中、出会った青い髪の女性に、傷付いた彼に“薬”と称する液体を飲ませて貰っていた。
(これで大丈夫です。すぐに辛い思いをしなくて済みます)
何故か、体中の痛みが消え、それまで抱いていた不安感が嘘の如く消え去っていた。
それどころか、生ける屍達はカイルを見ても襲わずに、道さえ譲ってくれる程であった。
(何でだろ?・・・まぁいい、急がないと父さんと母さんが・・・)
暫くして、カイルは避難場所として落ち合う手筈となっていたホテルを発見した。
バルカ市内では2つ星クラスの落ち着いた雰囲気の建物であったが、この騒ぎで放棄され
所々荒らされたり日用品が辺りに放り出されたりした為に廃屋と化していた。
ドアというドアは箪笥や棚で封鎖されている様でびくともしなかった。
そこで、カイルは窓に取り付くと中にいる両親に聞こえる様に、窓ガラスを叩いた。
「父さん、母さん、開けてよ! カイルだよ!」
ルーティがカイルの声を聞きつけたのか、目を覚まして窓に駆け寄った。
しかし、窓越しのカイルの姿を見るや否や、カイルの予想もしなかった反応が起こった。
ルーティは悲鳴を上げて後ずさり、スタンもディムロスを手に身構えたのであった。
「僕だよ!、カイルだよ!、お願い、開けて、開けてよ!」
カイルは必死に叫んで窓を叩いたが、2人の反応は全く変わらなかった。
「何でだよぅ!・・・」
突然、部屋の明かりが消えて真っ暗となった窓ガラスに月明かりが反射した。
「・・・!!」
・・・窓ガラスに映った顔は、生ける屍と同じ赤い無機質な瞳でカイルを見つめていた。
「・・・あ、あは、あはは、あはぅぐはァあハぁ・・・」
カイルは自嘲気味の笑い声を上げると、ヨロヨロと来た道を再び戻っていった。
かつては活気に満ち溢れていた首都は、今や伝説のネクロポリス(死都)と化していた。
生ける屍と化した哀れな犠牲者達は、硝子玉の如き赤い瞳を輝かせ、口々に邪神を讃える
言葉を口にしながら新たな犠牲者を求めて町中を彷徨っていた。
難を逃れた市民達は部屋に篭城して息を潜めるか、王城に避難するしか術が無かった。
全ての都市機能が全て停止した中、首都を巡る環状線の列車が線路上を爆走していた。
やがて、汽車から2つの人影が飛び降り、駅沿いの商店の脇に身を隠した。
「これで、暫くは囮になるっしょ」
「さて、俺達の仲間を探さなきゃ」
列車を動かしていたのはハロルド・ベルセルオスとロイド・アーヴィングであった。
それから、2人は生ける屍をやり過ごしたり、時には剣戟で蹴散らしたりしてようやく
中央広場までたどり着いた。
「ハロルド!」
中央広場の脇の商店の2階に篭っていたリアラ・デュナミスとマイティ・コングマン、
リッド・ハーシェルがハロルドとロイドの姿を見つけるなり、建物から飛び出して
一目散に駆け寄ってきた。
リアラ達のいでたちは薄汚れているとはいえ、目立った外傷も無い様である。
「ルーティさんと買い物から返って来たら暴漢に襲われて・・・」
「俺達もだ。一体、何が起こっているんだ?」
「集団性ヒステリーだと思うけど、これは流石に異常ね・・・原因が気になるわ・・・グフ」
「とにかく、仲間を探さない事にはどうにもならないだろ」
「・・・お前達は仲間を探して王城に向かえ。俺様はここに残って時間稼ぎをする」
改めて辺りを見回すと、何処に潜んでいたのか大勢の生ける屍達がロイド達に迫っていた。
「何、こんな奴等など容易く片付けて直ぐにでも追いついてくれるわ、早く行け!」
「コングマンさん、済まない!」
ロイド達が走り去るのを見届ける暇も無く、コングマンは生ける屍達と対峙した。
「貴様等に俺様のイカスヒップをたっぷりと喰らわせてやるわ・・・うぉりゃぁぁぁぁ〜!」
コングマンは胸を拳で叩くと、巨体に似合わぬ素早い動きで屍の群れに突っ込んだ。
屍達は殴り飛ばされ、ぶん投げられ、感電してあっという間に散り散りとなった。
「脆すぎる・・・屍人と化したとはいえ、所詮はヒトか・・・む?」
遠巻きにコングマンを警戒する群れの中から、見覚えのある人影が2人ばかり出てきた。
「コングマンさぁぁん・・・仲間に・・・なりましょぉぉよぉぉぉ」
「モッコス様を拝むと、金持ちになれるかもよ・・・クケ、クケケケ!!」
コングマンの前に現れたのは、生ける屍に変わり果てたスタンとルーティであった。
「やっと骨のありそうな奴等が出てきたと思ったが・・・流石に気が引けるな」
そう呟きつつも、コングマンは拳をボキボキと鳴らすと2人の旧友に立ちはだかった。
「畜生、何処も彼処もリビングデッドもどきばかりだ」
側溝から覗いているリッドが、生ける屍だらけの町並みに毒付いた。
「レンズが沢山あれば、みんなを集めて安全な場所に転移出来るのに・・・」
リアラには時空転移の能力を備えていたが、これにはかなりの量のレンズを必要とした。
デスティニー世界ならまだしも、リバース世界にレンズが転がっている訳が無かった。
晶術をしても、携帯しているレンズを使用して凌いでいる位である。
「こっちこっち、急いで!、奴らに気付かれちゃうよ!」
「あれは・・・マオさん?」
物陰で赤毛の少年がこっそりと手招きしていた・・・よく見ると、それはマオであった。
彼等は生ける屍達に気付かれる前にマオの居る物陰に飛び込んだ。
「ジベールさんの家から王城に避難させる様にユージーンに言われて来たんだ」
「そうか、案内してくれ」
大急ぎで路地を縫う様に駆け抜けたり、生ける屍が通る間隔を図ってやり過ごす
などして慎重に移動した。数が多い上に何処に居るか分からない相手に無駄な戦闘は
控えねばならなかった為でもある。
そうこうする内にジベールの家を見つけた一行は一直線に駆け、
ドアに飛び込むなり直ぐに鍵をかけた。
「ドアは特殊な強化材木だから、簡単には破れないと思うけど・・・?」
彼等が一息ついてから、誰かがドアを叩く音が響いてきた。
コングマンが追いついたのか、それとも他の仲間が辿りついたのかも知れない。
「誰だろ?」
マオはドアに備え付けてある硝子製の覗き窓から外を覗いた。
「リアラぁ・・・居るんだろぉ? 開けてくれよ、俺の愛しいリアラぁぁぁ!!」
「・・・モッコス様ぁ・・・イケルよぉ・・・イケルよぉ・・・あはははははぁ!」
「ロイド・・・流石に僕達は友達だよねぇ? 早くここを開けてよぉ・・・開けてったらぁ!」
「みんなぁ・・・一緒に仲良くモッコス様を崇めようよ、ね・・・へへ、ふぇへへ・・・」
・・・覗き窓越しに、魂の無い赤い瞳が一斉にマオを凝視した。
「う・・・うわぁぁぁぁ!!」
マオは腰を抜かし、その場に倒れ込んだ。
彼等の声と共にドアを不規則に叩いたり、爪で引っかく耳障りな音も絶えず響いてきた。
「コレット・・・ジーニアス・・・何てこった・・・」
ロイドの構える双刀の剣先が小刻みに震えていた。
「うぅ・・・カイル・・・それに、ファラさんやコレットさんまで・・・」
リアラに至っては、絶望の余りに杖を握り締めながら泣き出す程である。
「・・・今更泣いたって始まらないわよ。例え相手が兄貴でもガチンコやるまでよ」
「これも運命かよ・・・」
流石と言うべきか、ハロルドは肝が据わっていた。リッドも覚悟を決めた様だ。
「「「じ ゃ し ん を た た え よ〜、た た え よ〜」」」
「うわ!、来たぞっ!!」
遂に、生ける屍達がジベールの家のドアを叩き壊し始めた。
「こりゃ、本当にヤバイぜ・・・」
「ふ・・ふふ、俺様も流石に焼きがまわったか」
コングマンの目の前には、生ける屍と化したクレスとミントがじりじりと近づいていた。
スタンとルーティはどうにか独力で倒したものの、満身創痍で動ける状態では無かった。
クレスは口から涎を垂らし、無機質な赤い瞳を光らせてコングマンを見据えていた。
かつては聡明であったクレスの顔立ちは、今や無残にも人形のそれと化していた。
「ク・・・ウフェヘ・・・限定版買えェェェ!!」
クレスが意味不明の奇声を上げて斬りかかり、剣がコングマンの頭上に落ちようとした。
(・・・・・・?)
クレスの剣を受け止める影が覆い被さっていた。すぐ向こうでは、法術を唱えようとした
ミントが突如現れた巨大な鋼鉄の塊に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられていた。
「コングマン殿、遅れて済まん」
「彼等はマオが王城まで案内している」
「・・・済まねぇな、面倒かけちまって」
・・・影の正体はウッドロウ・ケルヴィンとユージーン・ガラルドであった。
王城から仲間を救出すべく、危険も顧みずに屍たちを蹴散らして来たのであった。
「ドアが・・・もう持たないよ!」
必死にドアを押さえていたマオが悲鳴に近い声で叫んだ。
頑丈さを誇ったドアも、流石に度重なる衝撃で砕けそうになっていた。
「結局、俺達は仲間と戦うのか・・・」
彼等が覚悟を決めた時、外で何が起こったのか、剣戟と何かが爆ぜる音が響いてきた。
戦闘らしき騒音は暫く響いていたが、やがてそれも収まったのか墓場の如く静かになった。
「何が起こってるんだ、一体?」
外が静かになってから暫くして、半壊状態のドアの外から声が響いてきた。
「開けてください。私達はあなた方を救助しに派遣されて来ました」
他の者が身構え、マオが恐る恐るドアを開けると、そこには風変わりな3人組が居た。
1人の女性は軽装で、見たことも無い筒型の武器を所持していた。
もう1人の青い髪の少女は更に変わっていて、腕から武器を生やしていた。
小柄な少年は様々な筒型武器を持っていた。両手の小型武器からは微かに煙が昇っている。
「・・・もしかして、さっきのはアンタ等が?」
「対象に該当した為排除致しました。半径100メートル以内の脅威も同じです」
青い髪の少女は抑揚の無い、感情の篭らない声でさっぱりと答えた。
「まさか、殺した訳じゃ・・・」
「この領域の住人は原則殺害禁止との命令を受けています。その為、無力化しました」
「良かった・・・」
最悪の事態だけは回避出来たと知り、ロイド達は胸を撫で下ろした。
「所でアンタ達、何処か他の世界から来たんでしょ?。それも、テイルズ世界以外から」
ハロルドは、稀有な才能を有する科学者だけあって、彼等の正体に直ぐに気付いた様だ。
「ハロルド、何で分かるんだよ?」
「“この領域”って言ったっしょ?。つまり、アタシ達の存在する領域とは全く別の時空
から来たって事。それに、あの武器は天地戦争以前の銃火器と基本的には同じ構造よ」
「その通り、私達は4700年代の連邦の人間です。・・・詳しい話は後に行う事にして、
まずは自己紹介します。私はシオン=ウヅキ、ヴェクター社の技術者です、宜しく」
「・・・私はKOS=MOS、コスモスとお呼び下さい」
「僕はJrでいいよ。宜しくね」
「とにかく、仲間が多い方が心強いな、宜しくな」
「・・・ていうか、僕にとってはみんな外の人なんですけどぉ」
マオが突っ込んだので、皆はようやく声を上げて笑った・・・コスモス以外は。
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