総合トップSS一覧SS No.3-073
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
テルクェス 幻晶氏 セネル×クロエ 2005/09/03 2005/09/03

「クー、どうしたの?いいことあった?」
「え?どうしてだ?」
「あ、私もそう思ったよ。今日のクロエはなんだかニコニコしてる」

外には様々な植物、中には翼竜の標本。まさに博物館のような家の屋内で彼女たちは話していた。
ここの家の主ウィル・レイナードは現在、静の大地へセネル、ジェイ、モーゼスを引きつれまだ見ぬ
新種の魔物を探すべく、意気揚々と出向いていった。もちろん、意気揚々なのは発案者本人だけなのだが。
そして主のいないこの家屋では、今を絶好の好機と見たウィルの娘、ハティことハリエットが料理の勉強会がしたい!
と、ノーマ、クロエ、シャーリィを我が家へと呼び『料理教室』を開こうとしていた。
「絶対、アイツをギャフンといわせてやるんだから。『食卓に平穏が訪れますように』ですって?
何よ、あの願い事は!何様のつもりよ!ハティ絶対に上手くなってアイツを見返してやるわ!」
ハリエットは父親ウィルの事をアイツと呼ぶ程に苛立っているようだ。
さらに地団太を踏むハティ。隣の部屋の翼竜の標本が左右に揺れた。
「・・・ってみんな!聞いてる。ハティに料理教えてくれるって言ったじゃない!」
「まーま。そんなに急いでやることもないってば。このノーマ様にかかればおいしい料理なんてあっと
いうまに作れるようになるってもんよ」
「いっつも料理のときに寝てるノーマにだけには言われたくない!」
「なんだとぅ!」
ハリエットとノーマ。性格が似ているためか衝突も耐えない。
「大丈夫、私がちゃんと料理を教えてあげるから。男の子たちがいないなんて珍しいんだし、
少しおしゃべりしようよ。ね、ハティ」
一触即発状態の二人をシャーリィが仲裁に入る。
「全く、みんな騒がしいんだから」
クロエはというとそんな3人を微笑ましげに眺めている。

「・・・・・・」
ふとノーマは黙った。そしてクロエに怪しく含み笑いをしながら寄っていく。
「クーってばやっぱり、何かいいことあったでしょ?」
「だ、だから、どうしてそう思うんだ?」
「だってねえ、なんか心に余裕っぽさができたってカンジ?ねえ、リッちゃん」
「うん。クロエ、何があったの?」
「シャーリィまで。別にいつもと同じだって」
クロエに二人は詰め掛ける。そして更に追い討ちのような一言が・・・・・・。
「ハティ、今朝セネルくんの家の前でセネルくんと楽しく話すクロエを見たわよ、きっとそれじゃない?」
「!!」
「!?」
この一言でクロエは凍りついた。そして傍にいたシャーリィも絶句した。
「あ、そういえば今日はクーが起こしに行く日だっけ。・・・・・・で、セネセネとはどこまでいった?」
周りの空気を読みもせずのノーマがクロエに冗談交じりに言う。
「ノ、ノーマ!別に私は何も」
しかし、クロエはクロエで明らかに動揺している様子が見て取れる。
その傍らで聖爪術の光が輝いた。
「ノーマさん。そういうことは冗談でも言わないでくださいね」
「アタシのせい〜〜〜!?普通、こういう場合矛先はクーに向くでしょ。っていうかリッちゃん、爪が、爪が!」
爪の光を抑え、シャーリィはニッコリと微笑む。
「私、クロエの事は信じるから」
クロエは内心、ズキッと傷ついた。
「ちょと待てーい!アタシは信じてないのか〜〜!」
「もちろん、ノーマのことも信じてるよ。でも一番大事なのはお兄ちゃんだから」
「あーあ。ヤダね〜〜。『ずっとお兄ちゃん』かぁ〜」
「何か、言いました?」
再び爪を光らす。
「や、やだなぁ、アハハ。冗談だってば」
(リッちゃんが一番冗談じゃないよ〜〜)
二人のやり取りを見ながらクロエは悟った。お兄ちゃんの事になるとシャーリィは人が変わる。
正直、今すぐにでもシャーリィに今朝セネルから誘われたことを懺悔したい気分になったクロエであった。

白熱灯の影ががジェントルマンよりも長くなったころ、やっと男子達が帰ってきた。
「まったく、モーゼスさんには本当にあきれましたよ」
「ジェー坊、兄ちゃんはかわいい弟のために先陣を切ってモンスターに飛び掛っていったんじゃ。
むしろここは褒めるとこじゃろ」
「ふむ、やはりすばらしい。思っていた以上の収穫だった。早く大々的に調査結果を発表したいものだ」
家に帰るなり皆、思い思いの事を言い出す。平穏ないつもながらの光景である。
「はい、お兄ちゃん。お疲れ様」
いち早くシャーリィがセネルに飲み物を差し出す。
「ああ、ありがとな。シャーリィ」
それはとても自然なやり取りだった。
「あ・・・・・・」
その後ろには水差しを渡すのに一足遅かったクロエが突っ立っていた。
「おお、クっちゃん。悪いな」
そういうといきなりモーゼスはクロエの持っていたお盆から水差しを取り上げ、下品にも一気に飲み干してしまった。
「もう〜〜!モーすけの馬鹿!場の空気を読め!」
「一番空気が読めんシャボン娘に言われたくないわ!」
「全く、この二人が揃うと騒がしくてしょうがありませんね」
「・・・・・・」
クロエにとってセネルとシャーリィの一連のふるまいは、気を滅入らせるものでしかなかった。
(やっぱり、クーリッジにとっては私なんかより・・・・・・)

第一回『料理教室』はモーゼスの気絶という形で幕を閉じた。
「ほいじゃな。ワシは疲れたからさっさと寝る!」
「まさかあれだけのモノを食べてピンピンしているとは、まったく敬服に値しますよ」
「ジェイくん。ソレ、どーいう意味!?」
「くかか。そうか見直したか、ジェー坊」
「それ、皮肉だよ。ジェージェーは宿に止まってるんだよね。一緒に帰ろ」
「ノーマさんと一緒に帰ったからって宿代は払いませんからね。もちろんザマランさんの分も」
「ねえ、どーいう意味なの!?」
「チッ。あ〜あ、ジジイ、いつまで滞在する気なんだ。目を治したせいでますます観光する気まんまんだよ。
やっぱり、エバーライトに願いを増やしてって、ってお願いすればよかったなあ」
「お前達、お喋りは程々にして真っ直ぐに家に帰れよ」
「うわっ、出たよ説教オヤジ」
「ウィの字も親父っぽさに磨きがかかってきたなあ」
「何か言ったか?」

騒がしい別れから、セネル、シャーリィ、クロエは一緒に帰路を目指していた。
「じゃあな、クーリッジ、シャーリィ」
「ああ」
「おやすみ、クロエ」
セネルとシャーリィの二人は並んで分かれていく。その二つの背中を見ながらクロエは
(今朝のアレは夢だったのかな)
と考え始めていた。その時
「あ」
セネルはシャーリィをその場で待たせ、軽く走りながらクロエのもとへ戻ってきた。
「クーリッジ、どうしたんだ?」
「いやさ、今夜の約束忘れるなよって言いたかっただけ」
「なっ!アレは冗談ではなかったのか?」
「俺は本気だったんだが・・・・・・クロエは嫌だったか?」
「そ、そんなこと・・・・・・」
「じゃあ、待ってるからな」
「あっ・・・・・・」
そういうと、一目散にシャーリィのもとへと駆けていく。
「お兄ちゃん?」
「いや、別にたいしたことじゃない」
「・・・・・・そう」
二人は街の3時の方向へと去っていった。

その後、ポツンとたたずむ人影が残っていた。もちろんクロエである。
(えっと・・・・・・何が・・・・・・どうなって?クーリッジは本気だったのか?シャーリィは?
それにステラさんは・・・・・・?でも・・・・・・やっぱり?)
クロエの脳内では考えがまとまっていなかった。

「ま、まとまらないまま、来てしまった・・・・・・」
結局いったん病院に戻っても頭の整理はつかず、
オルコットとエルザに不審がられながら数刻流れ、気づいたときには
セネルの家の玄関前に来ていた。

(そ、そうだ。そもそも、クーリッジの言った夜を過ごそうというのがどんな意味合いがわからないじゃないか。
もしかしたら、あの時のように一緒に鍛錬をしようと誘ってくれただけかもしれないし・・・・・・。
あ、あの時は私から誘ったのだったか)
考えること数分・・・やっと考えること自体意味を成さないと悟ったクロエは、
意を決してセネルの家の扉に手を掛けた。

「クーリッジ、入るぞ」
門前で悩み、屋内へ入るときに掛ける声も今朝と同じだということに今のクロエには気づくことはなかった。
中には灯りはなかった。でも決して暗いというわけではない。
2階の窓からは月明かりが光のカーテンとなって全体に降り注いでいた。
クロエは二階を見上げる。しかし下からでは全く、セネルの姿は見えない。
緊張しながらも階段を上っていく。

また今朝のように、階段の中程に来た頃、セネルの姿が見えた。窓の縁に片足を乗せ外を眺めている。
月明かりがセネルを普段とは違った雰囲気に見せていた。クロエの中でトクンと何かが波打った気がした。
「・・・・・・クロエ?」
「あ!」
「なんだ、来てたのか。声を掛けてくれればいいのに」
「お前があまりにも熱心に外を見ていたから、掛けづらかったんだ」
「そうか、すまない」
(見とれていたからだ、なんて口が裂けても言えない・・・・・・)
クロエは内心混乱状態だった。平然を装うのがこうまで難しいなんて。
「クーリッジ、それでだな、やはり鍛錬をするなら街の外は危険だろうから・・・・・・」
クロエは焦りを誤魔化すために話題を作るが、結局その話題は先ほどの「今日は鍛錬」という答えに行き着いてしまっていた。
「クロエ」
唐突に真剣な声でセネルがクロエを呼ぶ。
「な、なんだ?」
「月明かりってさ、ステラの・・・・・・テルクェスに似てる気がしないか?」
「え?」
更に唐突に振られたその言葉にクロエの焦りはどこかへと飛んでしまっていた。
「俺の部屋・・・・・・上手い具合に毎晩月明かりが入ってくるんだ。なんだかステラがわざわざその為に
遺跡船を月明かりが入ってくるこの向きで止めたみたいな感じがする。ステラのテルクェスを・・・・・・
自分自身をまるで忘れないでと言っているように・・・・・・」
「クーリッジ・・・・・・、お前まだ・・・・・・」
「勘違いするなよ。俺はちゃんと前を向いて歩いている。
でも、やっぱり思い出すときがあるんだ。なんで俺達は出遭ったのかと。ヴァーツラフの手先としてメルネスを奪おうとし、
ステラ、シャーリィに出遭って・・・・・・正直、悩んだ。こんなに心が苦しいの思いをするなら、出遭わないほうがよかったと」
「・・・・・・」
そして、セネルは立ち上がって、クロエを見据えた。
「でも、遺跡船に来て考えが変わった。例えなんであろうと、自分の歩いてきた足跡は消すことはできない。
それでも、新たに踏み出していくことはいくらでも可能だって。俺はそのことをクロエに、みんなに教えられた」
そして微笑みかける。
「ありがとう、クロエ」

その声を聞いた途端、クロエはセネルに飛びついた。急な事に驚いたセネルは抱きとめることができず、
そのまますぐ後ろのベッドに抱きつかれた形で倒れこんだ。
「クロエ?」
「お前はズルイな。自分だけがみんなに支えれれているような言い方をして」
「え?」
「忘れたのか?私が心の闇に囚われたとき身を挺して私を助けようとしてくれただろう?」
「でも、結局俺一人ではクロエを止めることはできなかった・・・・・・」
「そうじゃないんだ。ク・・・・・・セネル。お前の気持ちが私にとってどれだけ救いになったことか。私こそ、ありがとう。
・・・・・・嬉しかった」
「クロエ・・・・・・」
するとクロエはセネルの腹部に軽く手を添える。
「この傷は、私が一生を掛けて償うからな・・・・・・」
「ありがとう、クロエ」
二人にはもはや迷いがなかった。


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