総合トップ>SS一覧>SS No.3-062
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ひぐらしのなくテイルズ―ラシュアン症候群の謎 |
丼兵衛氏 |
エターニア・シンフォニア・デスティニー2キャラ |
2005/08/25 |
2005/08/26 |
“ある日、私の世界が変わっていました。
友人が知らない人に変わっていました。
全て知らない人々に変わっていました。
鏡の前に立つのは、一体誰ですか?”
*
『1日目』
「クールだぜ、俺!・・・あれ?」
リッド・ハーシェルは、自分で妙な独り言を話している事に気付き、慌てて口をつぐんだ。
(この癖、どうも妙に気になるな・・・)
独り言だけではなく、自分自身の行動もどこか腑に落ちない点が多くなってきていた。
例えば、「萌え」について熱く語る、足音が一つ余計に聞こえる、等々。
他の“テイルズ”世界から客人が来てから、こういった現象が起こる様になったのである。
「リッド!」
「あ、何だ、ファラか・・・。どうした?」
「えへへ・・・いい物見つけたんだ」
ファラが満面の笑顔で差し出したのは、薄汚れたブッシュベイビーの石像である。
(・・・あいつ、あんな趣味だったか?)
「お持ち帰りぃ〜」
はしゃぐファラを横目に、リッドは腑に落ちない思いで眺めた。
『7日目』
ラシュアン村を取り巻く環境こそ変わりは無かったが、異変が起きているのは
リッドを含めた住人や客人ばかりであった。
そこで、リッドはある方法で確かめてみる事にした。
見かけた仲間に片っ端から声をかけ、反応を確かめてみる事にしたのである。
「フィリアさん!、何か変わった事無かったか?」
「変わった事ですか、そう言えば・・・この頃はカレーばかり食べていますね」
「カレー?、マーボーカレーか?」
「いえ、普通のカレーです。ただ、朝昼晩と三食食べないと調子が出なくて・・・」
(何だそりゃ!?)
「それに・・・」
「それに?」
「・・・スパゲティを見ると鳥肌が立つ様になりました。増してや、口に近づけられよう
ものなら、そのまま失神しそうになる位・・・」
(スパゲティ? 異変と言えばそれまでだが、一体何の関係が?)
「ああっ、いけませんわ!、リッドさん、マーボーカレーは元より、カレーは人類の発明した究極の薬膳料理なのですよ!
スタンさんも飛行竜の厨房にこれが無ければ空の藻屑と化していた程の効力で、
このエターニア世界に至っては幻の珍味として大いに珍重され、カレーカレーカレーカレー・・・」
フィリアは唐突に身を乗り出すなり、リッドの両目をじっと見据えてきた。
本来の瞳はエメラルド色のはずだが、この時は黄金色の渦がぐるぐると渦巻いていた。
(カレーカレーカレーカレー・・・、いけねぇ!)
「フィリアさん、俺は用があるんで、それじゃ!」
フィリアに危うく洗脳されかかったリッドは飛びのき、足早に立ち去った。
(フィリアさん、いつの間にあんな能力を・・・これも異変の影響か)
暫くすると、唐突にリーガルに出くわした。
「リーガルさん!、みんなが、みんながおかしくなって・・・」
「まぁ、落ち着く事だ、リッド君」
見た所、特に異常な様子は無いのを確認すると、ようやく平静さを取り戻せた。
「それが、みんなの行動が突然おかしく・・・」
「そうか。私もどういう訳かメイドが恋しくて仕方が無いのだ」
「・・・はぁ?」
「メイド!、う〜ん、何と甘美な言葉の響きなのであろうな」
(駄目だ、この人もおかしくなってる・・・)
風向きを察したリッドが去った後も、リーガルは尚も独りごちていた。
「そうだ、プレセアにアリシアの服を着て貰えれば少しは気が休まるか・・・メイド・・・」
「畜生、みんなおかしくなっちまってるのかよ・・・」
リッドは方々を駆け巡った為か、息を切らして立ち尽くしていた。
全身が汗まみれとなり、汗の雫がぽたりぽたりと地面に落ちて吸い込まれていった。
「リッド、どうしたのです?」
驚いて声の聞こえた方に振り向くと、そこにはコレットが居た。
彼女は相変わらず、屈託の無い笑みを満面に浮かべていた。
「コレット、実はみんながおかしくなっちまったんだ」
「僕には良く分からない話なのです。でも、少しだけ分かる事もあります」
「分かる事って・・・何だよ?」
「リッドは悪い猫さんなのです。にゃーにゃー」
コレットはそう言うなり、にぱ〜☆ と微笑んだ。
「猫って・・・何言ってんだよ」
「いちいちうるさいなぁ」
「!!」
いきなりコレットの表情が豹変し、別人のような顔となったのでリッドは驚いた。
「いい? 今のあなたは何処かの誰かに踊らされてるマリオネットそのもの。
下手に動いても誰かさんの書いたシナリオ通りの結末になるだけよ。ふふふ・・・」
コレットの唐突な話に、リッドには話の半分も理解出来なかった。
「シナリオって、一体何なんだよ?」
「ここに存在する事自体がシナリオの一部。勿論、貴方の行動もね」
「そんな訳ねぇだろ・・・」
リッドは言葉で否定したが、何処と無く腑に落ちる点もある、と心中では思っていた。
「だから、怖い犬さん達はボクに任せて、リッドはボクが守ってあげますです」
コレットは再び無邪気な表情に戻ると、にぱ〜☆、と微笑み、その場を去って行った。
「シナリオか・・・一体誰が?」
リッドは考えをまとめる為に、少し家に引き篭もる事にした。
『8日目』
コレットから重要なヒントを貰ったとはいえ、僅かながらの言葉と証拠では雲を掴む
ようなものであった。当然、考えも上手くまとまらず、流石に家に引き篭もってばかり
では身体に悪いと考えたリッドは、気分転換に狩場の森を散策する事にした。
森の中は樹の擦れる音や動物の鳴き声を除けば、相変わらず静寂の世界であった。
(ここだけを見ていると、狂った世界だと思えねぇな)
ところが、普段は人気の無い林道に見覚えのある人影が歩いてくるのを見つけた。
(ミントさん?、一体こんな所をどうして歩いてるんだ?)
リッドは嫌な予感がしつつも、散歩位するだろう・・・と気を取り直して声をかけた。
「ミントさん!」
「あら、リッドさんじゃないの?、どうしたの、こんな所で?」
ミントは彼女特有の邪気の無い笑顔でリッドに微笑みかけた。
「いや、俺、ここんとこ疲れてたみたいで、気晴らしに散歩でもしてるんですよ」
そう言いつつも、ふとミントの姿に目をやると、彼女の片手に何か握られていた。
(あれはクレスの大切にしてるペンダントに人形・・・ミントさんが何で持ってるんだ?)
「あの、所で、クレスはどうしてるんですか?」
ミントは再び微笑んだが、その笑みには不気味な迫力が備わっていた。
「あなたは私を見なかった」
「へ?」
突然のミントの言葉に、リッドは少なからず混乱した。無理も無い事である。
「あなたは私を見なかった、いいこと?」
ミントはリッドに近づき、額がぶつかりそうになる位にまで顔を近づけると、
そのままリッドの瞳を凝視した。
「あ・・・」
「では、気分転換出来るといいわね。それでは」
ミントはそういい残すと、再び林道を歩き去って行った。
「何だよ・・・何なんだよ・・・俺は悪夢を見てるのか?
あれが化け物か妖怪の類なら、とっとと消えちまえばいいんだ」
リッドは気分転換どころか、新たな欝の種を抱え込む羽目となって頭を抱えた。
そして、“ミントに良く似た誰か”に呪いの言葉を吐いた。
『9日目』
リッドは林道の一件もあり、益々自宅に引き篭もっていた。
だが、それもしばらくの事であった。
リッドに会ってからを最後にクレスとミントが、次いでコレットとリアラ、リオンが
立て続けに失踪したのである。
この一大事に、仲間達や村の住民が捜索隊を募り、リッドも参加する羽目となった。
(俺が消えちまえって願ったから・・・まさかなぁ。それなら、消えるのはミントさんだけだ)
不穏な事を思っていると、ファラが片手に何かを持って近付いてきた。
「ファラ、何でそんなもん持ってきたんだよ?」
リッドが見咎めるのも無理は無い。彼女の手には大きな鉈が握られていた為である。
「これね、私の宝探しの時の道具なんだよ。何かの役に立つと思って持って来たんだよ」
「いいから、危ないから貸せって!」
リッドはファラの手から鉈を取り上げると、汗拭き用の布に巻いて腰のベルトに差した。
「これは俺がしばらく預かっておく!」
「え〜!?、でもいっか、家にスペアがいっぱい、い〜っぱいあるもんね!」
ファラの何気ない言葉にリッドは身震いした。
(コイツ・・・相当重症だな・・・)
『10日目』
失踪した者達の捜索は尚も続けられた。
だが、必死の捜索にも拘らず、些細な手がかりすら発見出来ずに依然として
所在は不明のままであった。
だが、ある者達は確かに存在していたのである。それも、突拍子も無い場所に・・・。
洞窟を改装した牢獄には、奢侈な風合いの青い制服を着た黒髪の女の姿があった。
もう1人は露出の多く派手な服をまとった黒髪の女が鉄格子を蹴り付けていた。
「こら〜!、リオンっ、ここから出しなさいよぉ!」
「騙されるもんか!、マリアンを“神隠し”した一味の仲間にはなぁ!」
「だからっ、神隠しって何の事よ!?」
「まだシラを切るかぁ!!」
レンズハンター服を着た女性・・・ルーティに化けたリオン・・・は尚も鉄格子を蹴り続け
るが、奢侈な青色の服を着た女性・・・要するに本物のルーティである・・・は決して
怯まなかった。
「お前がシラを切り続けるなら仕方が無い。コイツ等から始末してやる」
すると、それまで強気であったルーティの顔色が一変した。
リオンが引きずってきたのは、頭にコブを付けたコレットと、移動式の拘束台に縛り
付けられたリアラの姿である。
「・・・この子達には手を出さないで!、私を罰すればいいじゃないの!?」
「なら、これから『ごめんなさい』と千回言え。出来なければこいつらが・・・」
リオンはにやりと笑うと、コレットの服に手を掛けた。
それを見たルーティは俯くと、呪文の如き言葉を唱え始めた。
「・・・ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・・・・」
(あの馬鹿には数字を誤魔化すなどという考えは無いだろう。さて・・・)
リオンは拘束台に近づくと、リアラはリオンを呪わんばかりに吠え立てた。
「このオカマ野郎! コレットに何をしたの!?」
「襲ってきたから、返り討ちにしてやったまでだ」
そう言うなり、リオンはコレットの髪を鷲づかみにして、そのまま地面に叩き付けた。
「人でなし!」
「ほぉ・・・人でなしはどちらかな?」
リオンはリアラの服を乱暴に剥ぎ取ると、短めの杖でリアラの秘所に突き刺した。
余りの激痛にリアラは顔を歪め、全身を捩じらせて苦しんだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「くっくっくっ!、貴様は個人の幸福を実現するのが使命の聖女様だというのに、
カイルにばかりのろけてマリアンを助けなかった!見殺しにした!」
リアラは悲鳴を発して泣き叫んだ。だが、リオンはげてげてと笑うと更に刺した。
「きゃぁぁぁ!、カイルぅ、カイルぅ!」
「カイルと呼べば、すぐにでもお前の大事な英雄様が助けに来てくれるとでも言うのか?
貴様のその甘ったれな根性が、カイルの判断を狂わせたんだ!」
「う・・・ぐぅ、ぐぅぅ・・・ぎゅ・・・がっ!・・・ぐぅぅ・・・」
何故か、リアラはそれまでに比べて、泣き言を発しなくなった。
「・・・分かってました。私は英雄を求める余り、カイルに依存しすぎてしまった。
そのせいでカイルを苦しめた。だから、私は泣かない! 私は耐えてみせる!
私を弄ぶのならば幾らでも弄んでみなさい!
私の強さを、リアラ・デュナミスの意地を見てみろぉぉぉ!!」
「・・・上等だ、この糞餓鬼がぁ」
リオンはそれまでの不気味な笑みを崩し、片手に持った杖でリアラを執拗に辱めた。
だか、リアラは決して泣き言はおろか、悲鳴一つ上げなかった。
(何でこいつは泣き声を上げないんだ? 痣がはっきり残る位に胸を捻ってるんだぞ?
こんなに穴を広げてるんだぞ? 愛液がぶくぶく出て中まで丸見えになってるんだぞ?
くそ、くそ、くそ!・・・)
「カイル・・・、私、頑張ってるよ・・・」
リアラはリオンの残酷な攻めに耐えた。最後まで耐え抜いた。
リオンは、勢い余ってどろどろに濡れた杖をことりと落した。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
ルーティは声が枯れたのか、か細い声で相変わらず「ごめんなさい」と言い続けている。
(遅い! 全てが遅すぎる! コイツにコレだけの根性があればマリアンも・・・)
肩で荒い息をする彼の目の前に、人影が現れた・・・。
「ここで・・・いったい何が起こったんだ?」
目の前に広がる光景が理解出来ず、リッドは呆気に取られていた。
彼は古井戸を偶然発見して試しに独りで降りてから、大きな洞窟とその奥に作られた
秘密の広間を発見したのである。それだけでも十分不思議であるのに、その奥では更に
奇怪な光景が展開されているのである。理解の範疇を超えていると言った方が良かった。
リッドはそれでも状況を掴もうと必死に目を凝らすと、頑丈な木で作られた拘束台の上に
見るも無残な姿と化したリアラが息も絶え絶えに喘いでいるのを発見した。
「リアラ!?・・・何て事をっ!!」
リッドは慌ててリアラの元に駆け寄り、戒めを解いた。
リオンの方はというと、漆黒の虚空を眺めながら、何やらぶつぶつと独り言を呟いていた。
「・・・置いてかれた・・・僕は・・・どうなる?」
「リッド、逃げてぇ!!」
リオンの服をまとったルーティが必死に叫ぶ。
「・・・くくくく、僕はこれで抜け殻だ! 鬼だ! 鬼は殺しが大好きだからなぁ!
そうそう、お前の仲間がノコノコと出てきたな!・・・コイツも食い殺してやる!」
げげげげ・・・と奇怪な笑い声をあげるなり、そのままリッドの方を向いて迫ってきた。
おまけに、片手には肉厚のダガーを握り締めている。
近づいてくるリオンの顔を見るなり、リッドは腰を抜かしそうになった。
瞳はほぼ円形に見開かれ、唇は半円月に歪んでいた。この世のものとは思えぬ形相である。
「や・・・やべぇっ!!」
「あ・・・こら!、逃げる前にここを開けなさいよぉ!・・・」
ルーティは独り、牢に閉じ込められたまま空しく叫ぶのであった。
古井戸の出口から這い出し、やっとの事でリオンを撒いたリッドは辺りを用心深く
見回してから、ようやく安堵のため息を漏らした。
必死の思いで古井戸を這い出してきたリッドの姿は泥で汚れ、全身が傷だらけで
かなり痛々しい姿である。
「・・・ったく、一体何が・・・起こってんだよ・・・」
ふと、リアラを洞窟の中に置き去りにしてきた事に気付き、慌てて引き返した。
幸いにも、リアラは風車の中に隠れていた。どうやら、リオンがリッドを追いかけている
内に別の出口から逃げ出した様だ。
「・・・遅いですよ」
「悪い、こっちも何がなんだか・・・」
「それに、女性を裸同然で連れ回すつもりなの?」
リアラは逃げてきた時のままで、バスタオルを巻いただけの姿である。
「そうだ、君の服を取りに行こう。泊まってるのは村の宿だっけ?」
「そうよ。さっさと行きましょ」
「わざわざ行かせるのもなぁ・・・、俺が宿まで行って服を持って来ようか?」
「そうね。レグルス広場で落ち合う事にしましょう」
リッドは宿に向かい、リアラの服を持ってレグルス広場に向かった。
リッドはリアラの服を持って広場まで行き、リアラを見つけて近寄ろうとした。
そこで、リアラが何かを見つけて、そのまま立ち尽くしている事に気付いた。
「どうした?」
そこには・・・鮮血(に見える赤い液体)に塗れた、見覚えのある金髪の少女が転がっていた。
「い・・・嫌ぁぁぁぁぁぁ!!」
リアラは発狂せんばかりに驚き、悲鳴をあげた。
「畜生・・・、一体誰が・・・」
血塗れのコレットの身体を調べようとしゃがんだ時、リッドの腰から何かが抜け落ちた。
それは、鈍い金属音を響かせて地面に落ち、布がはだけて中身が露わとなった。
現れたのは肉厚の鉈・・・紛れも無い凶器である。
「お、おい、リアラ・・・さん?」
「ひ・・・人殺しぃぃぃぃ!!」
リアラはパニックを起こし、バスタオルも邪魔と言わんばかりに放り出して逃走しだした。
一糸纏わぬ全裸のままである!
「おい、待て、待てったら!」
慌てたリッドも鉈を拾うと後を追ったが、その光景は大型の鉈を持った殺人鬼が全裸の
少女を追い回している風にしか見えなかった。ホラー映画さながらの異常さである。
おまけに、気が付くとリアラを丘の頂上まで追い詰めていた。
「よくもコレットを・・・人でなし、殺人鬼!」
「誤解だ、誤解だってば!」
リッドの言葉も、錯乱したリアラには届きようも無かった。
「人殺しなんかこの世から消えてしまえばいい!!、クレイジーコメット!!」
「ちょっ・・・冗談だろ!・・・ひぃぃ〜!!」
頭上に落下してくる彗星の巨大な影の前に、リッドは立ち尽くすのみであった。
「・・・殺されるかと思った」
巨大な隕石が落下する直前に崖から転がり落ち、運良く命拾いしたリッドは、更に
辺りを用心深く見回した。
辺りはクレーターがあばた面の様に大きな痕を残していた。リッドが助かったのも
奇跡としか言いようが無い。
(何で、こんな事になっちまったんだ!?)
「ふ〜ん。リッドってそんなに“転校”したいんだ」
「!!」
いつの間にか、背後にファラが立っていた。その瞳はどこか濁っている風に見えた。
「あ・・・」
よりによって、リッドの左手はリアラの代えの服を下着ごと握ったままであった。
「リッド・・・何か隠し事してるかな、かな?」
「これにはリアラさんのスジが・・・じゃなかった訳があって・・・」
「嘘だっ!!」
ファラは唐突に表情を一変させ、般若の如き表情で叫んだ。
「・・・こ、怖ぇよ」
「リッド、私、裸のリアラさんを追いかけてるの見たんだよ?
嘘ばかり付いていると、本当に“転校”になっちゃうよ、よ?」
「ひ・・・うひぃぃぃぃ!!」
リッドは危うく腰を抜かしそうになりながらも、ほうぼうの体で逃げ出した。
無理も無い。何せ、ファラは再びあの肉厚の鉈を片手にリッドに迫ってきた為である。
ファラは、かなり重そうな肉厚の鉈を持ちながらも、早足を崩さない上に笑みを顔に
張り付けたまま、リッドを一直線に追いかけてきた。
「リッドは転校しないよね、よね? あはははははははははははははははははは・・・」
「て、転校って何の事だぁ!?」
リッドは息が上がりながらもなおも必死に走った。だが、ファラは執拗に追いかけてきた。
このままでは追いつかれるのは時間の問題である。
更に悪い事に、向かい側の方からレンズハンター服を着たリオンが迫ってきた。
「くけけけけ!、見つけた、見つけた!。僕の相手だ!、ぐっげっげっ!」
『前門の狼、後門の虎』とは正にこの状況を指すのであろう・・・。
(畜生、何で俺ばかりこんな目に遭うんだ?)
リッドは気違い2人に追われて必死に逃げながら、普段は余り使わないであろう脳細胞
を丸々半生分は稼動させた。
(俺の考えが正しければ・・・そうか!)
リッドは大慌てでクレーメルケイジからヴォルトを召喚するなり、こう叫んだ。
「おい、ヴォルト! 空に登ってお前の力の限り放電しろっ!」
「**&%$・・・」
「いいからっ!、俺の考えが正しければこれで片が付くっ!」
「##$%‘&%‘@:::?・・・」
その間にも、世にも恐ろしい形相のリオンとファラが迫ってきた。
「くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ!!」
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
鉈とダガーの刃先がリッドの身体を切り裂かんとしたその時、凄まじい落雷と電流の渦が
ラシュアン一帯を巻き込み、真っ白な視界で埋め尽くした。
(あれ、前にもこんな事あったっけ?
前は、何でだか俺を羽交い絞めにしたファラとリオンを斬り伏せてから、自分の喉を・・・)
*
“・・・やれやれ、今度も失敗か。
しかし、リッドが気付くとは、次はどうなるのかな?
・・・まぁ、次のリッド達に期待してみましょう。
今度こそ、変化が起こる事を期待しつつ・・・・・・・・・”
*
198X年夏、長野県のある山間の村は、突如として『瞬間移動』『自然発火』
『空中浮遊』などの怪現象が数多く目撃され、一大超常スポットとして脚光を
浴びた。
科学的・オカルト的な検知から様々な分析が行われたが、結局は心理学用語にも
名を残す現象の発生原因は結局不明であった。
現象の体験者である村在住の少年(14歳)は入院先の病院でこう語ったという。
<緑やピンクや紫の髪をした鬼達が、俺の友達と俺に乗り移ったんだ・・・>
[完]
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