総合トップSS一覧SS No.3-046
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
緑青の凛花 テレーセトス氏 セルシウス×ファラ 2005/07/16 2005/07/16

「セルシウス!」
 モンスターを目前にしたメルディが叫ぶ。クレーメルケイジから群青の光輝が放たれ、
氷の化身が姿を現した。だがいつもの氷狼は姿を現さず、単体で突っ込んでいく。その横
を、ファラが駆けていた。ぴったりと息の合った動きで、モンスターを前後から挟み込む
形で移動した。そのまま攻撃を繰り出す。
「はっ!」
「やあっ」
 ファラに一瞬遅らせて、セルシウスが拳打を放つ。放たれた攻撃は、モンスターの体に
吸い込まれていき、仰け反らせる。
「いくよっ」
 ファラの言葉に、セルシウスが無言で頷き、攻撃を繰り出す。先ほどとテンポを同じく、
動作が違う。掌底を繰り出し、一瞬だけ構える。
「「獅子……」」
「「獅吼爆砕陣!!」」
 前後から、獅子の顔を象った闘気と凍気が交互に叩き付けられ、怯んで固まり砕かれた。
一瞬の間に繰り広げられた光景に、リッドとキールは複雑そうな顔をし、メルディは素直
に感心する。そのまま、勝ち鬨を上げた。
「よぉし!」
 そう叫んだファラは、セルシウスと手のひらを打ち合わせるのだった。

「セルシウスー? そこのボウル取ってー」
 先ほどの戦闘後。ファラは台所に立っていた。鍋の中のボルシチが火にかけられ、ゆっ
くりと温まっていく。すらりとした足の前に、調理器具入れがある。質素な白いエプロン
が歩みに合わせてふわりと浮き、その下のラシュアン特有の染め物を着た引き締まった肢
体が動くのを感じさせる。ボルシチの横には食後にデザートとして持ってくる、フルーツ
ジュースが置かれていた。
「ボウルって何……?」

 それを聞いて、ファラは思わず吹き出した。その拳法の腕や氷の大晶霊としての大きな
力と、人の世に対する無知さがおかしくって、からからと笑った。
 セルシウスが召喚のついでに居座る習慣が付いて随分経つ。クレーメルケイジに蓄えら
れた活力は長くは持たず、ほんの半日ほどで還ってしまうが、こうして話をしたり、一緒
に居たりするのがファラはたまらなく好きだった。たまにリッドに構って欲しそうな目で
見られるのが玉にキズだが。
「笑ってないで答えてよ……ボウルって何?」
 少し不機嫌そうに聞きなおすセルシウスに、ファラがようやく問いに答えた。
「だって可笑しくて……そこの銀色の丸いやつだよっ」
「ボウル……ボール?」
「違う違う。食材をかき混ぜたりするのに使うんだよ。肉やらなにやら」
「ふーん……人間って不便ね」
 そうぼやくセルシウスは、左人差し指の先でボウルを回したり、右手に氷の複製を作っ
たりして見ている。そんな事をして何になるのか、怜悧な彼女が疑問符を浮かべながらボ
ウルを弄っているのを見て、ファラはまた吹き出した。
「ちょっと……何よ?」
 二度も自分を見て笑われて、セルシウスがさらに不機嫌そうになる。腰に手を当て、端
正な顔立ちを少し歪めて聞いてくる。動きとともに鮮やかな青色をした髪が揺れた。
 不意にファラはその怜悧な顔を崩してみたくて、悪戯を思いついた。悪戯といっても全
くの本心だが。作業を紡ぐ手を止め、目の前の麗しい面を見つめた。好意以上のものを互
いに持っている相手に突然正面から見つめられ、氷の大晶霊がたじろぐ。たじろいでいる
うちに、そのまま言葉を畳み掛けた。
「ううん……笑った理由……可愛いから、じゃ駄目かな?」
 その時のセルシウスの表情は本当に愛しかった。一瞬惚けた様な顔をした後、すぐに獲
れたてのトマトみたいに顔を真っ赤にし、青い肌を耳まで染めた。

「ファラ……その……バッ……バカッ」
 困惑と、嬉しさと、気恥ずかしさと、その三つを取り混ぜたような表情でセルシウスは
頬を染める。そんなセルシウスに、今度はファラの方が僅かに頬を染めながら追い打ちを
する。
「セルシウス……その……しよ?」
 その一言で完全にセルシウスは平静を乱した。
「えっと……何を……? えっ……いきなり?」
「だって、時間だって無いんだよ? 明日にはケイジの活力も切れちゃうから、またしば
らく会えなくなるし」
「そ……それはそうだけど……何もこんな場所でしなくても」
「もう早めに仕込み済ませちゃったし、こんな場所だから誰も来ないし」
 困惑したセルシウスにさらにファラが笑顔で追いすがる。
「それに……セルシウスはわたしのこと、嫌い?」
「う゛……」
 もう一度セルシウスが頬を染める。そして、しばらく俯いた後、強く顔を上げた。しか
し、頬の赤みを打ち消すことは出来なかったらしい。そのまま少しどもりながら言葉を紡
いだ。
「わ……私だって……別にそのし、したくなかったわけじゃ無いからね?」
 その言葉に、ファラが満面の笑みと、まるで悪戯が成功した子供のような顔をした。け
れど、こちらもこれからの事を思ってか、顔に紅が張り付いたままだ。
「……うんっ」
「先にそっちが誘ってきたんだから……どうなっても知らないから」
「……うん。いっぱい……しよう?」
 セルシウスは、ファラにゆっくり近づきながら、話しかけた。
「初めは、人間に打ち負けるなんて思って無かった」
 手を伸ばしてファラのダークグリーンの髪先を撫でる。さらりとした髪がセルシウスの
指に絡みついては離れ、首筋をくすぐる。ファラは目を閉じ、心地良さそうにしている。
二人の距離はもう一人分位しか間が無かった。
「それに……こんなに好きになるとも」

 毛先を撫でていた手が上のほうまで登って、髪を掻き分ける。そこに現れた美しい額に、
氷の大晶霊の唇が触れた。頭を優しく支えて、唇の先でノックするような、軽いくちづけ。
手のひらの底で頭を支えて、空いた指先は、旋律を奏でるように緑の弦を爪弾く。印を付
けるかのように何度も繰り返される額へのキス。ほんの僅かに触れる程度だが、それは緑
髪の少女の快楽の扉をゆっくりと開けて行く。
「どんな気分?」
「ん……ふぅ……体が熱くて……少しくすぐったいよ……」
 少しだけ甘さを含んだ声が余韻を曖昧にして響く。瞳を閉ざしたままファラが答える内
容に、セルシウスは自分の心が温かくなるのを感じた。そのまま額に口唇を合わせ続ける。
右へ左へ、時にはこめかみや眉間にも寄り道しながら、すべらかな肌と唇で繋がっては離
れる。自分の青い髪に時々絡まる緑の線が、熱を帯びているようにも感じた。
 唇は耳朶にも辿り着き、優しく息を吹きかける。まるで彼女の繊細さを表すかのように、
愛撫の手は陶磁に触れるようだった。愛撫を受けるたびにファラの体が小刻みに震えて、
エプロン越しにラシュアン染めの服が揺れる。
「服が擦れて……エプロンの内側がちょっとくすぐったい感じ……」
「それは具体的にどの辺?」
 言いながら、セルシウスはファラの体を唇だけでまさぐる。首筋にもキスをして、ゆっ
くりと息を吹きかける。鎖骨を浅く口付けたままなぞっては離して、今度はエプロンの上
から押し込むようにキスをした。白いエプロンの上からファラの可憐な二つの膨らみに口
付けて、時折その頂の、少し固くなった蕾にも脱線をする。何度も何度も繰り返して、角
度を変える。上から下から、幾度と蕾と周りに口付ける度に、だんだんとファラの息が熱
を帯びる。エプロンと服が緩衝材の様な役目を果たして、なかなか直に刺激を与えない。
セルシウスが唇を押し付けるたびに一緒にエプロンと服が巻き込まれて、蕾を擦っていく。
「今は……んっ……くすぐったいんじゃなくて、ちょっとびりびりする感じ」
 セルシウスはそこまで聞くと、ふっと唇の愛撫を止めた。
「場所を言って? ちゃんと言われないと、人間の事には疎いから、わからないかもしれ
ない」

 料理の事の仕返しとばかりに、そんな言葉がファラの耳に響いた。
「意地悪」
「さっき笑われたもの」
 少し怒ったような声と、わざと澄ましたような声。
「わかった……胸のてっぺんが、さっきから火がついたみたいに熱いよ……服が擦れるた
びに、頭がふわふわしてくるの……弄ってよ」
 視覚を塞いで、相手に身を任せきっているからだろうか、大胆な発言に、セルシウスが
怜悧な顔に喜悦を浮かべた。
「可愛いわね」
 その一言と共に青い指先を臍からゆっくりと撫で上げながら登らせる。脇腹に曲がって、
膨らみの頂に辿り着いた。そのまま、爪で頂を撫でた。
「ぁ……ん!」
 ファラは軽く体を痙攣させ、床に座り込んだ。背中がそのまま台所に預けられる。背中
に当たる硬質の感触と、足首に触れる冷たい感触。思わず身じろぎしたところに、背中に
手が回された。そのままゆっくりと抱きすくめられる。
「怖い?」
 ファラの耳に凛々しい声が聴こえて、それにファラは返した。
「ううん。ただ、目を閉じてると、何がどこから来るかわからないから、新鮮って言うか
……ちょっとびっくりするかな」
 否定しつつも、どこか朧げに響くファラの声を聞いたセルシウスは、抱く力を強くする。
「やっぱり少し怖いでしょ」
「……うん。でも、今、抱いててくれるから平気だよ。なんか、いつもよりもっとセルシ
ウスのこと、感じるんだ」
 そのままファラが抱かれたままセルシウスの肩に頭を預けた。セルシウスは優しげな、
けれども彼女の凛とした風貌に似合う鋭い微笑みを浮かべて、うなじに唇を落とした。
「ひゃっ……ふぁ……」

 驚きが甘やかな声に変わって、引いていた火がまた燃え始める。快感に身を捩っても、
腕の中でさらに暖かい抱擁に捕まるだけで、それは安らかな気持ちと火のような快感をも
たらした。セルシウスがうなじに何度も口付ける。針の先で刺す様にキスをしたかと思え
ば、唇全体をゆっくりと押し付けて、そのまま舌を動かした。唇の中でセルシウスの可憐
な舌が、何度もうなじを撫でさすった。拭くように舐めたかと思えば、べっとりと押し付
けられる。セルシウスはファラを抱きしめたままで、官能の階段を登らせていく。ファラ
の悩ましげな吐息がセルシウスの耳朶に入って、それがますます彼女を燃え上がらせてい
く。だんだんとファラの反応が大きくなり、それに比例して息も荒くなる。セルシウスが
聞く。
「どんな感じ?」
「なんか……いつもと違って、ゆっくり暖かくなってくる……首筋とか、あと抱きしめら
れてるところからも」
 それを聞いたセルシウスは、笑みを浮かべて接吻を止めて、自分に抱かれたままのファ
ラの首筋を軽く爪で引っ掻いた。
「……ここ?」
「ひゃぁ!」
 ファラが刺激に驚いて鳴いた。同時に甘い痺れが体に走る。その声を聞いたセルシウス
が、再び愛撫を始めた。キスで柔らかな刺激を与えたうなじを爪が弧を描いて引っ掻く。
繰り返し口付けた後に爪先で撫でる。口付けて糸を引いたところに爪が唾液を伸ばした。
うなじの上で、美しい爪先と唇が踊って、ファラを追い詰めていく。

「あぁぁ……!」
 終わりは唐突に訪れた。唇と爪が同時に触れた瞬間、ファラが高い声を上げる。一際大
きく痙攣して、セルシウスに寄りかかった。セルシウスは、怜悧な微笑を浮かべると、緑
髪を梳る。ファラが嬉しそうに笑う。
「……あのね」
 言葉と共にゆったりとファラが瞳を開いた。そのまま顔を上げたセルシウスと眼があう。
琥珀の双眸に見つめられて、セルシウスがまた顔を紅くする。エプロン姿の少女が微笑ん
だ。
「セルシウス、大好きだよっ」
 微笑みが満面の笑顔に変わって、セルシウスはたじろいだ。たじろぐままに、ファラは
言葉を重ねる。けれど、息は少し熱を帯びたままで、笑顔と合わせて無邪気な艶を放って
いた。甘い声音で言った。
「だから、わたしもしてあげる……」
「え? もう私は別に……」
 そう言って、もはや妖艶に微笑んだファラは、先程のお返しとばかりに額に唇を押し付
ける。驚きを隠せないままセルシウスが抗議する。
「いきなりは恥ずかしいのに……」
「へぇー。セルシウス、初めての時はあんなにいきなりだったのに、そんなこと言うんだ」
「……う……」
 ファラは、額にそっと触れるだけのキスを挟みながら、合間に畳み掛ける。
「それに、さっき目を閉じてたから、姿が見えてすごく嬉しいんだ……色んなところ、愛
させてよ」
 ファラがセルシウスをゆっくりと押し倒した。額にただ当てるだけの口付けをしながら、
着衣をゆっくりと脱がしていく。やがて、完全に裸になった。
「キレイな指……」
 そのままファラは、セルシウスの指まで唇で辿った。柔らかい唇が、ゆっくり何度も肌
に押し付けられて、飛び飛びにセルシウスの体が熱を帯びる。唇が指に着くと、セルシウ
スが声を上げた。
「汚いわよ……そんなところ」

「汚くないよ……こんなにキレイだし、それに……気持ちよかったし」
「……!」
 その言葉に、セルシウスが再び顔を紅く染める。そのまま、ファラが繊細な指に愛撫を
始めた。小指の根元から口付けて、白い指で青い指を撫でてくすぐる。撫でてくすぐった
ところから、爪先に向かって口付ける。親指まで繰り返し、時折引っ掻き、強く吸う動き
が混ざる。歯で擦り、なぞる。
「……ぁ」
 セルシウスが少し震える。キスで反対側まで行き、五指で同じ要領で愛撫する。
「っ!」
 それを見たファラは、セルシウスに甘い声音で聞いた。
「くすぐったかった……わけじゃないよね? セルシウス」
「……」
 ファラは小悪魔のような微笑を浮かべて問い詰める。
「ちゃんと言って? 晶霊の事には疎いから、わからないかも」
「それって……」
「仕返し、だよっ」
 それを聞いて、セルシウスが脱力した。諦めと羞恥と愛情が同居した顔で言った。
「……歯が擦れたとき、少し気持ちよかった」
 ファラはまた妖艶に微笑むと、手をセルシウスの足の間にある秘裂に添えた。口付けは
胸に及んだ。二つの膨らみの頂点の間を唇が何度も判を押すように往復する。舌が間を往
復して、唾液で間が染まる。不意に、膨らみの頂点を吸う。
「あっ!」
 セルシウスが突然敏感な箇所を責められ、喘ぎが漏れる。それを見逃さずに、ファラは
秘裂の中にある花弁へと指を入れる。
「ぁぁぁぁぁ!」
「ちょっと濡れてるねっ。さっきからでしょ? わたしを責めてて感じてたんだ……」
「そ、そんな事言わないでよ……」
 そのまま、たじろいでいるセルシウスに、ファラは次の句を継ぐ。秘裂は指でゆっくり
と弄っている。

「……ね、セルシウス。キス、しよっか。唇と唇で」
「……うん。でも、今そんな事したら私は……」
 なおも抵抗する。ファラは、その抵抗が形だけだと知りながら、追い詰めた。
「いっちゃうんでしょ? だって、仕返しだよっ」
 セルシウスが苦笑する。
「判ったわよ。じゃあ思い切り、きついので」
「……うんっ」
 ファラがゆっくりと顔を近づける。お互いの吐息が聞こえる距離。他の何をするのもも
どかしくて、二人は口付けた。緑髪と青髪が絡んで一つの糸になる。その瞬間、セルシウ
スが体を痙攣させる。
「んんっ……!」
 そのまま二人は、長い間、口付けあった。

「ところで、何故目を閉じていたの?」
「えへへ。それはね、最初に撫でてもらったとき、改めて好きなんだなぁって思ったんだ
よっ」
「それで?」
「目を閉じたままだったら、この心地よさが続くかと思って」
「続いた?」

「うんっ」
「そう……そろそろ還らなきゃ。会うときはまた、戦場でね」
「またね……待ってるよっ」


……数時間後。
「ファラぁー」
「何?リッド」
「このボルシチなんか焦げ臭ぇんだけど」
「あは、あはははははは、気のせいだよきっと。それに、おなかに入れればみんな同じ、
うん、イケるイケる!」
「まぁいいけどよ。ウマいし」
「……ふぅ」
……同時刻。
「ファラ」
「何?キール」
「何故さっき召喚したセルシウスの晶霊活力が、もう10なんだ?」
「あは、あははははははなんだろわたしには解らないなー」
「そうか! 氷晶霊が光晶霊の光を反射して、急激なグロビュール歪曲を起こしたと考え
れば……」
「(ふぅ……助かった)」
……数分後。
「ファラー」
「何? メルディ」
「クィッキーのご飯取りに台所に行ったらな、エプロンが湿っぽいよぅ」
「……きっと、ボルシチの鍋の近くにあったんだよ。温め過ぎちゃったし」
「そうかー」
 ファラがセルシウスが来るたびに冷や汗をかいているのは又、別の話。


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