総合トップ>SS一覧>SS No.3-017
作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
無題 |
やうざか氏 |
サレ×クレア |
2005/04/04 |
2005/04/04 |
はあ、と静かな部屋に少女の溜息が響く。広々とした誰も居ない部屋の隅に据え置かれたベッドに腰
掛けて、金の髪を持つ少女――クレアは俯いたまま思考を巡らせていた。王の盾、と名乗る人たちに
よってスールズから半ば無理矢理に連れ出されてはや数ヶ月。いくつもの川を山を砂漠を、海をも越
えて、はるばるやってきた霧の都の薄暗い空に、彼女の不安は募るばかりだった。
「……ヴェイグ」
小さく呟いてから身体を後ろに倒して、ベッドに寝そべる。きし、と丁度良く調節されたスプリング
が鳴る。柔らかくて暖かいそれは、間違いなく高級品なのだろうが、そこに彼女の安息はなかった。
「……ヴェイグ……」
瞼の裏に焼き付いている彼の姿を確かめるように、ゆっくりと目を閉じる。彼女の翡翠の瞳に閉じ込
められた彼は彼女の大好きな、不器用で、まっすぐな微笑みを浮かべている。
――ああ、そうだ。彼はこんな顔で笑うひとだった。こうやって笑って、抱きしめてくれた。
クレアは目を閉じて記憶の糸を手繰り寄せながら、そっと自身の身体に指を這わせた。彼がしてくれ
たように、優しくやさしく、滑るように。彼女の細い指はくびれた腰から少しずつ軌道を上にとり、
そして、頂点に触れた。
「…ふぁ…っ」
思わず熱を帯びた息が洩れる。いくら誰もいないとはいえ、ドアの外にはいつものように兵士が見張
りに付いているだろうし、いつ誰が入ってきてもおかしくないこの状況で夢想に耽る自身に、クレア
はかっと頬を染める。しかしクレアの意思に反して、指は自我を持ったようにクレアの膨らみを弄ん
でいた。――否、彼女の指は、最早彼女のものではなかった。
焦らすように麓を撫で上げ、頂上を爪の先で弾く。その度に小さく悲鳴のような声が上がり、彼女の
細い腰が持ちあがる。先程まで静かだった部屋は、クレアの荒い息遣いで満たされていた。
しばらくそんな戯れを続けたのち、彼女の指はそろりそろりと下へと軌道を移した。ふわりと広がっ
たスカートを捲り上げると、熱を帯びて上気した太腿が辺りの空気によって冷やされる。それすらも
彼女にとってはこの上ない快感で、クレアは一瞬息を詰めると、そっと指先を既に熱く溶け出した中
心へと差し込んだ。
「ひ、やああ…んっ」
びくり、と身体を震わせてクレアが甲高い声を上げる。指先を微かに動かすと、それだけでぐちぐち
と情欲を煽るような水音が部屋に響いた。
「んっ…あっ…あっ、あ、んん…っ…ヴェイグ…」
彼の指が、自分を感じさせている。そう思えばより一層の快感がざわざわ押し寄せて、クレアはひた
すらに指先を動かした。指の運動に合わせて、腰が自然と揺れる。
「あ…ああ…ヴェイグ…っ、ヴェイグっ…」
上擦った声で彼の名前を呼ぶ。彼の低い声も、骨張った指の感触も、身体の熱も、すべてが鮮明に蘇
って、彼女を責め立てた。快感に痺れた脳髄は、もう、彼のことしか考えられずにいた。――ゆえに、
彼女はまだ知らない。彼女が今、部屋に“ひとりではなくなった”ことを。
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