総合トップ>SS一覧>SS No.2-096
作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
フォルス・マジック |
409氏(11スレ目) |
ミルハウスト×アガーテ |
2005/03/05 |
2005/03/05 |
舞い散る桜花は季節外れの淡雪の様で、極彩色の夜空に座る蒼月は愛しき人を思い起こす
ここ、風雅宮はキョグエンが魅せる春の顔は、
哀愁と閑寂に彩られた秋とは違い、触れるもの全てに生命の息吹を感じさせる。
そんな事を思いながら、黄金色の絹糸の様な艶やかな髪を夜風に遊ばせ、男は一人、夜道を歩く
先の騒乱の最中、実質的な支配者を失ったこの都に、男は視察の名目で訪れていた。
と、言うのも連日連夜の仕事に忙殺され、疲労の蓄積した心身を休めてもらう為に部下の一人が取り計らったのだ
その心遣いに感謝をしつつ訪れた風光明媚の地でも、空を見上げれば月の光が男の顔と心に影を落とす
極彩色の夜空に座る蒼月は愛しき人を思い起こす。今宵の様な満月であれば、
いっとう強く、いっとう深く、この桜花の如く淡く可憐な愛しき人を――
男は思う。叶うものならば今一度抱きしめ、唇を重ね合いたい、と。葬送の儀ではなく、相愛の証として
と、不意に一陣の風が辺りを疾る。
何事か、と思う間も無く桃色の風に遮られた視界が開けた時、男の前には娘が一人立っていた
猫の様に大きな耳と長い尻尾を持つ娘の身に纏う物は無く、月に照らされた白磁にも似た肢体は淫靡さ以上に神秘的であり、
歳相応に発育した乳房や折れてしまいそうなほどに細い腰と手足は、快楽の権化というよりも美の具現体と称すべきものだった
それは桜の見せる一夜の夢か、満月の魅せる幻惑か。男は天女の如く突如として現れた娘に目を奪われながらも、己の頬を抓る。
夢か現か、頬に残った熱と刺激が全てを物語っていた
男が一歩近付けば、鏡の様に娘も一歩前に出る。
ゆっくりと同じ動作を行う二人は、数歩の後に手を回せるまでに身を近づけた
ややあって、男がその華奢な体を包む様に抱きしめると、娘は厚い胸板に顔を寄せた。
常からその身に纏っていた甲冑とて、散歩にまで持ち出す筈も無く
布一枚越しに娘の柔らかな感触を直に感じれば、男の胸中も早鐘を打つというものだった
やがて二人はどちらからとも無く身を離し、求める様に唇を寄せた
口内で舌が絡み合い、互いの唾液が混ざり合えば、それは何物よりも勝ると媚薬なる。
二人はそれを舐め取り、溺れていった
どれほど互いの唇を貪っていたのだろうか。男は唇を離すと、娘をすぐ脇の巨木に寄りかからせた
幾分か、重力に任せる様に木に凭れる娘の姿は堪らなく妖艶で、男は自然、しかし小さく喉を鳴らした
再び、男は娘と濃密な口付けを交わし、続けてふくよかな乳房に己の手を重ねた
手にしてみれば、それは見かけよりずっと大きく、
それでいて固く張り詰めた突起は指を絡ませる毎に固さを増していく様だった
と、男の唇と乳房を弄ぶ動きが止まる。下方に視線を落とせば、
ヒューマのそれよりずっと大きな、ガジュマ特有の大きな指が行為に反応し怒張したそれをまさぐっていた
男が乳房から手を離し、空色の茂みから覗く桜色の筋に指を当てると、
其処は既に濡れそぼっており、武人らしい無骨な男の指さえ容易く受け入れた
男はそのまま指を動かし、空いたもう一方の手で上気した娘の頬を撫ぜた
秘所から全身へと快楽が駆け抜ける度に、娘の瞳から理性の光が失われていき、
本能の渦が澱み始める。その半眼に開けられた娘の表情が、今度は男の理性を優しく崩していった
男が指を引き抜くと、銀糸に濡れたその手を厭う事無く己の陰部へと当てる。
ややあって取り出されたそれは欲望の限りを詰め込んだかの様に屹立していた
男が陰茎をあてがう直前に娘の顔を窺うと、娘は可憐に微笑んだ。
それは理性を快楽に押し流された後に創られながら、しかし花の様に愛おしかった
男は娘の額に淡く、小さく口付ける。後は、月の光に押されるがまま――二つの影が繋がった
男は娘の片足に手をかけ、もう一方を腰に回す。
思ったよりもすんなり受け入れられた事など、気にも留めずに男は律動を繰り返した
その度に娘は乳房を揺らし、淫らな水音を立てながら優しく、
しかししっかりと膣内一杯に感じられる男のそれを咥えこむ
そうして注挿を繰り返す最中も、互いは唇を求め合い、底の無い快楽の沼に沈んでいった
やがて、律動の間隔が短くなっていき、背中に回された娘の手が男の背中を指圧する。
それでも男の背中が痛覚をもたらさなかったのは、娘が爪を立てなかったからであろう
僅かばかり、脳の片隅に残る男の理性が娘の思いを受け、律動を更に早めた
男の昂ぶりを感じたか、娘は男を放すまいといっとう強く力を込める。
男もそんな娘を思ってか、腰に回した手を少しでも己に近づけた。そして――
男は欲望の滾りを、思いの丈を、およそ己の内にある娘への全てを、その花弁の中へと注ぎ込んだ
二度、三度と脈打ち、それも収まって尚、二人は離れる事無く抱き合った
「もっと早く、貴女をこうして差し上げれば良かった」
そう紡ぐ男の目に、淡雪の様に舞い散る桜が映り込む
「そうすれば貴女を苦しめる事も、まして死なせる事など無かった」
それは娘に対する懺悔であった。
繋がったままで――その上、己と想い人の蜜に塗れたままでなど滑稽にも映ろうというのに
娘はしかし嘲笑も侮蔑も無く、その体躯とは不釣合いな大きな手で男の頬を包み込んだ
その瞳に怨嗟は無く、男は震える声に思いを乗せた
「私も貴女を愛しています――――アガーテ」
そうして二人は互いの唇を重ね、ただただ純粋な接吻に耽った
服装を正し、ふと男は娘が一糸纏わぬ姿で現れた事を思い出した。
そして春先の散歩という事もあり、薄着できた事を後悔した
男がただ一枚の上着を娘に渡そうとしたが、娘は静かに首を振るだけだった
男は元来た道を戻ってゆく。
その背中を娘は飽かず見つめ続け、やがて月光の満ちる桜花の中へと消えていった
――後日
生き生きと仕事をこなす男の姿に、
休暇を進めた蒼肌の紳士は安堵の息をつき、褐色肌の女性と共に自らの仕事に戻っていった
結局、あの夜の出来事が何であったか。誰にも解らなかった
かに見えたが、後に事の真相を知る者はこう語る
「リハビリの一環で可能な限りド精巧に創ったが、まさか使う奴が居るとは思わなかった。今はド反省している」
――フォルス・マジック 完――
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