総合トップ>SS一覧>SS No.2-085
作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
夜更けのプライベート・レッスン |
サザム氏 |
ロイド×リフィル |
2005/02/06 |
2005/02/06 |
歓楽都市アルタミラの中央に聳え立つ、ホテル・レザレノの最上階。
そこにあるロイヤルスイートの柔らかなソファーに、ロイドは深々と腰を下ろしていた。
(なんて言うか、どうも落ち着かねえよな……)
一流の調度品に囲まれた部屋は、独りで使うには気後れするほど広く、どうにも自分が場違いに思えてくる。
最初の内は面白がってあちこち探索して回っていたが、それに飽きると後は大してする事もない。
しかし、ロイドがいつになく浮ついた気分になっているのは、決してそれだけが理由ではなかった。
(それにしても、今日のリフィル先生、綺麗だったよな……)
ロイドの脳裏には、昼間ビーチで目にしたリフィルの水着姿が、これ以上ないほど鮮明に焼きついていた。
黒のビキニに包まれた豊満な胸の谷間と、きゅっとくびれたウエストの描く見事な曲線。
すらりとした脚は艶やかで、パレオの間からちらりと覗く、ハイレグの際どいラインが胸を騒がせる。
ディザイアンに変装した時も似たような姿ではあったが、平時にああいった格好を見るのは初めてである。
普段は露出を好まないリフィルの、抜けるような白い肌の眩しさは、ロイドにとって少々刺激が強過ぎた。
(でも、また怒らせちまったんだよなぁ……)
リフィルを泳ぎに誘った時の事を思い出し、ロイドはがっくりと肩を落とした。
魅惑的な肢体に気を惹かれていたせいで、つまらない揚げ足を取ってしまった自分に、大きなため息をつく。
叱られるのはいつもの事とはいえ、あれさえ無ければ誘い出せたかもと思うと、残念でならない。
せめてもの慰めに、怯えるリフィルの手を取って一緒に波間で戯れる情景を、しばし頭に思い浮かべる。
(……やめた。なんか余計に空しくなってきたぜ)
軽くかぶりを振って未練がましい思いを追い払うと、ロイドは再び深く息を吐く。
すると、そのタイミングを見計らったかのように、外へと続く扉からノックの音が響いた。
「はい、カギは開いてるよ」
コレットかジーニアスが遊びに来たのかと思い、ロイドはどこかホッとした口調で呼び掛けた。
こんな風にいつまでも一人で悶々としているよりは、誰かと話でもしていた方が、まだしも気が紛れる。
しかし、ロイドの予想を裏切って、扉の向こうからは涼やかな声が答えを返す。
「そう? なら、少しお邪魔するわね」
(え……、リフィル先生!?)
つい今まで考えていた当の相手が訪れて来たと知り、ロイドは弾かれたように立ち上がる。
ソファーの背を回って扉の正面に立つと、そこから普段の服装に戻ったリフィルが姿を現した。
「あら、割といい部屋ね」
ぐるりと豪奢な内装を見回すと、リフィルは後ろ手に扉を閉め、感心した様子で小さく呟いた。
先程までの想像のせいか、淡い照明に映える白皙の美貌に、昼間にも増してロイドの鼓動が速まり出す。
ロイドは内心の動揺を隠し切れず、とっさに頭へ浮かんだ言葉をそのまま口にする。
「ああ……、でもちょっと、緊張するけどな」
「あら、どうして?」
「なんか、雰囲気が違うっていうか……」
「それはそうね。普通に旅行に来た人が泊まるような部屋ではないから」
主語を省略した台詞を、部屋に対する感想だと受け取ったらしく、リフィルは平静な声で告げてきた。
実際は、ロイドが緊張しているのも、雰囲気が違うと感じているのも、彼女自身に対してのものである。
「そ、そうなのか?」
「それはそうでしょう。とても贅沢だもの」
けれど、思わず口を滑らせてしまったロイドにしてみれば、その勘違いがむしろ有難い。
少し慌てて話を合わせると、リフィルは片手で肘を抱え、思案するようにおとがいへ指を添えて呟いた。
「そうね、よほどのお金持ちか、あるいは特別な時にしか泊まらないでしょうね」
「特別なとき? たとえば?」
「新婚旅行、とか」
「ああ、そうか……」
意味深な視線と共に呟かれたリフィルの言葉に、ロイドの心臓は別の意味で大きく脈打った。
正確な年齢など聞いた事もなかったが、確かに彼女はそういった話が出てもおかしくない年頃のはずである。
ロイドは胸で渦巻き出した不安と焦りに、少々どもりながらもリフィルに問い質す。
「せ、先生も、いつか結婚するのか?」
「……さあ? 好きになった人にもよるわね」
「どういう意味だよ?」
リフィルは軽く肩を竦め、まるで他人事のようにあっさりと答えた。
何かはぐらかされた気分になったロイドは、内心のもどかしさを隠す余裕もなく、その真意を訊ねる。
するとリフィルは心持ち眉尻を下げ、彼には理解し難い、複雑な含みを持った表情を浮かべて唇を開く。
「私は、ハーフエルフだから。同族か、それを許容してくれる人でないと」
その台詞の、最後の部分が頭に引っ掛かり、ロイドの動悸が一層激しさを増した。
今まで関係が崩れるのが怖くて、ずっと胸の奥に閉じ込めていた想いが、告げるなら今だと囁き掛ける。
教師と生徒としてではなく、共に生きる相手として、彼女のそばにいたい。
そんな強い想いに後押しされ、ロイドは視線を脇に逸らしながら、珍しく頼りない声を出す。
「そっ、それじゃあさ……。オレでも、その資格はあるかな……?」
「え……?」
言ってしまってから、自分の台詞に猛烈な気恥ずかしさを覚え、ロイドは慌てて言葉を継いだ。
「いや、もちろん、先生さえ良ければだけどさ。第一、今はそんな風に見てくれてないだろうけど……」
「え? ちょ、ちょっとお待ちなさい! あなたそれ、本気で言っているの!?」
「あっ、当たり前だろ? 冗談でこんなこと言えるかよ、ゼロスじゃあるまいし……」
咎めるようなリフィルの声に、切ない落胆を感じつつ、ロイドは拗ねたように小さく呟いた。
半ば予想していたとはいえ、やはり自分は全くの対象外だったかと思うと、ちくちくと心が痛む。
ロイドがいたたまれなさに頭を掻き毟っていると、リフィルはどこかうろたえた声色で言葉を重ねる。
「い、いえ、そちらではなくて……。私があなたをどう思っているか、本当に分かっていなかったの?」
「あっ、いや、生徒として大事に思ってくれてるのは知ってるぜ? でもその、何て言うか……」
「一人の男性として見られているとは思っていない、と?」
「ああ……。だけど、とりあえずオレの気持ちだけでも、言っておきたいって思ってさ……」
想いを寄せる相手からじかに問い詰められ、ロイドは消え入るように語気を弱めていく。
言いながら恐る恐る視線を向けると、リフィルは額に手を当てて、嘆かわしげにかぶりを振っている。
「呆れた……。やっと確かめられたと思ったら、まさかここまで鈍かっただなんて……」
「な、なんだよその言い方! しょうがねえだろ、こんなの初めてなんだからよ!」
まるっきり子供扱いされているように感じ、ロイドは恥ずかしさと苛立ちで、顔を真っ赤にして言い返した。
確かめられた、という言葉の意味は理解できないものの、少なくとも想いを受け入れたようには聞こえない。
するとリフィルは、踏ん切りをつけるように大きく息をつき、そして勢い良く面を上げる。
「……ロイド・アーヴィング!」
「は、はい!」
久々にフルネームで呼び掛けられ、ロイドは思わずビシッと直立不動の姿勢を取る。
教壇に立つ時と同じ凛とした表情を浮かべると、リフィルは胸を反らして大きく腕を組んだ。
「私の答えが知りたいのなら、これから幾つかヒントをあげます。あとは自分で考えなさい」
「え? 何でそんな……」
「よろしくてね!?」
「あっ、ああ……」
学校で解けない問題を出した時とまるで変わらぬ物言いに、ロイドは戸惑いがちに口答えをした。
けれど、リフィルから鋭い声で念を押されると、またもや学校にいた時の癖で、反射的に頷かされてしまう。
気後れした様子のロイドに小さく首肯を返し、リフィルは人差し指を立ててゆっくりと歩を進める。
「では一つ目。フラノールの時と今日、私がわざわざ夜更けにあなたの部屋を訪れたのは、何故だと思う?」
「え、いや、オレと話をしたかったから、……じゃ、ないみたいだな……」
深く考えずに答えると、リフィルの目が不正解と言わんばかりに細められた。
その迫力にロイドが居心地の悪い思いをする中、リフィルは続けて足を踏み出し、スッと中指を立てる。
「なら二つ目。昼間、水の苦手な私が、あんな大胆な水着を着てみせたのは、どんな理由からだと思う?」
「ど、どうしてって……。そんなこと訊かれたって……」
近づくリフィルの質問の意図が読めず、ロイドはしどろもどろに返答し、再び顔を俯ける。
落ち着いて考えようにも、彼女の言葉が昼間のあでやかな水着姿を鮮明に蘇らせ、ロイドの思考をかき乱す。
「仕方がないわね。じゃあ、最後のヒント……」
「えっ? な、リフィル先せ……むっ!?」
するりと首に回された腕に、ロイドがハッと顔を上げると、リフィルの顔が急速に近づいてくる。
どこか甘い匂いがロイドの鼻をくすぐると同時に、しっとりと柔らかな感触が唇に触れ、言葉を奪う。
「……今、私があなたにキスをしたのは、どうしてだと……思う?」
軽く顔を引いたリフィルは、抱きついたまま一転して悪戯っぽい笑みを浮かべ、小さく首を傾げて見せる。
うっすらと朱を浮かべた頬と、宝石のように輝く潤んだ瞳が、その解答を雄弁に物語っていた。
「ええっと、それじゃあまさか、先生も、オレのこと……?」
「はい、正解。本当にもう、肝心な処で鈍いんだから。今まで何度も、さり気なく仄めかしていたのに……」
「あ、えっ、そうなのか!? そ、それっていつの話だよ!?」
「ふぅ、これだものね。……ふふっ、まあいいわ。少し遠回しにし過ぎた私にも、責任はあるのだしね」
寝耳に水といった調子でロイドが驚くと、リフィルは更に笑みを深め、委ねるように身を寄せてきた。
ふわりと柔らかな二つの膨らみが胸板に当たり、ロイドの頭へ一気に血が上っていく。
あまりに激しい心臓の音に、リフィルへ聞こえてしまうのではないかと、余計な心配が脳裏をよぎる。
「なんか信じられねえんだけど、先生、本当に……?」
「あなたの言葉を借りるなら、それこそ私も、冗談でこんな事をするような女ではなくてよ?」
「ああ、そっか、そうだよな……」
たしなめるように告げられて、ロイドはカクカクと首を縦に振った。
最初の衝撃が薄れてくると、代わりに歓喜の念が込み上げて、ロイドの胸をゆっくりと満たしていく。
伝わってくるリフィルの温もりが、これが夢や幻ではない事を、これ以上ないほどの確かさで示してくれる。
「ちなみに二つ目のヒントの答えは、そうする事であなたの気を惹いてみたかったから、よ」
「そ、そうだったのか?」
「ええ。こうしてあなたから告白してくれた処を見ると、少しは効果があったのかしら?」
「あっ、ああ、うん、まあな……」
あいまいに頷きながらも、その実ロイドは、リフィルの言葉をあまり理解していなかった。
ここでの同意は、彼女の水着姿に見惚れていたと白状しているに等しい、という事さえ認識できていない。
意識の殆どは口元に残る心地よい余韻と、それをもたらしたリフィルのふっくらとした唇に集中している。
棒立ちになってまごついているロイドに対し、リフィルは伺うような顔つきで、彼の瞳をじっと覗き込んだ。
「……何か言いたそうね、ロイド?」
「いっいや、オレは別に……」
「んふっ。プロポーズまでしたというのに、何を照れているの? いいから言ってごらんなさい?」
ロイドは互いの想いを確認したばかりで、性急にその先を求める事へのためらいに、小さく言葉を濁した。
しかしリフィルはその思考を見透かしたように、大人の女の余裕を持って、口ごもるロイドを優しく促す。
その台詞に背中を押され、ロイドは強敵に立ち向かうとき以上の覚悟と共に、自分の望みを言葉に乗せる。
「えっと、さっきのは突然だったからさ。出来たらもう一度、……その、キス、したい、かなって……」
「あら、キスだけでいいの?」
「へっ?」
けれど、ロイドの予想とは裏腹に、リフィルはどこかおどけた口調で、さも意外そうに聞き返してきた。
意表をついたリフィルの言葉を受けて、ロイドは驚きに大きく目を見開く。
「そう言えば、一つ目のヒントの答えを、まだ教えてあげてなかったわね……」
「え、あの、リフィル先生……?」
「夜更けにこうして、あなたの部屋に来たのはね……?」
リフィルは硬直したロイドの耳元へ唇を寄せると、普段の彼女からは想像もつかない妖艶な声色で囁く。
ひそやかな甘い吐息が首筋をくすぐり、ロイドの背中にゾクリとしたおののきが走る。
「あなたさえ望むのなら、私の事を好きにしてくれてもいいって、そう思っていたからよ……」
「あ……」
しなだれかかる身体の重みと、言動の全てから漂う濃密な雰囲気に、ロイドはその意味を明確に悟る。
胸の鼓動が一気に速度を増して、激しい血流が頭と下半身の一部へ急速になだれ込む。
ロイドは魅入られたようにリフィルの瞳から視線を外せないまま、彼女の背中にそっと腕を回した。
「もう一度訊くわよ。本当に、キスだけでいいのかしら?」
「せ、先生……。だったらオレ、キスだけじゃなくて……。先生のこと、全部、知りたい……」
「ええ、教えてあげるわ、何もかもをね。……んっ」
ロイドが顔を近づけると、リフィルはスッと顎を上げ、先程の言葉を証明するかのように唇を差し出した。
軽くすぼめられた、鮮やかなパールピンクの唇に、ロイドの意識はたちまち引き込まれてしまう。
ロイドは溜まった唾をゴクリと飲み下してから、わずかに顔を傾けて、おずおずとした動作で唇を重ねる。
蕩けるような温もりと、柔らかな感触のあまりの心地よさに、ロイドは目眩にも似た感覚に陥った。
「んむっ、んっ、んん……」
「んっ!? ひぇ、ひぇんへ……むぐっ!」
「んふぅ、んっん、んぅ……」
ロイドが生涯二度目の口付けに酔っていると、突然リフィルが舌を伸ばし、唇の間に割って入ってきた。
驚いて顔を引こうとした途端、首に回された細腕がロイドの後頭部を捕らえ、しっかりと押さえ込む。
リフィルは伸び上がるようにぐっと身を乗り出し、深く情熱的に唇を押し付け、舌先を妖しく踊らせる。
ゆったりと絡め合わされる舌のうねりに、ロイドは成す術もなく翻弄され、ただ興奮を高めていく。
「んっ、ふう……。今のが、男と女が互いに求め合うときのキスよ。どう、分かって?」
「ああ……。なんて言うかその、すごかった……」
しばらくして、ようやくリフィルが唇を離すと、ロイドは呆けたような声で呟いた。
リフィルはそんなロイドの戸惑った返答に柔らかく頬を緩め、力の抜けた腕からスルリと抜け出す。
「えっ、先生、どうして……?」
「んふっ。心配しなくとも、これで終わりではないわよ? でも、この続きはベッドで……、ね?」
「う、あ……」
逃げられたロイドが不安そうに訊ねると、リフィルはその表情がおかしかったのか、クスリと笑みを零す。
そして、所在なげに浮かせたロイドの手を取り、豪奢な天蓋の掛かった寝台の方へといざなってゆく。
ロイドはリフィルに腕を引かれるまま、ふわふわと頼りない足取りでそれに続いていった。
◇ ◇ ◇
「じゃあ、続きをしましょうか。さあロイド、あなたも服を脱いで?」
「え、ああ……」
リフィルはベッドの脇までロイドを連れ込むと、自分の衣服に手を伸ばしつつ、どこか弾んだ声で促した。
細い指先が服の襟元をはだけてゆくのを見て、ロイドは短く頷くと、赤い上着をもたもたと脱ぎ出す。
しかし、憧れの対象である女性が眼前で肌を晒そうとしている事実に、手先が思うように動かない。
一方リフィルは落ち着いた様子で、法衣の前を全て開くと、肩から静かに滑り落とし、袖から腕を抜く。
蛹から羽化する蝶を思わせるその優美な仕草に、ロイドはある種の感動さえ覚えた。
「どうしたのロイド、手が止まっていてよ?」
「あっ、いや、ごめん……」
リフィルに優しく指摘され、ロイドは慌てて自分の服に意識を戻した。
けれど、視線はつい彼女の方へと引き寄せられ、チラチラと落ち着き無くそちらを盗み見てしまう。
気を持たせるようなゆっくりとした動きでシャツが捲られていき、滑らかな肌が姿を現す。
豊かな胸の半ばほどを隠す、薄紫のレースのブラとの対比が、彼女の肢体の白さを存分に引き立てている。
「そんなに慌てなくてもいいのよ? もう少し落ち着きなさい」
「わ、わかってるんだけどよ……」
リフィルにそう諭されても、簡単に平常心を取り戻す事など、今のロイドに出来る訳もなかった。
言う事をきかない指先に苛立ちを感じながらも、ロイドは引き剥がすような手つきで服を脱ぎ捨てていく。
焦るロイドが手間取っている内に、リフィルはゆったりとしたズボンを緩め、するりと足元へ下ろす。
上と揃いの細かな刺繍が施されたショーツは、股の間から鋭く切れ込み、要所のみをわずかに覆っている。
水着と同じような露出でありながら、それより遥かに魅惑的なリフィルの姿に、ロイドの胸は強く高鳴った。
「分かっているのならいいわ。んっ、しょっと……」
一足早く下着姿になったリフィルは、そのままベッドに腰掛けると、流れるような動きで脚を引き上げた。
シーツの中央で膝を横に崩して座り込み、またも動きの止まったロイドに向け、磁力にも似た秋波を放つ。
その無言の催促に急かされ、ロイドは手早くズボンを引き下ろし、足先から蹴り剥がす。
下着一枚の姿になって、続けてベッドに上がろうとすると、リフィルは機先を制するように告げてきた。
「ロイド、それでは駄目よ。全部脱いでから、こちらにいらっしゃい」
「えっ? こ、これもか?」
ロイドが下着を指して訊ねると、リフィルは薄く唇の端を持ち上げ、当然と言いたげに頷いた。
強い欲求はあるものの、自分の下半身の状態を見られる事への羞恥に、ロイドの動きが目に見えて鈍くなる。
そんなロイドをおかしげに眺め、リフィルはからかい混じりの言葉と眼差しを投げかける。
「恥ずかしがっていては続きが出来なくてよ? いつもの元気はどうしたの?」
「い、いや、それとこれとは……。わ、分かったよ、脱げばいいんだろ」
「ええ、そうよ。私にも、あなたの全てを見せてくれなくてはね」
「うっ……」
大人の余裕を湛えたリフィルの声色に、改めて気恥ずかしさが込み上げて、ロイドは息を詰まらせた。
手玉に取られる不甲斐なさを感じつつも、ロイドは思い切って下着を脱ぎ、言われた通りに全てを曝け出す。
興奮を明確に示した肉棒はすでに硬く反り返り、力強く天に向けてそそり立っている。
「こ、これで、いいのか?」
「ふふっ、いいわよ。では、こちらへ来て……?」
リフィルは潤んだ瞳で若々しさの漲る股間を眺めつつ、ゆらりと片手を差し伸べて、ロイドを招き寄せる。
期待と興奮を秘めた熱い視線を注がれ、ロイドの剛直がピクンと反応する。
ロイドはその指先から見えない糸で操られたように、ぎくしゃくとした動きでベッドに上がっていった。
「せ、先生、さっきのキス、もう一度、してもいいかな……?」
「好きにしてくれてもいいと言ったでしょう? 一々断らなくてもいいのよ」
「あ、ああ、じゃあ……」
ロイドはリフィルの前へにじり寄ると、大きく身を乗り出して彼女の肩へ手を掛け、ゆっくりと唇を重ねた。
今度は自分から舌を伸ばし、温かな口内に差し入れて、ぎこちないながらも深いキスを交わす。
「んんっ、ん、んぅ……」
「んっ……ちゅ、んふぅ、ん、んん……。っふ、んふふっ……」
リフィルはロイドの脇の下から背中に手を回し、優しくリードするように舌を絡め合わせてくる。
裸の身体に直接触れる、しっとりと滑らかな素肌の感触が、ロイドの興奮を煽りたてていく。
遠慮がちに背中の輪郭を掌で撫でると、含み笑いを洩らしつつ、くすぐったそうに身じろぎをする。
緊張し切った自分に比べ、はるかに落ち着いたリフィルの態度に、ロイドはやや釈然としない思いを抱いた。
「はぁ……。先生、なんか、妙に手馴れてないか……?」
「それは、あなたよりはずっと大人ですもの。それに私まで緊張していたら、あなたもやり辛いでしょう?」
「あ……うん、そりゃそうだけどさ……」
唇を離して問い掛けると、リフィルは媚びを含んだ顔つきで、ロイドの顔を見返した。
言っている事はもっともだが、過去に別の男とこうした経験があるのかと思うと、少々複雑な気分になる。
「ロイド、余計な事は考えないの。今は、私の事だけ考えていれば良いのだから……」
「あっ、んむ……」
判り易く表情を変えたロイドの頬を宥めるように軽く撫で、リフィルは再び自分から唇を奪う。
想いを込めた舌先で口中を愛撫される心地よさに、ロイドの小さなこだわりは急速に解きほぐされていく。
強く意識するまでもなく、不要な雑念は頭の隅に追いやられ、甘い口付けの感覚が取って変わっていった。
「んっ、ふふ……。随分覚えが早いのね、ロイド。勉強もこれ位できれば、文句はないのだけれど」
「や、やめてくれよな先生、こんな時までさ……」
「ふふっ、冗談よ。でも、キスが上手くなってきたというのは本当……。んっ、んん……」
幾度も唇を重ねる内に、ロイドの緊張は多少ながらも和らぎ、その動きからもわずかに固さが抜けていった。
温かく柔らかな口腔を深く探り、戯れるように逃げる彼女の舌を追いかけ、絡め取っていく。
粘膜が擦れ合う、痺れるような官能に酔い痴れていくにつれ、ロイドの頭には更なる欲求が込み上げてくる。
ロイドはリフィルの背に回した掌を滑らせると、手探りでブラのホックに指を掛けていった。
「ん、あれ……?」
「……ロイド、外し方がよく分からないのかしら……?」
「あ、いや、その、……うん」
慣れない行為に手間取っていると、リフィルは助け舟を出すように、ロイドへそっと囁いた。
自分の手際の悪さを情けなく思いながら、ロイドは意味の無い呟きを洩らし、すぐに観念して小さく頷く。
リフィルはその物慣れない様子を見て微笑ましげに眉尻を下げ、抱擁を解いて軽く距離を取る。
そして、膝を崩して優雅に身体を捻り、ロイドの眼前に流麗な曲線を描く白い背を向けた。
「こうすれば分かるでしょう? ゆっくりとでいいから、落ち着いて外してごらんなさい……」
「ん、ああ……」
肩越しに艶っぽい流し目を投げかけ、リフィルは鼓膜の奥に響くような甘い声色でロイドを導いた。
露わになったうなじから覗く後れ毛が、匂い立つような大人の色香を漂わせている。
ロイドは掌に浮いた汗を太腿で拭い、無意識に唇を舌で湿らせつつ、中央のホックに手を伸ばす。
いくら緊張で指が強張っているとはいえ、しっかりと見ながらであれば、それほど難しい行為ではない。
言われた通りにゆっくりと落ち着いてブラの合わせを弄ると、先程の苦労が嘘のようにあっさりと外れた。
「はい、良くできました……」
「うっ……」
外された下着をシーツの上へ滑り落とすと、リフィルは静かに振り返り、艶然と微笑んだ。
ロイドは幼児に対するような台詞に反発する余裕さえなく、露わになった胸元に意識を奪われてしまう。
振り向く際の緩やかな動きに、豊満な二つの膨らみがたぷりと揺れ、その柔らかさを視覚的にも明確に表す。
張りのある乳房は、支える物が無くともまろやかな丸みを保ち、奮い立つような曲線を描く。
澄ましたようにツンと上向いた乳首が、白大理石の如くきめの細かい丘の頂に、くっきりと映える。
女性の裸を間近で見るのさえ初めてなロイドにとって、それは呼吸を止めさせるのに充分過ぎる光景だった。
「ロイド……。見ているだけではなくて、触っても、いいのよ……?」
「あっ、ああ……」
リフィルの声にハッと我に返ると、ロイドはぎこちなく片腕を挙げ、魅惑的な膨らみに手を伸ばしていった。
動作を確かめるように何度か指を曲げ、精巧な細工物を扱う時の慎重さを持って、そろそろと近づける。
見事に均整の取れた膨らみに合わせ、掌で大きく椀を形作ると、外側からそっと包み込む。
温かな熱を帯びた柔肉は、ロイドの手指にぴたりと吸い付き、重く充実した手応えを返してきた。
「うっわ、すげぇ……」
「んふふっ、なあに、ロイド……?」
「リフィル先生の胸、すごくあったかくて、柔らけぇ……」
思わず感嘆の息を洩らしたロイドに、リフィルはくすくすと笑いつつ、見守るような眼差しを投げかけた。
ロイドはそんな視線にも気付かぬまま、半ば呆然とした口ぶりで呟き、乳房を覆った自分の手を眺める。
胸板に触れていた時よりも、一層明白に感じ取れる弾力と温もりが、染み入るように手肌へと伝わっていく。
ほんの僅かに指先へ力を入れると、それだけで柔らかな肉へふにゅんと沈み、心地よい感触を更に強めた。
「先生……、オレ……」
「んっ、ふ……。ロイド……」
ロイドはもう一方の乳房も同じように掬い上げると、リフィルの胸を両手でゆっくりと揉み始めた。
リフィルの唇から悦びとも安堵ともつかない細い吐息が零れ、形の良い眉がピクンと跳ねる。
たわわに実った瑞々しい膨らみは、ロイドの指の動きに従順に応え、流れるようにその形を変えていく。
「リフィル先生、こんな調子で、いいのかな……」
「そう、その感じ……。女性の身体は敏感だから、出来るだけ、優しくね……?」
「あ、ああ……」
言われるまでもなく、ふくよかな柔肉の手触りはあまりに繊細で、強く掴む事など怖くて出来はしない。
丸めた掌でゆったりと円を描き、添えた指を小さく蠢かせ、官能的な手触りをじっくりと味わう。
自分の望むままにたわみ、たふたふと波打ち震える双丘を、ロイドは瞬きする間も惜しんで凝視する。
胸の頂点でぷっくりと色づいている乳首に親指で軽く触れると、細い肢体がぷるっと身震いした。
「あんっ……」
「先生、ここ、気持ちいいのか……?」
「ん、もうっ……。分かっているのなら、訊くんじゃありません……」
甘い喘ぎにロイドがちらりと視線を上げると、リフィルは少し怒ったように呟いた。
しかし、その顔には蕩けるような歓喜の表情が宿り、ロイドの言葉をはっきりと肯定している。
「わりぃ……。でもオレ、先生が気持ちよさそうにしてくれると、すっげえ興奮する……」
「あふ、んっ……。ふふっ、いけない子ね……」
固くしこってきた突起を指の腹で転がすと、再びリフィルの唇から、耐えかねたように熱い吐息が洩れる。
リフィルは小さく笑みを零し、ロイドの頭を両手で抱えて、自らの胸元にふわりと引き寄せていった。
「わっ、ぷ! せ、先生……?」
「だけど、とても可愛いわ……。こうして抱き締めてあげたくなるくらい……」
「こっ、子供扱いすんなよな。いくら年下でも、そこまでガキじゃねえんだからさ……」
豊かな胸に顔の半ばを埋めさせられたロイドは、目線だけでリフィルの顔を見上げ、唇を尖らせて抗議した。
確かに大人だと主張できる歳ではないが、可愛いと言われてしまうのは少なからず居心地が悪い。
けれどリフィルは、ロイドの髪をゆっくりと撫でながら、言い聞かせるように優しく囁いてくる。
「そうではないわ。女にとってはね、愛する男性は幾つであっても、どこか可愛らしく思えるものなの……」
「愛……って、そ、そんなもんなのか?」
「ええ。それとも、私にこうされているのは嫌かしら……?」
「べ、別に、いやじゃねえけどよ……」
さらりと告げられたリフィルの告白と、慈愛に満ちた眼差しに、ロイドは決まり悪げに言葉を濁した。
赤ん坊の頃にダイクに拾われたロイドには、母親からこんな風に抱かれたような記憶はない。
けれど、リフィルの豊かな乳房に顔を埋めていると、どこか懐かしい安らいだ気分が込み上げてくる。
「なら、続けて、ロイド……。私にもっと、あなたを感じさせて……」
「あ、ああ……」
「んっ、そう……。好きなように、甘えてくれて、いいのよ……。はっ、ん……」
リフィルの声に促され、ロイドは沸き立つ欲求の赴くままに、滑らかな乳房にそっと頬をすり寄せた。
手に余るたっぷりとした膨らみを揉みしだき、胸の谷間に軽く口付けると、リフィルは満足げな吐息をつく。
熟した木の実のような先端を、ちゅっと舌を鳴らして吸い上げれば、白い肢体に官能の震えが走る。
細い指先がロイドの髪を愛しげに掻き分け、母性とそれ以上の想いを示して緩やかに梳いていく。
次第に早まるリフィルの鼓動を直に感じながら、ロイドは芳醇な二つの柔肉の感触に没頭していった。
「んふぅ……っ、ん……っ、は、あっ……」
「はぷ、ちゅ……。はぁ、先生っ……、んむ、んぅ……」
「あふ……んっ、あっ、いいわ……。そう、そこを、もっと……。んんっ、ふぅ……」
ロイドが愛撫を重ねる度に、リフィルの乳房はより柔軟さを増し、内側からの熱が肌を火照らせていった。
固く隆起した乳首は唾液に濡れて艶やかに照り、舌で転がすとコリコリとした触感を返してくる。
白から朱に染まった肌には薄く汗が浮き、成熟した女体のみが放つ、かぐわしい香りを濃厚に振り撒く。
強烈な酒にも似た、頭の芯をぐらつかせる酩酊感に陥りながら、ロイドは夢中で左右の胸に吸い付いていた。
「ねえ、ロイド……。そろそろ、下も脱がせてくれないかしら……?」
「え、あっ、ああ……」
しばらくされるがままにしていたリフィルは、やがて我慢が出来なくなったのか、濡れた声色で囁いた。
ロイドの首筋をさらりと撫でると、解いた両腕でシーツに後ろ手を突き、ゆっくりと背後へ倒れていく。
取り残されたロイドの視界へ、緩やかに息づく小さな臍の窪みと、股間を覆う薄紫のショーツが映り込む。
鋭角に切れ込んだ股布は、内部の陰影をうっすらと透かし出し、ロイドの欲求を激しく掻き立てる。
胸が詰まるほどの興奮に衝き動かされ、ロイドはリフィルの腰へ震える手を伸ばしていった。
「じゃっ、じゃあ、脱がすぜ……?」
「ええ、お願いするわ……」
「う、んく……」
ロイドがショーツの両脇に指を掛けると、リフィルは浅く腰を浮かせ、期待を込めた口調で呟いた。
大きく息を呑んだロイドは、尻の丸みに沿って手を滑らせ、卵の薄皮を剥ぐようにつるりと捲っていく。
薄絹の下から、柔らかく波打つアッシュブロンドの秘毛が姿を現し、ロイドの心臓がドクンと跳ねる。
豊かに生い茂った巻き毛の狭間から、ほんの僅かに窺える鮮烈な真紅の色彩が、例え様もなく扇情的だった。
「んっ、そう、ちゃんと下まで……。それでいいわ、ロイド……」
「はあぁ……っ。せっ、先生……」
下ろされたショーツが足首まで届くと、リフィルは内股を擦り合わせて、細い爪先を交互に引き抜いた。
ロイドは手に残された小さな布地をシーツの上に置き、大仕事を終えた後のように長いため息をつく。
リフィルの膝は内側に向けて軽く倒れ、露わになった秘所を隠すかの如く、緩やかに閉じられている。
その佇まいはあまりに優雅で、いくら見たい欲求が強くとも、強引に脚を割り開くのは気が咎めてしまう。
ロイドはリフィルの胸元へ顔を伏せると、片手をそっと腰の脇に這わせ、ゆるゆると太腿へ伝っていった。
「あっ、ん……。そうよ、あなたの手で、私の全てを、もっと確かめて……」
「はぁ……、リフィル、先生っ……。んっ、ちゅ……」
胸の頂きに口付けながら、尻から膝の裏にかけてを掌で撫でていくと、リフィルの肢体が小さくうねった。
ロイドの手の中で、乳房と同じくらいに滑らかで、しかしやはり感触の違う肌肉が、柔らかく形を変える。
掬い上げるような手の動きに従い、リフィルはじりじりと膝を立て、太腿の隙間を徐々に広げていく。
ロイドが脚の付け根を抱え込み、大きく回りこんで内股へ指を潜らせると、リフィルの腰がピクンと跳ねた。
「んっ……!」
「あ、わ、悪い……。今の、くすぐったかったか……?」
思いがけず大きな反応に、ロイドは戸惑った様子で手を止めて、リフィルの顔色を窺った。
けれどリフィルは小さく顎を引いて、その視線を正面から受け止め、悦びに満ちた表情と共に軽く首を振る。
「そうでは、ないわ……。いいから、続けてちょうだい、ロイド……」
「ん、ああ……」
リフィルは喉を撫でられた猫の如く、心地良さげに目を細め、甘い口調で続きをせがむ。
その要求に頷きを返すと、ロイドは両の乳房へ交互にキスを重ねつつ、しなやかな脚線を辿っていった。
「ちゅっ、はぁ……。先生の身体、すごく熱い……」
「んふ、ん……っ。ロイドが……、とても、上手だからよ……。んっ、は……」
リフィルの下肢を何度もさすり、飽きる事なく乳房を吸い立てながら、ロイドは陶然とした口ぶりで呟いた。
ますます濃密さを増していく官能的な肌の匂いに、胸の奥がじりじりと炙られるように熱く燃える。
たっぷりとした尻肉を、広げた指でくにくにと揉み、丸みに沿ってゆっくりと撫で回す。
ロイドがするりと掌を滑らせ、太腿の外側へ移ろうとすると、リフィルの手がそれを優しく押し留めた。
「先生……?」
「ロイド……、こちらも、触って……?」
「あ……」
リフィルはロイドの手を身体の前へ回させると、そこからそっと引き下げて、脚の間へと導いていった。
求められている行為を悟ったロイドは、自らも腕を動かして、指先で豊かな恥毛を掻き分けていく。
綿毛のように柔らかい茂みを潜り抜け、その奥に隠された秘所に触れた途端、リフィルはビクッと痙攣する。
「……んっ!」
「うわ……」
唇よりもなお繊細で、身体のどこよりも強く熱を帯びた粘膜の感触に、ロイドは驚きの声を上げた。
リフィルの下腹に視線を投げ、手探りでそろそろと指を伝わせていくと、肉感的な内股がぴくぴくと震える。
ぽってりとした肉厚の、上質なシルクにも似た秘唇の滑らかさが、ロイドの頭の芯を熱く滾らせる。
「先生、こう、か……?」
「っ、そうっ……。もっと、そうして……んんっ!」
外周を辿っていた指を寝かせ、指の腹全体を陰裂に宛がい、ロイドは軽いタッチで刺激を与えていく。
リフィルはむずがる幼児のようにその身をくねらせ、沸き起こる快楽にきゅっと眉を寄せた。
「んっ、ふぅっ、ぁ……。ん……そうっ、とても、いいわっ……ん、ふっ……」
「はぁ……っ、はぁ、先生、先生っ……」
「ロイド……。んんっ、ん、あ、んっ……!」
やがて、汗で湿ったロイドの指を、リフィルの秘所から滲み出した蜜が、更にしっとりと濡らし始めた。
潤いを増した肉の花弁が、柔らかくぬめって指の腹をくすぐり、くぬくぬと逃げるように滑り出す。
指の付け根に当たる、コリッとした突起を軽く擦ると、リフィルの肢体が大きく波打つ。
その反応のひとつひとつが、ロイドの興奮を狂おしいほどに刺激して、愛撫により一層の熱が篭る。
左右に揺らす指先へほんの軽く力を入れると、肉襞の合わせが緩やかに道を空け、その内部へと招き入れた。
「んふぅ……っ!」
「あ……! 先生、ここって……」
「そうよ……。そこに、あなたのそれが、入るの……」
「ここ、に……」
リフィルは限界まで膨れ上がったロイドの剛直を目線で示し、肉付きの良い尻をもそりと動かした。
ただそれだけで、ロイドの指は吸い込まれるように奥へと導かれ、温かな膣内に沈んでいく。
熱したチーズの如くトロトロに溶け、それでいて強い圧迫感のある粘膜の連なりが、指全体を包み込む。
「すげぇ……。先生のここ、こんなに……」
「んんっ、あ、くふぅ……! ふぁ、んっふ、んんんっ……!」
もっとその感触を味わいたくて、ロイドはくねくねと指先を蠢かせ、リフィルの中を探り出した。
狭い入り口が指の根元をきつく咥え込み、充実した肉の壁がぬめりを帯びて指先に絡みつく。
リフィルは唇を横に引き結び、高まる喘ぎを口の中へ封じ込め、シーツの上で伸びをするように身悶える。
その快楽を堪える表情に、ロイドの股間はもはや痛みさえ覚えるほど、硬く強張っていった。
「はぁ、はっ、は、はぁっ……」
「ん……っ、ロイ、ド……?」
少しの間、リフィルの中を指で掻き回していたロイドは、すぐに感極まって動きを止め、荒い息をついた。
指などではなく、自身の滾り切ったものを収めたいという本能の疼きが、耐え難いほどに内圧を増している。
それに、経験の無いロイドには断言こそ出来ないが、リフィルの秘所も充分に潤っているように思える。
リフィルから訝しげに呼び掛けられると、ロイドは興奮に掠れた声で訴えた。
「せん、せい……。オレ、もう、我慢、できねえんだ、けど……、その、いい、かな……?」
「……馬鹿ね、無理をしなくとも良いのに……。いいわよ、いらっしゃい……」
「あっ、ああ……」
紅潮した顔に薄く苦笑を浮かべたリフィルは、立てた片膝を外へと倒し、ロイドを迎え入れる体勢を取った。
ロイドは緩慢な動きで身を起こすと、秘所からそっと指を抜き取り、開かれた脚の間に割り込んでいく。
眼下に晒された陰唇は妖しく濡れ光り、咲き誇る満開の薔薇のように、肉の花弁を綻ばせている。
ひくつく襞の連なりと、強く立ち昇る淫靡な蜜の匂いに、ロイドの意識は完全に魅了されてしまう。
反り返った剛直を押し下げ、指で探っていた場所へ当たりをつけて宛がうと、張り詰めた先端が浅く沈んだ。
「ここ、だよな……?」
「そうよ……。あとは、そのまま、前に……んっ、あぁっ!」
「くっ、あ……!」
リフィルが言い終わらない内に、ロイドの亀頭は熱い肉襞をぬたりとくつろげ、その内部へ滑り込んだ。
途端に締まった狭い入り口が、敏感な雁首を四方から押し包み、ロイドの口から高い喘ぎが洩れる。
膨張した肉棒の引き攣るような痛みが、リフィルの熱で解されて、甘美な快感へと昇華していく。
ロイドの硬い剛直は、まるで奥から吸い寄せられていくように、熱く濡れた肉の狭間を突き進んでいった。
「ううっ、く! ……あ、はあぁぁ……」
「んぅ……。ん、ふぅ、ロイ、ド……」
程なくして、二人の腰は深く重なり合い、ロイドの剛直はリフィルの体内へすっぽりと収まった。
ロイドは崩れ落ちそうな程の安らぎと心地良さを持て余し、震える息と共に胸の奥から熱を吐き出す。
柔らかな膣道はロイドのものをみっちりと取り囲み、浅い呼吸に合わせてきつく、そして甘く抱擁する。
うねるような収縮が起こる度に、強張った肉棒が快感にわななき、頭の芯が痺れてくる。
呼び掛けに応えて視線を合わせると、リフィルの顔にもロイドと同じ、歓喜と安堵の感情が浮かんでいた。
「先生……。オレいま、先生と、繋がってる、んだよな……?」
「ええ、分かるでしょう……? あなたのものが、私の中で、熱く脈打っているのが……」
「あ、ああっ……。それに、先生のここが、オレのをすごく締め付けてるのも……」
声に出して確認すると、結びついている実感がより鮮明になり、叫び出したい程の達成感が胸に渦巻いた。
ロイドは想像を絶する至福に浸りつつ、自分を受け入れてくれたリフィルの全てを、強く脳裏に焼き付ける。
快楽の泉の如き襞の連なりは、猛る剛直をしっかりと咥え込み、淫らに妖しく蠕動する。
アイスブルーの瞳は悦楽と欲情に煙るような霞を掛け、凄絶なまでの色香を醸し出している。
そのどれもが、ロイドの牡の本能を否応なしに掻き立てて、更なる愛の交歓を促す。
「リフィル、先生……」
「ロイド……。んっ、あ……!」
「くっ、うぅ……!」
互いの名を呼ぶその声だけで、意思の疎通を難なく果たし、ロイドはゆっくりと腰を引く。
すると、絡んだ襞が粘つきながら肉棒を存分に舐め上げ、その刺激だけでもう、達してしまいそうになる。
ロイドは苦痛のそれにも似た呻きを洩らし、奥歯を強く噛み締めて、込み上げる衝動を何とか抑え込んだ。
「はっ、はぁ……、んっ、く……!」
「ん、んふぅぅ……っ!」
幹の半ばまで抜き出すと、ロイドは短く息を継いで一拍置き、再び秘裂の中へ肉棒を沈めていった。
傘を張った亀頭がすぼまった膣道を奥へと進み、リフィルの唇から甘い吐息が押し出される。
複雑に折り重なった内部の粘膜が、奥深い快楽を与えながらざわめいて、ロイドの剛直を迎え入れていく。
たった一度の往復だけで、ロイドの呼吸は激しく乱れ、額にはびっしりと汗が滲んでいた。
「はぁぁ、先生っ……。先生の、なか……。気持ち、よすぎるっ……」
「私、もよ……。ロイド、あなたが、とても、熱くて……、んっ、蕩けてしまいそう……」
「うっ、あ……」
ロイドが掠れた声で呟きを洩らすと、リフィルは快楽中枢を直接くすぐるような、深い響きの睦言を返した。
背筋を走るおののきに、ロイドの剛直がビクビクと脈動し、熱い秘肉の狭間で小さくのたうつ。
その肉棒の反応に誘われて、リフィルの膣内はますます蜜を滴らせ、心地良いぬめりを増していく。
今すぐにでも出したいと思う一方、少しでも長くこうしていたいという欲求が、それより強く湧き上がる。
ロイドは股間にぐっと力を入れ、激しい尿意にも似た射精の疼きを、腰の奥へと引き戻した。
「はあぁ……っ、くふぅ、先、生っ……」
「んんっ、ふ、そうっ……。ロイド、もっと、私を、熱くさせてっ……。ん、あ……!」
ひとまず暴発の気配をやり過ごしてから、ロイドはまたゆっくりと一度だけ、腰から下を前後させた。
生じる快感こそ変わらないものの、さすがに今度は先程までのように、すぐさま限界に近づいたりはしない。
その事にひそかな安堵を覚えつつ、ロイドはもう一度、もう一度と、確認する調子で同じ動作を繰り返す。
反復される律動に、リフィルは官能的に身をくねらせ、両膝でロイドの腰をきゅっと挟み込む。
窓から望める夜の海の、寄せては返す波のように、ロイドは緩やかな動きでリフィルの中を行き来し始めた。
「あっ……ん……、ロイド……っ、ふっ……あ、んん……ぅ!」
「は……っく、うっ……。はぁ、く、はっ……」
「いいっ……、んふぅっ、とて……も、いいのっ……ん、んんっ!」
ロイドの抽送が切れ目無く連続するようになると、リフィルの喘ぎも次第に声量を増していった。
Mの字に広げられた脚が、間に割り込む腰の動きに押されて、羽根を休める蝶の如くゆったりと開閉する。
濡れ切った粘膜は吸い付いてなかなか離れたがらず、剛直が後退するたび名残惜しげに絡みつく。
えらの張った亀頭が突き進めば、悦びも露わにひくついて、もっと中へと誘い掛けるように道を空ける。
うねる秘洞の要求に導かれ、ロイドが深く腰を沈めると、滾る先端が最奥の肉壁をくきゅりと押し上げた。
「ああっ! ん、今っ……、奥、当たっ、て……あんっ!」
「はぁ……っ、せん、せ……」
子宮の入り口を小突かれて、リフィルはビクッと背中を反らし、一際甲高い声を上げた。
同時に、膣全体が驚いたようにきゅんっと絞り込まれ、ロイドの肉棒をきつく締めつけてくる。
緩やかに何度か中を往復してから、再び奥に突き入れると、リフィルはまたもや大きな反応を示す。
そこが急所だと本能的に察したロイドは、身体を前へ進める度に、ぐっと腰を入れて深々と抉っていく。
「や……んん! そんなにっ……あ! 何度も、突いたらっ……んふぅ!」
「はっ……くっ! はぁ……うっ! うく……ふっ!」
「駄目っ……あぁ! 私、我慢……っん! 出来なくっ、ん、くぅ……!」
それを何度も続けていくにつれ、リフィルの声に段々と切羽詰まった響きが混じり始めた。
洩れ出る声を抑えるつもりなのか、片手の甲を喘ぐ口元へ寄せ、人差し指の付け根に軽く歯を立てる。
力強い突き上げに、リフィルの肢体が大きく揺すぶられ、豊かな胸がたふたふと前後に弾む。
波打つ乳房の一つへ手を伸ばし、掌の中で揉みしだきながら、ロイドは更に律動を速めていった。
「んぁっ、んん、んっ、あ、やっ、あんっ!」
「はっ、はっ、くっ、はっ、はぁ!」
その内に、ロイドは半ば我を忘れて、リフィルの奥を突き崩すような勢いで腰を打ち振るい出した。
膣口から溢れ返った快楽の雫が、激しい律動に飛沫を上げ、肉を叩き合わせる音に湿った響きを添える。
敏感な鈴口を終端の肉壁に押し付ける度に、痺れにも似た官能が駆け抜けて、ロイドの理性を曇らせていく。
リフィルは大きく首を反らし、白い喉元を晒しながら、襲い来る快楽を堪えようと四肢をわななかせる。
そのなまめかしい姿態にいっそう欲望を燃え盛らせたロイドは、一心不乱にリフィルを責め立てていった。
「あっ、もう……っ、だめぇっ! ロイドっ、ロイドぉ……っ!」
「う、くぁ! リッ、リフィル、せんせ……っ!」
「もっと、もっとちょうだいっ……! あなたのっ、おくにっ、おくにぃ……っ!」
「うっ、くぅ、はっ、はぁ、はっ……!」
やがてリフィルは、羞恥を振り払うように強くかぶりを振ると、堰を切ったように自らも腰を使い始めた。
ロイドの動きに合わせ、浮かせた尻を淫らにくねらせて、より深く熱烈な結合を求める。
直線的な動きを続けていた剛直が、ひくつく膣内でぬたりと螺旋を描き、新たな刺激を引き起こす。
一突きごとに千変万化する強い摩擦と、甘く切ないリフィルの喘ぎ声とが、射精への欲求を高めていく。
「せっ、せん、せぇ……っ! そんな……っに、されたらっ、オレ、オレっ……!」
「いいのっ、いいのよっ! きてっ、ロイド、きてぇ……っ!」
「うっ、あ! くっ、くうぅっ……!」
ロイドが切れ切れの息に乗せて、己の限界が近づいた事を告げると、リフィルは更に妖しく乱れる。
泣き叫ぶような声でロイドを促し、体内で暴れ回る肉棒をきゅうきゅうと締め付ける。
最後の抑制が打ち砕かれ、猛る本能の導きに衝き動かされて、ロイドはリフィルの中で全てを解き放った。
「あっ、あぁ、はあぁぁ……」
「ん……、ふぅ、ロイ、ドっ……!」
全身をガクガクと震わせて、リフィルの最奥に精を注ぎつつ、ロイドは満ち足りた吐息を洩らした。
熱い秘肉に包まれた剛直がわななく度に、粘度の高い白濁がびゅくびゅくと飛び出し、子宮の入り口を打つ。
凄まじい開放感と共に、身体中の力がそれに宿っていたかのように、心地良い疲労がのし掛かってくる。
このまま倒れ込みたい欲求を何とか堪え、ロイドは萎えた四肢を立て直して、リフィルから離れようとする。
しかし、僅かに身体を引いた処で、リフィルの片脚がロイドの腰に絡み、その動きを封じ込めた。
「はっ、あ、せん、せ……?」
「だ、めっ……! まだ……っ、ぬいては、だめっ……!」
「えっ……? あ、ああ……」
絶頂に痺れた頭を巡らして、ロイドがリフィルの顔を見下ろすと、彼女は潤んだ瞳を向けて必死に懇願した。
ぬかるんだ秘洞も、脈動の収まった肉棒を捕らえたまま、決して離さないとばかりに締め付けている。
意味が今ひとつ分からないながらも、そのあまりに切なげな様子に、ロイドは大人しく指示に従う。
「うごかなくて、いいから……っ! わたしもっ、あと……っ、あと、すこしでっ……!」
「あ……。リフィル、先生っ……」
リフィルはロイドの剛直を深々と咥え込んだまま、眉間に深く皺を寄せ、瞼を閉じて意識を集中する。
その言葉と表情に、リフィルが達しかけている事を悟り、ロイドの肉棒が大きく脈を打つ。
折り重なった肉襞が、まるで別の生き物のように細かく蠕動し、昂ぶった官能を最後の頂点へと導く。
「んっ、くるっ……、んんんんんっ!」
そして、濡れた子犬のようにぷるぷるっと身震いし、リフィルは絶頂の波動にきゅっと下唇を噛む。
一旦強く引き絞られた膣口は、次の瞬間ふわりと綻んで、泡立った白濁混じりの蜜をとろりと滴らせた。
◇ ◇ ◇
「ふあぁ……っ。うぅ、眠い……」
その翌朝、ロイドは腫れぼったい目を擦りながら、ホテルの廊下をのろのろと歩いていた。
あの後、リフィルはシャワーを浴びて自分の部屋に戻り、ロイドは広大な部屋に一人で残された。
ロイドもそれから眠ろうとはしたのだが、ベッドには悩ましい移り香が残っていて、どうにも寝付けない。
布団を抱えてソファーに避難しても、瞼の裏にリフィルの姿態がちらつき、目が冴えていくばかり。
結局、空が白む頃にどうにか眠りに落ちたものの、ロイドはすっかり寝不足に陥っていた。
「だけど夕べは……っと、いけね。思い出したら、また変な気分になっちまうぜ……」
無意識の内に蘇ってきた記憶を掻き消すように、ロイドはブルブルと頭を振った。
リフィルからは、少なくともこの旅が終わるまでは、二人の関係は内緒だと釘を刺されている。
ロイドも昨夜の体験は勿論、想いが通じ合った事すら、今は気恥ずかしくてあまり他人に知られたくはない。
エレベーターの中で何度も深呼吸し、頬を叩いて眠気を払い、ロイドはぐっと気を引き締める。
開いたドアから一歩踏み出して、正面のロビーに目を向けると、そこにはすでに仲間達が全員揃っていた。
「あーっ、ロイド、やっと来た! もう、ボクら大分前から待ってたんだよ?」
「わ、わりぃわりぃ。ちょっと部屋が豪華すぎて、あんまり良く眠れなかったんだ」
「くすっ、なんかロイドらしいね。お目々が真っ赤だよ?」
ジーニアスやコレットと何気ない会話を交わしながら、ロイドは少し後ろめたい気分を味わった。
秘密を抱えて適当な言い訳を取り繕うのは、別に悪意からではないとはいっても、やはり気が咎める。
視線をちらりとリフィルに向けると、彼女は他の人間には分からない程度に、小さく目線だけで頷く。
朝の光の中で見るその容貌は、昨日までよりも更に麗わしく、白い肌もいつもより艶やかに見える。
思わず見入りそうになるのを何とか堪え、ロイドは高鳴る鼓動を宥めるように、そっと胸を撫で下ろした。
「さて、みんな揃ったようだし、そろそろ出発しましょうか」
リフィルの声を合図にして、一行は思い思いに動き出し、ホテルの玄関へと足を進めていった。
ロイドは先導するリフィルから少し距離を置き、出来るだけ平静を装って、皆の後を追いかける。
けれど、視線はどうしても彼女の端整な後姿に流れ、足取りもどこかぎこちなくなってしまう。
溢れる想いを誤魔化すように大きく息を吐くと、いきなりロイドの肩にゼロスが圧し掛かってきた。
「うわっ!?」
「な〜によ、ロイドくぅん。リフィルさまを見ながら溜息なんかついちゃって〜」
「ばっ、バカ、脅かすなよな。別にそんなんじゃねえよ」
不意を衝かれたロイドの心臓は激しく脈打ち、洩れ出た叫びに前を行く何人かが軽く振り返った。
耳元でこっそりと囁かれ、頬が勝手に赤くなるのを自覚しながら、ロイドはゼロスの身体を肘で押しやる。
しかし、ゼロスは馴れ馴れしく肩を組んだまま、みなまで言うなとばかりに何度も頷く。
「分かる、分かるぜロイドくん。なんたって今日のリフィルさま、いつもより一段と綺麗だしなぁ」
「そ、そうか……?」
リフィルを褒めそやすゼロスの台詞に、ロイドはあいまいに言葉を濁した。
同類扱いされるのはいささか不本意ではあるが、自分の想い人を良く言われれば、やはり悪い気はしない。
話に乗ってきたロイドに大きく相好を崩すと、ゼロスは調子に乗ってひそひそと軽口を重ねる。
「そうそう。なんてーの? 特にこう腰の辺りが、妙に充実して色っぽいっつーか……」
「や、やめろよなっ!? 変な目で先生のこと見るんじゃねえよっ!」
「おりょっ!?」
急に頭へ血が昇り、反射的にゼロスを力一杯怒鳴りつけてしまってから、ロイドはハッと我に返る。
あまりの大声に足を止めた仲間全員の視線が、一気にロイドへと集中し、内心の焦りに拍車をかけた。
「……ロイドさん、どうかしたのですか?」
「あっ、いっ、いや、なんでもない! ほんと、なんでもねえから、気にすんなよみんなっ!」
首を傾げたプレセアの問いに激しく両手を振って、ロイドは必死になって弁解した。
その不自然すぎる態度に、リフィルは強く咎めるような視線を向け、他の皆はますます疑惑の表情を深める。
ただ一人、両手を挙げて驚きを表現していたゼロスだけが、すぐに事情を察したらしく、ポンと手を叩く。
「……ああ、な〜るほど。俺さまナットク」
「ゼロス、アンタなに一人でニヤニヤしてんのさ。男同士でコソコソと、感じ悪いねえ」
「べえぇつにぃ〜。しっかし、ほっほぉ〜ん、なるほどなるほど、そういう事ねぇ……」
空っとぼけて両手を頭の後ろで組むと、ゼロスはロイドをその場に残し、悠然とした足取りで歩き出した。
ロイドはだらだらと顔面に汗をかき、その姿を黙って見送るより他にない。
ある意味、一番知られたくない相手に悟られてしまったらしい状態に、ロイドの思考は千々に乱れる。
「あっ、こら、ちょっとお待ちよ。何がそういう事なんだい?」
「いやいや、俺さまの口からは、ちょ〜っとこれ以上は言えねえなぁ〜」
いかにも思わせぶりな態度に、しいなが後を追いつつ問い詰めても、ゼロスはのらりくらりと言をかわす。
他の面々も、顔を真っ赤にして硬直したロイドを気遣ってか、訝しげな表情のまま次々とそれに続く。
最後に残ったリフィルは、恥じらいと腹立ちを交えた瞳でキッと睨み付け、唇の動きだけでロイドに告げる。
『もう、馬鹿っ!』
「うぅっ……」
とどめとばかりに投げつけられた、リフィルの無言の叱責に、ロイドはがっくりと肩を落とした。
〜END〜
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