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作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
無題 730氏(10スレ目) ヴェイグ×クレア 2005/01/19 2005/01/19

潮の香りが僅かに鼻腔をくすぐった。
眼下に広がるミナールの港を見下ろしながら、クレア・ベネットは小さなくしゃみをした。
「・・・・大丈夫か?」
幼馴染の少女を気遣うようにヴェイグ・リュングベルは目を細めた。
ヴェイグは昔からこうだった。
一見すると冷たい印象を受けてしまうが、本当は誰よりも優しいところがある。
それを言うと本人は怒るのだが、ヴェイグのそんな所がクレアは好きだった。
・・・思わず口元を押さえて笑いをこらえる。
その仕草にヴェイグは怪訝な表情をしたがそれ以上言及してはこなかった。
「うん、大丈夫。ちょっと安心して疲れちゃっただけだから・・・」
目尻に溜まった涙を指先で拭い、微笑んでみせる。
水面に映った太陽が、真っ赤に染まった。
ミナールの夕日は綺麗だと、前に誰かから聞いた事がある。
この町には何度か来た事があったが、こんな風に夕日を眺めたのは初めてだった。
そういえば、彼と二人きりで話すのも久しぶりだ。
「ねえ、ヴェイグ・・・。」
「・・・どうかしたか?」
「アガーテ様・・・ちょっと可哀想だったね。」
「確かにな・・・だが、あいつがあの時『月のフォルス』を開放していなかったら世界は滅んでいた。」
「うん、そうだね・・・」
冷たい風が、頬を撫でる。
この辺りは乾燥しているため昼と夜の温度差が激しい。
「寒くなってきたな、そろそろ宿に戻ろう・・・」
「・・・ヴェイグ。」
自然に伸ばした指先が、意図せずに彼の手にそっと触れた。
「・・・ミルハウストさんは、これからどうするんだろうね?」
「あいつの気持ちは俺にはわからない・・・だが、あいつは・・・」
「・・・・・」

微妙な沈黙が流れる。
何時の間にか指先が絡まり、ちょうど手を繋ぐような形になった。
昔は何の抵抗もなく手を握ることが出来たが、この年になるとさすがに恥ずかしい。
そんなクレアの気持ちを知ってか知らずか・・・真剣な表情のままヴェイグは言葉を紡ぐ。
「あいつはアガーテの事が好きだった。それだけは確かだ・・・。
彼女の意思を無駄にしないためにも・・・その意思に従うためにも、あいつはこの国を守っていくのだろうな・・・」
水面を見つめるヴェイグの表情は何処か切なげで、抱きしめて頭を撫でてあげたくなるような、そんな衝動に襲われた。
・・・それはちょうど子供の頃に、彼に初めて会った時感じた気持ちに似ていた。
動悸が早い。
頬に血が昇って、思わず顔を背ける。
「私たちは・・・これから、どうしようか?」
意を決して開いた唇からは、緊張したような上ずった声がこぼれた。
「そうだな、とりあえずスールズに戻っておじ・・いや、父さんと母さんにお前の無事な姿を見せてやらないとな・・・」
「そうじゃなくて・・・」
首を横に振る。
何故だかわからないけど胸が熱くて、なんだかとってもむず痒い気分だった。
「私たちは・・・・その、・・・どうしようか?・・・私の言いたい事、解る・・・よね?」
多分、自分の顔は信じられないくらい真っ赤に染まっていたのだと思う。
頬を照らす夕日に心の中で感謝しながら、繋いだ腕に力を込める。
ヴェイグの指は何だかとっても大きくて、やっぱり男の子は凄いなぁ・・・と思ってしまう。
何が凄いのかは自分でもさっぱりわからなかった。
虚をつかれたような表情をしていたヴェイグだったが、言葉の真意を悟ったのか恥ずかしそうに顔を背けた。
「それとも、ヴェイグは私のこと・・・」
「い、いや俺は・・・とにかく外は寒い。中に入ろう・・・」
慌てて宿に向かって歩き出すヴェイグの背中を見つめながら、クレアは小さくむくれてみせた。

そういえば、ここの宿屋はこいつの診療所でもあったな・・・そんな事を考えながら、ヴェイグは小さく嘆息した。
ここは宿屋の一室。
王室なんたら〜・・・医師免許を持ってるらしいキュリア先生の診療所である。
たまたま廊下ですれ違ったところを呼び止められて、今に至る。
さすがに今はクレアと二人きりで居るのは気恥ずかしかったので、丁度いいといえば丁度いい。
「良かったじゃない!貴方たち二人は今までいろいろ苦労したみたいだけど、でもまぁ・・無事に二人で戻って・・・」
「いや、まぁ・・・・そうですね。」
早口でまくし立てるキュリアを手で制して、ヴェイグはクレアの方を盗み見た。
「クレアちゃんも貴方が助けてくれて、本当に嬉しいはずよ。」
そのクレアは壁に背を預けながら、ミーシャと楽しそうに雑談なんかしている。
「まさか、それを言うために呼び止めたわけじゃ・・・」
「あ、そうそう、これを渡しとこうと思ったのよ。」
その言葉にキュリアは怪しく目を光らせた。
・・・何となく嫌な予感がするが、多分気のせいだろう。
ガサゴソと白衣のポケットを引っ繰り返すと、手の平をヴェイグの眼前に翳す。

ゴム製の避妊具が、そこにあった。

「は?」
思わず硬直する。
予想外の代物に、言葉を失う。
「必要でしょ?」
照れなくても良いわよ、とでも言いたげな顔で、キュリアは悪戯っぽく微笑んだ。
「・・・・いりません。」
きっぱりと断る。
こういうものは下手に受け取ると後でロクな事が無い。そもそも使う予定は無い。
「何で?貴方たち、そういう関係じゃないの?」
「クレアはただの・・・・」
そう言ったところで言葉に詰まる。
この手の質問は軽く流すことにしていたが、あんな事があったばかりでクレアを意識するなという方が無理な話だ。
――何で間の悪い時に変なことを聞いて来るんだこの医者は!?
・・・頭の隅でそんな事を考えながら、ヴェイグはクレアの腕を掴む。
「・・・ん?どうかしたの?」
明らかに小ばかにしたような態度で、口元を歪めるキュリア。
「すみません、疲れているので・・・これで。」
そう言い残すと、ヴェイグは乱暴に部屋のドアを閉めた。

熱いシャワーを全身に浴びると、汚れと一緒に陰鬱な気分まで流されていくようで不思議だ。
クレアは視線を落とすと、起伏の乏しい自らの体を眺めて軽く嘆息した。
――やっぱり、私の体は子供っぽいなぁ・・・
そんな事を考えながら、泡立てた石鹸を体に塗ったくっていく。
――アガーテ様の体は大人っぽかったなぁ・・・
ヴェイグの好みは知らないが、小さな胸を好む男性は少ないだろう。
そういえば、前に近所の女の子から揉むと大きくなる・・・というのを聞いた気がする。
・・・何を揉むって?
もちろん胸に決まってるじゃないですか!!
ゴクリと唾を飲み込む。
泡に濡れた胸元にそっと手を這わせ・・・・
「クレア、タオルここに置くぞ?」
「・・ひゃ、ひゃい!」
突然ヴェイグの声がして舌が回らない。
遠ざかって行く足音に内心ほっとしながら、へなへなと腰を降ろす。
「私は一体、何してるんだろう?」
・・・唐突に、恥ずかしさが込み上げてきた。
途方も無く虚しい気持ちが押し寄せてきて、蛇口を捻って泡を流した。

――しくじった!
ベットに転がりながら天井を眺めていたヴェイグは、心の中でそう叫んだ。
室内にはクレアの浴びるシャワーの音だけが響いている。
「・・・何で相部屋にしたんだ?」
宿を取ったときは当たり前の感覚で部屋を一緒にしたが、よく考えるとこれはかなりマズいのではないだろうか?
ヴェイグだってクールな2枚目を気取ってはいるが、健全な18歳の男である。
・・・そういう欲望はもちろんある。
妙にドキドキしている自分を押さえようとするも、ヴェイグのラッシュゲージはいやが上にも上昇していく。
「落ち着け、人の強さを決めるのは武器やフォルスなんかじゃない・・・」
「どうしたの?ヴェイグ?」
錯乱して意味不明な言葉を呟いていたヴェイグだが、突然、目の前に出現したクレアに思わずドキリとする。
風呂上りのクレアの頬は薄く桃色に染まり、石鹸のいい香りがした。
白い花柄のパジャマの上に、小さいが確かな胸の膨らみが確認できる。
――ゴクリ。
思わず唾を飲み込む。
普段見慣れたはずの幼馴染は、狭い宿屋のベッドの上で妙に艶っぽく見えた。
「・・・どうしたの?ヴェイグ?」
「い、いや・・・」
とにかく自分は普段の通りにしてなくてはならない。
無理に平静を装うと、ヴェイグは軽くため息をつく・・・
「はぁ・・・」
・・・予定だったのだが、先を越されてしまった。
「どうした?クレア?お前がため息とは珍しいな・・・・」
そう言ってクレアを見る。
自分の事で頭が一杯だったから気が付かなかったが、良く見ると彼女の様子も少しおかしい。
「・・・え?うん・・・・ちょっと・・・」
「どうした?具合でも悪いのか?」
「・・そうじゃないんだけど・・・・恥ずかしいから笑わないでね・・・・」
「?」

もじもじと視線を彷徨わせるクレア。
そんな彼女の姿は見たことが無かったので、本気で心配して顔を覗き込む。
――ひょっとして、本当に具合が悪いのだろうか?
そういえば彼女の表情はとても熱っぽい気がした。
「どうしてだろ?・・・ヴェイグと居ると、何だかドキドキしちゃって・・・疲れてるのかな。」
そういうとクレアは、ヴェイグの右腕を掴み・・・

・・・・自らの胸に導いた。

――心臓が、止まるかと思った。
柔らかい感触が意識を塗りつぶし、薄い布越しに触れたクレアの胸から心臓の鼓動を感じる。
「ね?ちょっと・・・自分でもおかしいとは思うんだけど・・・って、どうかしたのヴェイグ?」
「クレア・・・コノ体勢ハ、チョットマズクナイカ?」
体が硬直してしまい、何も考えられない。
「え!?・・・あっ、ご、ごめんなさい。」
頬を紅く染めてクレアは何度も謝った。
身を引くように胸元を押さえるが、はっきり言って後の祭りである。
どっちかといえば謝るべきなのは自分のような気がしたが、今起こった出来事によるショックで声すら出ない。

そもそも、ヴェイグもクレアも、あまり「そういうこと」には慣れていない。
殆ど皆無と言って良いくらい、性に関する知識は乏しい。
もともとスールズにそんな知識を得る場所は無かったし、
クレアの両親にそんなことを尋ねるほどヴェイグは命知らずではない。
結果として、二人はそんな風にお互いを意識した事は無かった。
先ほどのクレアの行動も、本当に何気ないものだったに違いない・・・・
もちろんヴェイグはクレアが好きだったし、クレアと2人きりで居るだけで胸が熱くなるのを感じた事はある。
それはあくまでも「好き」という純粋な気持ち以外のものではなかったし、それ以上何かしようと思った事はない。
・・・この旅で、いろんな知識を得るまでは・・・

「ねぇ・・・ヴェイグ、さっきの質問なんだけど・・・・」
氷つくような部屋の静けさに、怯えるようなクレアの声が響いた。
「私は・・・ヴェイグの事、好き・・・だし・・・これからも、一緒に居たいと思う。
・・・幼馴染のままじゃなくて・・・・でも、ヴェイグは・・・やっぱり・・・・私のことは・・・・」
理由も無いのに目の奥が熱くなって、最後の方は言葉にならなかった。
どうしてだか分からないけど、涙が溢れて止まらなかった。
そんなクレアの体に、ヴェイグは優しく腕を回した。
細いながらもたくましい胸板に額をあずけ、クレアは喘ぐように泣いた。
・・・耳元で、ヴェイグの甘い声がした。
「・・・俺も・・・・俺は、クレアの事が・・・す、好きだ。」
照れるようにそれだけ言うと、ヴェイグは愛でるようにクレアの頭を撫でた。
それは本当に小さな声だったけど、それでもとっても嬉しくて、子供みたいに声をあげて咽び泣いた。
――辛いときに泣けなくて、嬉しいときに泣くなんて・・・私、馬鹿みたい・・・
そんな風に思うと、何故だかとってもおかしくなって、泣き笑いみたいな微妙な表情でヴェイグの唇にそっと口付けした。

触れ合った唇を通して、互いの体温を確かめ合う。
初めてのキスは、甘酸っぱいような、苦いような、とても不思議な味がした。
呆けたように目を見開いていたヴェイグだったが、その気になったのかぎこちなく舌を差し入れてくる。
「・・・んっ・・!」
思わず声を零してしまう。
その程度の行為でも、経験の少ないクレアにとっては充分な快感だった。
全身の力が抜けきって、仰向けに倒れる。
覆い被さるようにしてヴェイグはクレアの体を掻き抱いた。
歯茎の裏側をなぞると、激しく舌を絡ませる。
互いの唾液が混ざり合ってネチョネチョと厭らしい水音が響いた。
「・・・ちょ、ちょっと待って・・・・」
堪らなくなって、顔を上げる。
唾液が糸を引いて、唇から垂れた。
それを手の甲で拭ってから、破裂しそうな心臓を押さえる。
「・・・嫌か?」
残念そうに顔を顰めるヴェイグに、首を振ることで答える。
「嫌じゃないんだけど・・・・ちょっと、激し過ぎるっていうか・・・」
「・・・・?」
「・・・もう少し、優しくして・・・」
恥ずかしそうにそれだけ言うと、改めてヴェイグの背中に腕を回した。

金色の髪から漂う心地よい石鹸の香りをしばし堪能する。
このままずっと抱きしめあっていたいな・・・などと柄にも無いことを考えながら、ヴェイグは笑みを零す。
クレアの体を抱きしめたまま、耳元に息を吹きかける。
「ひゃ!ちょっ・・・と、ヴェイグ・・・!」
クレアの抗議を無視し、耳を口に含んで甘噛みする。
皺に沿って舌を這わせながら、徐々にスピードを早めていく。
「・・・あっ、そんな・・トコ・・・舐めたら、くすぐった・・・ぃ」
額に皺を寄せて耐えるクレアに、軽く興奮を覚えながらヴェイグは意地悪な事を思いついた。
「・・・なら、こっちなら良いのか?」
そう言うとヴェイグは、パジャマの胸元に手を掛ける。
さすがのクレアも、ヴェイグの言わんとしている事は察しがついた。
「・・・脱がせるぞ。」
「・・え?ぃ、いやっ!」
クレアは顔を赤らめながら胸元を押さえる。
・・・その様子も、また可愛らしい。
「じ、自分で脱ぐから・・・」
鈴の鳴るような声で、それだけ言うとクレアはボタンを外しにかかる。
「・・それじゃあ意味が無いだろう・・・?」
そう言って微笑むと、半ば強制的にクレアのパジャマを剥ぎ取った。
ちょうど胸だけ露出するように、中途半端に脱がせる。
「クレア・・・・綺麗だ・・・・」
・・・思わず感嘆の溜息を漏らす。
小ぶりながらも形の良い双丘に、ヴェイグはじっと見惚れた。

胸だけ開けたこの格好は、何かの拷問に近かった。
もともと気にしていた小さな胸を、好きな人にマジマジと見られていると思うと、恥ずかしいを通り越して死にたい気分だ。
「あの・・ヴェイグ、あんまり見ないで・・・」
「え?」
その言葉でヴェイグはようやく視線を逸らしてくれた。
少し涙目になって批難がましく抗議する。
「・・・えっと、恥ずかしいから・・・そんなに大きくないし・・・・」
「クレア・・」
ヴェイグの腕がそっと、小さな胸に触れた。
慣れない手つきで優しく愛でるように、クレアの膨らみを揉む。
「・・・大きさなんて関係ない。俺は、クレアが好きだから・・・」
暗に胸の小さいことを肯定された気がしたが、それに対する怒りよりも快感の方が上回る。
ヴェイグの指は絶え間なく躍動し、そこから送られてくる刺激に甘い声を漏らしてしまう。
「・・・はぁ・・ああぅ!!」
気持ち良さと恥ずかしさで、まともに視線を合わすことが出来ない。
「気持ち良いか?」
「・・・そ、そんな事・・聞かないで・・・」
ヴェイグの指の動きが滑らかさを増し、先端の突起に触れた。
「・・・・ぁ・・」
ここが急所らしい、と悟ったヴェイグは積極的にそこを摘む。
チロチロと舌で舐めあげると、赤ん坊のように口に含んだ。
「・・・・いやぁ・・・」
次第に抵抗の声も虚ろになっていき、何も考えられなくなる。
火照った顔で天井を見上げて、胸から伝わってくる快感に身をゆだねた。
情けなく開いた口からは、涎が垂れてシーツを濡らした。
「はぁぁあ・・・・ヴェイグ、んっ!」
そこでヴェイグは一旦手を止めると、クレアの顔を覗き込んだ。
「・・・・ぁ」
思わず物欲しそうな声をあげてしまう。
それを恥と思う前に、ヴェイグはクレアの秘所に手を伸ばした。

「・・・ちょ、そこはっ!!」
「随分、濡れてるな。」
呟くようにそれだけ言うと、ズボンと一緒にショーツを脱がす。
一糸纏わぬクレアの体は、溜息が出るほど綺麗だった。
透き通るような白い肌と細いうなじのラインは、まさに絶妙の一言である。
ヴェイグは下着を床に投げ捨てると、穢れを知らぬクレアの蜜壷に顔を近づける。
「・・これが、クレアの・・・」
興奮したような荒い声で、ヴェイグは舐め回すような視線で初めて見る女性器を堪能する。
そこは先程の行為のせいか、白濁の愛液で湿っていた。
「・・・やぁ、見ないでっ!」
恥ずかしそうにクレアは身を捩るが、火のついたヴェイグは止まらない。
「見ないと何も出来ないぞ?」
いつになく意地悪な調子で、ヴェイグは答える。
「わ、私だけ裸なのは不公平だから・・・ヴェイグも・・・・」
違う方面からの反論を試みるクレアに、ヴェイグは黙って頷く。
「・・・もう、俺も限界だしな・・」
そう言うとヴェイグは、自らも服を脱ぎ始めた。
クレアは一瞬虚をつれたような表情を浮かべたが、そそり立つヴェイグの剛直を見て息を呑む。
――あんなのが、本当に入るの?
不安というよりも、軽い恐怖を覚える。
「・・・・そろそろ、いいか?」
「・・・・・」
クレアはその意味を悟ったのか、何かを想うように口を閉ざした。
妙な静けさが、室内を支配する。
その沈黙を破ったのは、普段と同じく燐とした調子で話すクレアの声だった。

「・・・・ねえ、覚えてる?」
どうやら昔話でも始めるらしい。
ほっとため息をつくと、ヴェイグは優しい声色で尋ね返した。
「何をだ?」
生まれたままの姿で見つめ合うのは何となく気恥ずかしい。
ヴェイグの分身は既に張り裂けん勢いだったが、クレアの心の準備を待つ程度の理性は残っている。
「・・・ヴェイグ、言ってくれたよね?
私が泣いていたら、何処に居ても、ヴェイグは必ず助けにきてくれるって・・・」
「ああ・・・言ったな。」
「・・・・まるで、プロポーズみたいな台詞だね。」
そう言ってクレアはクスリと笑う。
ナルホド、時と場合によってはそう捉えられても不思議は無い台詞だ。
「いいよ、ヴェイグになら・・・・私の初めて・・・あげるから・・・」
そう言ってクレアは瞳を閉じた。
恐怖からか、その体は微かに震えているような気がした。
「クレア・・・・」
そのいじらしい態度に、そっと目を細める。
ヴェイグは脈打つ肉棒を秘所にあてがうと・・・・一気に、腰を前に突き出した。

何かが裂けるような音がしたと思ったら、激痛が下腹部を襲った。
「・・・いっ!」
シーツに爪を立て、痛みをこらえる。
覚悟していたはずなのに、貫かれた瞬間に腰が抜けてしまったようだ。
ヴェイグの剛直が自分の体内で脈を打っているのを感じる。
「・・・痛いか?」
心配そうに・・・しかし、快感に耐えるように顔を顰めるヴェイグに、無理に作り笑いをしてから囁くように言った。
「・・・大丈夫、そんなに・・・思ったよりも痛くないから。」
本当は泣きたいくらい痛かったが、そんな事よりもヴェイグに心配をかけたくなかった。
「・・・動いても、良いよ?」
それ以上は笑っていられなくて、ヴェイグの体を抱きしめることで誤魔化す。
ヴェイグは数秒の間を空けて、腰を動かし始めた。
「・・・はぁっ!ああぁあぅ!」
痛いというよりも既に感覚が麻痺して、恍惚な表情すら浮かべて喘ぎ声を漏らす。
腰を振るたびにグチュグチュと厭らしい音が響き渡る。
好きな人と繋がっているという幸福感が、胸いっぱいに広がった。
「・・・・ああっ!ヴェイグぅ・・・」
「クレア!クレアクレアクレアクレアっ!!」
何とかの一つ覚えのように、ヴェイグはクレアの名前を呼び続ける。
徐々に痛みが薄れていくにつれ、クレアにも段々と快楽の波が押し寄せてくる。
――やだ、初めてなのに・・・気持ちいい・・
「・・・クレア、凄く良いよ・・・」
無心になって腰を振りながら、ヴェイグは尚もクレアの名を叫ぶ。

「・・・私も・・気持ち良いよぉ・・・・!!」
既にクレアは限界近くまで来ていた。
ヴェイグの肉棒が自らの中を移動するたびに、かつて無いほどの絶頂感が押し寄せてくる。
「はぁ、はぁあ!・・・・ぐぅう!クレアぁ!!!」
「・・・・ぅっく!はぁ・・・あっ・・・・あぁん!!!」
肉と肉がぶつかり合う淫らな音が、徐々に激しさを増してゆく。
「・・・・ヴェイグ・・・・もう、私・・・げ、限界!」
「・・・クレアっ!!!」
二人は互いの名前を呼び合いながら、最後のスパートをかける。
「・・・ヴェイグ、私の中に・・・・お願いっ!!」
「はぁああ!!!」
ほぼ同時に、二人は果てた。
初めての絶頂にクレアの体はガクガクと痙攣する。
秘所からは、純潔を示す紅い鮮血とヴェイグの子種が溢れ出ていた。
上気した顔で見つめあいながら、二人は熱く唇を絡ませた。
「・・・ヴェイグ、愛してる。」
「クレア・・・」
二人はその夜、力尽きるまで愛を育んだという。


〜しばらく後〜

やはり、父の名声は偉大だ。
開業したばかりの医者の所へわざわざ遠方から患者がやって来るのは、ひとえに父の名が売れているからだろう。
心の中で天国にいる父親に感謝しながら、アニー・バースは空を仰いだ。
「おはよう、アニー!診療所はどう?」
「キュリア先生!お久しぶりです。おかげ様で何とかなってますよ。」
懐かしい来客に、アニーは目を細める。
そういえば、この人にも随分お世話になった。
「やだ、私は何もしてないわよ。ここまで来れたのは、貴方の実力よ。」
診療所を見上げながら、感傷に浸る。
――この姿を見たらヴェイグさんも私の事を見直してくれるだろうか?
「そうそう、そういえばこの前ヴェイグとクレアがミナールに来たわよ。」
アニーの思考は、キュリアの声によって遮られる。
「・・・・あの二人、何もしないとか言っておいて、ちゃっかりとやる事はやっちゃってるんだから面白いわよねぇ。」
「ヴェイグさんが・・・・?」
心の奥に棘が刺さったような痛みが走った。
「うん、凄かったわよ〜、あまりにも激しい声でこっちにまで聞こえたんだから。」
「そう・・・・ですか・・・」
ふらふらと夢遊病者のように歩き出す。
その背後で、キュリアが慌てたように言った。
「ちょっとアニー!貴方、何処に行くの!?」
もうすぐ診療時間じゃない、とある意味正しい指摘を受ける。
「ちょっと・・・行かなきゃいけない所があるので・・・キュリア先生・・・代わりにお願いします。」
そう言うとアニーは、朝露に湿った芝を踏んだ。
スールズまでは馬車を利用して行けばすぐだろう・・・
そんな事を他人事のように考えながら、アニーはまだ見ぬスールズへと思いを馳せた

(つづく・・・かもしれない)


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