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作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
夜想曲(ノクターン) マイナー志向氏 リーシス×ベルガ 2003/08/31 -

かつて、魔王ダオスが封印されたと言われる地下墓地。
ダオス復活時の崩落によって封印されたはずの場所に魔王ゼクスの軍勢を見たという情報を得たフレイン達は
地下墓地の調査の最中、ゼクスの配下であるヴァンパイア、リーシスの罠にかかってしまう。
――この密閉された地下墓地の空気が尽きるまで約30分・・・――
――それまでに本物の私を倒すことが出来たなら、ここからキミ達を解放しましょう・・・――

「たあっ!!」「ライトバースト!」
マイラの双剣がスケルトンを砕き、フレインの放った光がゾンビを焼き尽くす。
だが、グール・ワイト・マミー・スペクター・リッチ・バンシー・・・・・・
ありとあらゆるアンデッド達が自らの仲間を増やさんと襲い掛かってくる。
「だめっ、フレイン!どんどんアンデッド達が増えてきてるよ〜・・・」
マカロンがフレインの頭上で今にも泣きそうな声をあげる。
「くそっ・・・ご先祖様達と二手に分かれて探索するのが仇になったなんて・・・」
『どうしました・・・?この地下墓地に住まう闇の住人の、まだ半分も倒していませんよ・・・』
「・・・そこだ!」「食らいなさいっ!」
ボルガとエルミラの攻撃が2人のリーシスに命中するが、倒したリーシスは蝙蝠の死骸へと変化する。
『フフフ・・・空気もだいぶ薄くなってきたようですね・・・』
「きゃああっ!!」
「マイラ!!」
動きの鈍ったマイラのわき腹をリーシスの鋭い爪が傷つける。
ベルガがそのリーシスの鳩尾に蹴りを叩きこむが、それもまた死んだ蝙蝠へと姿を変える。
「ううっ・・・」
傷は深くないものの、リーシスの魔力によりマイラは深い眠りへと落ちていた。
「・・・も、もうダメ・・・」
奮闘していたエルミラも酸欠で意識を失い、その場に倒れ込む。
「く、くそっ・・・」
フレインも意識が朦朧としてきた。がくっと膝をつく。
「・・・チェックメイト」
リーシスの爪がフレインの首筋に当てられる。張り詰めていたものが限界にきて、フレインは意識を失った。
「目を覚ましてよ、フレイン!!」「フレイン、フレインってば!!」
マカロンとベルガが必死に叫ぶが、フレインの意識は戻らない。
「無理です。次に彼が目を覚ますのは我々闇の住人として。あなた方にも私の熱い抱擁で安らかな眠りを差し上げ・・・・・・」
「フレイン・・・ううっ・・・」
ベルガはぽろぽろと涙を流していた。それを見たリーシスが一瞬悲しい目をしたのは誰も気付かなかった。
しばらくして、リーシスがいつもの調子で口を開く。
「・・・取引といきませんか、マイハニー?」
「取引・・・?」
「私の挙げる条件を飲んで頂ければ、助けてあげないこともありません」
「・・・あんた、どうせ条件なんて『私のものになりなさい、マイハニー』とでも言うんでしょう!?」
リーシスのキザなしゃべり方の真似をする。
「その通りさ、マイハニー。キミが私のものになると約束してくれるのなら、彼らを無事に地上まで送り届けよう」
「・・・・・・」
「悪い条件では無いと思うけどね」
「・・・約束は守ってくれるんでしょうね?」
「ベ、ベルガ!?」
マカロンは驚いてベルガの顔を見る。
「もちろん。約束は守る」
「・・・・・・わかったわ・・・」
「ベルガ!こいつが約束を守るなんて保証、どこにも無いのよ!?」
マカロンがベルガの周りを飛び回って叫ぶ。しかし、ベルガの決意は固かった。
「ごめんね、マカロン。でもこうしないとフレインが、ボルガが・・・みんなが死んじゃうから・・・」
「ベルガ・・・」
「リーシス!みんなを解放して!!」
「分かったよ、マイハニー」
不意に、後ろから現れたリーシスに背中から抱きしめられた。反射的に身を固くする。
パチン、とリーシスが指を鳴らすと地下墓地の入り口の扉が開き始め、風が流れ込む。
アンデッド達も殆どが闇に還り、10体ほどのバンシーだけがその場に残った。
「彼らを丁重に地上に送り届けて差し上げなさい」
バンシー達は無言で頷くと、フレイン達を運び始めた。
「マカロン、みんなに付いて行ってあげて」
「で、でも・・・」
「・・・お願い・・・」
「・・・・・・」
マカロンは深く頷くと、運ばれていくフレイン達の元へ飛んでいった。
ベルガはそれを見届けると、安堵の表情を浮かべ、意識を失った。
「さあ行こうか、マイハニー」
ベルガの体を抱え、リーシスが軽く跳ぶ。2人の体は闇に溶けていった。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・?
目を開けて最初に飛び込んできたものは、小さいながらも部屋を明るく灯すシャンデリアだった。
首を回して周りを見渡す。高価な調度品が並び、まるで王族の部屋のようだ。
(何で、私、こんな所に・・・?)
自分がどこにいるのか、よく分からない。ベルガはベッドから上半身を起こした。
「おや、気がつきましたか、マイハニー」
「・・・! リーシス!?」
彼のキザなしゃべり方を耳にして、一気に意識が覚醒する。自分の置かれている状況も思い出した。
バッとベッドから飛び起き、リーシスに向かって身構える。
「ここはどこなの!?」
「地下墓地の私の部屋です。どうです、美しいでしょう?」
部屋を見渡しながら、リーシスはベルガにゆっくりと歩み寄る。
「他のみんなは無事なの!?」
「はい。無事に地上に送り届けて差し上げました」
ベルガもゆっくりと後ずさり、壁にぶつかった。
「あたしをどうする気!?」
リーシスが歩みを止める。
「・・・私のものになったのですから・・・抱かせて頂きます」
「っっ!?」
背筋が凍るような感覚を感じた。それを悟らせまいと、少し顔を赤くしながらもリーシスを睨み付ける。
「ふ、ふざけないでよ!誰があんたなんかに!!」
「・・・私は本気です」
「冗談じゃないわ!大体、ヴァンパイアなんて人間の血を吸わないと生きていけない存在じゃない!どうせあたしの事だってただの餌としか見てないんでしょ!!」
「・・・・・・・・・」
リーシスは悲しそうに目を閉じる。そんなリーシスを構う事無く、ベルガは床を蹴ってリーシスに殴りかかる。
ガシッ!ガシッ!
左、右。両方の拳が叩きこまれる直前にリーシスに腕を捕まれた。
こんな細腕のどこにそんな力があるのか、ベルガがありったけの力を篭めても腕はピクリとも動かなかった。
(・・・だったら、脚!)
目を閉じたままのリーシスを睨み付け、重心を移動させる。
その瞬間、リーシスがカッと目を開く。普段から髪で隠されていた、彼の金色の右の瞳がゆらゆらと揺れた気がした。
ぱたっ・・・
突然脚の力が抜けた。ベルガは支えを失いその場にぺたんと座り込む。
「な、何・・・?」
脚に力が入らない。心臓がばくばくと早鐘をうっている。身体が、熱い。
まるで、身体が自分のものでは無くなってしまったかのような変調に、ベルガは驚きの色を隠せなかった。
「・・・魅了(チャーム)を使わせて頂きました。感情に影響を及ぼすようなの強いものではありませんが」
リーシスはベルガを抱きかかえ、再びベッドに横たわらせた。
服の留め金を外し、手を中に滑り込ませる。ひんやりとした手が、ベルガのふくらみ始めたばかりの胸をまさぐる。
いやいやと首を振るベルガ。リーシスはそんな彼女の唇を強引に奪う。
ベルガに嫌悪感と共にどうしようもないほどの快感が襲う。魅了の魔力が彼女の快感のみを増大させ、それ以外の感覚を麻痺させていた。
ベルガの服を剥ぎ取り、彼女を生まれたままの姿にする。
「・・・美しい・・・」
耳を甘噛み、胸をまさぐり、濡れた秘所に舌を入れ・・・彼女の全てを味わい尽くすかのように、彼女の全身にありとあらゆる愛撫を行う。
「はぁ・・・はぁ・・・」
リーシスの息が荒い。それは単に興奮から来ているだけなのだろうか。
リーシスも身に纏ったものを全て脱ぎ去った。精悍な顔立ちにすらりと伸びた手足。
ぱっと見て人間の青年と変わらぬ姿であるからこそ、背中に折りたたまれた翼と、そして何より生気を感じさせない青白い肌がよりいっそうの不気味さを感じさせた。
ベルガに覆い被さり、濡れたそこにあてがう。
「い、いや・・・」
快楽によって霞がかった頭であっても、リーシスに対する嫌悪感から来る言葉が口をつく。
リーシスは彼女の言葉を遮って唇をふさぎ、舌を絡める。彼女から力が抜けたその瞬間・・・・・・貫いた。
「あああっ!!」
破瓜の血が流れる。だが、それでもベルガに痛みは無かった。
じゅぷ、じゅぷ・・・
卑猥な音と共に、今まで以上の快楽の波がベルガを襲う。もうベルガにはその快楽に抗う力は残っておらず、声が漏れる。
「・・・ふっ・・・あふっ・・・ひゃうんっ!・・・」
火傷しそうなほどに熱い自分。冷たい異物を突き入れるリーシス。2人の体温が溶け合い、ベルガの頭は真っ白になる。
「も・・・だめ・・・あんっ・・・ひゃん・・・・・・ああぁぁあぁっっ!!」
絶頂を迎え、リーシスを締め付ける。
「・・・・・・ベルガ・・・・・・」

リーシスが、いつもあたしのことをキザったらしく『マイハニー』と呼ぶリーシスが、初めて名前で呼んだような気がした。
そこで、意識が途切れた。

パチン。
指を鳴らしたような音が聞こえ、意識が急速に覚醒した。
ズキン。
下半身が少し痛んだ。昨晩何があったのか、全て思い出した。
ベッドから飛び起きた。リーシスが目の前にいた。
「・・・身体は・・・大丈夫ですか?」
リーシスが言った。聖職者の敵である忌まわしいヴァンパイアであり、ベルガの純潔を奪ったリーシスが。
「うわああぁぁっ!!」
叫んだ。そして、ありったけの力を込めて殴りつけた。
壁に叩き付けた。痛みで十分な力が出せなかったが、それでも殴り続けた。そして泣き続けた。
「・・・すみません、でした・・・」
拳が痛くなるほどに殴り続け、息を切らせて座り込んだ時、リーシスが口を開いた。
酷く、弱々しい声だった。
「・・・私は、卑怯者です・・・・・・本当の力で・・・キミの心を、奪うことが、できなかった・・・」
「そうよ!あんたは卑怯者よ!!甘い言葉ばっか並べて、本当は単にあたしの身体が欲しかっただけじゃない!!」
「・・・マイハニー・・・」
涙の伝うベルガの頬に右手を伸ばし・・・・・・崩れ去った。
「!?」
「・・・そろそろ・・・限界か・・・」
「右手が・・・灰に!?」
「・・・私も、昔は人間の事を、ただの餌としてしか、見ていませんでした・・・
 だがある時、ふと思いました・・・自分が生きるために、人を犠牲にしないといけないという事が、嫌になりました・・・
 そこで、魔王様に出会いました・・・魔王様は、人類を絶滅させ、他の生き物が平和に暮らせる、世界を作るおつもりでした・・・
 他人の命を奪って、生きる私が・・・他人の命を救って、死ねる・・・
 私は、魔王様に忠誠を誓いました・・・その日から、私は人の血を吸っていません・・・」
「・・・それじゃあ!?」
「・・・もうこの身体は、維持できません・・・灰となって、消滅するだけ・・・」
「そんな・・・」
既にリーシスの両腕は消え去り、脚も崩れ始めていた。
「そんな、悲しい顔を、しないで下さい・・・獣としてでなく、1人の男として、キミを愛することができた・・・
 召喚師の彼には、敵いませんでしたが、私は、十分満足です・・・」
「・・・リーシス・・・」
涙が一滴、リーシスの頬を濡らした。リーシスが静かに目を閉じる。
「さよなら・・・マイ、ハ・・・」
・・・・・・
目の前の灰の山に、また涙が一滴落ちた。
魔王ゼクスの野望を阻止したフレイン達は、それぞれの目的に向かい歩き出した。
フレインは浮遊魔王城の動きを止めるために機能停止に陥ってしまったマカロンを治す方法を探しに旅を続け、
ベルガとボルガは壊滅したミゲールの街を復興させるために故郷へと戻った。

――――そして、十数年の月日が流れた・・・――――(Byモリスン)

2人の努力、そして仲間たちの協力により、ミゲールの街は以前の姿を取り戻していた。
ボルガはミゲールの町長となり、ベルガは街の教会で働く毎日を送っていた。
「姉さん、フレインから手紙が来たよ!」
「ホント?」
手紙には、異世界にまで及んだ旅の出来事、その異世界の技術でついにマカロンが治ったこと、そして、一ヶ月後にミゲールに遊びに行くことが書かれていた。
ベルガは、ミゲールの街に1つだけ架かる橋、メイプル橋の欄干に腰掛けフレイン達と旅をしていた頃を思い出していた。
かつて、フレインが言った言葉が思い浮かぶ・・・
――・・・でも、リーシスに追いかけられてるキミの顔を見てると、ちょっと楽しそうにも見えるよ・・・――
その時は、フレイン達と旅ができたおかげだと答えた。だが、今考えてみると、彼に追いかけられた事もそんなに悪くは無いことだったと思える。
あの時、自分はリーシスが好きだったのか、それは今でも分からない。
ただ、ヴァンパイアというだけで、彼の心を傷つける発言をしたことは今でも後悔していた。
もし、もう一度彼に会えるなら、彼にそのことを謝りたかった。
(・・・リーシス・・・)
「・・・美しい・・・」
(・・・は?)
キザったらしい声がベルガの耳に入る。振り向くとそこに1人の青年が立っていた。
精悍な顔立ちをした、右目を覆う長い髪を持つ青年。
「清らかな聖職者の憂いに満ちた瞳・・・何と儚くも、美しい・・・」
「なにあれ・・・」「春になるとああいうのが増えるのかしら・・・」
あまりにキザったらしいセリフに、周囲の人間は怪訝そうな目を青年に向ける。
「・・・ど、どちら様ですか・・・?」
声の質は違うが、彼と同じ言い回し・・・ベルガも訳が分からず、ただ彼に問い掛ける。青年は上気した瞳でベルガを見つめていた。
「あ、すみません、自己紹介がまだでしたね。私の名は・・・・・・」

ベルガの悩みは、まだまだ終わらない・・・・・・


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