作品名 | 作者名 | カップリング | 作品発表日 | 作品保管日 |
ブローチの秘密 | サザム氏 | ジーニアス×プレセア | 2003/12/10 | - |
「ふああぁぁ……むにゅ」 ジーニアスは思わず洩れた大きなあくびを、途中でかみ殺した。 重傷を負ったアルテスタを助ける為、ロイドと別れてフラノールの医師を連れてきてから、かなりの時が経つ。 医師の護衛としてここまで来たのはいいが、到着してしまえばジーニアスの出番はまるで無い。 夜もかなり更けてきた事もあって、彼の瞼は段々と重くなり始めていた。 「だいぶ眠たそうだな。先に休んでいてもいいのだぞ?」 「ばっ、ばかにするなよ!? 姉さんが頑張ってるのに、ボクだけ眠れるわけがないだろっ!」 リーガルの落ち着いた声に、子ども扱いされたと感じたジーニアスは、むきになって言い返した。 リフィルは医学知識と治癒術の腕を買われ、寝室で医師と一緒にアルテスタの容態を診ている。 そんな緊迫した雰囲気の漂う中、ベッドに入って平然と眠れるわけがない。 ジーニアスの思いをそこまで理解したのか、リーガルは顎に指を当てて、思慮深げに言った。 「ふむ。しかし実際の処、我々がここにいたところで、何が出来る訳でもない」 「そっ、そりゃあ……」 「それに、明日からの戦いの事もある。休める時に休んでおくのも、務めのうちだ」 「分かってるよ、分かってるけどさ……」 もっともな意見に、ジーニアスはしぶしぶと頷くしかない。 「とは言え、この場で休むのは気が引けるというのも、分からんではない。 そこで提案なのだが、とりあえずプレセアと一緒に、彼女の家で仮眠を取るというのはどうだろうか?」 「ふぇっ!?」 思いがけない言葉に、ジーニアスは間の抜けた声を上げた。 「プレセアはどう思うかね?」 「はい、合理的な判断だと思います。何らかの非常事態があっても、ここまでならすぐに駆けつけられますし」 「ちょちょ、ちょっと待ってよ! それはまずいったら!」 勝手に話を進めようとする二人に向かって、ジーニアスは真っ赤になって反論した。 しかし、狼狽するジーニアスに、プレセアはきょとんとした顔で首を傾げた。 「何か問題でも?」 「うっ、いやその、なんて言うか……。プッ、プレセアは平気なの?」 二人きりで夜を過ごすとなると、理性を保つ自信が持てない、などとは、さすがに本人の前では言えない。 けれどプレセアは、どうしてジーニアスが焦っているのか、今一つ理解できていない。 「私は特に、不都合を感じませんけれど。ジーニアスは、私と一緒では嫌なのですか?」 「うっ、ううん! そんな事、ぜっ、全然あるわけないよ!」 慌てて首を振るジーニアスと、要領を得ない顔つきのプレセアに、リーガルは愉快そうに声を掛けた。 「ならば、決まりだな。何かあればすぐに呼びに行くから、それまで二人はゆっくりと休むといい」 「そうですね。さぁジーニアス、行きましょう」 「え……あ、うん……」 ジーニアスは、プレセアが何気なくその腕を取ると、ぎくしゃくとした動きで立ち上がった。 からかうようなリーガルの視線にも、反発するどころか気付いた様子さえない。 ジーニアスがプレセアに連れられて玄関から出て行くと、リーガルは少し人の悪い笑みを浮かべた。 「……さて、これだけお膳立てをしてやれば、ジーニアスも自分の気持ちを伝えるぐらいは出来るだろう」 リーガルは勿論、ジーニアスがプレセアに想いを寄せている事に気付いていた。 今の詭弁も、そんな彼の後押しをしてやったつもりなのだが、それは決してふざけ半分での事ではなかった。 感情を取り戻してきたとは言え、プレセアはまだ、自分が時に取り残されてしまった事を思い悩んでいる。 そんな彼女に、異性から特別な好意を受けるという、普通の少女としての喜びを教えてやりたかったのだ。 「心を通わせた相手さえいれば、人はいくらでも強くなれる。かつての私がそうだったようにな。 ふっ、我ながら少々お節介だとは思うが、彼女には幸せになってもらいたいからな。……なぁ、アリシア」 リーガルは自分の心に棲む唯一の女性に呼びかけ、軽く天井を見上げた。 しかし、育った環境のせいか、あるいは元々の性格からか、リーガルは妙な処で浮世離れしている。 幼い二人が『そこから先』に進んでしまう可能性は、彼の脳裏には欠片も浮かんではいなかった。 ◇ ◇ ◇ 念のためホーリーボトルを使った二人は、何事もなくプレセアの家までたどり着いていた。 「ではジーニアスは、アリシアのベッドを使ってください」 「うっ、うん……」 プレセアはそう言って自分のベッドに腰掛けると、二の腕まで届くグローブをスルスルと脱いでいった。 巨大な斧を振り回すのが信じられないほど、彼女の腕は細く、華奢に見える。 ジーニアスは、そんな彼女の方をちらちらと伺いながら、激しくなる一方の動悸を持て余していた。 (プレセア、ボクの事なんて、なんとも思ってないのかな……?) あまり過剰に警戒されても困るが、こうも異性として意識されていないと、それはそれで悲しいものがある。 以前から、自分なりに好意を表明しているのに、彼女は気付いてさえくれていない様子なのだ。 (やっぱり、はっきりと言ったほうがいいのかな……?) 完全に二人きりという今の状況は、自分の想いを告げる格好の機会だ。 それに、この機を逃せば、今度はいつチャンスが巡ってくるか、分かったものではない。 先程までの眠気など完全に吹き飛ばし、立ち尽くしたジーニアスは精一杯の勇気を奮い起こしていった。 (……ジーニアス、一体どうしたのでしょう?) 一方、プレセアはロングブーツを脱ぎながら、妙にそわそわとしているジーニアスに疑念を抱いていた。 とは言え、他人の細やかな心情を推察するという事は、彼女にとってあまり馴染みの無い行為でもある。 ましてや、彼が自分に好意を持っているなどとは、露ほども思っていなかった。 (何か、私に言いたい事でもあるのでしょうか?) ジーニアスの様子から、そんな雰囲気だけは感じ取っていたが、その内容となるとさっぱり見当がつかない。 ダガーを留めたベルトを解き、プレセアは自分から尋ねてみようとベッドから立ち上がる。 けれど、彼女が問い掛ける前に、ジーニアスが伏せていた顔を勢い良く上げ、口を開いてきた。 「プッ、プレセア! ボボッ、ボク、プレセアに言っておきたい事があるんだ!」 「あ、はい。なんでしょう?」 予想通りの言葉に、プレセアは少し首を傾けて訊いた。 その真剣な表情と口調から、何か重大な話らしいとまでは察しはつく。 言いにくそうに口をパクパクさせるジーニアスの前に立ち、プレセアはじっと彼の言葉を待つ。 しばらくして、うん、と一人頷くと、ジーニアスは意を決して告げてきた。 「ボクね、ボク、プレセアのことが……、すっ、す、好きなんだっ!」 しかし、ジーニアスの決死の覚悟にもかかわらず、プレセアは彼の告白をよく理解していなかった。 長年感情を奪われていた彼女にとって、『好き』という概念は、まだ完全には把握し切れないものの一つだ。 とは言え、ジーニアス達と一緒にいる今の状態が、彼女にとって心地良いのは確かなことだ。 ぱちくりと瞬きし、少し考えてから、プレセアは自分の気持ちを正直に答える。 「……ええ。私も、ジーニアスやロイドさんやコレットさん、……みんなが好きですよ?」 するとジーニアスは、明らかに落胆した様子で、がっくりと肩を落とした。 「はぁ、これでも分かんなかったか……」 「え? あ、あの、私、何か間違えましたか?」 しょげかえったジーニアスを気遣って、プレセアはそう声を掛けた。 ジーニアスが顔を曇らせると、何故か彼女は少し落ち着かない気分になる。 おずおずと彼の方に手を伸ばそうとした時、ジーニアスは気を取り直したのか、プレセアの肩に両手を置いた。 「あ、あの……?」 「そうじゃないんだよ。プレセア、良く聞いて」 「……あ、はい」 自分の瞳を覗き込んでくるジーニアスに、プレセアは気圧されたように同意した。 肩を掴んだ彼の手が、思ったよりも力強いことに、プレセアは軽い驚きを覚える。 「確かにボクも、プレセアの事は大事な仲間だと思ってるよ。でも、それだけじゃないんだ」 「それだけじゃ、ない……?」 ジーニアスが向けてくる視線は、プレセアが今まで受けた事の無い感情を含んでいる。 それが何かは分からないが、彼女の胸はどうしてか鼓動を早めていく。 「ボクは、男として、一人の女の子としてのプレセアが、好き、なんだ。……これで、分かるかな?」 「え……」 一語一語を強調して、教え諭すようなジーニアスの言葉が、ゆっくりとプレセアの脳裏に染み込んでいった。 それと共に、自分とは無縁だと思っていた知識と、今までの不可解だったジーニアスの言動が重なってゆく。 一際大きな鼓動と共に、まるっきり別物だった知識と記憶が、しっかりと結びつく。 「……あっ!」 全てに納得がいく結論を得て、プレセアは小さい叫び声を上げた。 「あの、その、ジーニアス、そういう事……だったのですか?」 「う、うん、そういうこと」 両手を胸元に引き寄せて問うプレセアに、ジーニアスは赤面しながら小さく呟いた。 感情を取り戻して以来、考えたことも無かった事態に、プレセアは戸惑いの色を隠せない。 そんな彼女に向けて、ジーニアスは堰を切ったように、今まで胸に秘めていた想いを語り出した。 「最初に見た時から、ずっと気になってたんだ。すごく寂しそうで、でもそれを誰にも言えないみたいで。 ハーフエルフだって事を皆に言えないでいるボクに良く似てる、って。どうにかしてあげたいって」 「寂しい……? ジーニアスと、似てる……。私が、ですか?」 問い掛けるプレセアに、ジーニアスは軽く頷いた。 言われて初めて、プレセアは感情を失っていた時の冷たい胸の空洞が、『寂しさ』であったのだと悟る。 自分以上に自分の事を理解していたジーニアスの言葉に、プレセアはじっと聞き入った。 「でも、すぐにそれはクルシスの輝石のせいだって分かって、それでまた考え直したんだ。 この子を助けてあげたい、心を取り戻してあげたい、この子の笑顔が見てみたい、ってね」 「心……、笑顔……」 それは、プレセアが封じられていた胸の奥底で、ひそかに望んでいたものでもあった。 自分の真情を読み取ったように話すジーニアスに、彼女の胸の中心から温かな何かが込み上げる。 「それから、プレセアが心を取り戻して、色んな顔を見せてくれるようになって……。 その内、好きだって気持ちが、どんどん大きくなって、どうしようもなくなっていったんだ……」 「ジーニアス……」 少年らしい真っ直ぐな告白に、プレセアの心は揺れ動く。 しかし、自分は時に取り残された人間だという彼女の自覚が、素直にそれを認めようとはしなかった。 「あの、けれど私は、普通の人間ではありませんから……」 「それを言ったら、ボクだってハーフエルフだよ。普通の人間なんかじゃない」 「でも、私はジーニアスより、ずっとお姉さんですし……」 「そんなの関係ないよ。ボクは、何もかもひっくるめて、プレセアの全部が好きなんだ。 ……それとも、プレセアはボクみたいな子供じゃ、いや?」 「い、いえ、そういう訳では……」 凛々しい顔つきのジーニアスに、圧倒されたプレセアは弱々しくかぶりを振った。 彼の言葉とは裏腹に、今のプレセアの瞳には、ジーニアスが立派な一人の男性として写っている。 高まる鼓動に合わせて湧き上がる甘い慄きに、彼女の心は千々に乱れていった。 「ただその、私、こういった事は初めてなので……。良く、分かりません。ごめんなさい……」 「……そっか。ううん、こっちこそごめんね。プレセアを困らせるつもりじゃなかったんだ」 「あ……」 優しい口調で呟き、ジーニアスはそっと手の力を抜き、プレセアから離れようとした。 その捨てられた子犬にも似た風情に、彼女の胸がきゅんと締め付けられたように痛む。 「だから、その……、確かめさせてくれませんか?」 「……え?」 何か言わなくてはという焦りが、プレセアの口を勝手に動かす。 ためらいがちなプレセアの言葉に、ジーニアスの動きがピタリと止まった。 「確かめるって、どういうこと?」 「あ、あのですね……」 胸を衝き動かす何かに促されたとは言え、そこから先を告げるのは、やはり抵抗があった。 けれどプレセアは軽く頬を染め、伏目がちに視線を逸らしながら、ポツリと呟く。 「……キス、してみて下さい」 「きっ!?」 ジーニアスは言葉を喉に詰まらせて、瞬時に顔面を沸騰させた。 「す、好きな人にそうされると、女の子は嬉しいものだと、聞いた事があります。 ですから、ジーニアスとキスをして、私が嬉しく感じたら、多分、そういう事なのではないかと……」 プレセアは少し早口で、そして最後は自信なさげに語尾を濁らせる。 「ででで、でもだってその、……いいの?」 「……はい、お願いします」 どもるジーニアスに向かって、プレセアは軽く目を閉じると、唇を差し出すようにあごを上げた。 小さく肩を竦め、ふるふると睫を震わせる様は、例え様もなく愛らしい。 「んくっ……じゃ、じゃあ、するよ?」 ジーニアスは大きく喉を鳴らすと、息を止めて慎重に顔を近づけていった。 緊張して乾いてきた自分の口元を舌で湿らせると、プレセアの可憐な唇に、そっと重ね合わせる。 「んっ……」 触れるだけのソフトな口付けに、胸元に引き寄せたプレセアの指が、ぎゅっと握られた。 彼女の唇の柔らかさに、引き込まれそうな自分を何とか抑えつけ、ジーニアスは数秒で顔を離す。 手の中の細い肩がふっと脱力すると、プレセアは眠りから覚めたかのように、ゆっくりと瞼を開いた。 「ど、どうかな?」 「……少なくとも、嫌な感じではありませんでした……」 ジーニアスが不安げに訊ねると、プレセアは潤んだ瞳で見返してきた。 プレセアは今の感触を確かめるように、指先を口元に伸ばし、自分の唇をなぞってみる。 「心臓がどきどきして、胸の奥が温かくなって……。これは、嬉しいという事なのでしょうか?」 「う、うん、多分……」 すがるようなプレセアの言葉に、ジーニアスは曖昧に頷いた。 物慣れない様子で頬を染めたプレセアの可愛らしさに、ジーニアスは堪らない気持ちになる。 「ジーニアス……。もう一度、してくれますか……?」 「うん、ボクも、もっとしたい……」 「……ん」 プレセアの求めに応じ、ジーニアスは彼女の上唇をついばみ、ちゅっと軽く吸った。 今度はプレセアも薄目を開けて、間近にあるジーニアスの瞳と視線を合わせてくる。 そろりと身体を預けてくるプレセアの華奢な背中を、ジーニアスは包み込むように抱き締めた。 ◇ ◇ ◇ 「んっ、ちゅ……」 「んふ……んっ、ふ、ん……」 ジーニアスの胸の中で身を縮めながら、プレセアは彼の口付けに身を任せていた。 上下の唇を咥えられ、時に優しく吸われるたびに、胸の温もりは大きくなる。 自分から動くことは出来ず、ただそこから何かを吸い取られるように、段々と体から力が抜けてゆく。 彼女の口が軽く開くと、ジーニアスはそこから小さく舌を差し入れてきた。 「んっ……!」 自分の舌先をちょんと突かれ、プレセアの身体がピクンと跳ね上がった。 痺れるような疼きが脳裏に閃き、腰から下の感覚が一気に失われる。 ジーニアスの胸板を滑り落ちるようにして、プレセアはくたくたとベッドの端にへたり込む。 とっさに受け止め損なったジーニアスは、慌ててプレセアの肩を支え、彼女の顔を覗き込んだ。 「だっ、大丈夫、プレセア!?」 「あ……はい、平気です……」 ジーニアスに心配を掛けまいと、プレセアはのろのろと顔を上げた。 いつもの冷静な彼女からは想像も出来ない、そのトロンとした表情に、ジーニアスの胸が強く高鳴る。 「ただ、急に立っていられなくなって……。どうしたんでしょう、私……?」 「プレセア……」 自分の感覚を持て余したプレセアの脇に、ジーニアスは寄り添うようにして腰を下ろした。 「別に、嫌だったわけじゃ、ないんだよね?」 「ええ、そうではなくて……。どちらかと言えば、もっとして欲しい、のではないかと……」 「うん……」 相手の瞳に自分と同じ想いを感じ取り、ジーニアスとプレセアは、身体を横に捻って正面から向き合う。 どちらからともなく互いの背中に腕を回すと、二人は再び深い口付けを交わした。 「あむっ……、んっ、ん……」 「んふぅ、んむっ……、ふ、んっ、ふぁ……」 ジーニアスは目一杯舌を伸ばすと、プレセアの歯の間をゆったりと探った。 プレセアの舌がぎこちないながらもそれに応じ、自分の位置を示すように軽く触れさせる。 それほど長くもない互いの舌先が、プレセアの口の中で、小鳥が嘴を突き合わせるようにして戯れた。 甘やかな官能に、プレセアの背が自然と反り返り、ジーニアスはそれを追いかけて姿勢を傾けてゆく。 二人の身体は一つに折り重なったまま、ベッドの上へ緩やかに倒れ込んだ。 「んっ、ちゅっ……はぁ。プレセア、大好きだよ……」 「あっ……っむ、んくぅ……ふっ、ぅ……」 ジーニアスは飽きることなく、プレセアの唇を捕らえては放し、その柔らかな感触を堪能した。 ベッドに片肘を突いて体重を掛けないようにしながら、間近にある彼女の体温を感じ取る。 そのうちに、ジーニアスは唇だけではなく、もっと他の部分にも触れたくなってくる。 もう一方の腕をプレセアの背中から抜き取ると、服の上から彼女のなだらかな膨らみに手を伸ばした。 「んふぅっ!?」 ジーニアスの掌が胸に触れた途端、プレセアは大きく息を吐いた。 ぴりぴりっと電流を流されたような快感が、身体の芯を強烈に駆け巡ったのだ。 幼い丘に重ねられた手がそろそろと動き始めると、その感覚は一層強まっていく。 「んんっ、むーっ、う……ぅんっ!」 唇を塞がれているため、声を上げる事も出来ないプレセアは、幼児がむずがるように身をよじる。 しかし、仮に口が自由になったとしても、まともな言葉を紡げるかどうかは、本人にさえ疑問だった。 (うわっ、なんか、すごくプニプニしてる……) 一方ジーニアスはと言えば、今まで体験した事のない少女の肢体の感触に、すっかり引き込まれていた。 彼の小さな手にすっぽりと収まる程度の膨らみは、完全には発達し切っておらず、まだ硬さが残っている。 けれどそれ故に、指先を押し返す瑞々しい弾力が、厚地の服越しにもはっきりと確認できた。 (嫌がってるわけじゃ、ないよね……? プレセアも、気持ちいいんだよね……?) 心の中で問い掛けると、プレセアはジーニアスの服の背中を、ぎゅっと握り締めてきた。 その動作と、潤んだ瞳に浮かぶ微妙な艶とが、彼女の言葉にならない想いを表している。 気持ちが通じ合っている喜びに浸りながら、ジーニアスは夢中でプレセアの唇を求め続けた。 ◇ ◇ ◇ 「んんっ、ふはぁ……」 「んあ……」 しばらく経って、ジーニアスは熱い息を吐きながら、プレセアの唇を解放した。 胸を撫でていた手も離すと、彼女の体の両脇に手をついて、ゆっくりと起き上がる。 名残惜しげに軽く突き出されたプレセアの舌との間で、細い唾液の糸が橋を掛け、ぷつりと切れる。 彼女の顎に垂れたそれを指先で拭ってやりながら、ジーニアスは少し掠れた声で囁いた。 「ねえ、プレセア……。服、脱がせてもいい?」 「え……? あっ、はい……」 最初、言葉の意味が分からなかったプレセアは、ジーニアスの指が襟に伸びるに至って、ようやく理解した。 彼の求めている事を悟り、火照っていた耳朶がさらに赤味を増す。 ベッドの脇に下ろしていた足を引き寄せ、もそもそとシーツの上で身を起こし、自分の上着に手を掛ける。 だが、プレセアの動きを制するように、這い寄ってきたジーニアスの手が、その上に優しく重ねられた。 「そうじゃなくて、ボクが脱がせてあげたいんだけど。……駄目?」 「えっ、それは、その、あのっ……!」 少し悪戯っぽく尋ねられ、プレセアはどぎまぎして胸元を押さえた。 ジーニアスに少し余裕が出てきたのとは対照的に、彼女の頭は急速に混迷の度合いを高めつつある。 「……駄目?」 「うっ、だ、駄目……では、ないです……。ど、どうぞ……」 熱い眼差しと共にもう一度問い掛けられると、プレセアは観念したように腕を身体の脇に下ろす。 顔を斜め下に逸らして目を伏せた彼女の上着を、ジーニアスの手が丁寧に解いていった。 「んっ……」 少し汗ばんだ胸の間の素肌が外気に触れ、プレセアは小さく息を洩らした。 涼気を感じたのも束の間、すぐに身体の内側から熱が伝わり、それを打ち消していく。 指先が下がっていくにつれ、彼女の頭の中は恥ずかしさと奇妙な心地良さとが、ないまぜになっていった。 「プレセア、綺麗だよ……」 「やっ……!」 ジーニアスは服のあわせを全て外し終えると、襟元を広げてプレセアの肩から上着を剥ぎ取っていった。 感情を失っていた頃は何とも思わなかった言葉が、彼女の背筋をぞくっと震わせる。 彼の顔を見なくても、視線が自分の肌を刺し貫くように凝視しているのを、いやと言うほど感じてしまう。 人形のように動けないでいるプレセアの手首から袖を抜き、ジーニアスは脱がせた上着を脇に押しやる。 ショートパンツに包まれた小さなお尻を引き寄せると、彼女の頭が枕に乗るように、そっと横たえた。 「すごく可愛い……。ここも、何もかも全部……」 「んあっ!? は……ぁっ……!」 プレセアの上に四つん這いに跨ったジーニアスは、感じ入ったように呟くと、彼女の胸に顔を近づけた。 そしてそのまま、淡い膨らみの中心、ちょんと鎮座する桜色の突起に、軽く口付ける。 ただそれだけの刺激に、肉付きの薄い肢体はビクンと反り返り、胴に細い肋骨の線が浮き上がる。 彼女の両脇に肘をつくと、ジーニアスは柔らかな双つの膨らみを、外側から包み込むように掌へ収めた。 「んむっ、ん……」 「はん……っ! ふっ、や、あっ!?」 片方の乳房を緩く握られ、その先端を口に含まれると、プレセアの口から切なげな声がこぼれた。 温かく湿った舌が舐め上げる度に、敏感な先端からじぃんと響くような快感が襲い掛かってくる。 もう一方の胸は、壊れ物を扱うように繊細な手つきで、ゆったりと円を描いて揉み解されてゆく。 素肌に直接触れたジーニアスの掌に、プレセアは信じられないほどの快楽と安らぎを覚える。 だがそれと同時に、自分がどこかへ漂っていってしまいそうな、軽い恐怖に似たものをも感じていた。 「ジーニアス、あっ、あのっ!」 「ん……。どうかした、プレセア?」 切羽詰った呼び掛けに、ジーニアスは愛撫の手を休めて、彼女の顔に向き直った。 しかし、いざ彼に伝えようとすると、プレセアの複雑な心境は、明確な言葉としてまとめる事が出来なかった。 何か言わなくてはという思いだけが先行し、彼女の頭に様々な単語が浮かんでは消える。 そして口をついて出たのは、最初に考えたのとは大きくずれた台詞だった。 「ジーニアスは、その……、どうしてこんなに慣れているのですか?」 「はひっ!?」 プレセアの唐突な問いに、ジーニアスは軽く舌をもつれさせた。 思惑を外してしまったにも係わらず、彼女の素朴な疑問は勝手に唇から滑り出していく。 「ジーニアスはまだ小さいのに、こんな事をとても良く知っているのは、どうしてなのでしょう?」 「うあ、あぁあ、あの、その……」 どこか痛い処を衝かれたのか、ジーニアスは急にしどろもどろになって、顔中に汗を滲ませる。 先程までの精神的優位を粉々に砕かれ、彼はあっと言う間にプレセア以上の混乱状態に陥っていた。 「ええっと……、うん、そう! 本! いっぱい本を読んで勉強したんだよ!」 「本、ですか……」 何となく釈然としない気分で、プレセアは焦るジーニアスの顔をじ~っと見上げた。 少し落ち着いてくると共に、彼女は自分でも良く分からない、妙に腹立たしい感じがしてくる。 その気持ちに任せて、プレセアはジーニアスを更に問い詰めた。 「つまりジーニアスは、内容を即座に実行できるほど、『そういった本』を沢山読んでいたのですね?」 「うっ……。そ、そういう風に言われちゃうとなぁ……」 口篭もるジーニアスに対して、プレセアは彼の態度をとても可愛らしく思い始めていた。 同時に彼女の胸の中で、この少年をもう少し苛めてあげたいという、思い掛けない欲求が起こる。 どちらの感情も、彼女にとって初めての、くすぐったい癖にどこか心地良い響きを持っている。 プレセアは意識して口元を引き締め、軽く咎めるような目つきを作って、ぼそっと呟く。 「……ジーニアス、エッチです」 「ううっ!」 すると彼の身体は、石化攻撃を受けたように、ピキッと硬直した。 「いや、その、だって、これは、えっと!」 「………………」 硬直が解けると、ジーニアスはわたわたと手を振り回し、必死に弁解しようとした。 しかし、プレセアに無言で凝視されて、一つもまともな言葉を発することが出来ない。 「あの、だからね、そのぉ……ごめんなさい」 「ぷっ! ふふっ……」 そして結局は彼女の視線に負けて、素直に頭を下げる。 がっくりとこうべを垂れたジーニアスのしょぼくれた様子に、プレセアは堪らずに小さく吹き出した。 「あーっ! ひっ、ひどいやプレセア! ボク、嫌われたかと思って本気で焦ったのにっ!」 「ふっ、ふふ、すいません……。でも、落ち込んだジーニアスがとても可愛らしいから……うふふっ!」 彼女の表情に、からかわれたと知ったジーニアスは、情けない顔で唇を尖らせた。 人を騙すなど十数年ぶりだが、あまりに思った通りの反応に、プレセアは童心に返った気分になってくる。 ジーニアスに悪いと思いながら、プレセアは笑いの衝動を抑える事が出来なかった。 「プレセアってば、ボクのこと、子供扱いしないでったらぁ……」 「ふふ……。子供扱いなどしてませんよ? ただ、ジーニアスの顔がすごくおかしくて……んふふっ!」 「ははっ、もぉ、ひっどいなぁ、プレセア……」 そうやってプレセアに文句を言うジーニアスの口元にも、こらえ切れない笑みが浮かんでいた。 滅多に微笑むことすらない彼女の楽しげな笑顔は、綻び始めた蕾のように可憐でいとおしい。 その表情を、内容はどうあれ自分の行為によって引き出したというだけで、とても誇らしくなってくるのだ。 あの寂しそうだった少女が、今はこんなにも明るく微笑んでくれている事が、嬉しくて仕方ない。 彼は出来ることならば、この喜びを世界中の人々に、大声で叫んでやりたい気分だった。 「ふふっ、でも本当に、ジーニアスはすごいです……」 「えっ、何が?」 声の調子が変わり、ジーニアスは改めてプレセアの瞳を覗きこんだ。 彼女の目は柔らかな笑みを残したまま、一人の女性としての素直な恋情をも写し出している。 「ジーニアスとこうしていると、今まで知らなかった感情が、どんどん溢れてきます……」 情感を込めたプレセアの手が、ジーニアスの顔に伸び、ゆっくりと頬を撫でて来た。 姉のような母親のような、そしてそれ以上の温もりを伝える指先に、ジーニアスの目が自然と細められる。 「ジーニアスは私が初めて会った、私の一番大切な男の人です……」 「うん、ボクだってそうさ……」 額に掛かった髪を掻き上げてやると、プレセアは少しくすぐったそうに、小さく身じろぎする。 やがて彼女の指はジーニアスの首筋を伝ってゆき、空色の上着の襟へと移動して、そこを軽く弄った。 「あの、それでですね……。ジーニアスも、服……脱いで下さい」 「え……?」 急にあらぬ方へ飛んだプレセアの言葉に、ジーニアスは少し驚いた。 彼女は恥じらいに震えつつも、期待と興奮を隠し切れない声色で、そっと囁いてくる。 「もっとジーニアスの温かさを、直接感じたいんです……。駄目ですか?」 「いや別に、駄目じゃないけどさ。……なんだ、プレセアだって、結構エッチなんじゃないか」 軽く仕返しをするつもりで、ジーニアスはからかい混じりに呟いた。 しかし、プレセアは悪戯っぽい笑みを返すと、ちろっと小さく舌を出す。 「んふっ、はい。私も……エッチで、いいです。ジーニアスと同じですね」 「む~。なんかずるいや、それ……」 ジーニアスとしても、こうも可愛く同意されては、もはや反論も出来ない。 プレセアの上から身を起こすと、ジーニアスは自分の上着に手を掛けた。 ◇ ◇ ◇ じっと見られている事に羞恥心を刺激されながらも、ジーニアスは次々と服を脱ぎ捨てていった。 彼のほっそりとした四肢は、森の若木のようにしなやかで、少年期特有のつるんとした肌をしている。 年若い上に、元来華奢なエルフの血を引いている為、その身体はお世辞にも逞しいとは言えない。 ただ、まだ発展途上ではあっても、しっかりと股間で反り返っているモノだけが、もう子供ではないと主張する。 自分と似たような体型でありながら、確かに男性を感じさせる彼の裸体を、プレセアは静かに眺めやった。 「ジーニアスの裸……、とても可愛いです」 「ちょ、ちょっと、その可愛いっていうのは、あんまり嬉しくないなぁ……」 思わず洩れたプレセアの感想に、生まれたままの姿になったジーニアスは、複雑な面持ちで答えた。 「そうなのですか? でも私は、可愛くてエッチなジーニアスも好きですけど」 「プレセア、それ絶対ほめてないでしょ?」 「ふふっ……さぁ、どうでしょう?」 戯れるような言葉をプレセアと交わしながら、ジーニアスは彼女のショートパンツに手を掛けた。 プレセアも、信頼と愛情を込めた表情で、彼の指が着衣を脱がせていくのを、当然のように受け入れている。 下着と共にジーニアスの手が下がっていくと、彼女は軽く腰を浮かせ、その動きを手伝う。 ジーニアスは爪先から最後の布地を抜き取ると、愛する少女の肢体を眩しそうに見つめる。 全てを曝け出したプレセアの足は、特に隠すつもりもなく、自然な感じで膝を寄せ合わせていた。 「ジーニアス……。もう一度、抱き締めて下さい……」 「うん……」 プレセアが両手を広げて差し招くと、ジーニアスは彼女の背中に手を回し、想いを込めて強く掻き抱いた。 彼女の足の間に片膝を突き、いい匂いのする首筋に顔を埋め、細い肢体を引き寄せる。 耳元に掛かる吐息が、胸板で潰れる膨らみの感触が、触れ合った素肌の全てが、たまらなく温かかった。 「プレセア……。もう、離したくないよ……」 「……はい、離さないで……下さい」 プレセアの腕はジーニアスの背で交差し、彼の肩にしっかりとしがみ付いていた。 軽く上体を起こし、子猫が甘えるように頬を、身体をすり寄せ、満足げな溜息をつく。 身を寄せ合ったまま、ジーニアスの片手がプレセアの背筋を斜めに滑り落ち、腰から太股の外側へと伝う。 「んっ、はぁ……。もっと、もっと触って下さい……」 むず痒いようなわななきが身体の芯を駆け巡り、プレセアはきゅっと腕に力を込める。 相手を求め、相手に求められている実感に、彼女の胸は埋め尽くされていった。 「んんっ……。ジーニアスの手、とても、気持ちいいです……」 「ボクもだよ……。プレセアの身体、柔らかくて、あったかくて……」 二人は、互いの胸から伝わる早い鼓動を感じながら、次第に気分を盛り上げていった。 紅潮した頬を触れ合わせ、唇を甘く吸い、そしてまた首筋に顔を伏せる。 相手の髪の匂い、汗の匂い、若々しい肌の匂いを胸深く吸い込み、熱い興奮と共に吐き出す。 ジーニアスは夢中で手を動かし、プレセアの指は彼の肩の上で、更なる刺激を求め、緩やかに蠢いていた。 「分かる……、分かるよ。プレセアの気持ち、どんどん伝わってくる、気がする……」 「伝わって、ますか……? こんなに嬉しいのも……。こんなに切ないのも……」 「うん……。すごく、良く分かる……」 知識として覚えた技巧ではなく、肢体の微妙な反応から、ジーニアスは彼女の求める愛撫を読み取っていった。 小振りな尻を優しく撫でさすり、指先をくすぐるように揺らめかせる。 掌でわき腹を掬い上げ、くすぐったさと心地良さに身を捩らせたところで、首筋にキスを一つ。 膝を立てた足に手を這わせ、根本へと戻る時には、太股の裏で楽器を爪弾くように指を踊らせる。 軽く身じろぎして胸板をすり合わせ、柔らかく形を変えた二つの膨らみを揉み解す。 ジーニアスの一つ一つの動作に、プレセアの目覚めたばかりの本能は、大きく開花していった。 「あの、ジーニアス……」 「ここも……だね?」 ジーニアスは、少し窮屈そうに肘を曲げると、プレセアの下腹部に手を伸ばした。 臍の下、滑らかな感触の柔肌に指先を添え、そこで誘うように小さく円を描く。 「はっ……はい」 その更に奥、誰にも触れさせた事のない秘所に強い疼きが走り、プレセアは静かに片膝を外側に倒す。 そうして出来た小さな隙間に、ジーニアスの片手がするりと忍び込んだ。 「んああぁっ!?」 ほんの一回、それも羽毛のように優しく撫で下ろされただけで、プレセアの脳裏に白い火花が散った。 指の段差が急所である肉芽を弾き、顔を覗かせた花弁の粘膜をなぞり、強烈な快感を引き起こしたのだ。 反射的に足を閉じると、挟まれたジーニアスの指がぎゅっと押し付けられ、また新たな刺激が巻き起こる。 腰から下を吹き飛ばすような快楽の爆発に、プレセアは無我夢中でジーニアスに縋りついた。 「ジッ、ジーニアスっ……! いま、私……、私っ……!」 「大丈夫、大丈夫だよプレセア……。ちっとも変な事じゃないから……」 「あっ……!」 ジーニアスは彼女の動揺を受け止めて、子供を安心させるように背中を軽く叩いた。 あまりに強い刺激に強ばっていたプレセアの体は、それだけの仕草でスッと柔らかさを取り戻した。 「大丈夫、ボクに任せて……、もっと感じて……?」 「んっ……ふぅっ……!」 零れ落ちそうなほど涙をたたえた目元に口付けると、ジーニアスはゆったりと手を動かした。 プレセアの顔色を伺いながら、傍目には分からないほど小さく、慎重に彼女の秘所を撫でる。 彼女の驚きは、労わりに満ちた愛撫に解きほぐされ、快楽はぬるま湯のようにじんわりと染み込んでくる。 心が一旦受け入れてしまえば、身体は自然と快感を受け入れ、さらりとした蜜を滲ませていった。 「このくらいなら、平気?」 「はっ、はい……。さっきは、ちょっと驚いて……しまった、だけ、ですっ……」 ジーニアスはプレセアの限界を見極めるように、じれったいほどゆっくりと手探りを続ける。 指先に感じるぬめりに、強く探りたい衝動を覚えながらも、ジーニアスはそっと中指だけを左右に揺すった。 「んっ……ふ……、あっ、は……!」 プレセアが慣れて来た頃合を見計らって、ジーニアスは少しずつ動きの幅を広げていった。 時折、肩に掛かったプレセアの爪が肌を刺すが、そんな痛みさえもどこか心地良い。 濡れた秘裂は更に滑らかさを増し、中心を軽く押しただけで、ふにゅんと指の腹が半ばまでめり込む。 和らいだ花弁は軽くめくれていき、ちゅくちゅくと柔らかな水音を立て始めた。 「ジ……ニアス、わたっ……わたしっ……!」 「気持ち、いいんだね……?」 「はい……っ、あぁっ、いいっ……、いいんですっ……!」 ジーニアスが問い掛けると、プレセアはコクコクと何度も頷いて、甘い感覚に没頭していった。 やがてジーニアスの手は、ゆったりとした速度を保ったまま、小さく円を描き出す。 指の付け根の辺りで、こりっと硬い感触を返す肉芽を優しく弄い、溢れた蜜を塗りつける。 秘唇の下端から、一筋の雫が細く糸を引き、シーツの上に小さな染みを作った。 「ああっ、ジーニアスっ、なにか……! 私、何か、来ますっ……!」 身体の奥深い処から、熱いものが競り上がってくる予兆に、プレセアは上ずった声で囁いた。 大きく喉を反らし、自分を未知の高みへといざなっていくジーニアスに、潤んだ瞳を向ける。 しかし、ジーニアスは再び手を緩めることはせず、それどころか強く身体を抱き締めてきた。 「いいよ……。そのまま、最後まで感じて……」 「だめっ、だめですっ! わたし、わたしだけっ……!」 一人だけ、遠い場所に追いやられる不安に、プレセアはいやいやと首を振った。 自分のみが快楽を得るのではなく、それ以上の物を彼に与えてあげたいのに、身体の自由が利かない。 そうしている間にも、ジーニアスの手は確実に、彼女の官能を限界へと押し上げていった。 「いっしょ……! 一緒でなくては、いやですっ……!」 「いいから……。プレセアが感じてくれれば、ボクも嬉しいから……」 「いっ……や、だめです、だめっ……!」 ジーニアスの優しい声が、一方的に達する事を拒むプレセアの意識を崩し、蕩けさせていった。 元より、快楽に慣れていない肢体は、それを堰き止める術を知らない。 予兆はすぐに確信に変わり、目の裏に小さな光が閃くたび、ビクビクと四肢が痙攣する。 破裂寸前に膨れ上がった快楽が、包皮に包まれたままの肉芽をくりゅっと摘まれることで、一気に弾け飛ぶ。 「ゃああぁぁっ!!」 ガクン、と跳ね上がったプレセアの爪先は、糸が切れた人形のように力を失い、シーツの上に投げ出された。 ◇ ◇ ◇ 「んはぁっ、はっ、んくっ、はぁ……っ!」 「プレセア……」 ジーニアスはぐったりとなったプレセアの身体を寝かせ、肩で息をする彼女の全てを見下ろした。 プレセアは頼りなく挙げた手首を額に当て、今の自分の顔を見られたくないとばかりに目元を隠している。 激しい動悸と息遣いに、小振りな胸の膨らみが、ふるふると小さく震える。 しどけなく崩された脚の間では、わずかに開き始めている乙女の花弁が、呼吸に合わせてヒクヒクと息づく。 幼いながらも、匂うような色香を放つ肢体に、ジーニアスの股間はこれ以上ないほどいきり立った。 (あっ、でも……。プレセア、初めてだよ……ね?) しかしジーニアスは、自分のモノを握って近づこうとした所で、ふと躊躇いを覚えた。 知識として知っているだけだが、女性が初めての際には強い痛みを受ける事を、今さらながらに思い出したのだ。 そうしたいという欲求は今やはち切れんばかりだが、プレセアに苦痛を与えるのも忍びない。 両方とも彼女に対する愛情から生じた思いなだけに、ジーニアスはどちらに従っていいものか思い悩む。 彼がしばらく葛藤を続けていると、息を整えたプレセアが、ふわりと微笑みながら囁いた。 「はぁ……。ジーニアス、我慢しなくても、いいですよ……?」 「え……っ、でも、だって……」 自分の欲望を受け入れる言葉を受けても、素直に甘える決心が出来ず、ジーニアスは動けなかった。 けれど、プレセアはそんな懸念を否定するようにかぶりを振り、自ら脚を開いて秘所を晒す。 「傷付けるなんて、思わないで下さい……。私も、ジーニアスと一つになりたいんです……」 「だけど、たぶん痛いよ? ボク、プレセアがつらい思いをするぐらいなら……」 「きちんと結ばれない方が、私はつらいです……。お願いですから、ジーニアスを私に……ください」 恥ずかしさも、初めての行為に対する怖れもあるだろうに、プレセアははっきりと告げてくる。 その健気さに打たれ、ジーニアスは彼女の脚の間に、ゆっくりと身体を割り込ませた。 「うん、わかった……。でも、つらかったら我慢しないで言ってね? 約束だよ?」 「はい……。でも、平気だと思います。身体も心も、こんなにジーニアスの事を求めているのですから……」 「じゃあ、いくよ……。んっ……」 「あっ……!」 ジーニアスは片手で先端を導き、プレセアの秘裂の上端に、そっと這わせた。 柔らかく濡れた粘膜が触れ合う快感に、二人の眉がピクンと跳ねる。 「……っ、ここ、かな……?」 「っは、はい、そうですっ……」 そのまま下へ伝い、中心をわずかに外れたあたりで、軽く沈み込む場所に先端が届く。 自信なさげに呟くジーニアスに、プレセアは小さく顎を引いて答えた。 「プレセア、痛くない? まだ平気?」 「はいっ、まだ全然……ふぅ、っん!?」 「うわっ!?」 プレセアが軽く息を吐いたその瞬間、入り口を閉じる力が弱まり、ジーニアスの先端がするりと飲み込まれた。 いきなりの侵入に彼女が息を呑むと、雁の部分までを受け入れた内部が、強く収縮してそこで押し止める。 ジーニアスも、きつい締め付けに驚いて、どう動いたらいいものかと、その場で硬直する。 そして、薄く涙を滲ませたプレセアに、慌てて声を掛けた。 「プッ、プレセア、ごめん! 痛かったよね!?」 「いっ、いいえっ……。それほど、痛くはありませんからっ……」 自分より余程泣きそうな顔をしているジーニアスに、プレセアはか細い声で答えた。 実際、膣口を押し広げられる違和感こそあるものの、彼女が予想したよりも遥かに痛みは少なかった。 プレセアは胸に手を当てて深呼吸すると、ゆっくりと下半身から余分な力を抜いていく。 きりきりと拒むようだった締め付けは、きついながらも包み込み、迎え入れる感じへと変化していった。 「……もう、平気です。続けてください……」 「うっ、うん。……う、くっ!」 プレセアに促され、ジーニアスは遠慮がちにではあるが、腰を前に進め出した。 狭い肉の間を掻き分けていく快感に、軽く意識が飛びそうになる。 「はっ……んっ、くふぅ……ん、んぅ……」 プレセアが息を吐くと、内部の締まりはわずかに緩み、くんっと吸い込まれる感覚が生まれる。 それに気付いたジーニアスは、彼女の呼吸と動きを合わせ、少しずつ自身のモノを沈めていく。 やがて二人の腰はぴたりと重なり、ジーニアスの肉棒が根本までプレセアの中に収まった。 「はぁ……、ぜんぶ入っちゃった、ね……」 「はい、私の中……、ジーニアスでいっぱいです……」 感歎の声を上げるジーニアスに、プレセアも歓びに満ちた笑顔で応じた。 プレセアが意識するまでもなく、己の中を埋め尽くす硬くて熱い塊の存在は、鮮明に感じ取れる。 そして、ジーニアスは自分を取り巻いた柔らかな襞の感触に、強烈な一体感を覚えていた。 「なんだか、夢みたいだ……。プレセアと、こんな風に出来るなんて……」 「夢ではありませんよ……? ジーニアスも私も、今ここにいて、こうして一つになっています……」 「うん、そうだね……。こうしてるだけで、すごくあったかい気分になるよ……」 「私も……です」 深く交わった姿勢のまま、二人はしばらく見詰め合い、安らかな感慨にひたった。 両肘で身体を支えたジーニアスが、掌をプレセアの手に重ねると、互いの指が絡み、優しく握り合う。 繋がった部分の温度が同じになっていくにつれ、自分と相手の身体の境が融け、判然としなくなってくる。 目線だけでプレセアと意思を通じ合ったジーニアスは、小刻みに身体を揺らし、彼女の中を動き始めた。 「んっ、うぁ……!」 「あ、っく、んふぅ……」 みっちりと余す所無く押し包む、柔らかな肉の連なりに、ジーニアスはたちまち陶然となった。 動くたびに、敏感な雁の裏や鈴口の下にある皮の継ぎ目を、ぬたっとした細かい襞が舐めていく。 先程の一体感はそのままに、沸き起こってきた快感が、背筋をぞわぞわと伝わって、頭の芯を焼き焦がす。 ただ欲望を解消する為の自慰とは違い、放出したいというより、もっと感じていたいという思いが強い。 下腹部を擦りつけるようにして腰を捻ると、溢れた雫が結合部で小さく水音を立てる。 悩ましげな吐息を洩らすプレセアを気遣いつつも、ジーニアスは自然と動きを速めていった。 「はっ、あぁ、プレセアっ……!」 「んくっ! んっ、くふぅ……っ、ん、ふっ……!」 身体の内部を掻き回され、奥を突き上げられるプレセアは、ジーニアスの動きを柔軟に受け入れていた。 初めて男を迎えた膣内は、充分に濡れてはいるものの、そこから快感を得られるほど慣れてはいない。 それどころか、少し大きく動かれると、軽く引き攣れるような痛みが走る。 けれど、心を満たす豊かな充足感が、それを補って余りあった。 プレセアが苦痛を覚えると、顔には出していないはずなのに、ジーニアスは動きを緩やかにしてくれる。 そして、彼女の痛みが和らいでいくのを待ってから、またゆっくりと速度を上げていく。 その動きの端々から、ジーニアスが彼女に負担を掛けないように、懸命になっているのが分かる。 彼の優しさを感じ取るほどに、プレセアの中はしっとりと潤みを増していった。 「はぁ、はぁっ、んはっ、は、はあっ……」 やがて、ジーニアスの額にはびっしりと汗が浮き、その息遣いも段々と荒くなってきた。 経験と体力に乏しい彼の身体は、同じ姿勢を取り続けたままの律動に、早くも疲れを見せ始めたのだ。 上半身の重さを支える腕は情けなく震え出し、不慣れな運動に腰の辺りが軽く悲鳴を上げる。 更に、そちらに気を取られると、ようやく近づいてきた絶頂が、少しずつ遠のいてしまう。 そうした様子に気付いたプレセアは、自分の上で動き続けるジーニアスに、優しく声を掛けた。 「んっ、あ、ジーニアス……。すこし、疲れてきましたか……?」 「うっ、ううん……。そんっ、なこと、ない、よっ……」 自分を案じて尋ねてくるプレセアに、一旦動きを止めたジーニアスは強がりを言った。 けれど、いくら口先だけで否定しても、大きく息を切らしたままでは、全く説得力がない。 自分の体力の無さと、彼女に余計な心配を掛けてしまったことに、ジーニアスは忸怩たる思いに駆られる。 だが、プレセアは組み合わせた手をきゅっと握ると、親指で手の甲をさすってやりながら、軽く微笑んだ。 「無理しないでも、いいですよ……。疲れたのなら、私にもたれ掛かってください」 「そっ、そんなのっ、出来るわけ、ないよっ……」 プレセアの申し出に、ジーニアスは慌ててかぶりを振った。 ただでさえ痛みに耐えているであろう彼女に、これ以上甘える事は、男としてのプライドが許さない。 「いいですから、ほら……」 「うわ、っと!?」 しかし、するりと手を解いたプレセアの腕に、軽く引き寄せられただけで、容易く崩れ落ちてしまう。 自分の身体を柔らかく受け止める胸の温かさに、ジーニアスは包み込むような母性を感じた。 「プ、プレセア、重くない?」 「平気です。それにこうした方が、ジーニアスの事を、もっと強く感じられますから……」 鼻先まで迫ったジーニアスの顔を見上げながら、プレセアは少し得意そうな顔でそう呟いた。 木こりで鍛えた身体にとって、ジーニアスの体重など、さしたる負担にはならない。 彼女にしてみれば、むしろその小さな重みが、嬉しくて愛しくて仕方が無い。 彼の為なら、どんな事でもしてあげたいという想いが、プレセアの頭を埋め尽くしていった。 「ジーニアスは、少し休んでいてください。私が、動きますから……」 「私が、って……え、ええっ!?」 「んっ、ふ……」 プレセアは立てた両膝でジーニアスの身体を軽く挟み込み、ゆったりと腰を上下に動かし始めた。 彼女の方からそうしてくるとは思わなかったジーニアスは、驚きに目を見開いて声を上げる。 先程までの彼の動きを思い返しながら、プレセアはつたないながらも、愛情を込めて腰をくねらせる。 破瓜の痛みはすでに気にならないほどに薄れ、彼女はただジーニアスに奉仕する事だけを考えていた。 「んっ、どう、ですかっ……? これで、いいので、しょう、か……っ?」 プレセアはベッドのスプリングを使い、弾むようにして小さなお尻をぴょこぴょこと動かした。 硬い塊が自分の腹腔を掻き回す感覚に戸惑いつつも、不安そうにジーニアスに問い掛ける。 「いっ、いいよ……。すごく、気持ちいいよ、プレセア……」 「……んふぅ、良かった……。では、このまま、続けますっ……んっ!」 「ああっ!? プレセア、プレセアっ!」 ジーニアスの肯定に安堵したプレセアは、彼の背中を強く抱き締めつつ、動きを速めていった。 膣内を行き来する肉棒との摩擦に、まだ快感には成り切れない熱さが生じ、彼女の腰を痺れさせる。 腰を引く時に下腹部に力を込めると、ジーニアスの陰茎がビクンと内部で震え、顔に快楽の影が差す。 プレセアは、意識して強弱をつけ、精を絞り出すように中を締めていった。 「んっ、はぁ、ジッ、ジーニアスっ……!」 「プレセアっ、ボク……っ、くぅっ!」 プレセアが自分で動く事に慣れてきた頃、ジーニアスは思い出したように腰を振り出した。 彼女の動きに合わせて、ゆっくりと下半身をうねらせ、自身の官能を高める。 軽く首をもたげたプレセアの頭を両腕で抱え込み、蕩けるような感覚に翻弄されていく。 ジーニアスの股間には、むずむずとした衝動が宿り始め、次第に明確な形を取りつつあった。 「プレセアっ、ボク、ボクっ、もうっ……!」 「えっ……? んんっ、んふぅっ!」 いきなりガクガクと不規則になったジーニアスの動きに、プレセアは驚いて動きを止めた。 プレセアはその変化の理由が分からないまま、彼に主導権を渡して、それを受け入れる。 「プレセア、プレセアっ! ボクっ、もう、ダメだよっ……!」 「ジ……ニアス、駄目って、何がっ、んんぅ!」 ジーニアスはうわ言のように呟き、無我夢中でプレセアの中を突き上げた。 プレセアの問い掛けも耳に入らない様子で、ぎゅっと目を瞑って荒れ狂う衝動に身を任せる。 「ごめんっ、もう、ダメなんだっ……ああっ!」 「んくぅっ!?」 一気に高まったものをプレセアの奥に吐き出し、ジーニアスは喉を反らして大きく叫ぶ。 「うあぁ、あ、はぁ……」 「あ……。ジーニアスの、中で、動いています……」 断続的に襲い来る甘美な開放感に、ジーニアスの小柄な身体がビクビクと痙攣する。 精を放つ陰茎の脈動を膣内に感じ取り、プレセアは呆けたような呟きを洩らした。 ◇ ◇ ◇ 「はぁ、はぁ……っ」 「ジーニアス、大丈夫ですか……?」 くたっと脱力し、重さを増したジーニアスの身体を、プレセアはしっかりと抱き止めていた。 余韻に浸る吐息も、自分の中でゆっくりと柔らかくなっていく肉棒の感触も、全てが愛しく感じられる。 激しく波打つ背中を、宥めるように撫でてやっていると、ジーニアスの呼吸も次第に落ち着いてくる。 最後に大きく息を吐くと、ジーニアスはプレセアの上から退き、彼女の横へ仰向けに寝転がった。 「はあ……。プレセア、ごめんね……」 「……何が、です?」 彼の謝罪の意味が分からず、プレセアは小さく首を傾げた。 ジーニアスは首だけを横に向け、気まずそうな顔をして、彼女の瞳を覗きこんでくる。 「だってボク、あんまり上手くできなかったし……」 「そんな事を気にしているのですか? ふふっ、ジーニアスはおかしいですね……」 「お、おかしいかなぁ?」 いぶかしむジーニアスの方へ寝返りを打ち、プレセアは上機嫌の猫のように喉を鳴らす。 「はい、おかしいです。これから、二人で慣れていけばいいのですよ……」 「そうだね。うん、これからも一緒に……」 ジーニアスがそこまで言った時、二人の脳裏に今まで忘れていた事実が閃いた。 「あ……。けれど、この旅が終わったら、私達、また会えるかどうかも分からなかったのでしたね……」 「あ、そうか。そうだった、ね……」 二つの世界の楔を取り払ってしまえば、最悪の場合、再び会う事は出来なくなってしまう可能性がある。 せっかく通じ合えた相手を失うかもしれないという事実に、プレセアの胸は切なく痛んだ。 重苦しい沈黙が、しばらく二人の間を漂う。 しかし、その静寂を打ち払うかのように、ジーニアスは真剣な顔をして告げてきた。 「……でもね。もしそうなっても、ボクはプレセアと一緒だよ」 「え……?」 決意を込めた瞳に、プレセアは強く胸を衝かれた。 「世界が二つに分かれたって、ボクの気持ちは変わらない。どんなに離れても、変わってたまるもんか」 「ジーニアス……」 それは、いかにも少年らしい、純真で一途な、あるいは幼稚な思い込みと言われかねない言葉。 それでも、プレセアのかすかな不安を吹き飛ばすには、充分な力を持っていた。 「ボクはまだ子供で、まだプレセアの全部を受け止め切れないかも知れないけど……」 「いいえ、そんなこと……」 「もっと立派になって、いつかきっと、プレセアの事を迎えに来るよ。どこにいても、必ず!」 力強く神聖な誓いを立て、ジーニアスは彼女の手を優しく握り締める。 「だから……。信じてくれる?」 「はい……はいっ! もちろんです、ジーニアス……!」 たとえ離れても、彼の心が自分と共にあると分かっただけで、彼女の胸は温かな安らぎで満たされる。 喜びの涙を隠そうともせずに、プレセアは彼の胸に顔を埋め、何度も何度も頷いた。 ◇ ◇ ◇ 「行ってしまったな……」 「……はい」 全ての戦いが終わったしばらく後、プレセアとリーガルはアルタミラの郊外にある草原を並んで歩いていた。 二人は、新たな旅に出るリフィルとジーニアスを、つい先程まで見送っていたところだ。 再会を固く約束したとは言え、しばらく逢えない事に違いは無い。 別れ際、ジーニアスと絡め合わせた小指を大事そうに胸に抱え、プレセアは俯き加減で答えた。 「おや、プレセア。それは……」 「え? ……あっ!」 リーガルの視線が服の襟の内側に向けられているのに気付いたプレセアは、慌ててそれを手で隠した。 そこには、彼女が自ら彫り上げた、小さな木のブローチが止めてある。 ある小動物の姿を模したそれは、木彫りのクマの置物と同様に、自分で作って売っていたものだ。 他人には見られたくなかったらしく、プレセアはいかにも恥ずかしげに、襟を直してそれを見えないようにした。 「ふむ、トンガリマダラトビネズミのブローチか。……ジーニアスの為かね?」 「えっ、し、知っているのですか!?」 しかし、一目でそれが何であるかを理解したリーガルは、プレセアへ穏やかな口調で問い掛ける。 その途端、珍しくうろたえたプレセアは、瞳を大きく見開いて、傍らに立つ大柄な男の顔を振り仰いだ。 「ああ、以前アリシアが教えてくれた。それの本当の意味もな」 訳知り顔で頷くリーガルの言葉に、プレセアの顔はみるみるうちに真っ赤になっていった。 このブローチは、実は単なる装飾品ではない。 裏に想い人の名を彫り込むことで、相手との絆を強めるおまじないにもなる、と言われているのだ。 あの夜の後、プレセアはそれを初めて自分の為に作り、こっそりと身に付けていた。 王都メルトキオの若い女の子達の間で流行しているのも、実はそうした理由によるものだった。 「あっ、あの、この事、ジーニアスには……」 「言わんよ。そこまで野暮ではないつもりだからな」 「あう、その、ありがとうございます……」 微笑ましげに表情を緩めるリーガルに、プレセアはもじもじと服の裾を弄りながら、小さく頭を下げた。 感情を取り戻したプレセアの初々しい恥じらいに、リーガルはかつて愛した人の面影を強く感じる。 娘の成長を見守る父親のような気分で、リーガルは彼女の小さな頭をポンと軽く叩いた。 「だが、プレセアの想いは、きっと彼にも通じているだろう。必ず、また逢える」 「……いえ、もう知っています。ジーニアスの想いも、必ず戻って来てくれるという事も」 元気付けるリーガルに向けて、プレセアは屈託の無い笑顔を浮かべ、力強く答えた。 クルシスの輝石の影響が弱まった今、プレセアの時間は再び動き始めている。 そしてどれだけ心を通わせても、人間とハーフエルフという種族の差は埋めようがない。 いずれは彼女も時に流され、ジーニアスに自分と同じような、取り残される悲しみを与えてしまうだろう。 けれど、あの真っ直ぐな心を持つ少年ならば、そんな痛みも乗り越えて、進んでいってくれると信じられる。 「いつまででも、待ってます。迎えに来てくれる、その日まで……」 夢見るような瞳で遥か遠くの空を見上げながら、プレセアはブローチの裏に刻んだ文字をなぞった。 ジーニアス・セイジという、優しい少年の名を。
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