総合トップ>SS一覧>SS No.1-031
作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
忘れ得ぬ想い |
サザム氏 |
コングマン×フィリア |
2003/05/06 |
- |
「はぁ……、大分落ち着きましたわ……」
フィリアは、アルコールに火照った身体を冷やそうと、リーネ村の村外れに佇んでいた。
ミクトランとの最終決戦から一年後。
ここリーネ村は、ベルクラントによる被害が少なかった事もあり、以前の平和な姿を取り戻しつつある。
彼女を含めた7人の仲間は、再会の約束を果たす為に、スタンのいるこの村に集まったのであった。
「けれど皆さん、本当にお変わりありませんでしたわね……。スタンさんも……」
彼の名を呟いた途端、甘く切ない気持ちが湧き上がり、フィリアはそっと胸元を押さえた。
フィリアにとって、スタンは自分を変えてくれた恩人であり、──何より、初めて恋した男性でもあった。
しかし、それに気付いた時には、彼の胸には他の女性が住み着いており、彼女は黙って身を引いたのである。
けれど、久しぶりに会った彼は、前と変わらず優しく、素朴で、真っ直ぐな瞳をしていた。
そんな彼に声を掛けられる度に、フィリアは彼への想いが消えていない事を感じていたのだった。
「未練がましいですわ、わたくし……。あら? あれは……、っ!」
人の気配を感じて、寄りかかっていた木の後ろを覗き込んだフィリアは、思わず息を呑んだ。
村の方から歩いてくるのは、彼女の思い人であるスタン本人と、共に戦った仲間の一人、ルーティだ。
(わっ、わたっ、わたくし、どうしましょう!?)
気が動転したフィリアは、わたわたと焦りまくり、結局木の幹にぴたっと張り付いて、身を隠した。
しばらくして、そっと顔を覗かせると、二人はフィリアから少し離れた所で立ち止まり、何やら話し始めていた。
(な、何を話しているのでしょう……?)
はしたないとは思いつつも、フィリアは二人の様子をそっと伺った。
彼女の位置からは、スタンとルーティの横顔は見えるが、話し声までは聞こえてこない。
照れ臭そうに頭を掻いていたスタンは、急に真剣な顔になると、何事かをルーティに告げる。
同時に、ルーティの顔が紅潮し、瞳が大きく見開かれた。
(あれは、まさか……)
フィリアは彼らのその様子に、ずきっと突き刺さるような痛みを感じた。
身振りを加えながら話すスタンの顔には、フィリアには見せた事の無い、真摯な想いが満ちている。
ルーティの瞳からは、喜びの涙が零れ落ち、普段の態度からは想像できない程、しおらしい表情を浮かべる。
やがて、ルーティは彼の胸に勢い良く飛び込み、スタンは彼女の身体をしっかりと抱き止める。
(いやっ! もう、見たくありませんっ……!)
──フィリアは、零れる涙も拭わぬまま、口元を押さえて村に続く道へと駆け出した。
◇ ◇ ◇
「んくっ、んくっ……ぷはぁーっ! こんな田舎のワリにゃ、いい酒揃ってんなぁ、ここは!」
コングマンは、度数の高い蒸留酒を一気に飲み干すと、男臭い笑みを浮かべた。
ここはリーネ村に一軒だけの、宿屋兼酒場の一階。
仲間達で借り切っている宿屋の広間で、彼一人だけが底なしの胃袋を駆使して、酒盛りを続けていた。
「しっかしまあ、たまには一人でゆったり呑むってのも、いいもんだなぁ、おい」
コングマンは、人気の無い広間をぐるっと見回して、満足げに呟いた。
ノイシュタットでは、偉大なチャンピオンとして名高い彼は、常に多くの取り巻きに囲まれている。
更には、黙って呑んでいても酒場の女やファンの娘達が寄って来て、上げ膳据え膳でもてなしてくれるのだ。
派手な騒ぎが好きなコングマンとは言え、そういつもいつもでは、さすがに食傷する。
久しぶりにのんびりと酒の味を楽しめて、コングマンは上機嫌だった。
「おっと、そう言やぁ、ジョニーの奴が持ってきた米の酒があったっけな。んーっと……ん?」
「あっ……」
目当ての酒瓶を探している最中、外に続く扉が開く気配に、コングマンは背後を振り返る。
そこに気まずそうに立ち尽くしていたのは、彼のかつての仲間の一人、フィリア・フィリスだった。
「コングマンさん、まだ起きていらしたのですね……」
「おお。他のやつらは、もうおねんねだとさ。ま、俺様に付き合って飲んでたら、無理もねぇがな。かっかっか!」
「そうですか……」
大分酔っているコングマンは、フィリアの暗い声にも気付かず、豪快に笑う。
そして、ふと思い出した二人の事を、深く考えずに話し出した。
「そういやぁルーティの奴、スタンの野郎を家に送ってったっきり、帰ってこねぇな?」
「……っ!」
その名を聞いた途端、フィリアの細い肩がピクンと跳ね上がる。
「フィリアおめぇ、どっかであいつら見掛けなかったか……って、おい、どうした!?」
「うっ……ひっ、ひっく……」
神官服を握り締めて、いきなり泣き始めたフィリアに、コングマンは慌てて駆け寄った。
近くで見ると、フィリアの目の下は、涙の跡を何度も擦ったように、赤くなっている。
「お、俺様、なんかマズい事でも言ったか? おぉい、謝るから、もう泣くなって!」
「ひっ……、ちがっ……、わたっ、わたくしっ……」
フィリアは激しくしゃくり上げながら、コングマンの言葉を否定するように、激しく左右に首を振る。
「ああ、その、じゃあ、どうしたってんだよ? ええい、ちくしょう……」
それなりに女性経験も豊富なコングマンだが、清楚な少女の可憐な涙には、どうにも弱い。
スキンヘッドを掻き毟りながら、処置に困って悪態をつく。
「とりあえず、まずは座って落ち着け、なっ?」
多少持て余しながら、声を殺して泣くフィリアの背中に手を掛け、コングマンは彼女をテーブルへと誘った。
◇ ◇ ◇
コングマンに優しく宥められ、フィリアは訥々と事情を説明した。
「そうか……。スタンの奴とルーティがなぁ……」
「ぐすっ、はっ、はい……」
自分の秘めた想いも含めて、先程目撃した全てを語り終える頃には、フィリアの涙は大分収まっていた。
喉の渇きを覚えたフィリアは、コングマンが作ってくれたカクテルに口を付ける。
軽く花の香りがするそれは、すっと胸が軽くなるような清涼感があり、心の痛みを和らげてくれる気がした。
「でも、コングマンさん、意外と器用なんですのね……。もっと豪快な方だと思ってましたのに」
美しい色合いのカクテルをグラスの中で回しながら、フィリアはそう呟く。
「ひっでえなぁ。俺様はこれでも、繊細な男なんだぜ?」
「……ぷっ。あ、済みません、笑ったりして……」
そりゃあない、と言わんばかりに歪んだコングマンの珍妙な表情に、フィリアは思わず吹き出してしまった。
するとコングマンは、テーブルに頬杖をつき、ニカッと少年のように歯をむき出して笑う。
「そうそう。やっぱり、おめぇみてぇな可愛い娘は、そうやって笑ってるのが一番だぜ?」
「かっ……からかわないで下さいっ!」
正面切って『可愛い』などと言われ、酒のせいだけではない熱が、フィリアの頬を染める。
フィリアは赤くなった顔を隠すようにして、杯を一気に呷った。
「……でも、ありがとうございました、コングマンさん。全部話したら、大分楽になりましたわ」
「なっ、なぁに、いいってことよ! 俺様は、か弱い女の味方だからな、わ、わは、わはははは!」
フィリアが深々と頭を下げると、コングマンは少し慌てた様子で、どこかわざとらしい哄笑を上げる。
「なんだったら、ベッドの中で慰めてやってもいいんだぜ。……なぁんてな!」
「えっ……!?」
冗談めかしたコングマンの言葉に、意表を衝かれたフィリアの胸は大きく高鳴った。
スタンに抱かれていたルーティの幸せそうな顔が目に浮かび、名状し難い想いが脳裏を駆け巡る。
「あ、いや、うそっ、冗談だって! ……俺様も酔いが回ってきたみてぇだ、忘れてくれ!」
驚きに目を見開いたフィリアの表情を誤解したのか、コングマンは手の平を振って自分の言葉を打ち消した。
二人の間に気まずい沈黙が流れ、フィリアは顔を伏せ、もじもじと身体を縮ませる。
しかし、フィリアの頭には不快感など無く、ただ哀しさと切なさと、誰かに縋りたいという想いが渦を巻く。
「……冗談、なのですか?」
アルコールの勢いにも後押しされ、フィリアの口から躊躇いがちな呟きが漏れた。
◇ ◇ ◇
「なっ、なにぃっ!? フィリア、おめぇ……」
おずおずと告げられたフィリアの言葉に、コングマンは激しく動揺した。
先程は慌てて誤魔化しはしたが、確かに自分の言葉には、少なからぬ本気の想いが込められてはいた。
しかし、まさか彼女からこんな答えが返ってくるとは、思いもしていなかったのである。
「あ、あのなぁ。意味分かって言ってんのか?」
「はっ、はい……。分かっている、つもりです……」
耳まで真っ赤に染めながら、上目遣いにこちらを伺うその様子は、何とも言えず初々しい。
想いを寄せていた少女の言葉に、コングマンの心臓は強敵を前にしたかのように強く脈打った。
「わっ、わたくし、殿方を好きになったのは、スタンさんが初めてで、つまり、失恋も初めてなんです。
だからこのままだと、スタンさんやルーティさんに対して、とても醜い感情を持ってしまいそうで……。
そんな事では、神に仕える身として神殿に戻る事など、許されないと思うのです」
こんな場面でスタンの名前を出されて、コングマンの胸にちくりと刺すような痛みがよぎる。
それはいかにも潔癖症のフィリアらしい、堅苦しい考え方であった。
「それに、スタンさんへの想いを断ち切るのに、何かきっかけが欲しいのです。
それには、他の殿方に……その、だ、抱いてもらうのが、一番なのではないかと……。
ご、御免なさい、急にこんな勝手な事を言われても、ご迷惑ですわよね……」
無言のまま顔を曇らせて聞いていたコングマンから、フィリアは気まずそうに視線を逸らす。
「莫迦な事を申し上げて、済みませんでした。わたくしの方こそ、今の言葉を取り消させて下さい……」
フィリアは、コングマンにもう一度頭を下げると、そそくさと立ち上がる。
すっかり酔いの醒めてしまったコングマンは、彼女に負けないぐらいに複雑な心境だった。
彼女の告白は、コングマンを恋愛の対象として見ていない、と言ったも同然だ。
極論すれば、彼女を優しく抱き締めてくれる男なら、誰でも構わないという意味でもある。
己に自信を持つ男にとって、これほど馬鹿にした扱いも無いが、フィリアは決してそんなつもりではない。
彼女はただ、自分の感情を持て余し、一時でも支えになってくれる者を求めているだけなのだ。
コングマンの胸中で、男の尊厳と彼女の苦しみを救ってやりたいと言う想いが、激しくせめぎ合う。
深い溜息と共に一方の思いを吐き出すと、コングマンは立ち上がり、フィリアの腕を取った。
「俺様で、いいのか?」
「え……あっ!」
コングマンの言葉を一瞬理解できなかったらしいフィリアは、しかしすぐに真意を察し、顔を赤らめる。
「惚れてもいねぇ男相手に、純潔を捧げちまって、本当にいいのか? 後悔しねぇか?」
「後悔なんて……しませんわ」
一度目を伏せると、フィリアはコングマンの顔を見上げて、きっぱりとそう告げた。
その表情は、悲愴でありながらも毅然とした、コングマンがたじろぐほどの決意が込められている。
「……分かった。俺様が、おめぇの痛みを受け止めてやる。今夜だけでもな……」
自分の心の痛みは決して見せないように、コングマンは少女の華奢な身体を抱き寄せた。
身体と同じように、フィリアの愛情もこの手に抱く事ができれば良かったのに、と思いながら。
◇ ◇ ◇
フィリアはコングマンに片腕で抱き上げられて、彼の個室まで運ばれた。
見上げるような大男である彼の腕に抱かれていると、フィリアはまるで自分が子供になったような気分になる。
彼女の身体をベッドの上にそっと降ろすと、コングマンは寝台を軋ませながら、自分もそこに膝をつく。
小山のような体躯がゆっくりと近づいてきて、フィリアはハッと我に返った。
「あっ、その、まずは、服を脱がなくてはいけませんわよね……」
フィリアはそう呟くと、緊張に震える手で、神官服の留め金に手を掛けた。
しかし、焦りと羞恥でがちがちになった指は、その何でもないはずの動きすら満足に出来ない。
何度も指を滑らせ、ますます焦るフィリアの手に、コングマンの大きな手がそっと重ねられる。
コングマンの指は、器用に留め金を外し、フィリアの服を脱がせていった。
「あっ、あの……」
「……無理しなくてもいい。俺様に任せな」
コングマンは、手慣れた様子でフィリアの肩からローブを落とすと、軽く身体を抱え上げ、足元から抜き取る。
簡素な下着姿にされたフィリアは、彼の視線から逃れるように、両腕で自分の胸の辺りを抱き締めた。
「なっ、何だか、ずいぶん慣れていますのね……」
「まっ、まぁ、この歳だから、それなりにはな……」
フィリアの言葉に、コングマンも急に恥ずかしくなったのか、顔を赤らめて鼻の頭を掻く。
その子供のような仕草に、フィリアは何となく可笑しくなり、身体の緊張がふうっと抜ける。
親子ほども年の違う彼を、失礼な事だと思いつつも、つい可愛いと思ってしまうフィリアだった。
「じゃっ、じゃあ、触るぞ……」
「あっ、は、はい……んっ!」
コングマンは、フィリアの緊張が解れたのを見て取ったのか、ゆっくりと手を伸ばしてきた。
男性の手に肌を触れられる予感に、フィリアの身体が再び硬直する。
ごつい指先が、下着の上から胸の膨らみに触れ、そっと全体を包み込むように添えられた。
「……っ、……っく、ふっ……」
コングマンの手は、その力強い外見に似合わぬ繊細な動きで、フィリアの身体を這い回った。
初めての経験に声も出せず、フィリアは彼にされるがまま、時折り小さく息を吐く。
コングマンは片手で胸を揉みしだきながら、もう一方の手を身体のあちこちに滑らせ、優しく撫でる。
巧みな愛撫に、フィリアの身体の芯に小さな火が灯り、次第に大きくなっていった。
「んっ、ちゅ……」
「えっ、うそっ!? んっ、くっ、くすぐったいです……」
いきなり首筋にキスをされ、フィリアは驚きの声を発した。
コングマンは、そこからゆっくりと唇を動かし、鎖骨の辺りを軽く音を立てて吸う。
痺れるような感覚に、フィリアの身体がピクンと反応した。
「可愛いぜ、フィリア……」
「んんっ、やっ、そんなことっ……はんっ!」
フィリアは、敏感な乳首に軽くキスをされ、思わず背中を仰け反らせた。
いつの間に脱がされたのか、彼女のブラは外されており、コングマンの目に二つの膨らみが晒されている。
スタンにも見せた事のない乳房の頂点に舌を這わされて、フィリアの胸に切なさ混じりの快感が去来した。
「いっ、いけませんわっ……。そんなに優しくされてはっ、わたくしっ……」
何がいけないのか自分でも分からぬまま、フィリアはかぶりを振ってコングマンの肩に手を掛けた。
そのまま身体を引き離そうとするが、ただでさえ非力なフィリアの腕は、彼の愛撫に力を奪われている。
僅かな抵抗は、コングマンに気付いてもらう事すら出来ず、次第にフィリアの意識は快楽に呑まれていった。
◇ ◇ ◇
(くそっ、佳い女じゃねぇか。スタンの野郎、何でこんないい子を振って、あんなじゃじゃ馬を……)
持てる技巧の全てをかけて、フィリアを優しく愛撫しながらも、コングマンの頭はスタンへの怒りに満ちていた。
フィリアの瑞々しい肌はあくまで白く、吸い付くようなしっとりとした肌理の細かさを具えている。
清楚な雰囲気に不釣合いなほど豊かな乳房は、少し力を込めるだけで柔らかく形を変える。
ろくに自分で慰めた事すらないらしく、菫色の瞳は戸惑いに潤んで、まるで宝石のようだ。
幾多の女性と一夜を共にしてきたコングマンにして、最高の女だと思わせるほど、フィリアは美しかった。
(だけど、そんな事を言っても、こいつは喜ばないんだよな……)
それが分かるぐらいには、フィリアの事を見詰め続けて来たコングマンだ。
二人の事を悪く言えば、彼女は共に戦った仲間を貶める言葉と取り、悲しそうな目をして諌めるだけであろう。
彼に出来る事は、ただフィリアの身体を抱き締めて、スタンの代わりに彼女を慰めてやることだけだった。
「あっ……、コングマンさん、そこは……」
コングマンが下腹部に手を伸ばすと、フィリアはその手を押さえようと腕を動かした。
「……いやか? 今ならまだ止められるぞ?」
「いっ……いいえ、どうぞ……」
コングマンの言葉で思い直したのか、フィリアは少し震えている腕を身体の脇に垂らし、彼に身を任せる。
コングマンはフィリアを仰向けに寝かせ、最後の布をそっと脱がせていった。
「綺麗だな……」
フィリアの足を軽く開かせたコングマンは、初めて男の目に晒された少女の秘密に、感嘆の声を洩らした。
淡い若草色の茂みは、まるで春先の草原のように柔らかい印象を見る者に与える。
そこに隠れるように存在する、固く閉じた一筋の秘裂は、彼女が確かに男を知らない事の証だ。
朝霧に佇む蕾のように、うっすらと濡れ光る花弁は、どんな花よりも可憐だった。
「あっ、や……。そ、そんなに、見詰めないで下さい……」
両手で顔を覆ったフィリアは、指の間からコングマンの顔を覗きながら、羞恥に打ち震えて言った。
自分のはしたない部分を見られているという意識が、彼女の肌を薔薇色に染める。
「恥ずかしかったら、目を瞑っててもいいんだぜ……」
コングマンは、フィリアの恥じらいに欲望を滾らせ、彼女の股間に顔を埋めていった。
そして、茂みの下の艶やかな割れ目に、そっと唇を寄せる。
「はあんっ!」
唇にビロードのような感触を感じた途端、フィリアの全身がビクンと跳ね上がった。
コングマンは、フィリアのすべすべとした内股を撫でながら、舌を突き出して乙女の雫を掬う。
フィリアの蜜はどこか甘く、コングマンはその味に燃え上がるような昂りを感じた。
「やぁっ! いっ、いけませんわ、そんな所を舐めたりしたら、汚っ、くぅん!」
「んっ……、汚くなんかねぇさ。それに、初めての時には、よぉく準備をしとかねぇと、痛ぇからな……」
「でっ、でもっ、わたくしっ、んっ、あっ、あぁっ!」
コングマンが舌で秘所の中を舐め上げると、フィリアは一際高い声を発した。
フィリアは初めての快楽に慄き、ぎゅっと太腿でコングマンの頭を挟む。
更に両手でコングマンの頭を押さえ、それ以上の刺激を拒むかのように、ぐっと押し下げようとする。
しかし、コングマンは両手でフィリアの腰を掴みながら、何度もそこを上下に嘗め回した。
◇ ◇ ◇
(ああっ、こんな、こんな事って……)
コングマンの繊細な舌使いに、フィリアはこれまで体験した事のない快感を感じていた。
何度か自分で慰めた時と違い、コングマンの愛撫は、時に思いもよらない場所に触れ、彼女を戸惑わせる。
ごつごつとした手の平が、フィリアの太腿を撫で擦るたびに、ぞくぞくする感覚が背筋に走る。
フィリアの手足からは次第に力が抜け、身体の芯から熱い雫が湧き起こり、花弁の奥を湿らせていった。
(もしもスタンさんに抱かれたら、もっと気持ち良いのでしょうか……?)
ふっとそんな考えが頭に浮かんでしまい、フィリアは慌てて首を振って、不埒な思いを追い出した。
そもそも、スタンへの思慕を断ち切る為に、こうしてコングマンに抱かれているのだ。
それに、抱かれている最中に他の男を思い描くなど、たとえ口に出さないとしても、するべきではない。
フィリアは必死にスタンへの想いを忘れようとしたが、そう思えば思うほど、それは心の隅で燃え上がった。
「……スタンの事を考えてたのか?」
「っ!?」
その時、コングマンに自分の思考を正確に言い当てられ、フィリアは大きく息を呑んだ。
彼の気分を害してしまったと思い、恐る恐るコングマンの様子を伺う。
しかし予想に反して、彼は慈しむような瞳でフィリアを見詰めながら、彼女の頬を指先で優しく撫でた。
「……別に怒っちゃいねぇよ。何だったら、今だけ俺様の事を、スタンだと思ってくれても構わねぇぜ?」
「!!……コングマン、さん……」
「もっとも、ちと年食った、ゴツいスタンだけどな?」
(これは、この瞳は、わたくしと同じ……!?)
おどけたようにそう告げるコングマンの表情に、フィリアは目を見開いた。
その表情は、鏡の前でスタンを諦めるよう、自分に言い聞かせていた時の彼女の表情に良く似ていた。
愛する者に決して自分の想いが届かない事を言い聞かせている、臆病で孤独な魂の煌き。
そして、それでもなお諦め切れない、切なく悲しい彼の愛情は、確かに自分に向けられている。
自分がどれほど残酷な願いをしてしまったかに気付き、フィリアの胸は申し訳なさと自己嫌悪で一杯になる。
フィリアはぽろぽろと涙を流しながら、コングマンの首に抱きついた。
「ごっ、ごめんなさい、ごめんなさい! わたくし、そんなつもりじゃ……!」
「ああ、分かってる。おめぇが、そんな娘じゃねぇって事ぐらい、俺様は充分、分かってる……」
コングマンは、フィリアの背を父親のように優しく抱き返しながら、幼子をあやすように呟いた。
「おめぇは悪くねぇ。だから、そんなに自分を責めるな。……おめぇが笑ってくれりゃ、俺様はそれで充分だ」
「コングマンさん……」
彼女の傷も痛みも、全てを包み込むようなコングマンの広い心に、フィリアはある種の感動さえ覚えた。
彼の逞しい腕に抱かれていると、胸の奥を刺す棘が、陽の光を受けた薄氷のように溶けていくのが分かる。
フィリアは万感の想いを込め、自分からコングマンの唇にそっとキスを送る。
「フィ、フィリア、おめぇ……」
「コングマンさん、わたくしを癒して下さい、貴方の手で……」
フィリアは、コングマンの厚い胸板に顔を埋め、彼の温かさに全てを委ねた。
何故か今度は、スタンの顔は思い浮かばなかった。
◇ ◇ ◇
「あんっ、あっ、んくっ、んっ、ふぅんっ!」
心からコングマンを受け入れたフィリアは、彼の愛撫に素直に反応していった。
少しでも心が通じた事が嬉しくて、コングマンはより一層の熱意を持って、フィリアの官能を高めていく。
可愛らしく身体をくねらせて、甘い喘ぎを紡ぐフィリアに、コングマンは夢中になっていった。
「んっ、ちゅっ、フィリア……」
「ああっ、コングマンさんっ……!」
耳元に軽く口付けをしてから、コングマンは今まで指で撫でていたフィリアの股間に、再び顔を近づけた。
指で綻び始めた花弁を開くと、サーモンピンクの肉襞と、包皮から小さく顔を覗かせた肉芽が現れる。
包皮の上から突起をそっとついばむと、フィリアの身体は水揚げされた魚のように、ぴくぴくっと痙攣した。
「ふあっ!? あぅっ、やっ、そんな、恥ずかし……っ!」
顔を左右に振りながらも、言葉とは裏腹に、フィリアは更なる刺激を求めるように、軽く腰を浮かせる。
コングマンは固くした舌先で肉芽を弄りながら、花弁に浅く挿入した中指を、細かく震わせていく。
ちゅぷちゅぷと淫らな水音が響き渡り、零れた蜜がシーツに大きな染みを作り出していた。
「コッ、コングマンさん……、わたくし、もう、切なくてっ……」
(そろそろ、いいか……)
フィリアの言葉に、もう充分に準備が出来たと判断したコングマンは、手早く自分の服を脱ぎ去った。
体格に見合った大きさの陽根は、なめした獣皮のような光沢を持ち、大樹の根のように節くれ立っている。
初めて男のモノを目にしたであろうフィリアは、しかし快感に我を忘れ、ただぼんやりとそれを見詰めていた。
「じゃあ、いくぞ……」
「はっ、はい……んああっ!」
コングマンは、フィリアの両足を小脇に抱え込むと、剛直をゆっくりと彼女の秘洞に侵入させていった。
フィリアは僅かに顔を歪めるが、コングマンが危惧したほど痛がっている様子はない。
様子を見ながらゆっくりと奥まで先端を進めても、彼女から苦痛に泣き出すような兆候は見られなかった。
「大丈夫か? 痛かったり、苦しかったりしねえか?」
「はい、少し痛みは感じますけど、それよりも、何か不思議な感じがしますわ……」
確かにフィリアの表情は、痛みや苦しみを耐えているというより、何が起きているか分からないといった様子だ。
しかし彼女の中は、処女特有の固い締め付けで、コングマンの怒張をしっかりと包み込んでいる。
愛する少女に、無駄な痛みを与えずに済んで、コングマンは安堵していた。
「お腹の中に、熱くて固いものが入り込んで……。これが、男女の交わりというものなのですか?」
「ああ、そうだ。……ちっと動くから、痛くなったらすぐに言えよ」
「え、動くって……? あ、あっ!?」
コングマンがずるりと腰を後ろに引くと、亀頭のカリに内奥を引っ掻かれ、フィリアは大きく背を反らした。
フィリアの膣内は、彼女の意思とは無関係にコングマンの男根に纏わりつき、搾り取るように喰らい付く。
「どうだっ……、フィリア、痛く、ねぇかっ……?」
「ふうっ、あっ、わたっ……わたくしっ……よく、分からな……んふぅっ!」
コングマンは、フィリアの中を往復しながら、もう一度彼女に確認した。
自分を持て余したフィリアは、どうしていいか分からない様子で、瞳を潤ませながら軽くかぶりを振る。
最初は痛いほどに締め付けて来た彼女の中は、異物に慣れてきたらしく、徐々に余分な力が抜けていく。
まるで壊れ物を扱うように、コングマンは静かに同じ調子で、フィリアの中を貫き続けた。
◇ ◇ ◇
(あっ……? な、何ですの、この感じ……)
最初に乙女の証を破られてから、どれだけの時間が過ぎたのか分からなくなった頃。
ただコングマンの動きを受け入れていたフィリアは、身体の奥から沸き上がる甘美な感覚に気付いた。
それは、彼女の内奥をずくんと疼かせ、次第にじんじんと下腹部全体に広がってくる。
体験した事のない身体の異常に、フィリアは軽い恐怖を覚えた。
「コッ、コングマン、さんっ……。わたくし、なにか、変なんですっ……」
「んっ? どうした、フィリア?」
舌が回らず、たどたどしい声で囁くフィリアに、コングマンは動きを止めて問いかけてきた。
動きが止まると、疼きはそれ以上の拡大をやめたが、代わりに切ないような、寂しいような情動が芽生える。
自分の身体に何が起こっているのか判らぬまま、フィリアは感じた通りの事をコングマンに告げた。
「何だか、コングマンさんが動くたびに、お腹の中がじんじんしてきますの……。
でも、こうして動かないでいられると、今度は切なくなって……。わたくし、どうしてしまったのか……」
するとコングマンは、笑いを堪えるような表情になり、フィリアの頭を撫でながら、優しく答えた。
「……それが普通なんだよ。別に、嫌な気分じゃねぇんだろう?」
「はい……。ですけど、自分が自分で無くなってしまいそうで、少し怖いんです……」
「別に、それぐれぇで変わりゃあしねえよ。今度は、その疼きに意識を集中してみな……」
そう告げるとコングマンは、先程よりも早いペースで、前後の動きを再開した。
その途端、あの甘い疼きがフィリアに襲い掛かり、彼女の意識を揺さぶった。
フィリアは言われた通り、自分の下腹部に沸き起こる感覚に集中し、それを受け入れる。
すると、痺れは全身に広がり、無意識のうちに彼女の口から大きな喘ぎ声が零れ出した。
「あっ、だっ、だめっ、コングマンさんっ、こえっ、でちゃいますっ……くうぅん!」
「いいんだぜ、それで……。どうせ俺様以外に、聞いてる奴なんていないしな……」
「いやですっ、こんな、こんなっ、はしたない、こえっ……、やあぁんっ!」
必死に口を押さえようとするが、手にはまるで力が入らず、口は他人のもののように言う事を聞かない。
自分の嬌声にますます興奮を高められ、フィリアの全身が快楽の炎に炙られていった。
「あっ、やっ、はっ、……? コングマンさん、どうされたのです?」
「いや、ちょっと体位を変えようと思ってな」
急に動きを止めたコングマンに、フィリアがいぶかしげに問いかけると、彼は玉のような汗を流しながら答えた。
「たい、い……ですか? それは一体……な、何をなさるんですの!?」
いきなり片足を持ち上げられ、フィリアは慌てて問い質した。
この格好では、コングマンと繋がっている部分が、彼の目線に剥き出しになってしまう。
思わず抵抗しそうになる前に、コングマンはフィリアの身体をくるりと半回転させ、うつ伏せの状態にする。
更にフィリアの中を貫いたまま、軽々と彼女の身体を抱え上げ、あぐらを組んだ足の間に座らせる。
フィリアが気付いた時には、背中をコングマンの胸板に預けて、身体全体をすっぽりと抱き寄せられていた。
「あっ、あの、これは……?」
「俺様は、この格好が一番好きなんでな。じゃ、続けるぞ」
「えっ、ちょ、ちょっと待……あっ!? なっ、これ、さっきと違……うぅん!」
最初は戸惑っていたフィリアだったが、コングマンが身体を揺すり出すと、たちまち抗う気を無くした。
先程までとは違う角度で出入りする剛直は、こなれてきた彼女の膣内を、狂おしいほどに刺激する。
「あっ、やっ、だめですわっ! わたくし、こんなっ……!」
「ほんとに、いやか、フィリア?」
「そっ……そんなことっ、訊かないでっ……くださいっ!」
耳元に優しく囁かれて、フィリアは自分の淫らな表情を隠すかのように、顔を伏せた。
コングマンの片手は、両の乳房の間を往復し、切なく隆起した乳首ごと、押し潰すように捏ね上げる。
残った手は、下腹部を支えるように押さえながらも、指先は茂みを掻き分け、最も敏感な肉芽をつつく。
それぞれの場所から注ぎ込まれる快感が一つになり、フィリアは耐え難い官能に飲み込まれた。
「んあっ、ああっ、コングマンさんっ! もっと、もっと強く抱いて下さいっ……!」
「っ……! フィリア、フィリアっ……!」
コングマンはフィリアの求めに応じ、背後から彼女の細い身体をぎゅっと抱き締めた。
快楽に逸らされた背中が、コングマンの固い胸板に触れ、彼の激しい動悸が伝わってくる。
触れ合った肌の全てから、彼の愛情と優しさが染み込んできて、フィリアの心の傷を埋めていく。
かつてない安らかな気分になり、フィリアの両足は段々と開き、女の悦びが開花し始める。
コングマンの膝の上で、跳ねるように何度も突き上げられたフィリアは、急速に絶頂へと向かっていった。
「んんっ、だめですぅ、わたくしっ、おかしく、おかしくなって、とんでいきそうっ……!」
フィリアは首を捻り、背後のコングマンの顔を見上げて、鼻に掛かった声で訴えた。
「くっ……。俺様も、そろそろヤバいぜ……」
コングマンは、フィリアの意識を繋ぎ止めるようにきつく抱き締めながら、苦しげな呟きを洩らした。
上下の動きがますます激しくなり、フィリアの脳裏に白い火花が際限なく咲き乱れる。
津波が来る前の海岸に立っているような、恐ろしいまでの予兆が、彼女の胸を締め付ける。
「や……、あ……、あっ、あああぁぁっ!!」
「くっ、やっ、やべぇっ!」
一気に押し寄せた初めての絶頂に、フィリアは断末魔のような悲鳴を上げた。
ビクッ、と中で蠢いた剛直が慌てて引き抜かれ、彼女の下腹部に熱い飛沫が降りかかる。
天上にいるようなふわふわとした余韻に浸りながら、フィリアの意識は遠くなっていった。
◇ ◇ ◇
コングマンは、失神したフィリアを寝かせ、肩まで布団を掛けてやると、ベッドから降りて服を身に付けた。
このまま朝まで抱き締めて、ノイシュタットに連れ帰りたいという思いはあるが、それはぐっと堪えた。
実際のところ、傷心のフィリアをこうして何度も慰めていれば、彼女の心を自分に向けさせる事は充分に可能だ。
しかし、そういった相手の弱みに付け込むような口説き方は、断じてコングマンの流儀ではなかった。
相手がどれほど手強くとも、真正面から全力でぶつかり、決して卑怯な手段は使わない。
良くも悪くも、コングマンはそう言う生き方しか出来ない、不器用な男だった。
(まぁ、こいつの魅力に、危うく流儀を曲げるとこだったがな……)
コングマンは、枕元に椅子を引き寄せ、フィリアの寝顔を覗き込みながら、そっと彼女の髪を撫でてやる。
そのうちに、フィリアの瞼がびくびくと動き、薄く開いた瞳が彼の方を向いた。
「あ……、コングマン、さん……」
「よぉ、お目覚めかい、お姫さん?」
フィリアが目を覚ましたと見るや、コングマンは内心の葛藤を押し隠し、陽気に声を掛けた。
「あの、わたくし、コングマンさんに……」
「どうだ、ちったぁスタンへの気持ちに、ケリはついたか?」
彼女の言葉を遮るように、コングマンはわざとスタンの名前を口にした。
──もしも好意的な言葉を掛けられたら、今度こそ自制する自信が無かったから。
コングマンの狙い通り、フィリアの顔は複雑な思いに翳り、しばらく思い悩んだ挙句に、彼の言葉に答えた。
「……まだ、完全には諦め切れていない、と思います……。でも、ちょっとだけ、楽になれた気もしますわ」
「そいつぁ良かった。それでこそ、俺様も頑張った甲斐があるってもんだ」
「コングマンさん……」
彼女の真摯な視線に耐え切れなくなり、コングマンは立ち上がって、部屋のドアへと歩み寄った。
「じゃ、俺様は朝まで酒盛りの続きをすっから、おめぇはそこでゆっくり眠んな」
「あっ、あのっ、コングマンさん!」
ドアから身体が出たところで、フィリアから呼び止められて、コングマンはピクリと硬直する。
「わっ、わたくし、まだ未熟で、他の男性の事は、しばらく考えられそうにないんです……。
ですけど、もし気持ちの整理がついたら、その時は……」
勘違いするなよ、とコングマンは自分に言い聞かせた。
今のフィリアは、彼女を慰めた事に対する感謝と、彼の気持ちに気付いた罪悪感からそう言っているだけだ。
第一、年の差を抜きにしても、チャンピオンの自分と敬虔な神官である彼女とでは、住む世界が違いすぎる。
コングマンは、出来る限りおどけた口調で、フィリアの言葉に答えた。
「へっ……そうだな。もしそん時に、周りにいい男がいなかったら、俺様が嫁にもらってやるよ」
「……それも、冗談ですか?」
フィリアは、まるでコングマンの心を見透かしたかのように、切なげな口調で問いかけてきた。
本気だ、と言う言葉が喉まで出かかるが、奥歯を噛み締めてそれを飲み下す。
「……ああ、冗談だ」
フィリアの方を振り向かずに、コングマンは苦心して軽い口調で答え、後ろ手に部屋のドアを閉める。
そして、今夜の酒は苦くなりそうだ、と思いながら、ゆっくりと誰もいない食堂へ歩み去った。
前のページへ戻る