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作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
セイファートの試練 |
サザム氏 |
リッド×ファラ |
2003/03/31 |
- |
「よくぞ、第一の試練を乗り越えたな」
セイファートの使者は、低く響くような声でそう告げた。
ここはセイファート神殿の試練の間。リッドは極光術を会得する為に、ここに来ていた。
「では、次の試練だ。心の準備はいいか?」
「ああ。どんなに厳しい試練でも、必ず超えてみせるぜ!」
念を押すように尋ねる使者の問い掛けに、リッドは力強く答える。
「よかろう。では、行くが良い」
その言葉と共に、リッドは強い光に包まれ、意識を失っていった……。
◇ ◇ ◇
リッドが意識を取り戻すと、そこは大きめの湯船が置かれた、風呂場の中だった。
(あれ? 身体が動かせないぞ?)
エッグベアになった時は、ある程度自分の意思で動く事が出来たのだが、今回は違うようだ。
裸の肌に当たる湯気の温かさや椅子の感触は自分の身体のように感じるものの、全く身体を動かせない。
(それにここ、何だか見覚えがあるぞ……)
何処か素朴な板張りの壁は、故郷のラシュアン村に良く見られる建築様式である。
リッドが思い出そうとしていると、勝手に身体が動き、視線が移動する。
そこで、いきなり裸のファラと目が合い、リッドは驚いた。
(ファラ!? ……じゃない、これは、鏡?)
自分の意識の宿った体が動き、鏡を拭うと、ひんやりとした感触が手の平から伝わる。
(俺、今度はファラになってるのか?)
ファラは、鏡の曇りを手で落とすと、じっとそこに写った自分の身体を見詰める。
鍛えられた細身の裸体を、彼女自身の視点から見るという初めての経験に、リッドは戸惑っていた。
「あーあ。何で私の胸、なかなか大きくならないのかな……」
ファラはそう呟くと、両手で自分の胸を持ち上げ、きゅっと谷間を作るように寄せた。
リッドの意識に、まだ少し硬さの残る、少女の膨らみの感触が伝わる。
(こっ、この台詞は……!)
しかし、リッドはその感触よりも、先程ファラが呟いた台詞の方に気を取られていた。
なぜなら、リッドはこの状況とその言葉に、心当たりがあったのだ。
(まずいっ! おい、セイファートの使者、今すぐ戻せっ!)
リッドの意識は焦ったが、勿論それに答える声は無い。
その時、背後で扉の開く音と共に、良く知っている口調の男の声が投げかけられた。
「おいファラ、またそんな事言ってんのか?」
「きゃっ!? ……なぁんだ、リッドか」
慌てて身体を隠したファラは、背後を振り返ると、ホッとした様子で身体の力を抜く。
そこに立っていたのは、素っ裸でタオルを肩に掛けた、リッド本人の姿だった。
(やっ、やっぱりっ……!)
ファラの中にいるリッドの意識は、予想通りの展開に、頭を抱えたい気分になった。
◇ ◇ ◇
リッドとファラがこう言う関係になったのは、もう一年以上も前の事だ。
ファラの16歳の誕生日に、二人で見晴し台に登り、そこで初めての契りを交わしたのである。
最初の内は痛がるだけだったファラも、一ヶ月もするうちに身体を開花させ、絶頂を知るようになった。
この状況は、メルディと出会う数ヶ月前、リッドが狩りから帰ってきた時の再現に間違い無い。
この頃には、ファラはリッドが誘う前に自分から求めるほど、開けっ広げな態度に変わっていた。
しかし、いくら身体の馴染んだ間柄でも、自分自身に『抱かれる』のは願い下げである。
リッドはファラの身体の中で、自由の利かない状態に、身悶えせんばかりの思いであった。
◇ ◇ ◇
一方、そんなリッドが体に宿っているとは知りもしないファラは、過去のリッドに文句を言っていた。
「んもう、リッドったら、びっくりさせないでよ!」
「わりぃわりぃ。でも、いくら俺だからって、少しは恥らってもいいんじゃねぇか?」
「ふーんだ。お尻まで許しちゃったリッドに、今更恥ずかしがっても、しょうがありませんよーだ!」
苦笑するリッドに、ファラは大きく舌を出しながら、そう憎まれ口を叩く。
しかし、ファラの中にいるリッドには、彼女の動悸が激しくなっているのが、直接感じられた。
「へいへい、分かったよ。それよりファラ、背中洗ってくれよ」
過去のリッドは諦めたようにそう言うと、小さな椅子を引き寄せ、ファラに背中を向ける。
自分で自分の背中を見るという不思議な状態に、ファラの中のリッドは夢の中のような違和感を覚えた。
「もー、いつも勝手なんだから」
ファラは文句を言いつつも、タオルに石鹸を擦りつけ、泡を立てていく。
そんなファラの方を首だけ捻って振り返ると、過去のリッドはニッと笑いつつ、彼女に告げた。
「タオルじゃなくってさ。この間のアレ、またやってくれよ」
「ええっ!? あ、あれ、またするの?」
その途端、ファラの頬がカッと熱くなるのを、彼女の中のリッドは感じる。
自分の締まりの無い顔を見せられて、ファラの中のリッドは、穴があったら入りたい心境であった。
「駄目か?」
「駄目……じゃないけど、あれ、そんなに気に入ったの?」
「だから言ってるんだよ。な、いいだろ?」
「……分かったよ、やってあげるから、あっち向いてて」
リッドの言葉に胸を高鳴らせながら、ファラは泡立てた石鹸を、自分の体の前面に塗っていった。
(うわっ! 何だこれ、気持ちいい……)
ぬるぬるした手が胸を這い、引き締まった胴体を降り、下腹部の茂みまで泡を行き渡らせる。
ファラの快感が直に伝わり、彼女の中のリッドは、その甘美な衝動に驚きの思いを発した。
「じゃ、行くよ……。んっ、ん……」
ファラは、リッドの肩に軽く湯を掛けると、広い背中に抱きつくようにして、自分の身体で洗い始めた。
小振りな二つの膨らみが、リッドの引き締まった背筋に押し潰され、柔らかく形を変える。
(うっ……。俺も気持ちいいと思ってたけど、ファラもこんなに気持ち良かったんだ……)
当時は自分の快感の為に要求した行為が、彼女にどれだけ快楽を与えていたかを知り、リッドは驚いた。
「ファラ、もっと強く擦ってくれ」
「んっ……、こう?」
背中に強く抱きつき、円を描くような動きで乳房が形を変える度、背筋に痺れるような快感が沸き起こる。
先端の突起が次第に固くなっていく感覚に、ファラの中のリッドは陶然となった。
「んっ? ファラ、背中に硬いものが当たってるぞ。感じてきてんのか?」
「んふっ、良く言うよ……。リッドだって、ここ、こんなにしてるじゃない……」
「あっ、こらっ!」
ファラが背後からリッドの股間に手を伸ばすと、そこは既に大きくなっている。
泡にまみれた細い指でそこを擦られ、リッドはビクンと身体を震わせた。
「ほら、こっちの方、すごく熱くなってるよ……」
ファラはリッドの耳元に囁きながら、ゆっくりと上下に逞しい肉棒をこすった。
ファラの脳裏に、愛しい人が自分の手の中で興奮している歓びが、激しく沸き上がる。
(くっ……、何で、自分のモノを触って、こんな気分にならなきゃいけないんだ!)
ファラの心と繋がっているリッドは、彼女の意識から流れ込んでくる感情に、強く抵抗した。
◇ ◇ ◇
「……こいつっ!」
「きゃん!? リ、リッド!」
いきなり腕を引き寄せられて、ファラは驚きの声を上げた。
リッドは、ふざけて怒った振りをしながら、ファラの身体を抱き寄せたのだ。
倒れ込んだファラは、ちょうど椅子に座ったリッドの腿に、背中を向けて座る格好にさせられた。
「なっ、何するの?」
「今度は、俺がファラの体を洗う番だろ?」
「えっ!? わ、私、そんな事してもらわなくても……」
言いよどむファラをよそに、リッドは両手で石鹸を擦り、泡を立てていく。
そして、背後から抱きすくめるように、ファラの胸に手を伸ばした。
「遠慮するなって。俺が綺麗にしてやるから」
「やっ、遠慮とか、そう言うんじゃなくて……んんっ!」
リッドの膝から立ち上がろうとしたファラは、両手で優しく胸を揉まれて、たちまち甘い声を上げた。
石鹸でつるつると肌の上を滑るリッドの指が、ファラの二つの膨らみをを的確に攻め立てる。
(うわっ、よせっ、やめろ、俺っ!)
敏感な女の身体から生じる快感に、ファラの中のリッドは混乱した叫びを漏らす。
男の時よりも遥かに強い快楽に、リッドの意識は掻き乱されていった。
「んっ……。何で、こんなにリッドに揉まれてるのに、大きくならないのかな……?」
「まだ言ってるのか? 俺は、この位の大きさが好みだって、言っただろ?」
「リッドの好みは関係ないの! んんっ、女の子はやっぱり、そういうの気になるんだから……っ!」
「分かった分かった。じゃ、少しでも大きくなるように、俺も協力してやるよ」
「んっ、やはっ、あっ!」
リッドはそう答えると、ファラの胸を寄せて上げるような動きを、何度も繰り返した。
張りのあるファラの乳房が、リッドの手の中にすっぽりと納まり、ふにゅふにゅと形を変える。
手の平で双丘の柔らかさを堪能しながら、指先でこりこりと先端の蕾を刺激する。
きゅっと軽く握り締めると、石鹸のぬめりのせいで、リッドの指からつるりと逃げるように動く。
沸き上がる快感に、ファラはリッドの膝の上で、もぞもぞと動き始めた。
「ほら、暴れると、ちゃんと洗えないだろ?」
「だっ、だって、リッドさっきから、私の弱いとこばっかり……くうっ!」
リッドの膝の上で、ファラは次第に股を広げ、ふるふると震え始めていた。
リッドは、もたれかかってくるファラの身体を支えながら、彼女の身体を撫で回す。
しかし、ファラの最も敏感な部分には、決して手を触れなかった。
下腹部に降りた指先は、もう少しで花弁に触れるという所で脇に逸れ、内股へと滑る。
そこをさわさわと刺激してから、再び茂みの脇を通り過ぎ、臍から胸へと動く。
その動きを何度も繰り返される内に、ファラの中のリッドにまで、耐え難い欲求が響いてきた。
「やだっ、やだよぉっ……。リッド、焦らさないでったら……」
(そうだっ! こんなっ……こんなの、耐えられないっ!)
過去に自分がした事である事実も忘れて、ファラの中のリッドは彼女の意見に同意する。
しかし、ファラを攻めるリッドは、茂みの周りを撫でながら、尚もからかうように言った。
「何だ、ファラ? ちゃんと言わないと分からないぞ?」
「んっ、イジワルっ、わっ、分かってる、くせにぃ……」
ファラはねだるような声を上げながら、腰を動かして、尻に当たっているリッドのモノをぐりぐりと刺激した。
熱くて硬い怒張の感触が、焼け付くような情欲を掻き立てる。
すでに、ファラの脳裏には更なる刺激を求める想いが渦を巻き、花弁は耐え難いほど疼いていた。
「まったく、ファラはエッチだな。……ほら、ここがいいんだろ?」
「ひんっ!? あっ、そう、そこなのっ……!」
(うあっ……!)
言葉と共に、花弁につぷっと指を入れられて、ファラは一際高い声を上げた。
今まで経験した事の無い快感に、リッドの意識も激しく反応する。
既に濡れ切っていたファラのそこは、リッドの指を易々と飲み込み、奥に誘うように蠕動した。
「このぬるぬるは、石鹸じゃないよなぁ、ファラ?」
「いやっ、ばか、知らないっ!」
少し粘り気のある雫を掻き出すようにしながら、リッドはファラの様子を伺った。
リッドの言葉に羞恥心を刺激され、ファラは頬を染めて顔を逸らす。
「そうそう。そうやって恥ずかしがってるファラ、すげー可愛いぜ……」
「やっ! そんな事、耳元で言っちゃ、いやっ!」
リッドの甘い囁きに、ファラはますます恥ずかしさを覚え、胸の奥が切なくなる。
ファラの昂りと共に、花弁の奥は更に湿り気を増し、細かい肉襞がリッドの指に絡みついた。
(うわっ、すげぇっ……! お、女の身体って、こんなに感じるのかよっ……!)
一方、ファラの中に宿るリッドは、彼女の快感を直に注ぎ込まれ、激しく翻弄されていた。
身体の中を抉る指の心地良さは、男であった時には想像もつかなかった高みにある。
襞の一つ一つが奏でる、立て続けの快楽。
身体の内部に生えた数十本の男根を一度に指で刺激されれば、これに近い感覚になるだろうか。
身体の奥底から響くような熱い疼きに、リッドの自意識は次第にファラのそれへと同調してゆく。
自分自身に愛撫されているという違和感も、徐々に薄れてゆく。
(畜生っ、抵抗、できねえっ……!)
ファラの中のリッドは、初めて感じる女としての悦びに、我を忘れていった。
◇ ◇ ◇
「んっ、くっ……、は、くちゅん!」
しばらくリッドに弄ばれていたファラは、ぷるっと身体を震わせると、小さなクシャミを漏らした。
「おいおい、えっ……ぷしょい! うう、俺もちょっと冷えてきたな……」
「あっ、やっ、やめちゃいやぁ……」
自身も寒気を感じたリッドは、ファラの中から指を引き抜き、身体を離した。
床にペタンと座り、名残惜しげに呟くファラに、湯船から桶で汲み取った湯を掛けて、泡を流していく。
続けて自分の身体もざっと洗い流すと、ファラの身体を抱き上げ、湯船に近寄っていった。
「やっ、ちょっとリッド、こんなの恥ずかしいったら!」
姫君のように抱えられ、ファラは顔を真っ赤にしながら、リッドの腕の中で身悶えた。
「続きは、湯船の中でしようぜ」
リッドはそう言いながら、湯船の淵をまたぎ超え、腰を降ろしていく。
二人の身体に押し退けられ、溢れた湯が滝のように流れ落ちた。
「もぉ、お湯がもったいないじゃない。……それに、ちょっと狭いよ?」
確かに、大きめに作られているとは言え、二人も入ると湯船はほぼ一杯になっている。
ゆったりと足を伸ばすどころか、互いに足を絡ませて、どうにか一緒に入っている状態だった。
「わかったよ。じゃ、こうすれば狭くないだろ?」
「きゃっ! リッド、何て格好するのよ!?」
眼前に大きくそそり立った剛直を突き出されて、ファラは思わず顔を覆った。
リッドは両足を湯船の淵に引っ掛け、ファラの前に腰を出すように、身体を浮かせたのだ。
(げっ、み、みっともねぇ……)
指の間から覗いたファラの目には、竿と袋だけではなく、その後ろの菊座までが露わになっている。
客観的に自分の醜態を見せ付けられて、ファラの中のリッドはげんなりとした。
「まぁ、いいじゃねーか。丁度いいから、このまま口でしてくれよ」
「何が丁度いい、よ。最初っから、そのつもりだったんでしょ?」
「へへっ、バレたか」
「ほんとにもう、しょうがないなぁ……」
そう口では文句を言いつつも、ファラの脳裏には激しい欲望がこみ上げていく。
(おいっ!? たっ、頼む、それだけはやめてくれっ!)
ファラの中のリッドは、誰にも聞こえぬ声で、激しく叫んだ。
いくら自分のモノでも──いや、自分のモノであるから尚更、男の性器を咥えるのは抵抗がある。
しかし、リッドの必死の思念も、ファラの心には伝わらない。
ファラは反り返った剛直を片手で引き寄せると、慣れた動きでそれを口の中に含んだ。
「んっ、ふむっ、んん、ちゅっ……」
(ああ、やっちまった……)
嘆くリッドの思念を知らぬまま、ファラは肉棒の半ばまでを咥え、舌を使い始めた。
唇で茎をこりこりと押し潰しながら、先端の傘の部分を、愛しげに嘗め回す。
力を込めた舌先で鈴口をくすぐると、その割れ目からじわりと先走りの汁が滲み出す。
ファラはぬるぬるとしたそれを傘全体に伸ばすようにしてから、綺麗に舐め取り、嬉しげに飲み下した。
(うっ、変な味……。ファラ、よくこんなの飲めるよな……)
リッドの意識はそう思ったが、ファラの意識からは、喜びの思念しか伝わってこない。
先程の気乗りのしない様子も忘れたかのように、ファラは口技に没頭していった。
「ふむっ、んっ、んっ……。んぷっ、ちゅ、んんっ……」
「くっ、ファラ、気持ちいいぜ……」
「ん……、そう? じゃ、もっとしてあげるね……。じゅぷっ、じゅっ、ちゅうっ……」
「うあっ!」
リッドの言葉に気を良くしたファラは、わざと音を立てるようにして、頭を前後に振った。
駆け巡る快感に、リッドの身体がビクンと震える。
自分の髪を優しく撫でるリッドを更に喜ばせたくて、ファラは懸命に舌を使い、唇をすぼめる。
その行為は、リッドだけではなく、ファラの官能まで高めていく。
しばらく続けているうちに、ファラの下腹部は焼け付くように疼き、口の中のモノを求め始めていた。
「ねぇリッド、私も欲しくなっちゃったの……。お願い、リッドのこれ、ちょうだい……」
ファラは剛直から口を離すと、そそり立ったモノを愛しげに撫でながら、欲望に濡れた瞳を上げた。
リッドの方も、ファラの舌技に欲求を高められ、情欲に支配された雄の目をしている。
「ああ、いいぜ……。俺からする方がいいか?」
「ううん。今日は、私にやらせて……」
再び湯船に腰を降ろしたリッドが問うと、ファラは軽く首を振り、自分からリッドの腰に足を絡める。
正面から抱きつく体勢になると、リッドの先端を指で押さえ、自分の秘所へと導いていく。
(まっ、待ってくれ! まだ、心の準備が……)
リッドの意識が焦る間に、ファラは自分の入り口に熱くたぎった肉棒を宛がう。
そして、そのまま腰を降ろすようにして、リッドの剛直を体内に招き入れた。
◇ ◇ ◇
「あっ、ああっ!」
(うあああぁっ!)
ファラが甲高い声を上げると同時に、リッドの思念は絶叫した。
指でされた時とは違い、狭い膣内の全ての襞が、熱い肉棒に撫で上げられる。
ただ挿入しただけの動きに、しかしリッドの意識は、男の時の絶頂を遥かに上回る快楽を受けていた。
「じゃあ、動くよ、リッド……」
(あっ、まっ、待ってくれ、ファラっ……!)
自分に掛けられた声では無いのも分からぬまま、ファラの中のリッドは答えた。
けれど当然その思念は、ファラの意識には届かない。
ファラはゆったりとした動きで、腰を前後に使い始めた。
「んっ、ふっ、くっ……、いいよぉ、リッド……」
(うあっ、止めっ、止めてくれっ、ファラっ!)
慣れているファラはまだしも、女の快楽を初めて経験するリッドにとって、その刺激は余りに激しすぎた。
大きく張り出した傘の部分が襞を擦るたび、強烈な電撃を浴びたかのような快感が襲い掛かる。
しかも、女の快楽は男のそれとは違い、射精よりも高いレベルのまま延々と続き、更に高みへと向かうのだ。
「ほんとに、最近のファラ、積極的になったよな……」
「んんっ、何言ってんのよ……。私をこんなにエッチにしちゃったの、リッドじゃない……」
感心したように呟くリッドの言葉に、ファラは男の快楽中枢を直撃するような、甘い声を漏らす。
リッドの想像すら及ばない高みの中で、けれどファラの身体は、まだ足りないとばかりに動きを早める。
(誰かっ……、誰か、助けてくれっ……!)
思考を消し飛ばすほどの快感の中で、リッドの意識は必死に助けを求めていた。
「えっ!? あっ、誰っ?」
「んっ? どうした、ファラ?」
ファラの動きに腰を合わせながら、リッドは訝しげに問いかけた。
「あんっ、くっ、何だか私の中に、誰かがいるみたいな、気がしてっ……」
ファラは妖しく腰をくねらせながら、戸惑いがちに答える。
(つっ、通じたのか!? ファラ、頼む、止めてくれっ!)
快楽に翻弄されつつも、ファラの中のリッドは力を振り絞って呼び掛けた。
「んで、それがどうした?」
「それでっ、分からないけどっ、そのせいで、いつもよりっ、感じるのっ、んんっ!」
(なっ、何だよ、それっ!)
どうやら、中にいるリッドの快感だけが、ファラの意識に届いているらしい。
自分の声が届いていない事を再確認し、リッドの意識は激しく落胆した。
「ああっ、こんなの、すごい、すごいよっ……!」
「おい、大丈夫か?」
余りに激しい乱れ様に、リッドが心配そうな声を掛ける。
しかし、二人分の快楽に我を忘れたファラの耳には、その声も届かない。
ばしゃばしゃと湯を波打たせながら、一層素早く腰を打ちつけた。
「あああっ、だめっ、もう、イッちゃう、イッちゃうぅっ!」
(うああっ、だめだっ、何か、来るっ……!)
津波のように襲い来る高まりの予兆に、リッドの意識が脅えたように震える。
精神が弾けるような快楽に、リッドの意識はファラのそれと同調していく。
ファラはリッドの首に強く抱きつきながら、これで最後とばかりに細かく腰を動かした。
「だめっ、もうっ、イッ……くうううぅん!!」
(うあああぁっ!!)
真っ白な光に飲み込まれるような幻覚を見ながら、リッドの意識は快楽の極みへと登りつめていった。
◇ ◇ ◇
(あれっ、俺、まだここにいるのか?)
「あれっ、私、まだここにいるの?」
数十秒ほどの失神の後、リッドの意識は再びファラの中で覚醒した。
しかし、先程までの状態に比べ、より感覚が鮮明になった気がする。
そればかりか、口調こそファラのものに変わっているとは言え、思った通りの言葉がファラの口から漏れる。
試しに片手を握り締めると、自分の身体と同じように、思い通りに動いた。
(もしかして、さっきのショックで入れ替わったのか?)
「もしかして、さっきのショックで入れ替わったの?」
ぼんやりと風呂場の壁を眺めながら、リッドの意識はファラの身体を使ってそう呟いた。
ファラの意識はすでに感じられず、自分の意識だけがこの身体を支配している。
やっと自由を取り戻して、リッドの意識は安堵の溜息をついた。
「良かった……。あのままだったら、どうなってたか……」
「おっ、ファラ。気が付いたのか?」
「えっ!? う、嘘っ!?」
ホッとしたのも束の間、耳元にそう呼び掛けられて、リッドの意識は今の自分の状況を瞬時に把握した。
過去の自分の身体にしっかりと抱きつき、その胸にもたれかかった体勢である。
快楽の余韻に痺れる秘洞は、硬くて熱い剛直に刺し貫かれたまま。
この状況で身体の主導権を渡されると言うことは、完全無欠に、『自分自身に犯される』と言うことだ。
どう考えても先程よりマズい状況に、リッドの宿ったファラの顔がサァーッと青ざめた。
「まったく、一人でイッちまうんだもんな。じゃ、第二ラウンド開始と行くか」
「ちょ、ちょっと待ってっ!」
腰を動かそうとしたリッドを制し、ファラの中のリッドは慌てて叫んだ。
一度絶頂を迎えたファラの足腰は、快楽の余韻に痺れ、ろくに力が入らない。
壁に両手を突いて上体を起こし、見慣れているはずの自分の顔を、真剣に見詰めて言った。
「あのね、信じられないかもしれないけど、今の私は、リッドなの!」
「……はぁ? ファラ、お前なにを言ってるんだ?」
ファラの中にいるリッドの言葉に、その身体を抱いているリッドは、訳が分からないと言いたげな表情をした。
「だからっ、自分に抱かれるなんて、そんな異常な事は嫌なのっ! 分かるでしょ!?」
「……いや、全然わかんねー」
「ああん、もうっ! どう言ったら分かってくれるのっ!」
(ああっ、くそっ! どう言や分かるんだよっ!)
自分自身とのコミュニケーションが取れず、リッドの意識は身悶えせんばかりであった。
男言葉で話せれば、異常に気付いてもらえるかも知れないが、何故か口調はファラのものに変換されてしまう。
この状態では、さすがにこの状況を納得させる事は出来そうにない。
(まさか、これが試練って訳じゃ無いだろうな!?)
リッドの意識は、こんな状況に突き落としたセイファートの使者を、八つ裂きにしてやりたい気分だった。
「……ファラ。冗談にしても、笑えねえぞ、それ」
「あーんっ、冗談じゃないんだってばぁ!」
少し眉をひそめて呟くリッドに、ファラの中のリッドは半泣きで訴えた。
「それに、知らねえだろうけど、男はこうなったら、そう簡単に止められないんだぜ」
「うっ……。そ、それは、良く判ってるけどぉ……」
何しろ、他ならぬ自分自身の事である。
こんな半端な状態で止められるものでは無い事ぐらい、充分理解している。
ファラの中のリッドは懸命に知恵を振り絞り、この窮地を脱出する方法を考え出した。
「あっ、じゃあ、手でしてあげるから、それで我慢して、ねっ!」
「………………」
しかし、リッドは更に眉を歪め、不機嫌そうな顔になる。
「そっ、それじゃあ、くっ……口で、してあげるから、お願い、許してっ!」
ファラの中のリッドは、最大限の譲歩をして、ファラの腰を離そうとしないリッドに懇願した。
「分かったよ……」
「えっ! ほ、ほんとっ!?」
ようやく通じたと表情を明るくするリッドの意識は、もう一人の自分の不穏な様子に気付かなかった。
「ああ……。そーゆー薄情な事を言う奴には、お仕置きが必要だってことがなっ!」
「きゃあっ!?」
両足の付け根を掴んだまま、リッドが勢い良く立ち上がり、ファラの腕は反射的にリッドの首にしがみ付いた。
ファラの下半身を両手と腰で支えるような形で、リッドは中腰の姿勢になる。
今までよりも深い場所にまでリッドの先端が届き、ファラの中のリッドは突き抜けるような快感を感じた。
「あっ、だめっ、奥まで来てるよっ……!」
「これだけでそんなに感じてたら、お仕置きには耐えられねえぞ……」
「えっ、なにっ!?」
ファラの身体を抱き上げたリッドは、そう呟くと、片手の指をそろそろと動かす。
その指が、ファラの菊座に触れ、彼女の中のリッドは、過去の自分の意図を正確に把握した。
「まっ、まさか、一緒にする気っ!?」
「そうだよ。だから、お仕置きだって言ったろ?」
「やっ、やめてっ! お願いだから、それだけはやめてっ!!」
意地悪げな表情をする自分の顔に、紛れも無い本気を感じ取り、ファラの中のリッドは恐怖に喘いだ。
この日の一ヶ月ほど前、リッドは前と後ろを同時に刺激したらどうなるか、試したことがあった。
前の穴を犯しながら、指を菊座に挿入し、ファラの反応を伺ったのだ。
その時のファラは、まるで気が狂ったかのように悶え、立て続けに絶頂を迎えた。
最後には完全に失神し、その日一日はベッドから起き上がれないほどの快感を受けたのである。
その後、もう絶対にしないと約束させられた行為を、今のリッドはやろうとしている。
快楽に慣れているファラが拒絶した程の快感を受けたら、自分の意識がどうなってしまうか分からない。
ファラの中のリッドは、想像すら出来ない快楽の予感に、まさしく乙女のように恐れ慄いた。
◇ ◇ ◇
「でも、ファラの身体は、いやだって言ってねえぞ」
「ひんっ! やっ、触らないでっ!」
軽いタッチで後ろの穴の入り口を撫でられると、ファラの身体はビクンと跳ね上がった。
その中のリッドの意識は、ぞくぞくするような快楽を耐えるように、ぎゅっとリッドの背にしがみ付いた。
「ほれ見ろ。じゃ、さっそく行くぞ」
「やぁっ、おねが……いいぃっ!」
再び懇願しようとするファラの言葉を遮るように、リッドは軽く腰を動かし、同時に指を菊座に挿入した。
リッドの意識に反し、馴らされているファラのそこは、するりと指の侵入を許す。
たったそれだけの動きで、開発されたファラの身体は、軽い絶頂をリッドの意識に送り込んだ。
「もうイッたな? ファラのあそこ、きゅって締まったぜ」
「ひんっ! ひっ、いっ、んっ!」
自分にきつく抱きついたファラに、リッドは愛しさを込めた囁きを掛けながら、本格的に攻め立て始めた。
軽い屈伸をするような感じで、膝から上を上下に揺すりつつ、菊座の中の指を蠢かせる。
マグマのように熱く粘り気のある快感が前後の穴から噴出し、ファラの身体の神経を灼き焦がす。
リッドの意識はすぐに訪れた絶頂に早くも音を上げ、まともな言葉を紡げなくなった。
「可愛いぜ、ファラ……。もっとお前の声、聞かせてくれよ……」
「ひうっ! だめっ、またくるっ、んんんっ!」
リッドは、少しずつ腰の動きを早めながら、指を何度も出し入れして、更なる快感を誘った。
浅く、浅く、深く。 浅く、浅く、深く、より深く。
指と腰の動きを不規則に変化させ、時に左右へ揺さぶり、時には螺旋を描くように。
予測のつかない快楽の連続に、ファラの身体に宿るリッドの意識は、自我を失っていった。
(おれっ、もうっ……。なにも、かんがえられない……っ)
ファラの身体にいることも、自分自身に抱かれていることも、もうどうでもいい。
自分を犯す男の身体に両足を回し、自分から腰を動かす。
自由になるはずの身体が、逆に意識を支配し、身も心も情欲に溺れ切った。
「ああっ、もっとぉ、もっと欲しいのぉっ! お願い、めちゃくちゃにしてぇっ!」
「おっ、ノッてきたな、ファラ」
リッドは、髪を振り乱して絶叫するファラに、嬉しそうな呟きを漏らした。
ファラの要求に応じ、リッドは相手の動きに合わせつつ、更に動きを激しく、強くしていく。
数え切れないほどの絶頂の証が、結合部からリッドの太腿を伝い、膝まで垂れていった。
「あああっ、いいよぉ、すごいよぉ、とまらないよぉっ!」
「おい、真っ昼間からそんなに大声上げたら、近所の人に気付かれるぞ」
「いいっ、いいのっ、そんなの、どうでもいいのっ!」
まだ理性を保っているリッドは、以前よりも激しく乱れるファラに、戸惑いを覚えた。
しかし、リッドが動きを弱めると、ファラはその分を補うように、一層動きを早める。
秘洞と直腸の肉襞が、個別の意識を持つかのように指と男根に絡みつき、ぐいぐいと締め付ける。
その絶妙さに、リッドの官能も急速に絶頂へと向かっていった。
「うっ、やべえっ……。おいファラ、俺もそろそろ……」
「わたしもっ、もうだめっ、いいよっ、奥にっ、いちばん、奥にぃっ、ちょうだいっ!」
限界が近い事を感じたファラは、欲望の命ずるままに、淫らな言葉を叫ぶ。
その言葉に応じ、リッドも最後の動きを始めた。
「おいっ、そろそろ、イクぞっ……」
「ああっ、わたしもっ、これ以上はっ、死んじゃう、だめっ、死んじゃうぅっ……!」
「くっ、だめだっ、出るっ……くううっ!」
「──────っ!!!」
最奥にリッドが欲望を解き放つのと同時に、ファラの身体は大きく反り返り、声にならない絶叫を上げる。
ファラの身体に宿っていたリッドの意識は、精神が粉々になるような快楽の奔流に巻き込まれていった。
◇ ◇ ◇
「うっ……。こ、ここは……?」
再び意識を取り戻したリッドは、頬に当たる硬く冷たい感触に、ゆっくりと正気を取り戻していった。
「そうか、俺、セイファートの試練を受けて……っ!」
そこまで呟いた時、自分が一体何をしてしまったのかを認識し、リッドの身体は硬直した。
あろうことか、自分自身に抱かれた挙句、最後にはそれを受け入れてしまったのだ。
(ああっ……! 俺は、俺って奴はっ……!)
リッドは、あまりの自己嫌悪に、今すぐ死にたいぐらいに落ち込んだ。
すると、リッドのすぐ前に、人とは違う何かの気配を感じる。
顔を上げると、そこにはフードで顔を隠した、セイファートの使者の姿があった。
「やっぱり、今回の試練は、失格だよな……?」
さらに落ち込みながらリッドがそう言うと、使者は拳をリッドの前に突きつけ、親指をグッと突き出した。
「いやいや、充分ハァハァしまつた。リッドたん、グッジョブ!」
「……はぁ?」
一瞬あっけに取られたリッドは、それが最初に会った使者とは別の存在だと気付き、激昂して立ち上がった。
「てっ、てめえっ、さてはニセモノだなっ!? 本物の使者はどうしたっ!」
「と言う訳で、次はモンスターにリンカーンされるメルディをキボンヌ、とか言ってみるテスト」
「こらっ、無視すんなっ! て言うか、キボンヌって何だ、キボンヌって!?」
リッドの文句をスルーしつつ、ニセモノは再びリッドを光の中に包もうとする。
「……させるかぁっ!」
その時、本物のセイファートの使者が、捻りを効かせたドロップキックをニセモノにブチ込んだ。
「あぼーん!」
ニセモノは、リッドには理解できない断末魔を上げて、煙のように霧散する。
セイファートの使者は、暫く背を向けて息を整えると、リッドの方に振り返った。
「……いや、済まなかった。試練の途中で、どこからかやって来た、あの者に封じられてしまったのでな」
「あっ、ああ、そう……」
先程のドロップキックにもツッコミを入れたい所だったが、脱力したリッドには、その気力も無かった。
「とりあえず、さっきの試練の記憶は消してやろう。その後で、第二の試練に挑むかね?」
「……その前に、下着だけでも換えさせてくれないか?」
リッドは、暴発した精液でヌルヌルする股間の布を引っ張りながら、情けない顔で答えた。
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