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作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
決戦!女の勝負 |
サザム氏 |
アーチェ・ミント×クレス |
2003/02/10 |
- |
ここはユークリッドの村。
ユグドラシルを復活させて疲れ切ったミントを気遣い、一行はここで一泊する事にした。
クラースも今夜は研究所に戻り、ミラルドに今までの旅の成果を話している頃だろう。
クレスが風呂に行って、女二人きりになった時に、アーチェは気軽な調子で問いかけて来た。
「ねえねえミント。ちょっと聞きたいんだけど」
「何です、アーチェさん?」
「ミントってさあ、クレスの事、どう思ってるの?」
「えっ!?」
唐突な質問に、ミントは意表を衝かれて戸惑う。
そんなミントの顔を面白そうに見詰めながら、アーチェはなおも言いつのった。
「ねぇ、好き、嫌い? 好きだとしたら、どの位好き?」
「あ、あの、それは…」
アーチェの追求に、ミントはごにょごにょと言葉を濁した。
「…そ、それを言うなら、アーチェさんはどうなんですか?」
何とか矛先をずらそうと、ミントはそう問い返す。
するとアーチェは、あっけらかんと答えた。
「わたし? わたしは勿論、クレスの事、好きだよ」
「えっ…!?」
アーチェの声に混じる本気の響きに、ミントは驚きの声を上げた。
「優しくて、格好よくて、頼りになるしねー。結構、街の女の子とかにも注目されてるんだよ。
クレスは鈍感だから、気が付いてないだろーけど」
「そ、そうなんですか…」
思い掛けない言葉に、ミントは動揺を隠せなかった。
「わたしもクレスになら、抱かれてもいいな、って思うし」
「だっ! だだだだだ、抱かれるって!?」
アーチェの大胆発言に、ミントはわたわたと焦りまくった。
「つまりぃ、セックスしてもいいなって事。…ミントは、そんな事考えたりしない?」
「セッ、セッ…! やっ、そんな、私…」
ミントは、赤くなった頬に両手を当て、ふるふると顔を振る。
恥ずかしがるミントの顔を覗きこみながら、アーチェは少し意地悪げに追い詰める。
「んっ? ほれほれ、どうなのかなー?」
アーチェがしばらく問い詰めると、やがてミントは観念したように、蚊の鳴くような声で囁いた。
「……しも、………たいです…」
「ん、なになに?」
小悪魔的な笑みで問い質すアーチェに、ミントは先程より少し大きい声で呟いた。
「…私も、クレスさんに、抱かれたいです…」
「うん、素直でけっこー!」
真っ赤になりながらもはっきりとしたミントの答えに、アーチェは満足そうに笑った。
まだもじもじとしながら、ミントは不審そうに尋ねた。
「でも、アーチェさん。何でいきなり、こんな事を…?」
そうミントが言った途端、アーチェの表情に切なげな色が混じった。
「だって、ダオスを倒したら、もう二人ともお別れじゃん?」
「あ…!」
「だからその前に、はっきり白黒つけたいと思ってさ…」
「………」
急にしんみりした気持ちになり、ミントは黙り込む。
だが、アーチェはいきなり元気を取り戻すと、ビシッとミントを指差して言った。
「でも、ミントもおんなじ気持ちなら、もう遠慮はいらないぞっと!
こうなったら、勝負だからねっ!!」
「え…? あの、アーチェさ…ん?」
あっけにとられるミントを部屋に残し、アーチェはバタバタと廊下を駆けていった。
◇ ◇ ◇
「じゃーん! おっまたせー!」
数分後、アーチェは何か重そうなモノを引きずりながら、部屋に戻ってきた。
「アーチェさん、何ですかそれ…って、クレスさんっ!?」
アーチェの引きずるモノの正体に気付いて、ミントは驚いた。
それは、まるで人形のように、ぐったりと脱力したクレスだった。
「アーチェさんっ! 一体クレスさんに、何をしたんです!?」
怒り出すミントに、アーチェは何でも無いように答えた。
「あー、だいじょぶだいじょぶ。ちょっと、ケイちゃんに噛んでもらっただけだから」
「…ケイ、ちゃん? どなたですか、その方は?」
聞き慣れない名前に、ミントは怒りを忘れて聞き返した。
「そーいえば、まだ紹介してなかったっけ。 ほらケイちゃん、ミントにご挨拶して」
モゾモゾ…。 ピィッ!
「え゛…」
アーチェの腰の袋から顔を出した『ケイちゃん』を見て、ミントはヒキッと凍りついた。
それは、紛れも無く、ケイヴスパイダーの赤ちゃん(?)だった。
「何かの拍子に、荷物の中に紛れ込んだらしくてさー。
殺すのも可哀想だし、エサとかやってたら、懐かれちゃって。
あ、もちろん、他の二人には内緒だからね。
今はもう、わたしの言うことはちゃーんと聞くんだよ。 ねー、ケイちゃん」
ピイ、ピイッ!
「あ、あはは、そうですか…」
アーチェとお揃いのリボンをつけた『ケイちゃん』のインパクトに、ミントは引きつった笑い声をあげた。
「だから、クレスもただ麻痺してるだけ。問題ナッシングだよ☆」
「…はっ! そ、そうです! だから何故、こんな真似を!?」
クレスの身体を引きずっていくアーチェに、ようやく正気に戻ったミントは聞き直した。
「やだなー。さっき、勝負するって言ったじゃない」
「ですから! 勝負とこれと、どう言う関係があるのですかっ?」
語気を強めるミントに、噛んで含めるようにアーチェが説明した。
「だからぁ、二人とセックスして、どっちがいいか、クレスに決めてもらうの!
名づけて、『第一回チキチキ! クレス争奪・身体の相性どっちが良いか』対決ぅー!」
アーチェが太鼓をドンドンと叩き、『ケイちゃん』が器用に抱え込んだラッパをパフパフッと鳴らす。
「なっ、何ですかそれわーーーっ!?」
半泣きで叫ぶミントの声は、狭い部屋中に空しく響き渡った。
◇ ◇ ◇
「よい…しょっと。 あー、重かった」
身動きの取れないクレスをベッドに寝かせると、アーチェは大きく息をついた。
「あ、あのぉ…。本当に、その、するんですか…?」
そのままクレスのズボンに手を掛けるアーチェに、ミントはおずおずと声を掛けた。
「何よぉ、ここまで来て。さっきミントも『抱かれたい』って言ったじゃない。
それに、古今東西、一人の男を奪い合う時には、こうするもんなのよっ!」
「ええっ!? そ、そうなんですかっ!?」
世間知らずのミントは、アーチェの口車にあっさりと乗せられてしまった。
「そーなの。 わたしが負けたら、すっぱりと身を引くつもりなんだから。
ミントもしっかり、覚悟を決めなきゃね」
「で、では、アーチェさんが勝ったら…?」
不安げに尋ねるミントに、アーチェは当然、と言わんばかりに胸を張った。
「もちろん、クレスについて行って、そのままゴールイン、ね。
高台の上の白い家で、沢山の子供に囲まれて、幸せな生活を送るのさっ☆」
「ちょっ、ちょっと待て…。 一人で決めるな…」
「クレスさん!?」
弱々しげな呻き声を上げたクレスに、ミントは慌てて声を掛けた。
「さっきから聞いてれば、勝手な事ばっかり言って…。 僕の気持ちとかは、考えてくれないのか…?」
「考えない」
「おいっ!?」
あっさり答えるアーチェに、クレスは思い切り突っ込んだ。
「うっさいなぁ、もう。 『賞品』に口出しする権利なんて無いっ!
クレスはただ、あたしたちとセックスして、どっちが良かったか判定するだけでいいのっ!」
「あの、アーチェさん? それは、あんまりでは…」
逆切れするアーチェに、ミントは恐る恐る進言した。
「くそっ、人の気持ちを無視するなんて…。 いいかアーチェ、一つ言っておくぞ。
強姦されたぐらいじゃ、僕の気持ちは、うゴーカンぞ!」
かぁ〜〜〜。
夜だと言うのに、どこからともなくカラスの鳴き声が響いた。
アーチェとミントも、あまりのくだらなさに、点目・汗ジトである。
「あは、あはははは、はは…」
照れ隠しのクレスの笑いも、段々と尻すぼみになる。
気を取り直したアーチェは、握り拳を震えさせながら、ギリギリと歯を噛み締めた。
「…ずいぶん、余裕ぶっこいてるじゃない…」
「いっ、いや、ちょっと、この場を和ませようと思ったんだけどね…」
「一気に盛り下がったわよっ!」
取り成すようなクレスに、アーチェは怒りを込めて怒鳴った。
「もう、クレスは黙って、言う事聞いてればいいのっ!」
「うわあっ!」
アーチェはそう叫ぶと、クレスのズボンを下着ごと一気に引き下ろした。
◇ ◇ ◇
「はい、ご開帳〜☆」
「やっ、やあっ!」
アーチェは、ミントにも良く見えるように、クレスの股を大きく開く。
初めて見る異性の陰部に、ミントは叫びながら両手で顔を隠した。
「『やあっ』とか言って、ミントもしっかり見てるじゃん」
「うっ、それはそのぉ…」
指の間から、ちらちらと見ているのを指摘され、ミントはちょんちょん、と人差し指を合わせる。
いけないと思いつつも、やはり興味があるミントであった。
アーチェは、まだ縮こまっているクレスの性器を摘み上げると、ミントにそれを見せ付けた。
「ほらほら、これが男の子のおちんちんだよ」
「あ…。何だか、可愛いんですね…」
(ぐさあっ!)
クレスは、ミントの何気ない一言に、激しく傷ついた。
「可愛いのは、今のうちだけだよ。…ところでミント、順番はどーする?」
「え、順番って…?」
首を傾げるミントに、アーチェは少し膨れて言った。
「もー。だから、クレスとする順番だよ。わたしは、先でも後でも、どっちでもいいけど?」
「えっ、あっ!…で、でもあの、私、初めてなので、どうすればいいのか…」
「ん、分かった。じゃ、わたしが先攻ね。…ミントは、そこで見てて」
アーチェは頷くと、さっさと自分の服を脱ぎ始めた。
「ええっ!? わ、私、見るんですか!?」
胸に手を当てて狼狽するミントに、アーチェは何をいまさら、と言いたげな顔で答えた。
「そーよ。ハンデがわりに、どうやるのか実演してあげる。
まあ、後でミントがするのも見せてもらうから、お互い様ってことで☆」
「お互い様って、そういう問題じゃ…」
尚も言い募るミントをよそに、アーチェはゆったりとしたズボンをストンと脱ぎ捨てる。
アーチェの下着は、髪の色とコーディネートしたかのような、ピンクのレースの上下であった。
続けてブラを外すと、最後に残ったショーツもポーンと脱ぎ捨てる。
生まれたままの姿になると、アーチェはクレスの体の上に四つん這いになった。
「んふっ、ねえクレス。わたしの身体、どう…?」
「う…んくっ」
身体の上で妖しくうねるアーチェの肢体に、クレスは思わず唾を飲み込んだ。
エルフの血のせいで、少し凹凸に欠けるとはいえ、若木のように伸びやかな身体は、十分魅力的であった。
肌は抜けるように白く、かすかに静脈が青白く透けるほどである。
小振りの乳房も、伏せた状態の為、ふるふると柔らかそうに左右に揺れる。
細い腰からさらに視線を下げると、ピンク色の薄い茂みの奥に、薄桃色の花弁が透けて見える。
純情なクレスにとっては、鼻血が噴き出しそうなほど刺激的な眺めだった。
「あ…。クレスさんの、段々大きくなって来ました…」
「男の子は興奮すると、そこが大きくなるの。今はわたしの裸を見て、興奮してるのよ」
「はぁ…。クレスさん、そうなんですか…?」
(ど、どう答えろって言うんだ…)
気の抜けた声で問いかけるミントに、クレスは返答に困って押し黙った。
一方アーチェは、チラッと目線を下げ、クレスのモノが十分に勃起したのを確認する。
満足げに頷くと、互いの性器が顔の前に来るように、体勢を入れ替えた。
そして、大きく舌を突き出すと、クレスの先端をチロチロッと舐め始めた。
「あぁあ、アーチェさんっ! な、何をしてるんですか!」
「なにって、フェラチオだけど?」
「ふ、ふぇ…!」
言葉が出ないミントに、アーチェは偏った説明を始めた。
「ふぇ・ら・ち・お。ここをこーやって舐めたり、しゃぶったりするの。
こうしてあげると、男の子はとっても気持ちいいんだよ。…んっ、ん…」
言い終えると、アーチェは上目遣いにミントの顔を見ながら、クレスの怒張を上下にしゃぶり始めた。
アーチェの長いポニーテールが、動きに合わせ、まさに子馬の尾のように、ひょこひょこと跳ねる。
絡めた唾液の為に、すぐにちゅぷちゅぷと軽い水音が響き出した。
「うっ、あ、ああ…アーチェ…」
(本当です…。クレスさん、何だかとても気持ち良さそう…)
思わず洩れたクレスの呻きに、ミントは快楽の響きを感じ取る。
濡れ光る陰茎が出入りするアーチェの口元に、ミントの目は釘付けになった。
「んっ、ねえ、クレス…。わたしのも舐めて…」
「んぷっ!」
自分も興奮してきたアーチェは、上げていた腰を下ろし、花弁をクレスの口元に押し付けた。
クレスの唇に、ふにゅんと柔らかい下腹部の肉が覆いかぶさる。
奥から漂う女の香りに誘われて、クレスは唯一自由になる舌を、そこに伸ばした。
「きゅん! あっ、そう、そこ…」
経験があるのか、やけに的確に急所を攻めるクレスの舌に、アーチェは甘い声を上げた。
「ぴちゅ、むぬぬっ…ふっ…」
「やん、クレスってば上手ぅ…むっ、むううっ…」
「あっ、アーチェ、そこばっかり攻めるな…るろっ…」
二人は、互いに相手の弱い所を探るように、懸命に舌を動かした。
アーチェが雁の裏を舌でなぞれば、クレスは花弁と菊座の間で舌を往復させる。
クレスが花弁の上の肉芽を攻め立てれば、アーチェは鈴口と包皮の境目を舌先でくすぐる。
互いの喘ぎにますます興奮を深め、二人はその行為に没頭していった。
(あっ…二人を見ていたら、何だか、私…)
ミントは自分でも気付かないうちに、そばにあった椅子に腰を下ろして、二人の痴態をじっと見詰めていた。
その顔は興奮で上気し、片腕は何かを堪えるように自分の身体を抱き締める。
片手の親指を軽く咥え、時折り、もぞもぞと太腿を擦り合わせる。
部屋に満ちる淫靡な空気に、ミントもすっかり巻き込まれてしまっていた。
◇ ◇ ◇
しばらくお互いを責め合った後、アーチェは腰を浮かせて、クレスを振り返った。
「はぁ…。ねぇ、クレスぅ…わたしもう、堪らなくなっちゃった…」
「えっ? あっ、ああ…」
クレスは一瞬、何の事か分からなかったが、すぐにその意味を飲み込んだ。
「もう、入れちゃっても、いいよね…?」
「ああ…」
最初は嫌がっていたクレスも、既にすっかりその気になっていた。
同意を得て、アーチェはずるずるとクレスの上を這い、腰の上まで進む。
ふと上げたアーチェの目が、その先にあるミントの視線とぶつかった。
「あ…、アーチェさん…」
「ふふっ…。ミント、よぉく見ててね…」
アーチェは淫蕩な笑みを浮かべると、片手の指で、ミントに良く見えるように、己の花弁を開いた。
ミントの目に、アーチェの濡れた肉襞の重なりが映る。
アーチェはミントの目を見ながら、手探りでクレスの怒張を掴み、入り口に先端をあてがう。
そしてそのまま、見せ付けるようにゆっくりと、腰を下ろしていった。
「んっ、んんんっ…ふっ、くっ…」
「うっ、うわ…すご…」
口腔よりさらに熱く、複雑な感触を陰茎に受けて、クレスの口から感嘆の声が洩れた。
十分に濡れそぼったアーチェの中は、適度に締め付けながら、易々とクレスのモノを飲み込んでいく。
クレスの腹の上に腰を下ろすと、アーチェは感極まった吐息をついた。
「はあ、入っちゃった…。ねえクレス、あたしの中、気持ちいい…?」
「うっ、うん。すごくいい…」
好きな男の素直な賛辞に、アーチェは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「んふ、嬉し…。クレスのも、おっきくて、最高だよ…。
じゃあ、もっと良くしてあげるね…んっ、ん…」
「うっ…あんっく…」
そう言うとアーチェは、緩いストロークで腰を上下に振り始めた。
肉襞が茎を擦る快感に、クレスの口から女の子のような喘ぎが飛び出す。
アーチェは次第に動きを早めながら、一振りごとに少しづつ角度を変えるように、腰をくねらせた。
その度に、強く刺激される場所が変化し、クレスは官能を深めてゆく。
クレスの目には、踊るように揺れる悩ましげな背中と、自分のモノを咥えた薄桃色の襞の端が映る。
途切れがちなアーチェの喘ぎ声に、クレスの怒張は更に硬く、大きくなっていった。
「あっ、や、すご…。なかで、またおっきく…、ん、ん、んんっ!」
クレスの興奮が伝わって、アーチェの身体も、ふるふると快感に震える。
自分の指で乳首を弄りながら、貪るように腰使いを激しくした。
◇ ◇ ◇
「んっ、よっ…と」
「うわっ! あ、アーチェ、何を…!?」
しばらくして、アーチェは剛直を深く咥え込んだまま、身体を半回転させ、クレスの正面に向き直った。
ぐるりと男根を捻るような動きに、クレスは大きな声を出した。
「えへへっ。ほら、やっぱり最後は、好きな人の顔を見ながらイキたいじゃない?」
「好きってお前…そ、そういうもんなのか…?」
「そーなのっ。これがいわゆる、乙女心ってやつよ。んっ…」
激しく用法を間違った言葉を使いながら、アーチェは再び腰をくねらせた。
そうしながら、脱力したクレスの手を取り、自分の乳房に宛がう。
クレスの手を使って自慰をするように、アーチェは腕を動かした。
「んっ、ふっ、だめっ、もう、イっちゃ…イっちゃうよぉ…」
アーチェは、自分の動きで自分の高まりを押し上げて、切なげな声を出す。
「おねがいっ、クレスぅ、きてぇ、いっしょにぃ…」
「そっ、そんな、急に言われてもっ…!」
もともと遅漏なのか、それとも麻痺毒のせいなのか、クレスはまだ、絶頂には程遠い。
だが、クレスが戸惑っている間にも、アーチェの昂りは限界に近づいていった。
「やっ、だめぇ、はやく、クレス、はやくぅ…!」
「いやだから、待てってば、おい!」
アーチェに急かされても、クレスはうろたえるばかりで、むしろ射精感は遠ざかる。
一方アーチェは、最後の高まりを求めて、腰を激しく打ち付けた。
「やっ、だっ、もっ、お、だ、めっ、ん、 〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「あっ、おい、アーチェっ!?」
いきなり背中を反らし、きゅううっ、と締め付けるアーチェに、クレスは慌てて声を掛ける。
アーチェは、しばらくプルプルと身体を震わせていたかと思うと、突然くたっと崩れ落ちた。
「おいっ!? アーチェ、どうしたっ!?」
「あ…あはっ、いっちゃったぁ…」
「…はぁ?」
満足そうなアーチェの声に、クレスは思わず間抜けな声を出す。
アーチェは脱力したまま、ころん、と身体を転がして、クレスの横に寝そべった。
「ごめぇん、クレス。もう、腰に力が入らないよ…」
「…おい、ちょっと待てよ。じゃあ、僕のコレはどうなるんだ?」
身体の動かないクレスは、目線でまだ収まりのつかない剛直を指し示した。
「ん…しょうがないから、手で出してあげるね…」
気だるげに言いながら、アーチェはピクピクと動いているソレに手を伸ばした。
だが、指がそこに触れる寸前に、アーチェの手首がガシッと掴まれた。
「へ…?」
いぶかしげにアーチェが顔を上げたその先には、にこやかな笑みを浮かべた、ミントの顔があった。
「…次は、私の番ですよね…?」
「えっ、あ、あれっ!?」
まさかそう来るとは思っていなかったアーチェは、混乱した声を発した。
最初に「勝負」とは言ったものの、アーチェは結局、勝負にはならないだろう、と思っていた。
何しろミントは、元々純情な上に、バリバリの処女である。
こんな状況で、しかも他人に見られながら、そんな真似は出来ないだろうと、高をくくっていたのだ。
だが、アーチェの計算には、大きな誤算があった。
それは、ミントが強烈なやきもち焼きでもある、と言う事だ。
十二星座の塔で、アーチェがクレスにキスをしようとしただけで、あれほど怒ったミントである。
目の前で好きな男を寝取られて、平静でいられる訳がない。
次第に燃え上がった嫉妬の炎は、今や恥じらいもためらいも焼き捨てて、ミントを突き動かしていた。
「ここからは、私がクレスさんのお相手をします。…異論はないですね?」
ミントの背後からは、ゴゴゴゴゴッ…と、地響きを立てるようなオーラが湧き出している。
「あは、あはは、もちろんでございますですわ…」
優しげな言葉に潜む迫力に、アーチェはおかしな言葉使いで答えて、すごすごとベッドから降りた。
「…クレスさんも、それでいいですね?」
レーザーでも出そうなミントの視線を受けて、クレスは心底震え上がった。
「ははは、はいっ! 全然大丈夫です、はい!」
はっきり言って、ダオスなんぞよりも断然怖い。
口篭ろうものなら、頭からバリバリ齧られそうな気がして、クレスは慌てて返事をした。
「結構です。では、始めましょうか」
決然と宣言すると、ミントは大事な帽子をサイドボードに置き、神官衣を脱ぎ始めた。
嫉妬に燃えるミントの頭からは、自分が全く経験が無い事すら、すっかり抜け落ちていた。
◇ ◇ ◇
(私だって、男女の交わりの知識ぐらい、あるんですから! アーチェさんには負けません!)
長いローブを脱ぎながら、ミントは自分の知識を思い返していた。
もっとも、山奥で母親と二人で暮らしていたミントに、男性と付き合った経験があるわけではない。
たまに訪れる行商人が届けてくれた続き物の恋愛小説と、間違って混ざっていた一冊の官能小説。
ミントの性知識は、そのいささか偏った内容が全てであった。
「では、クレスさん、よろしくお願いします…」
「…って、おい、ミント…うっ…」
下着姿のミントを見て、クレスは一旦縮こまった男根が、再び力を取り戻していくのを自覚した。
顔を赤らめた恥じらい混じりの表情は、クレスの中の雄を否応なしにかきたてる。
ミントの下着は、その清楚な雰囲気に合った、飾り気の少ない白のシルクの一揃いであった。
ローブの上からでは分からなかった豊満な双丘が、うっすらと朱に染まって揺らめいている。
股間の逆三角の頂点は軽く漏れて、うっすらとピンク色が透けて見えている。
薄く刺繍の入ったガーターが、絹のストッキングを止めている。
その間から僅かに見える太腿は、絹よりもなお白く、艶やかだった。
(あっ、クレスさん…。私の裸を見て、興奮してくれているのですね…?)
ムクムクと大きくなるクレスのモノを見て、ミントの心に嬉しさがこみ上げる。
おずおずと幹に手を伸ばすと、震える唇を先端に触れさせた。
「うわっ!? おいっ、ミントまで、そんなっ…!」
「んっ…ちゅっ、んんっ…」
クレスの剛直は、先程のアーチェの愛液で濡れている。
他の女の痕跡を消し去るように、ミントはそれを丹念に舐め取っていった。
舌を伸ばし、下から上へと掃くように、何度も顔を往復させる。
全体を舐め清めたときには、既にクレスの強張りは、限界まで膨れ上がっていた。
「えっと、次は…」
ミントは官能小説の記述を思い返し、両手を背中に回して、ブラのホックを外す。
布地から解放された二つの膨らみが、たふん、と量感を感じさせる動きでまろび出た。
「こう、でしたよね…?」
「わあっ、ミント、何をっ…うっ!」
いきなり柔らかな肉で陰茎を左右から挟まれ、クレスは言葉を詰まらせた。
ミントは両手で自分の乳房を抱えると、それでクレスのモノを挟み込んだのだ。
「んっ、ん、んっ…」
「ああっ、ちょっと、ミントっ…」
ミントはそのまま、上体を動かして、クレスの強張りを上下に擦りたてた。
口とも膣内とも違う、未体験の快感に、クレスは翻弄された。
(うっ…。ミントってば、どこであんなテクを…って言うか、これってわたしに対する当てつけっ!?)
二人の脇で着替えていたアーチェは、自分の体型では不可能な愛撫に、コンプレックスを刺激された。
いささか被害妄想と言えなくも無い、こともない(どっちだ)。
ともあれ、そんなアーチェをよそに、胸で愛撫を続けるミントの興奮も、次第に高まっていった。
「んっ、くっ、ふっ、クッ、クレスさんっ、気持ち、ん、いいっ、ですかっ…」
「うっ…くっ、ううっ…」
ミントは、息を荒くしながら、クレスのモノを執拗にしごき続けた。
先程のミントの唾液と胸元の汗が潤滑油となって、クレスの幹に滑らかな肌の感触が襲い掛かる。
クレスは根元の方から、むずむずとした衝動が湧き上がるのを感じた。
「ミッ、ミントっ! ちょっと待ったっ!」
「えっ!? あ、はいっ!」
切羽詰った声で呼び掛けられ、ミントは思わず動きを止める。
そして、悪いことをしたかのように、恐る恐る声を掛けた。
「あのぉ、クレスさん? あまり、気持ち良くなかったのでしょうか…?」
「いや、十分気持ちよかった…じゃなくて!」
「…?」
一人であたふたするクレスに、ミントは軽く首をかしげた。
「あのさ、そろそろ、僕の麻痺を解いてくれないかな…」
「…! それじゃ、やっぱり…」
表情を暗くするミントに、クレスは慌てて言葉を続けた。
「違う、ミントとしたくない訳じゃない! むしろ、反対だよ!」
「反対…ですか?」
意味が分からずに、ミントはクレスに問い質した。
「そうだよ。好きな女の子と初めてするのに、一方的に攻められるんじゃ、男としての面子がさ…」
「好きな…女の子?」
「あ…」
ミントに繰り返され、思わず本音を口走ってしまった事に気付き、クレスは目を逸らした。
「うん…。僕も、ずっと前から、ミントの事が好きだったんだ。
だから、僕もミントに触れたい。 この手で抱き締めたいんだよ…」
「く、クレスさん…!」
両手で口元を押さえ、ぽろぽろと泣き出したミントに、クレスは驚いた。
「って、ミント、どうした!?」
「いえ、私…。んっ、その、とても嬉しくて…」
「ミント…」
嬉し涙を流すミントに、クレスの胸の奥から、彼女に対する愛しさがこみ上げる。
クレスは涙を拭うミントに、優しい笑みを投げかけた。
「…だから、頼めるかな、ミント…?」
「はいっ…、はい!」
ミントも微笑み返すと、小さく呪文の詠唱を始めた。
虚空に魔方陣が浮かび、ミントの上体がクレスの上にゆっくりと覆い被さる。
ミントの瞳に、自分に対する愛情を込めた、クレスの笑顔が大写しになる。
「…リカバー!」
白い光がクレスの身体を包むのと同時に、ミントの唇が、クレスの唇にそっと重なった。
◇ ◇ ◇
「んっ、んんっ…むっ、はぁっ。ミント…」
「ん! ふむうっ…ぱぁ。あ、クレスさん…」
身体の自由を取り戻したクレスは、ミントの首筋に手を回すと、押し付けるように濃厚なキスを交わした。
侵入してきたクレスの舌に驚きながらも、ミントもおずおずとその動きに応じる。
互いの名を呼び合う二人の唇の間を、銀糸のような唾液の糸が橋をかけた。
「よっ、と…」
「きゃんっ!?」
クレスは、ミントの両肩を軽く掴むと、くるりと体勢を入れ替え、彼女をベッドに組み伏せる。
倒れこんだ弾みに、ミントの豊かな双丘が、たふん、と波打つように揺れた。
「でも、ミントがこんなにエッチだったなんて、僕、知らなかったな…」
「あっ、やっ! い、言わないで下さい、そんなっ…あっ!?」
今更ながらに羞恥に震えるミントは、クレスの舌が乳首をかすめた途端、ぴくっと背中を反らした。
「んっ…。でも僕は、エッチなミントも好きだよ…。んっ、ちゅ…」
「やあっ! クレスさんっ、お願い、もうっ、言わないでっ…んんっ!」
クレスは、手に余るほどの柔肉をふにゅふにゅと揉み解しながら、左右の乳首を交互に吸いたてる。
恥ずかしさが快感を倍増し、ミントはいやいやをするように首を激しく振った。
「ミントの胸、柔らかくて、すごく気持ちいいよ…」
「ああっ、私も、クレスさんの指がっ、とても、良くって、ふうんっ!」
軽く力を込めただけで、指から逃げ出すかのように形を変える乳房の動きに、クレスは魅了された。
両手の指を揺らめかせるようにして、飽きもせず滑らかな触感を楽しむ。
ミントは、自分の股の間から、とろっとした快楽の証がこぼれ出すのを感じていた。
「ねえ、ミント…。下も、見ていいかな…?」
「…えっ? あ、はい…」
ミントはクレスの求めに応じると、片脚を引き寄せて、ガーターの止め具に手を伸ばした。
だが、その手は途中で、クレスの手にやんわりと押さえられた。
「え…、クレスさん?」
「いいよ…。僕が、脱がせてあげる…」
そう囁くと、クレスは止め具をパチパチと外し、くるくると巻き取るようにして、ストッキングを剥いでいく。
それは、貴婦人の長手袋を脱がす騎士のような、うやうやしい手つきだった。
「…はい、今度はこっちの脚を上げて…」
「はっ、はい…」
片方のストッキングを脱がすと、クレスは子供の服を脱がすように、ミントに指示をした。
ミントも素直に、もう一方の脚を持ち上げる。
自分で脱ぐ時には何でもない動きが、クレスの手に掛かると、官能を呼び覚ます愛撫となる。
素肌にクレスの指が触れるたび、ミントはゾクゾクするような疼きを背筋に感じていた。
「…ミント、ミントの脚、とっても綺麗だね…」
「あっ、クレスさんっ、…んんんっ!」
ミントの両脚をあらわにすると、クレスは白い太腿の眩しさに、思わず目を細めた。
衝動のままに膝の脇に唇を寄せ、伸ばした舌をゆっくりと内股に滑らせる。
両手でさわさわと太腿を触りながら、頭を脚の付け根へと移動させる。
辿り着いた小さな布地からは、中から漂う乙女の雫の香りが、ゆらりと立ち昇っていた。
「…ミント、少し、腰を浮かして…」
「うっ…。は、はいっ…」
クレスの求めに、ミントは一瞬、躊躇した。
だが、すぐに気を取り直し、震える腰を僅かに持ち上げる。
クレスは、最後の秘密を隠すベールを、するすると下ろしていった。
爪先から抜き取ったショーツを傍らに置くと、クレスは再びミントの脚の間に顔を近づけた。
ミントの花弁は、処女であることを誇示するかのように、固く閉ざされている。
だが、その下端からは、快楽を示す露が零れ、白い肌を妖しく濡らしていた。
「わぁ…。ミントのここ、すごく可愛いよ…」
「やっ、いやですっ! クレスさん、あまりじろじろ見ないでっ…!」
感嘆するクレスの声に、ミントは両手で顔を隠し、羞恥に打ち震える。
だが、ミントのそんな態度は、かえってクレスの欲望を沸き立たせた。
「駄目だよ、顔を隠しちゃ…。もっと、ミントの恥ずかしがる顔を見せて…んっ」
「やはあっ!」
クレスは、上目遣いにミントの顔を見ながら、舌でミントの花弁をずるり、と舐め上げる。
たったそれだけの動きに、ミントはビクンッ、と激しく身体を震わせた。
「…ミント、とっても感じやすいんだね…」
反応の良さに気を良くして、クレスは更に舌を動かした。
「んっ…ちゅっ、ちゅぷっ、ちゅうっ…」
「だっ、駄目ですっ、クレスさ…っ、そんな、そんなに、されてはっ…!」
次々と襲い来る快感に、ミントはもはや顔を隠すどころではない。
激しく身体をくねらせながら、クレスの与える刺激に振り回されるばかりであった。
その内、しばらく花弁ばかりを攻めていたクレスの目線が、その上にある小さな肉芽に止まった。
僅かに包皮から覗いたそれは、ろくに触れられた様子も無く、ピンクというより白に近い色合いをしている。
切なげに震えるその突起に、クレスはそっと舌を伸ばした。
「ミント、こんな所に、可愛い豆が顔を出してるよ…ちゅっ、ちゅ…」
「やはあっ! やっ、クレスさんっ! 見ないで、言わないでっ、触れないでぇっ!」
敏感な突起を軽く何度もついばまれ、その圧倒的な快感に、ミントはもはや半狂乱である。
すでに、自分が何を口走っているのかも、分からない様子であった。
「だめっ、わたし、とびそうです…っ! おねがい、クレスさっ、ゆるしてっ…!」
「いいよ、ミント…。我慢しないで、イクときの顔を、僕に見せて…」
指でちゅくちゅくと左右に突起を擦りながら、クレスは小指を菊座に当て、つぷっと挿入する。
「ひううぅん!!」
それが最後の一押しになったらしく、ミントは一際大きな叫びを上げて、身体を跳ねさせた。
ドサッとベッドに倒れ込むと同時に、固く閉じていた花弁が、ふわぁっと花開く。
緩んだ入り口から、新たな雫がつうっ…と糸を引いて、シーツに滴り落ちた。
「っはぁ、はぁ、はぁ…」
余韻に身体をピクピクと痙攣させながら、ミントは荒い息をついた。
その妖艶な表情が、クレスの欲望をさらに膨らませる。
クレスはむくりと上体を起こし、ミントの上に覆いかぶさった。
「…ミント、そろそろ入れるよ…?」
「あっ…えっ…?」
快楽に曇ったミントの頭では、クレスの言葉の意味が理解出来ない。
しかしクレスは、ミントの返事を待たず、猛り立った怒張を入り口に当て、一気に体重をかけた。
「いっ…!? 痛っ!!」
いきなり股間に走った激痛に、ミントの意識は一気に覚醒した。
身体の中心を引き裂かれるような痛みに耐え切れず、ミントは反射的にずり上がって逃げた。
「ちょっ、ちょっとミント、逃げないで!」
「でっ、でもっ! いたっ、痛いんですっ!」
ミントは、追いかけるクレスのモノから逃げるように、なおもじりじりとベッドの上を移動する。
四つん這いになって追うクレスとの間で、奇妙な鬼ごっこが始まった。
だが、狭いベッドの上では、逃げ回るにも限度がある。
壁に背中を押し付けるような体勢で、ミントの逃亡は行き詰った。
「…やっ、いや、クレスさん、怖い…」
本気で脅えるミントに、クレスは昂っていた雄の衝動を何とか押さえ込んだ。
「…じゃあ、もう、やめるかい?」
「え…?」
諦めたように囁くクレスの声に、ミントはハッと顔を上げる。
クレスの顔は、いつも通り…いや、いつもより優しげな笑みを浮かべていた。
その笑顔を見て、ミントは自分の情けなさに涙が出た。
元はと言えば、自分から抱いて欲しいと言い出したのだ。
それなのに、恐怖に負けた自分は、クレスと一つになることを拒もうとしている。
一方のクレスは、己の欲望を押さえ込み、ミントを気遣って「やめよう」とさえ言っている。
クレスへの愛しさと申し訳なさで、ミントは顔をくしゃくしゃに歪めた。
「うん、やめるよ。やっぱりいきなりだと、ミントもつらいだろうし…」
「いやですっ!」
「え?」
身体を離そうとしたクレスは、先程とは違う響きの拒否の言葉に、面食らった顔をした。
「途中でやめては、いやです!」
「…って、そう言われてもな…」
涙声で訴えるミントに、クレスは困り果てて、ポリポリと鼻の横を掻いた。
「私、はっ、初めてはクレスさんにって、決めてたんです!
頑張りますから、我慢しますから…。お願いです、最後まで抱いてください!」
「…ミント…」
痛みに脅えながらも、気丈に訴えるミントの姿に、クレスは心を打たれた。
こめかみを伝う涙にそっと口付けて、少し塩辛いそれを吸い取る。
「…分かった。じゃあ、つらいと思うけど、ちょっとだけ我慢してくれるかな…?」
「はっ、はいっ…」
ミントは頷くと、痛みを堪えるためにギュッと目を閉じ、両手をクレスの背中に廻す。
クレスは、出来るだけ痛くないように、ゆっくりと腰を進めていった。
「んっ! くっ、ん…いっつ…」
「ど、どう、ミント?」
「んんっ…だっ、だいじょ、ぶです…っ、がまん、できますっ…!」
痛みに耐えるため、力が込められたミントの中は、クレスの剛直を痛いほどに締め付けた。
ミントは唇を噛み締めながら、必死に破瓜の痛みに耐えている。
クレスは、少し進めてはミントの様子を見る、という感じで、休み休み侵入していく。
おかげで、根元まで完全に埋まった時には、クレスもすっかり気疲れしていた。
「はぁ…。ミント、全部入ったよ…」
「んくっ、クレスさん、もっ、もう、終わりですか…?」
ミントは、苦しそうにしながら、クレスを見上げてそう尋ねた。
「いや、これからまだ動くんだけど。ミントが痛みに慣れるまで、しばらくこのままでいるから」
「は、はい、すいません…」
クレスはそう言ってミントの頭を胸元に抱き締め、柔らかな髪をそっと撫で続けた。
その優しい手つきと、胸から伝わるクレスの鼓動に、ミントは安らかな気持ちになる。
痛みに寄せられていたミントの眉間のしわは、ゆっくりと消えていった。
ミントの身体から力が抜けたのを見計らって、クレスは抱いていたミントの頭を離した。
そして耳元に口を寄せ、ミントにそっと囁く。
「もう、動いても大丈夫?」
「………」
ミントは無言のまま、小さく頷いた。
「じゃ、いくよ…。くっ、ふっ…」
「んつぅっ! んっ、んっ…」
クレスが腰を動かし始めると、ミントの口から再び苦痛の呻きが洩れた。
異物が中を擦るたびに、ズキッ、ズキッと痛みが走り、ミントの眉が歪む。
だが、先程に比べると、我慢できないほどの痛みでは無かった。
クレスは、ミントの身体を気遣い、ただ単純な前後の運動を、ゆったりとした調子で続ける。
だが、愛しい者と交わっているという思いが加わると、そんな単調な動きでも、十分に快感を覚える。
次第に律動の速度が早まり、クレスは剛直を包む感触に没頭していった。
「んっ! くっ! いたっ、クレスさっ、もっ、もう、ちょっと、ゆっくり…!」
「ご、ごめんっ、ミントっ、でもっ、もうっ、止まら、ないっ…!」
射精の衝動がこみ上げてきて、クレスの動きから徐々に遠慮がなくなる。
時折り耐え難い痛みが走り、その度にミントは、クレスの背にぎりっ、と爪を立てた。
背中を引っ掻く爪の痛みが、ミントの痛みの一部を引き受けているような気がする。
クレスの背中は、縦横にみみず腫れが刻まれ、そこに汗が染み込んで、鋭い痛みを与えた。
「くうんっ! くっ、クレスさんっ、まっ、まだですかっ…」
「ミントっ…! あと少し、もう少しだからっ…!」
早くミントの苦しみを終わらせようと、クレスは一心に快楽へ集中する。
高まりは既に、クレスの幹の半ばまで這い上がって来ていた。
「あっ、あ、あ、あ、い、やっ、く、は、あ!」
「ミント、ミントっ、くっ…く!!」
これで最後、とばかりに激しく動くクレスに、ミントはがくがくと激痛に身体を震わせる。
クレスは愛しい人の名前を叫びながら、鋭い叫びと共に、欲望の全てを吐き出した。
◇ ◇ ◇
「はあっ、はっ、はっ、はぁ…」
「ふぅ、んっ、うっ、すんっ…」
ミントの中からそっと己を抜き出したクレスは、乱れた息をゆっくりと整えていた。
一方ミントは、再び滲んだ涙を拭いながら、クレスを少し恨みがましい目で見据えていた。
「…はぁ、あ、ミント、どうしたの?」
「…クレスさん、最後のほう、私、とっても痛かったんですよ?」
小さい子供を叱るように、ミントは「めっ!」とでも言いたげな表情で訴えた。
冗談混じりの文句に、しかしクレスは本気で狼狽した。
「いっ、いやっ、ごめん! つい抑えが効かなくなって…。
謝るから、ほらっ、このとおりっ!」
「あ…」
頭を下げたクレスの背に、酷いみみず腫れを見つけて、ミントは驚きの声を発した。
「クレスさん、これ…」
「あ、いたたっ! ミント、あんまり触らないで…」
「す、すいません! これ、もしかして私が…?」
自分がクレスの背中を掻きむしっていたことを思い出し、ミントは済まなそうに言った。
「ああ、平気平気。触らなければ、そんなに痛くないから…」
「でも、痛むのでしょう? すぐに癒しの呪文を掛けますから…」
「いや、いいよ、このままで」
「だって…」
「おーい、お二人さん?」
脇から誰かの声が聞こえたが、二人の耳には届いていないようで、なおも囁き合う。
「ミントだって痛かっただろ? だから、おあいこってことで。
それに、ミントの方は、癒しを掛ける訳にもいかないだろ? 治しちゃったら、また痛い思いをするんだし」
「もう、クレスさんったら…」
「もしもーし、お二人さーん? 誰か忘れてはいませんかー?」
「わあっ!」「きゃあっ!」
いちゃついている所に、いきなり顔を突っ込んできたアーチェに、二人はびっくりして飛び離れた。
アーチェは腕を組むと、ジトーッとした目つきでそんな二人を見据えた。
「まったくもー、人のこと無視して、二人っきりの世界を作ってくれちゃってさ」
「うっ、いやその…」
アーチェの言葉に、クレスは気まずそうに顔を伏せた。
「まっ、これも、わたしの狙い通りだったんだけどね」
「えっ? だって、お前…」
戸惑うクレスに、アーチェは明るい声で話し出した。
「あー、もしかして、わたしが『好き』って言ったの、本気にした? きゃははっ!
わたしはただ、お別れする前に、二人がちゃんとくっつくかどうか、確かめたかっただけ。
…ついでに、わたしの欲求不満も解消できたから、まあ、一石二鳥って感じ?」
「お、おまえなぁ…」
どう慰めたらいいか悩んでいたクレスは、あまりの言い様に、がっくりと肩を落とした。
「とゆーわけで、わたしはクレスの部屋で寝るから、あとは二人でごゆっくり!
…あ、それと、クレスのイクときの顔、可愛かったよ☆」
「あ…あのなっ!!」
「きゃー、クレスが怒ったー☆」
クレスが投げつけた枕をひょいっと避けると、アーチェはパタパタと部屋を出て行った。
「全くもう、何を考えてるんだ、アーチェの奴…」
クレスは顔を赤らめたまま、照れ隠しにぶつぶつと呟き続けていた。
(…アーチェさん…)
しかし、黙ったままのミントは、アーチェが無理に明るく振舞っていたのが、痛いほど判った。
ミントは見てしまったのだ。去り際のアーチェの目の端に、涙が光っていたのを。
ミントは軽く目を閉じると、心の中でアーチェにそっと囁いた。
(アーチェさん、ごめんなさい…。それと、勇気をくれて、ありがとう…)
◇ ◇ ◇
「お前達、夕べ何かあったのか…?」
翌朝、研究所の前に現れた三人を見て、クラースは呆れたような声を掛けた。
アーチェは、まるで一晩中泣いていたかのように、赤い目をしている。
クレスはミントと視線が合うたびに、何故か顔を赤らめている。
そのミントは歩くたびに眉をしかめ、よろよろと内股ぎみに歩いている。
三人は、クラースの言葉にピクンと反応し、一斉に答えた。
「あははっ、やだなー! べっ、別に何でもないよっ!」
「そうそう! 僕は、ただちょっと、緊張して眠れなかっただけです!」
「そ、そうです! 私、初めて…じゃなかった、ダオスとの決戦が近いと思うと、その…」
三人の慌てぶりを見て、クラースは何があったのか、おおよその見当がついた。
先頭に立って歩き出し、「はっはーん、…若いな」とでも言いたげな笑みを浮かべながら言う。
「…まあいいさ。ベネツィアに着いたら、そこでもう一泊しよう。
今度は、『余計な事はしない』で、しっかり休息を取るんだぞ、三人とも?」
「「「うっ…」」」
見透かしたようなクラースの言葉に、三人は顔を赤らめて絶句した。
ちなみに、現代に戻ってダオスを倒した後も、ある事情で彼らは共に旅を続けることになった。
その為、しばらく三人は気まずい思いをすることになるのだが…、それはまた、別の物語である。
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