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再開 |
アチェたんハァハァ氏 |
チェスター×アーチェ |
2003/12/22 |
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「アーチェ・・・久しぶり」彼らにとっては一瞬だったのだろう、この永い時間。
「アーチェさん・・・また会えて嬉しいです」多分昨日別れた友人といつも通り次の日の朝に声を掛け合う。
「その・・・なんだ、しばらく振りだな」そんな彼らを少しも羨まないわけじゃない。
嫉みに近い感情すらあるのだと思う。
―だけど。
「ただいま・・・久しぶりだね、みんな!」
アタシが居たかった場所。
待ち続けた場所。
やっとたどり着けたんだと思う。
(しっかし、時間ってのは偉大だよなぁ)
再会したアーチェに、以前の危なっかしさは殆どと言って良いほど見られなくなっていた。
チェスターは現在アーチェと一緒に暮らしている。
トーティス村は4人の若者のの手によって目覚しい復興をとげ、もはや数ヶ月前まではこの村に
家一つ無かったとはとても思えないほどになっていた。
人が住んでも全く遜色無い家々はまだ誰も住んでいない。
その中の1つをクレス、ミント。
もう1つをチェスターとアーチェが使っていた。
最初は4人で一緒に暮らしていたのだが、たくさん家もあるのだから、というクレスとミントの提案を
アーチェが押し切る形で実行される事となったのだ。
(前までは家事一つ出来なさそうで、嫁の貰い手がねえんじゃねえのか?なんてからかってたもんだが・・・)
チェスターはアーチェと再会してからというもの、何回かこうして驚かされている。
料理は未だにあまり上手くはない様だったが殺人的不味さを誇った××料理人の汚名を着せられていた
頃の面影は皆無と言っても良い。
寧ろ失敗率が高いだけ、という今の状況は『自分の料理の味』と言うものを客観的に見る事が出来て
「これは失敗」だとか「これは成功」というように考える事が出来る分、確かな成長した証と言えるのだ。
アーチェのエプロン姿を食卓の椅子に座りながらぼーっと考えていると
「チェスター?料理できたってばー。持っていってよー」というアーチェの声に気が付いた。
「ああ、悪ぃ悪ぃ」言ってまだスプーンとフォークすら出していなかった事に気付く。
(これじゃ要領いいのがどっちかなんて考えるまでもねぇわな)
チェスターはアーチェの作ったいい匂いのする方向にすぐにでも歩き出したかったがやはりそんな事を考えていた手前食器入れの棚に先に向かう事にした。
素早くスプーンとフォークを二人分取り出すとそれをテーブルの上に投げるように置いてアーチェのところに向かう。
だが既にアーチェは二人分の食べ物用の容器を両手に食卓に向かっていた。
「悪い・・・」
「いいっていいって」
だいぶ寛大になった気もする。
「お?今日はカルボナーラか?昨日よか豪勢だな」
「今日はミントと一緒にユークリッドまで行ってきてさ、いろいろ買い出しに行ってたの」
「へぇ、で、この肉は猪のか」なんて他愛の無い事を喋りながら食事。そうかそうか、今日は料理を任せろと言ってきたのにはこういう訳があったか。
「に、してもこんなにたくさん食ってたらさすがにたまには遠出でもしないと太っちまって仕方ねえな」
「ははは、確かに。ちゃんと運動も大切〜ってね」
「・・・・・・」
チェスターの表情が少し引きつった。
「ん?どうしたの?チェスター」
「い、いや、なんでもないんだ。それにしても美味いな、今日の夕食は」
「でしょー?やっぱりこれはミントが選んでくれた調味料が・・・・・・・」
アーチェに再会して驚かされた事の1つ。と、いうものとは少し違うのかもしれない。
それは違和感。
チェスターはアーチェと再会して一度も喧嘩していない。
喧嘩どころかこっちから突っかかってもアーチェが一歩引いてそれを受け流しているような。
そんな感覚。こちらが謝るまでも無いほどに喧嘩にはならないのだ。
(大人になったよなぁ、こいつも)
少し嬉しいような、少し寂しいような。そんな感覚を感じつつもアーチェの話しに再び耳を向けた。
「チェスターお先ー」
「おう、お休み」
さて、これからどうするか。
アーチェは先に寝てしまった。
話し相手も居ないので酒を飲むのもつまらないからたまには早めに寝るのも良いかもしれない。
そんな事を思っていると
「あぁ、そう言えば今日の狩りのときにクレスの家に弓矢置いてきたんだっけ」
猪の解体をクレスの家で行った際にあまりの巨大な猪だった為半分に切り分けたとしても
とてもチェスターに弓を一緒に持てる余裕はなかった。
どうせ暇なのだ、取りに行くのは早いに超した事はない。
早寝はお預けになりそうだった。
どうせならクレスを朝まで付き合わせるのも良いかもしれない。
酒に強い方ではなかった気がするが久しぶりにそういうのもいいだろう。
「さて・・・」
チェスターは腰を上げてランプの炎を消すとクレスの家に向かった。
「あ、チェスターさん。こんばんは」
出てきたのは意外な事にミントだった。
寝間着なのだろうか?いつもの法衣ではなく、ネグリジェ・・・とまでは行かなくとも
ヒラヒラしたフリルの付いた服を着ていた。
女の子を出迎えに使うなんてクレスには今度一度いっておいた方が良いかもしれない。
「あぁ、ミント。この家に置きっぱなしにしてた弓矢取りに来たんけどクレスいるか?」
「すみません・・・クレスさんは昼間の狩りで疲れてしまったようで、もう眠られてしまわれたんです」
2重敬語?
まぁそれはともかくとして。
「そっか、ならいいんだ。弓と矢筒だけもらえるかな?えー・・・と居間にあると思うんだが」
「ちょっと待ってくださいね」
承りました、言わんばかりににっこり笑うとミントはぱたぱたと家の中に向かう。
それから程なく、ミントはエルヴンボウと矢筒を両手に再びぱたぱたと現れた。
「ごめんなミント、重かっただろ」受け取りながら言うと
「いえ、弓の方は驚くほど軽かったです」と、苦笑混じりにいわれた。それはそうだ、エルフ特製。最高級秘伝の弓。
暗に『こっちはおもかったですけど』と言われた矢筒を受け取って肩に掛けると
「んじゃ、悪かったな。こんな夜中に」
と、いって背を向けた。クレスが寝てるのならしょうがない、やはり今日は早寝になるようだ。
「あ・・・あの!チェスターさん?」不意に声を掛けられた。
「なんだ?ミント」
「その・・・チェスターさん、アーチェさんとは最近どうなんですか?」
「?」
質問の意味が分からなかった。と、いうよりミントの意図を掴み兼ねた。
「どうって・・・なんだか最近・・・っていうか再会してからずっとなんだけどな。妙に大人になったっていうか寛容になったっていうか。そのせいでいざこざも喧嘩も起きなくて逆に寂しいくらいさ」
「・・・」ミントは黙った。
今度はその沈黙の意図が掴めない。
なんなんだ?
ミントは俺が何も言い出さないのを見ると大きく息を吸った。
「アーチェさんは・・・無理をしています」
「・・・?」
「今日一緒に街に行ったときに気付きました。
アーチェさんは・・・何故かは知りませんが無理してあの態度を装ってます。
見てて辛いくらいに我慢してて・・・何かに脅えているような感じがします。今のアーチェさんは本当のアーチェさんじゃないと分かります。
私にはどうにも出来ません、何とかしてくれませんか?チェスターさん」
一気にミントは言いきった。
「そんな・・・」
そんな?何が「そんな」なのだろうか?
俺だって気付いてたんじゃないのか?アーチェの様子がおかしい事くらい気付いてたんじゃないのか?
態度を装ってるところ?何かに脅えているところ?それともミントに気付けて俺に気付けなかった事?
「アーチェさんをもっとよく見てあげてください。目の下のクマには気付いてますか?ここの所ずっとです。アーチェさん私に言いつけたわけじゃないですけどとても辛そうにしてるのが分かります」
知らなかった、とは言えない。認める事になってしまうから。
完膚なきまでに認めてしまう事になるから。
アーチェを、今まで見ていなかった事を。
「クソッ・・・」
チェスターは家に向かって駆け出していた。
「おい!アーチェ!どうしたんだよ!」
俺は家に着くなりアーチェの部屋の扉の前で「ノック」以上の力で扉を叩いていた。
アーチェは出てこない。
「寝てないだろ!?俺がなんかしたってのかよ!ミントの前でも態度おかしかったらしいじゃねえか!」
再び怒鳴るようにして扉を叩く。
アーチェは出てこない。
「おい!灯かりはついてんだから起きてんだろ!なんで我慢なんかする必要があるんだよ!俺がいつ大人になってくれって頼んだよ!誰がもう二度と喧嘩したくないって言ったよ!寝不足になるくらい何悩んでんだよ!!」
自分に対しても、そして煮え切らないアーチェに対しても苛立ちは募る。
ああ、八つ当たりだ。
自分が馬鹿だったのが解決されないモンだからアーチェに八つ当たりしてるんだ。俺は。
なんて、最低な奴。
アーチェは出てこない。
「100年の間に何があったよ!俺は相談も出来ないくらい頼りにならねえかよ!一人落ちこんでんじゃねえぞ!」
鍵を壊してやろうか、とも思ったがそこまでする必要はない事に気付く。
そうだ、今は自分がただ苛立っているだけ。
相談なんて明日でも明後日でも明々後日でもいいのだ。
「なんだってんだよ!クソ!ふざけんじゃねえぞ!そんなに俺が重荷になるなら、そんなに俺が嫌ならとっとと出ていってやらあ!」
アーチェは出てこない。
捨て台詞だった。最後のは。
いやはや我ながら最低な男。
好きな女に八つ当たりなんかして。
多分今日の夜はこの事を激しく悔いる事になるんだろうな。
ああ、ミントが言うにはこんな事にならない様に、喧嘩なんかしない様にアーチェは色々我慢してたんだっけ。
それを知っていながら俺は何も言い返してこない女をあんなにも打ちのめすような事を。
分かっていたが最低の中の最低のそのまた最低の中の最低の最悪。
今更謝ったって許される事じゃない。
アーチェはやはり出てこない。
なんて思いながらアーチェの部屋に背を向けた、その時。
「いやあ!そんな事いわないで!!」
鍵を壊して、否、扉も壊さんばかりの勢いで部屋を出てきたのは涙で顔をぐちゃぐちゃにして俺の足にすがり付いている、アーチェだった。
アーチェが出てきたのだった。
「うう・・・うわぁ・・・嫌だよぉ・・・なんでそんな事言うのよぉ・・・ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい・・・
謝るから、何回だって何十回だって何万回だってチェスターの気が済むまで謝るから・・・うぐぅ・・
お願いだから出て行くなんて言わないでよぉ・・・また独りにしないでよぉ・・・そんな意地悪やめてよぉ・・・」
それは異常だった。
異常な光景、異常な行動、異常な言葉。
状況が全然飲み込めない。
「お願いだから嫌いにならないで・・・ぅぅ・・・アタシなんてミントの次だって良いしすずちゃんの次でもアミィちゃん
の次でも他の女の人の次、でも、いい、から・・・一番最後だって、良いから、チェスターの一番になりたいなんて思わないから・・・
喧嘩がしたいならいつだって喧嘩するから・・・こんなに落ち着いてるのが嫌ならあの時見たいにまた子供みたいになるから・・・
チェスターが好きな『アーチェ』でいるから・・・お願いだから嫌いになんかならないでよぉ・・・!」
「アーチェ・・・なにを―」
「そうだよね、アタシがこの部屋の鍵を開けなかったのが悪かったんだよね、ごめんね、本当にごめんね、本当に本当にごめんね、
本当に本当に本当にごめんね、でもね、もう大丈夫だよ、もう鍵なんて壊れちゃったから、もう二度とチェスターに迷惑なんて掛けないからね」
涙のせいで紅い瞳が揺らめいている。
「アタシが馬鹿だったんだよぉ・・・もう二度としないから・・・。チェスターの迷惑になるような事だってこれっきりだから、絶対に、
約束するから・・・。重荷だなんて一回だって、一瞬だって、1秒だって思った事なんて無いんだから・・・誤解だよぉ・・・酷いよぉ・・・
そんな事言わないでよぉ・・・なんでそんな意地悪言うのよ・・・」
「アーチェ!」
ビクンとアーチェが震えた。
「どうしたってんだよ・・・?おかしいぞ?」
言うとアーチェはうつむいてぶつぶつと何事か言い始めた。
「おかしくなんてないよ!アタシはチェスターが好きなんだもん!好きで好きでそれで
100年も待ってたんだもん!ごめんなさい、本当に大好きです。大好きで大好きで絶対に
失いたくなんて無かったんだもん!なんで分かってくれないのよ!大好きで大好きで放したくなかったんだもん!
好きな人なんてもう他に出来なくなっちゃったもん!貴方が欲しくて欲しくてやっと手に入れて、なんでそれでまた『出ていく』なんて言うのよ!」
あぁ・・・。
また気付けなかった。
チェスターは今すぐにでも自分を殴り飛ばしてやりたい気分だった。
自分にとってはたかだか数日でもアーチェにとっては100年の間があった。
知っていた。
それは知っていた。
知っているだけで理解しているつもりになっていた。
アーチェにとってのその重みと苦しみを全く理解していなかった。
それは今悔いても全くどうにもならない事であって、どうにもならない事でしかなかった。
「アーチェ・・・」自分が今とりうる最良の選択。
アーチェは顔を上げた。
涙でぼろぼろだった。
普段は可愛くて、愛らしい。
その顔が自分のせいでこんなことになってしまっている、それだけがチェスターにとっては酷く耐え難い事だった。
「ごめんな」
言って、その唇に自分の唇を重ねた。
「・・・恥ずかしいのか?」
「ちっ・・・違うよ」
ベッドに移動し全ての服が取り払われたその滑らかな肢体をまじまじと見ているとアーチェが恥ずかしそうに顔を背けたのでチェスターは尋ねた。
まぁそりゃあ誰だって自分の裸をまじまじと見詰められたら恥ずかしいのだろうが。
「チェスターの好きなように・・・していいよ」
「ん、そりゃありがたい♪」
いうなりアーチェに再びキスをした。
それは先ほどのキスとは違い、何度も何度も舌を絡めあう深い、熱いキスだった。
「あ・・・ん・・・はぁ・・・」
そして首筋、鎖骨とアーチェが感じるのを悦しみながらその控えめな胸へと舌を這わせて行く。
「感じちゃうよぉ・・・ちぇすたあ・・・」
「俺はそれを見て興奮してるわけだから一石二鳥。みんなハッピー」
「もぉ・・・」
冗談交じりに言うも本当にこのアーチェの痴態をみて興奮しているのは事実だった。
雪のように白い肌を紅潮させ、快楽に喘ぐアーチェにはそれぐらいの―
「エロさがある」
「ん・・・ほぇ?」
「いや、何でもない」
決して『上手さがある』ではない。いやはや。
少し甘噛みしてみたり吸ってみたりとしているうちに分かった事だがアーチェは胸の感度が異常に良いようだ。
髪大きく前髪が揺れるほどの息を吐いてくる事もあれば「ひゃう!」と突然びっくりしたように声を上げる事もある。
それがたまらなく可愛い。
「さて・・・」
今度はアーチェからのご奉仕をいただくのも多いに結構だったが今はそれだけで果ててしまう自信、いや
恐れがあったのでそれはまた今度の機会にする事を一瞬で決断し今度はアーチェの下を攻めてみる事にした。
すると
「あ・・・アタシばっかり気持ち良くしてもらってるからチェスターも気持ち良くしてあげるよ・・・」
申し出られてしまった。
据膳食わぬはなんとやら、だ。
既に据えられた膳は食っているが、おかずはいるか?と言われて要らないと断る道理はなかった。
「んふぅ・・・やぁん・・・」
チェスターの張り詰めた怒張にいったんフェラを中断したアーチェの熱い息が吐きかけられる。
ちょうどチェスターがアーチェのクリトリスを指で弄りつつ更に舌で攻撃したときだった。
「もう・・・気持ちよくて・・・」
「イキそうか?」
「うん・・・正直もうキそう・・・」
アーチェの蜜に濡れた秘部から指を離したのが了承の代わりだった。
「じゃあ、いくぞ」
「・・・うん」
アーチェが四つん這いの格好でチェスターが後ろから攻める、いわゆるバックの体勢で思い切りアーチェの中に自分の分身を撃込んだ。
「ん・・・あはぁ・・・気持ち・・・良い・・・よ・・・ちぇすたぁ・・・」
チェスターには本当は痛いであろう事が分かっていた。
自分が入っていった瞬間中で何かが切れたのを感じたから―
「アー・・・チェ・・・」
「ふあぁ・・ん・・・なぁ・・に?」
「俺の前でくらい・・・我慢しなくていいんだぞ?」
「・・・」
返事はなかった。
応えられなかったのかもしれないし、答えられなかったのかもしれない。
(少なくとも腰振りながら言う事じゃあねえよな・・・)
「あの・・・ね・・・?チェスター・・・?」
表情は見えない、声の調子から泣いているのかもしれないと言う事が分かった。
「ありが・・・とう、アタシ嬉しい・・・よ」
アーチェは仰向けになった。泣いてはいなかったが目は先ほどのように紅い瞳が揺らいで見えた。
チェスターは腰を動かしたままアーチェにキスをして思い切り抱きしめた。
小さな胸の感触を自分の胸部に感じながら。
次の日の朝はチェスターが朝食を作った。
と、いうのもアーチェが明るくなってからもなかなか起きてこなかった、と言うのもあるのだが。
ミントは勘が良いから何があったか察するかもしれない。
クレスは何もわかんないだろ、鈍感だし。
アーチェは・・・変わってくれるだろうか。
自分を偽る必要が無い、自分を作らなくても良い、そんな風に思わせてやれるだろうか。
そんな事を考えながら卵をもう一つフライパンの上に落とした。
「ま、変わりたくなくても変わっちまうのが世の中ってモンだからな」
アーチェは変わってくれるか、今は分からない。
変わってくれないかもしれないし変わってくれるのかもしれない。
あるいは。
物語は全然違う方向に進行するのかもしれない。
それは分からないが―
「ま、出来る事をやるさ」
良い具合に焼きあがった目玉焼きを皿に載せ、テーブルの上にパンを出す。
今日は忘れずにスプーンとフォークをテーブルに載せ、チェスターはアーチェを起こしに寝室へ向かった。
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