…* The Cause of Santa Claus 8 *…


とりあえず、殴られた。

それでもって、叱られた。


「お前ら、こんな遅くまで何してた」
「……ごめんなさい、ランパス…」
「…………。」
「何してたんだと訊いてるんだ」

「おやおや、一体どうしたんだい?」


パーティーの片づけしていたジェニエニドッツが、
奥から手を拭きながらやってきた。


「子どもが起きてていい時間じゃないだろう」


お前だって子どもじゃん…と
小さく呟くタガーに、思わず背筋がひやっとする。


「何してた」
「…………。」
「何してたんだ」
「……サンタを見たかった」


暫しの沈黙の後、憮然とした表情のままタガーが答えた。


「で、そのサンタが俺でがっかりしたか?」
「そんなことねーけど………」
「ねぇ、サンタクロースって…ランパスなの?」


さっきからずーっと気になってたことを訊いてみた。
まさかとは思うけど、ランパスが毎年毎年、
世界中の子どもたちにプレゼントを配ってた…?


「……正確には、違う」


少し伏目がちになりながら、ランパスが話し始める。


「今年は、サンタが病気になって来れないとデュトロノミーから訊いて、
 代理の猫が家々を周ってる。たまたまここは俺の担当だった。
 とりあえず、俺より年上の猫たちは皆借り出されている」




……あぁ、





それでか。




やっと全てが繋がった。



サンタが来れないと言う噂も
ここにランパスが居る訳も


そういうことだったんだ。


「分かったらもう寝ろ」


ぶっきらぼうに言い捨てて、ランパスが立ち上がる。
…もしかして、ちょっと怒ってる?


「やだね」


って、タガー!?


「お前より年上、ってのが気にいらねー。
 何でオレたちにはヒミツなんだよ」
「知るか。デュトロノミーの意向だ。」
「ほら、皆が知ってると、プレゼントを貰う側がいなくなるだろ?
 だからだよ」


タガーの不機嫌を逆撫でしそうなランパスの更なる不機嫌に、
ジェニエニドッツが慌てて助け舟を出す。


「ふーん…」


納得したのかしていないのか、タガーは曖昧な返事をした。


「ほら、ホントに二人とももう寝るんだよ。わ、もうこんな時間」


そう言っておれたちの布団を直そうと近付いたジェニエニドッツ
に向かって


「オレもやりたい」
「え?」
「サンタクロース」

「「「は!?」」」


三人の目が、点になる。


「オレもやるオレもやるサンタクロースやるー!」
「…バカなことを言うな」
「あー、バカってゆうヤツがバカなんだぞ!」
「いいから寝ろ」


溜息ついて部屋を出て行こうとするランパス。
その足が、タガーの一言でピタリと止まった。


「…バラしてやる。」
「…」
「ランパスたちがサンタしてたって皆にバラしてやる!」
「おい」
「じゃーやらして」


ランパスが、更に深く溜息ついた。


「一回だけだぞ」


ガッツポーズ。


「これをスキンブルの所に届けて来い。
 いいか、絶対中を見るな、それと絶対バレるんじゃないぞ」
「だいじょーぶ、ランパスみたいなヘマはしねーって」

とりあえずタガーを一発どついてから、ランパスが俺に向かって命じた。

「マンカスもついていけ。こいつだけじゃ心配だ。
 いいか、用を済ませたら真っ直ぐ帰って来い」
「うん、分かった」


「おいおい、大丈夫なのかい?」


うきうきと出かける準備をする二匹を尻目に、
声を潜めてジェニエニドッツがランパスに問う。


「…仕方ないだろう、この場合。
 デュトロノミーに絶対バラすなって言われてるんだ…。
 心配無い、後から俺もついていく」
「一緒に行けばいいんじゃないのかい?」
「…人数が増えたら、それだけバレやすくなるじゃないか」


肩をすくめて、ランパスが答えた。



「んじゃ、行ってきまーす!」
「静かに!」
「わーってるわーってる」


一抹の不安がよぎっている二人の脳裏のことなど露知らず、
おれたちは夜の街へと飛び出した。


教会からほど近い、駅の中のスキンブルシャンクスの寝床へと。




「……何を笑っている」
「いや、お前さんはつくづく嘘をつくのに向かない猫だと思ってさ」
「…………」
「まぁ、あの子達も全く気付いてないみたいだから
 どっちもどっちと言えばそうだけどね」
「…あいつらと一緒にするな」
「はいはい、ランパスはもう立派なお兄さんだよ」


タガーとマンカスが頭の上がらないランパスキャットも、
ジェニエニドッツには敵わない。




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