「お気に入りの時間」
「きッ…今日は駄目ッ」
「何でだよ?」
「駄目なものは駄目なの!」
「だから、なんで?」
ニクスとエリカの押し問答が続く。
するとかしないとか、それだけの問題なのだが…
エリカは何故か拒否の言葉を続ける。
「あー…わかった、アレだ、あの日なのか」
「な゛ッ………」
ニクスのあまりにも失礼極まりないストレートな質問にエリカは絶句する。
「そ…んな事…面と向かって聞くかなぁ、女の子に…」
「んー…なら、仕方ないよな」
「ちッ…違うもん!」
完全に拒否の態度を取るなら嘘でもそう言っておけば良いものを、エリカは正直に答えてしまう。
「えー…違うんならなんなんだよ」
「そ…そーゆぅ気分にならないだけよ」
ニクスがエリカの目を見据えて聞いても、彼女は目を逸らすばかりできちんと答える事は無かった。
「…そーゆぅ気分ねぇ…」
言ってニクスは周りを見回し、テーブルに乗っていたバンダナを手に取る。
「…?」
ニクスの行動が読めず、きょとんとしているエリカをニクスは抱き寄せ耳元で囁く。
「そーゆぅ気分にならないのなら、そーゆぅ気分にさせてやるよ」
言うが早いか、素早い手付きで手にしたバンダナを広げ、エリカの両手首を身体の前で縛り上げてしまう。
「えッ、あ…ッ」
何をされたのかエリカが理解する間も開けず、そのまま彼女に唇付ける。
前振りも無くエリカの口内へ舌を挿し入れ、歯肉を舐め上げ舌を絡めて吸い上げる。
吸い上げる度に二人の唇元からくぐもった水音が鳴る。
「んぅうッ…!」
ニクスはたっぷりとエリカの唇を、口内を蹂躙しながら肩を抱くもう片方の手で彼女の胸に触れる。
服の上からゆっくりと指を食い込ませ、揉み潰す。
胸元の布が妖しい形に歪んでいく。
「んんんーッ…!」
両手首を縛られたエリカは、ニクスの身体を押し戻す事も出来ずにただ流されてしまう。
ニクスはエリカの胸を揉む手付きを変え、今度はゆっくりと回し始める。
円を描く様に徐々に胸の中心に向かって撫で上げ、頂の先端を探り当て人差し指と親指で摘み上げた。
「ッ!…ぃやぁ…ッ!」
身体に電気が走ったような感覚に、エリカは激しく首を振りニクスのディープキスから逃れる。
二人の唇の間に、細い糸が引かれて切れた。
「あ、当たり」
「な…なにするの…」
ニクスに無理矢理な唇付けをされ、胸を蹂躙された事によってエリカの身体は熱を帯び始めていた。
気だるい意識の中、非難の言葉さえ強く言えず、消え入るような声になってしまう。
「ずいぶんその気になってきたんじゃ無いか?」
「そ…そんなこと…ないもん…」
「…そうか」
短い返事をしながら、ニクスはエリカの身体を軽々と抱き上げる。
「きゃぁッ」
「エリカのいきなり上げる悲鳴好きだなー、可愛くて」
唐突に抱き上げられた事に驚いたエリカの悲鳴を聞いて、ニクスは満面の笑みで喜びを表す。
次の瞬間、すっと目を細めエリカを見詰める。
「…これから、もっと聞かせてくれよ?」
「え…?」
ニクスはエリカを抱き上げたまま、寝室へ入り彼女をベッドに横たえる。
「え、あッ…やだ、やだぁぁぁッ」
ようやく事態を理解したエリカが必死で抵抗するが、両手を縛られたままの彼女に出来る事はほとんど無い。
ニクスは無言でエリカを縛っているバンダナをベッドのパイプに結え付けた。
エリカの身体は、両手を揃えて万歳するような体勢でベッドに横たえられる形になった。
ぎし、と結わえたパイプの根元から金属特有の悲鳴が上がった。
「縛られるってのも、結構感じるだろ?」
エリカの姿を視姦する様に見詰め、ニクスが問う。
「…」
エリカから否定の言葉は無かった。
ただ朱に染まった顔をニクスから背けて黙っている。
そんなエリカの様子を見、ニクスは行為に移る。
エリカの上に覆い被さり彼女のTシャツの裾から手を挿し入れ、捲り上げながら肌を擦り上げていく。
ぴくん、とエリカの身体が反応する。
もうだいぶ、感度が上がってきているように思えた。
「や…やだッ…」
Tシャツの裾が胸を露わにさせる所まで来て、再びエリカが抵抗の意思を示した。
ニクスは構わず、しかしゆっくりと彼女の服を捲り上げていく。
シャツは更にエリカの肩を、首を通って縛られた彼女の手首付近に布の塊となって溜まった。
下着に包まれたエリカの胸の双丘が露わになる。
「やだ…嫌、見ないで…ッ!」
再び発せられるエリカの抵抗の言葉を無視し、ニクスは彼女の背に手を滑り込ませ、片手で器用に下着のホックを外す。
外された下着は、シャツと同じ道を辿りエリカの手首に溜められる──白く滑らかな彼女の胸が露わになった。
年の頃で言えばやや大きめなエリカの胸だが、その形は下着を外した状態でも、仰向けに寝ていても、崩れないほどの均整 を保っている。
ニクスはしばらくエリカの美乳と言える程の胸を眺め、おもむろに両手で包み込む。
ゆっくりと、ゆっくりと…エリカが感じられる様に、優しく揉みしだいていく。
「はぁ…ん…」
切なげな声とともにエリカの口から溜息が漏れる。
既にエリカに抵抗の意思は無い様だったが、縛った手首を解かず、ニクスは行為を続ける。
胸を揉みしだきながら中心の頂へ迫る。
赤く染まり始めた胸の飾りを指先で転がす。
「ひぁッ…あん…」
エリカの反応に気を良くしたニクスは、更にその頂を口に含む。
口の中で舌を使い転がし、舐め上げ、吸い上げる。
もう片方の指も休む事無く、優しく摘み上げ、擦り上げ、時に軽く捻ってみる。
「ん…ッ、はぁ…」
胸の性感帯を優しく、しかし徹底的に責められ、エリカの身体は徐々にニクスを受け入れる体制に入っていく。
「…そろそろ、その気になってきたろ?」
「…はぁ…そ、そんなこと…んッ…ないったら…」
ニクスに責められながら、身体の反応は素直になりつつも、エリカは未だ抵抗の言葉を紡ぎ出す。
「いい加減素直になれよ…もう、凄い事になってんじゃないか?」
言いながら、ニクスはエリカのショートパンツに手を掛ける。
「…!や…いやぁッ!」
エリカは衣服を押さえようとするが、手首は未だ上方へ縛りつけられたままで動かせない。
ただ再び、パイプの軋む金属音を立てただけだった。
ニクスはそんなエリカの言動に耳を傾けもせず、ショートパンツのベルトを外しボタンを外しファスナーを下ろし、
彼女の腰を抱き浮かせると素早く一気に引き抜いた。
エリカは下着一枚の姿になった自分を眺めるニクスの視線を全身で感じる。
「や…みないで…」
すがるような擦れ声は語尾まで震え、衣擦れの音にすらかき消されてしまいそうだった。
その声すら聞こえない様に、ニクスは次の行為に移る。
エリカの閉じられた両足をこじ開け、下着の上から彼女の秘部に触れゆっくりと擦り上げる。
今までの前戯に散々性感帯を刺激され、エリカの中心は既に湿り気を帯びていた。
「あぁ…んッ…」
徐々に激しくなっていくニクスの指の動きに、堪えようとしてもどうしても喘ぎ声が出てしまう。
エリカの反応に満足したニクスは下着の中に手を差し入れ、直接彼女の中心を弄り始めた。
入り口を存分に掻き回し、溢れ出した蜜の音をわざと響かせるようにしながら弄り回す。
たまに、指のごく先端のみを差し入れ、少しずつ刺激してみる。
「ひぁぁん…ッ」
厭らしい水音が耳に届くたびに、エリカの身体は反応し、秘部の蜜を増やしていく。
「まだ、その気になら無い?」
「…んぅ…は、ぁ…だ、だめ…」
ニクスの問いに、もはやエリカは短い返事と首を横に振る以外の事は何も出来なかった。
「コレの何処が駄目なんだ?」
ニクスはエリカの中心を弄っていた指を引抜き、指に付着した液を彼女の目の前で舐め取ってみせる。
「…ッ!」
エリカはあまりの羞恥に耳まで真っ赤になって目を背けた。
そんなエリカの様子を見、ニクスは彼女の足から下着を引抜きおもむろに彼女の足の間に顔をうずめる。
唐突に、エリカの熟れ始めた花を舌全体で舐め上げた。
「あッ…はあぁん!」
ビクッと大きくエリカの身体が跳ね上がる。
イヤイヤする様に激しく首を左右に振り、気を抜くと弾けてしまいそうな理性を抑え込んだ。
ニクスの舌から逃れる為に身体を動かそうとしても、しっかりと腰を押さえられ、微かに震える事しか出来なかった。
自分の事で頭がいっぱいなエリカの様子に構う事無く、ニクスはその中心に舌を侵入させていく。
「んんッ…、やぁぁん…」
その部分で初めて感じる、舌の生暖かいざらざらした感触にエリカは過剰な反応を示してしまう。
自分の足の間から、再び卑猥な水音が聞こえ始める──
エリカの頭の中は真っ白に染まり、ただただニクスの責めを感じよがり声を上げる。
「そろそろ…そーゆぅ気分てヤツに、なってきたろ?」
ニクスはエリカの抵抗が少なくなってきた事に気付き、再び同じ質問をした。
エリカはゆるゆると首を左右に振る。
もはや拒否しているのか、または行為に対する反応なのか…彼女の意思も消えかかっていた。
ニクスは再びエリカの胸の方へ責めを移す。
紅く熟れ上がった胸の頂点を吸い上げ、甘噛みする。
右手では左胸を揉み回し、左手の指を彼女の中心へ挿し入れる。
「あぁッ…はぁん…、ぃ、いやぁぁぁぁぁぁ………ッ!!」
三箇所の性感帯を一気に責められ、エリカは無理矢理快楽の頂点へ昇らされてしまう。
一度きりで無く、二度、三度、同じ行為の繰り返しで何度も何度も責めたてられ、昇りつめさせられる。
「……はぁッ、ぁ…はぁ…は…、はぁ……」
何度目かの昇天で、エリカの身体は完全に男性の──ニクスのそれを受け入れる体勢に入っていた。
「エリカ…良いか?」
「……」
薄れそうになる意識の中で、エリカは涙の溜まった眼でニクスを見つめ、ゆるりと──頷いた。
その返事を見、ニクスは衣服を脱ぎ去り再びエリカに覆い被さる。
自分のそれを手に持ち、エリカの濡れそぼった花へ近付ける。
いきなり挿し入れる事はせず、先端で一番良い位置を探りながらゆっくりと、ゆっくりと…挿入していく。
エリカが痛くない様に、彼女が苦しむ事のない様に──
「くはッ…ぁ、ニクス…ッ」
「エリカ、痛いか?」
つい先ほどの放心したような状態が嘘だった様に、エリカは激しく頭を振る。
「だいじょう、ぶ……いたく、ない…」
実際、今まで散々性感を刺激していたため、彼女に挿入による痛みはほとんど感じられなかった。
ただ快楽を脳に伝え、声で身体で悦びを表現させていた。
それでも、ニクスは自分自身をゆっくりと挿れていく…
そして完全に──エリカの部分は、ニクスのそれを咥え込む形になった。
その状態を確認し、ニクスは再びゆっくりと動く。
エリカに負担がかからない様に、スローペースでピストン運動を始める。
「はぁ…ん…ぅ…」
徐々にスピードを上げながら、少しずつ最深部へと突き上げを始めていく。
それと共にエリカの反応も激しいものへと変わっていった。
「ッあああぁぁぁぁッ!ニクスッ…はぁぁぁぁん!!」
「…ッ、エリカ…ッ」
お互い激しく求め合う様になり、一緒に昇りつめていく。
「ニクスぅ…ッあぁぁぁッ、ニクスーッ!!」
エリカは未だ両手首縛り上げられたままで、腕で彼を求める事が出来ずただひたすらニクスの名を呼ぶ。
「…ッエリカ、早ぇよ…ッ」
ニクスの言葉通り、エリカは既に頂点に達しつつあった。
エリカの部分が彼のものを締めつけ始める。
完全に締められる前に、ニクスは自分のそれを一気に引き抜いた。
「…くッ…!!」
「ッ…ああぁぁぁぁぁぁんッ!!」
ニクスはエリカの身体に情熱の証を降り掛け、二人はほぼ同時に達した。
「つぅかさぁ、なんであんなに嫌がってたんだ?」
激しく求め合ったその行為後、二人はそのままベットの中で一晩を明かした。
──当然、エリカの手首の拘束はその後すぐに外されている。
エリカの拒否も結局は意味無く、その行為に達してしまったわけだったが…
ニクスには、エリカの拒絶の理由がわからないままだった。
「…言ったら、絶対バカにされるから言わない…」
「はぁ?何でだよ教えろよ」
「だからぁ、聞いたらニクス絶対笑うもん!言わないったら言わない!!」
ニクスの問いに完全に口を塞いだエリカは、毛布を引き上げ中に隠れてしまう。
「…エリカ」
「…なによ」
エリカの返事は毛布の中からだった。
そのエリカ入りの毛布に顔を近づけ、ニクスは恐怖の宣告をする。
「……教えねぇと、これから今すぐ第二ラウンド始めるぞ」
「ッ?!! や、やだあぁぁーッ!!!」
エリカの悲痛の叫びが、やはり毛布の中から聞こえてくる。
「じゃ、教えてくれるよな♪」
「…うぅ…」
観念したエリカが毛布から鼻の辺りまで顔を出し、ポソポソと呟く様に理由を語り始める。
「………し、下着がね………」
「…は?」
「…可愛くなかったでしょ…?」
「は…ぇ……はぁ???」
「だぁーかぁーらぁッ!ブラジャーとかショーツがねッ!!
俗に言うランジェリーってヤツがねッ!!お気に入りじゃなかったのッ!!!」
「は……はあぁーーーッ??!!!!」
予想もしていなかったエリカの拒絶理由に、力の抜けたニクスが仰け反る様にしてベットに倒れ込む。
「…」
「……」
「………」
「…ぷッ」
「!!」
「ぷはッ…、あっははははははははははは!!!!!」
「…ッ!!ほらッ!ほらやっぱり!やっぱり笑ったーッ!ひどぉぉぉぉい!!」
「はは…わりぃ…ははは、エリカらしいなー…はッ…く、くるし…ッ」
大袈裟にのた打ち回り腹を抱えて笑うニクスに、エリカは本気で怒っている。
「ひどいひどいひどい!!!あたしにとっては、女の子にとってはすっごくすっごく大切なことなのにーッ!!」
転げ回るニクスをバシバシ叩きながら非難の抗議をする。
「痛たたたた、悪ィ悪ィ、もう笑わねーって」
笑いを堪え、振り向いたニクスが目にしたのは、本気で泣きそうなエリカの姿だった。
「ひどいよ…ホントにホントに、大事な事なのに…」
「え…エリカ…」
「裸の身体だけじゃ無いの…下着つけてる姿も、可愛いって、思ってもらいたいから…
だから、いつもあーいう事する時は、頑張って色々考えて、どんなに見られても良い様に準備して…」
喋る内に、エリカの瞳から大粒の涙が零れ始める。
「ニクスの、好きそうなの、えらんだりとか…考えたりして…」
「…わかった、エリカ。ホントに悪かった…もう泣くな」
「そういうの、かんがえてる時間も…だいすきなの…」
「エリカ」
「ニクスのこと、たくさんたくさん、かんがえてられる…から、だいすきなの…」
「エリカ…」
泣きじゃくるエリカをニクスは満身の気持ちを込めて抱きしめ、唇付けで彼女の嗚咽を止める。
唇だけを合わせる、軽い、でも暖かい唇付けにエリカの気持ちもおさまっていく…
「俺の事、考えてくれてるんだな…悪かった、笑ったりして」
「…ニクス…」
「俺は、どんな姿だってお前の事、いつも可愛いと思ってるし…
それに、えと、何だ…あーっと…す…好きだから…大好きだから」
「…ぷッ…」
上手く言葉がまとめられず、支離滅裂になってくるニクスの謝り文句に、今度はエリカが笑う番だった。
「なッ…!ひ、人が真剣に喋ってる時に笑うなよッ!」
「だ、だって…すっごく似合わない台詞…」
「そ…そんなの、自分でわかって…」
「しかも、どもってるし…」
「…う…」
いつになく真っ赤になって目を逸らすニクス。
エリカはその両頬を手の平で包み込み、優しく唇付けた。
先ほどニクスがエリカの涙を止めたキスと同じような、軽く暖かい唇付け──
「…これで、おあいこだね」
「そうだな」
「あ…あともう一つ」
「…?」
「あたしも、ニクスの事大好きだからねv」
「お…おう」
END