ぼくのおんなのこ



 母が死んで以来、僕とワルオはひとつ屋根の下で暮らすようになった。詳しい事情は知らないが、ワルオの家庭には問題があるらしく、彼が家に帰りたくないと僕に漏らしたので一緒に住むのはどうかと提案した。一人で居るにはあの家は広すぎるように感じられた。そこに丁度良く、共に暮らしてくれる人間が現れたのだ。母が殺されたというのに、これからの暮らしを想像した僕の心は少し踊っていた。理由は至極単純、ワルオは僕の好みだったのだ。

「ねえ、そろそろワルオのお尻の穴見たいな」
「はぁ?ったく、仕方ねえな」
この通り、僕らの関係は爛れている。愛の告白もしないうちに、二人は互いを貪るようになった。きっかけは僕自身にある。生活の大部分を彼と過ごしていると、彼の可愛らしさに気づく、いや、気付いてしまう機会が多くなる。ご飯を食べる仕草、咀嚼音、歩き方、表情、薄い身体、そして稀にタンクトップの襟や袖口から覗く薄茶色の乳嘴など……僕の劣情が煽られる機会というのはそこら中に散らばっていた。そのせいで、彼を想い昂ぶった自身を慰める習慣がついてしまった。ひとつ屋根の下に住んでいれば気づかれるのも時間の問題で、悪癖が身体に染み付いてからそんなに経たない内にバレてしまったが、ワルオを想って毎晩自身を慰めるような気持ち悪い僕を彼は受け入れてくれた。独りで気持ちよくなっている僕の陰茎に口付けをして、そして中に導いてくれたのだった。
「ほらよ。こんなん見て何が良いんだか」
「う?ん……とにかく、良すぎるんだってば!」
ワルオは僕に背を向けてから、僕が肛門を見ることができるように四つん這いになってくれた。既に肌を覆う布はすべて取り払っていたので、肛門の他にも染み一つない尻臀や、可愛らしく縮み上がっている睾丸も見える。一通り彼の後ろ姿を眺めてから今日のメインディッシュに目を向ける。ワルオの肛門は保健の教科書で見るような物と全く違っていた。女の割れ目と呼んでも差し支えないほど縦に広がっていて、周りはふっくらと隆起している。肛門から分泌された粘液で濡れていて、さながら女陰のようで……
「あのさぁ……それ、気持ち悪いよ……」
どうやら、先程思っていたことがすべて口に出てしまっていたらしい。
「ごめんごめん、ワルオのおまんこがあんまりスケベだったからさ。舐めていい?」
「ん……」
僕たちの間では、ワルオの弱々しい返事は肯定を意味する。初めて身体を重ねて以来、ワルオは僕の求めを拒むことは無かった。彼の身体は人一倍快楽に弱く、また彼自身快楽にのめり込む性向があった。四つん這いの姿勢のままで待つワルオの肛門が期待に震えているのがわかる。いつもの様にこのまましゃぶりつくのも悪くないが、少々意地悪をしてみたくなったので、先ずは肛門の周りを舌でつつく事にした。
「ひえっ!?お、おい」
柔らかな桃色の花弁に舌をゆっくりと埋めたり、舌でつんつんと軽く触れてみたりする。ワルオが身をよじらせて逃げようとするのを、脚の付け根に腕を回し逃げられないようにする。慣れない刺激に戸惑うワルオが可愛くて堪らない。
「ふぁ、あぁっ!やめろ、くすぐってえから……!」
「くすぐったいの嫌?もうやめてほしい?」
やめてほしいと思っている筈は無い。ワルオの肛門は切なげに震えているのだから。
「ああっ、んっ!やめて、ほしく、ないっ」
「いい子」
そう言って舌をねじ込んでやると、ワルオは情けない声を漏らす。異物を押し出そうとする直腸の動きに負けじと舌を突き出し腸内を侵略する。異物を受け入れる時も出すときも、直腸は同じ運動をするのだから面白いと思いながら、ワルオが気持ちよくなれるように舌をにゅるにゅると前後に動かす。ワルオの肛門は美味しい。愛する人の身体ならどの部分でも美味しいと思うのが男の性であるが、それを抜きにしても彼の肛門はきっと特別美味しいに違いない。排泄物由来の悪臭が殆ど無く、ほのかな苦味がスパイスの役割を果たしている。きっと僕の知らない所で綺麗にしてくれているのだろう。いずれ、ワルオの肛内を洗うのは毎回僕がするようにしたい。ワルオの身体のことは、僕が全て知っていなければならない。
「……ッ、ぐすっ……なんで、そんなに、ケツ穴舐めるんだっ、汚いだろ、もういい!」
ワルオは気持ちよさの余り泣き出したのだろうか。鼻水を啜る音の交じる喘ぎ声が僕の脳髄を突き刺す。余りにも強い刺激は僕の脳髄と陰茎に悲鳴を上げさせるに足り得た。興奮の余り頭がガンガンと痛み、陰茎は沸騰しそうな位に熱く張り詰めている。今すぐ、どろどろに溶けてしまいそうな僕の身体を繋げて、彼を道連れにしてしまおう。
「……ワルオ、もう挿れたい……いいかな。」
「あっ、あぁ……いゃ………」
ワルオの返事はもはや言葉として成立していないが、肯定と受け取って問題無いだろう。僕の唾液で濡れているワルオの肛門に、カウパー塗れの僕の亀頭が触れる。ワルオの身体が僕の体液に汚されているのを実感して、身体の芯が燃えるように熱くなる。亀頭を押し付け、ゆっくりと肛内に入り込む。陰茎が1ミリ前進する毎に絶頂してしまいそうな快楽に襲われるが、三こすり半どころか一こすりもしていないのに射精するのはいささか格好が悪いので意地で耐えてみせる。それにしても、きゅうきゅうと締め付けてくるワルオの後孔はどれだけ僕を待っていたのだろう。彼がどれだけ拒む素振りを見せたとしても、最後には必ず僕のすべてを受け入れてくれる。そもそもワルオには僕を拒むつもりなんてさらさら無いのだろう。ワルオは僕の雌だ。
「ふぅ……んっ、全部入ったよ……」
根本まで押し込む間に射精しなくて本当に良かった。すぐに達してしまっては、せっかくのセックスが台無しだ。挿入しきったことに満足している僕の方をちらっと向いたワルオが、
「はぁ、やっとかよ……早くしろ、お前が欲しい……」
と急かすので、お望み通りに犯してやることにした。ワルオの身体に後ろからしがみついて、激情に駆られるままに腰を打ち付ける。陰茎が擦り切れ、脳汁が漏れ出してしまうような快楽に全身が包まれ、もはや正気ではいられなくなった。
「ねえ、ワルオ!気持ちいい?!気持ちいいよね!!僕も超気持ちいい!」
「あっ、ああ!気持ちいいから……!」
「気持ちいいからッ、何!」
「頭、ヘンになっちまう……!」
「そうなの……っ!じゃあ、変になってるところ、見せてよ……」
こっち向いてと言って、一旦陰茎を引き抜きワルオの身体ごとこちらを向かせる。ベッドに背を預けているワルオの脚の間に僕の身体を滑り込ませて、無防備な身体を視姦する。ぎょっとする程のぼせ上がった身体に、彼は一体平気なのかと心配になる。僕の陰茎と彼の割れ目を繋ぐ銀の糸がたらりとベッドに落ちた。一旦冷静になろうと彼の孔から陰茎を抜いたものの、ワルオのあられもない姿により一層欲望が掻き立てられただけだった。
「ワルオ……すごくエロい」
「はぁ、はぁ……っうるさい、いちいち気持ち悪いんだよ、お前は……」
蕩けた瞳に顰められた眉が似合わない。彼はいちいち僕の嗜虐心を刺激してくれる。
「そんなこと言って、僕とするの好きなんだろ?」
先程から、彼の双眸がいきり立った僕の陰茎を熱心に捉えているのが感じられた。ワルオの力を失った瞳に欲望の炎が灯るのを、僕は見逃さなかった。
「はぁ!?別に好きってわけじゃ……っ!!」
欲望に身も心も焼き尽くされそうになっているワルオの身体に僕自身を無理矢理沈める。互いの熱で身体が溶けてしまう心地だ。
「いいっ…!ん!?うぅぅぅう」
ワルオの熱にあてられた僕は、すぐに達してしまうだろう。早漏と思われようが、どうだっていい。早くワルオの中を僕で満たしたい。ワルオの媚肉に陰茎が溶け出してしまう、そんな恐ろしい錯覚に陥るほどに僕は無我夢中で腰を振りまくった。今の僕は快楽の奴隷だ。
「うあぁ、ヤバい、もうイきそうっ」
「へぇ、えッ、ぁんっ」
半開きになったワルオの口に舌をねじこませる。ワルオのか弱い舌が僕の侵攻に負けじと応酬する。ワルオの舌を無理矢理押さえつけたり、唇で吸ったりすると彼を蹂躪しているような気分になった。ワルオは接吻する時でさえ僕の為すがままなのか、と思うと僕の睾丸が煮え滾るように熱く、また凍ったようカチンコチンになった。
「れぇ…あは、ひんこ、ひもひいぃ……」
「はぁ、はぁ、チンコだったらっ、誰のでもいいの??」
「んっ!ちがう、おまえのがひい……」
可愛らしい事を言うものだ。男として生まれながら、その本性は雌そのものである。挙動の一つ一つが、それどころか呼吸でもってさえ僕を誘惑する。ワルオがもしも本当に女の子なら、僕と子を成さなくてはならない。今の僕等ならそれが可能である。完全な雌になった彼と、雄になった僕。
「ああっ!フツオ、もうイっ、く……!」
甲高い嬌声を上げながら、ワルオは射精を伴わずに絶頂した。やっぱり女の子じゃないか!
「ワルオ愛してる、いっぱい中に出すからね……赤ちゃん産んでねっ!」
そうしてこれまでに無く締め付けてくる彼の後孔に海綿体ごと搾られるような心地で、僕も射精した。耐え難い幸福感に頭の中では歓喜のファンファーレが鳴り響き、暫くの間身震いすることしかできなかった──

 性交の疲れからか、達してから直ぐに眠ってしまったワルオの身体が月光に照らされている。先程の熱に満ちた痴態からは想像できないほど、彼の身体は冷え切っていた。毎回、ワルオは僕が満足しないうちに力尽きてしまう。男にしてはあまりにも弱々しい痩せこけた身体では、僕からの愛を受け止めきれないのだろう。彼のそういうところが僕には愛おしくて堪らないのだ。先程の一連の過程が思い出され、僕の陰茎がまた芯を持ち始める。このまま熱が冷めるまで自慰に耽りたかったけれど、明日も早いので我慢することにする。それにワルオとは毎晩のように身体を重ねられるので、わざわざ独りで欲を発散する必要はない。以前の独り善がりな僕はもう居ないのだ。
 僕は僕は母を失ってしまったけれど、守るべき者ができた。ここに僕がいて、ワルオがいる。それだけで十分だった。これからはワルオとの愛の為に戦おう。僕等の絆を引き裂こうとする者は何人たりとも許しはしない。そんなことを思いながら、僕も眠りに落ちるのだった。

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