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投稿小説



断続的にオイルが巡る――――

それは懐かしい間隔と感覚―――――

そして俺は――――

目を覚ました――――



THE ROCKMAN X Episode2.91
―――隻眼魔境―――――
制作者:仙台さん



メイン動力炉が稼動を始め、そのサイクル機構によって発生したエネルギーが
思考回路の作動域に到達するのに、幾分か時間を必要とした。

段々と意識がハッキリとしてくる―――

 試しに指を動かしてみる―――

ギィ…

動く、動くぞ!

身が自由である事に歓喜するのも束の間、ようやくメインカメラが点った。

そうして完全に覚醒を果たしたVAVAの視界に最初に飛び込んだのは、白衣を着た老レプリロイドであった。

「あ――――?」

VAVAが少し間抜けな声を上げる。

老レプリロイドが呆れたように口を開いた。

「-―――やれやれ、覚醒後の第一声がそれか?VAVA―MKUよ」

「Mk-U?判らん……貴様、誰だ?」

「私の事より―――君は自分の事が判るかね?」

質問を質問で返されたのがVAVAには多少癇に障った。

だが、自分の置かれている状況を判断するのが先だと思い、素直に答える。

「VAVA…俺の名はVAVAだ――――それがどうした」

「はっ!ようし、機体換装の後遺症は無いようだな!」

老レプリロイドが満足そうに声を上げた。

「答えよう、私はドップラー…Dr.ドップラーだ」

「Dr…科学者型か…」

MkU・後遺症・機体換装・科学者――――

これらのキーワードがVAVAに真実を伝えた

「貴様が、俺を蘇らせたのか」

つまりだ

俺は一度死んだのだ

機械擬似生命 警備監察及び 不祥処理機構(通称イレギュラーハンター)・第17精鋭部隊隊長シグマの、突然の人類への反乱―――

かねてより電子頭脳異常者として拘束されていた俺は、この反乱に便乗し自由の身となった―――


数多くのイレギュラーハンターが賛同し、機械擬似生命 自衛行動及び災害対策軍(通称レプリフォース)の介入を

反乱の拡大を恐れて躊躇った国連政府からの、覇権奪取は簡単なものと思われた



だが――――――


反乱は たった一人のレプリロイド(注:機械擬似生命全般を指す、自己の思考体系を一定水準以上 確立していない機械はこれに含まれず、メカニロイドと呼ばれる)によってほんの一ヶ月で鎮圧されてしまう――――

ロックマン・エックス―――

第17部隊所属に所属する一介のB級ハンターに過ぎなかったエックスは
この反乱を期に、異常なスピードでその秘められた実力を発揮しだしたのだ

強化パーツによる形状及び、性能の変化
何より、驚嘆すべきは倒したレプリロイドの能力を奪い取るその能力にあった。
それはまるで、かつて100体を超えるレプリロイドを葬り去り、世界を破滅から幾度となく救った伝説の英雄『ロックマン』の能力そのものだった。

エックスやシグマ、そして俺に代表される『標準戦闘型』にはセカンドネーム(『ストーム』や『シャイニング』などの能力を表す名前)は原則的にはつけられない―――

だが、6箇所の反乱軍基地をエックスが壊滅させた頃には、反乱軍内部ではヤツは畏敬の念を込めて、こう呼ばれるようになっていた―――

ロックマン・エックスと―――――

親友ゼロを失い、その力を完全に覚醒させたロックマン・エックスに俺はいとも簡単に抹殺された、そして――――


「貴様に復活させられた、という事か」

ようやく記憶回路が正常に稼動しだし、過去の記憶が生々しく戻る。

Dr.ドップラーは静かに頷いた。

「―――――なるほど」


ゆっくりと、立ち上がる。そして

「目的はなんだ?」

疑問点を簡潔に聞いた。

「復活させた礼も無しかね?・・・フッ・・・まぁいい、答えよう」

「・・・・・・」

「もちろん、君を利用するためだ」

「・・・!」

刹那、VAVAはドップラーの頭部に肩の銃口を突きつけた。
零距離――――直撃すれば、メモリーの欠片も残らない距離である。

「俺は・・・他人に利用されるのが嫌いでな・・・甦らせてもらった事に対する礼はしよう」

「・・・・・・物騒な鉛弾でかね?・・・残念だが、君の肩に弾は装填されていない、無駄だ」

「・・・お前こそ残念だったな、空砲でも衝撃でメモリが損壊する距離だ・・・死ね」

「その空砲が炸裂するのと、私が君の停止コードを打ち込む速度・・・果たしてどちらが上かな?」

「機能停止コード・・・やはりそんな物を用意していたか・・・」

「私の脳内で命じるだけで、君の機能は止まる・・・命を握られているのは君の方だ」

「クソが・・・」

沈黙と緊張が走る――――

お互いの時間が、止まった―――


そして
沈黙は破られた


「!」
「!」
肩の空砲が炸裂する刹那、機能停止コードによって働いた安全装置が
衝撃の強制シャットダウンを不完全実行。

「が!?」
「ぐぎ!!」


結果、声にならない声を張り上げ、両者は吹き飛んだ。


(当たりが浅いか・・・クソッ、体が動かん!)

機能停止コードによって、各部動力伝達に関する全ての機能がフリーズした。
今のVAVAは意識だけは はっきりしているが、体が全く動かない状態なのである。
その事実を実感しVAVAが戦慄する。


「だが―――結局君は私に協力するしかない」
破損した額を抑え、ゆっくりと立ち上がりながらドップラーが言う。

「ほざくな・・・ジジィ」
「それは、そうだろう・・・?」
「・・・・・・」

「今から38時間後に、私の命令で世界各地で一斉に武装決起が起こる・・・そうなれば当然イレギュラーハンターは、出てくる」

「そうだろうな・・・」

「なら、エックスとゼロが動くのは必然だ」

「!!!!」

エックス・・・
ゼロ・・・
その名前を聞いた途端、VAVAの思考回路は興奮のあまり焼ききれるような錯覚を覚えた。

「く・・・くかか・・・ははははははははは!!!!」

笑いが止まらない、可笑しくなりそうな程であった。

「そうか、そうかよ!生きてやがったか・・・クソガキども!!!」

「シグマ様は既に二度以上に渡り、奴等に敗北している・・・VAVA・・・これはシグマ様の――」

「いいだろう!ジジィ!!貴様の思惑に乗ってやる!利用されてやろうじゃないか!!」

「――――」

「今度こそ、殺してやる・・・壊してやる・・・エックス・・・ロックマン・エックス!!そしてもう一度地獄に叩き込んでやるぞゼロ!!!」


それは―――
隻眼悪鬼の執念が世に再燃した瞬間であった。




「ドップラー様・・・」
「ヴァジュリーラか・・・ご苦労だな」
「はっ・・・報告いたします。あの男はDRA‐00を駆り、廃工場に向かいました・・・」
「そうか」
「しかし・・・よろしいのですか?」
「あの男の復活はシグマ様のご希望でな――――だが、いいじゃないか?」
「と、仰いますと?」
「あのエックスとゼロに対する執念は素晴らしいの一言だ。ある意味、人間以上だよ」
「そうでしょうが―――ああ勝手に動かれては計画に支障が出ると・・・」
「問題は無い――好きにやらせれば良い。それよりも計画の第一段階の実行を」
「はっ!」


こうして、悪鬼は再び世に生を受けた―――

『蒼き閃光』と『隻眼の悪鬼』が再び銃弾を交わすとき、果たして生き残るのは果たしてどちらか?

それは、また別のお話―――



・・・To Be Continued
THE ROCKMAN X Episode3





管理人コメント
仙台さんからの贈り物です♪
VAVAがめちゃめちゃカッコいいっす(><)
すごく引き締まった文章ですよね。ほんとにカッコいい・・・♪
仙台さん、ありがとう。続き、お待ちしております(^O^)

・・・とか、当時は書いていたのですが、改めてみると続くのは『X3へ』という意味だったらしい(爆)
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