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※このストーリーは私、密林jungleが作ろうと企画した『8ボスバトルロワイアル』の中のワンシーンです。 ほんとは全て通して書いてみたかったのですが、なにぶん文章力も構成力もなくて・・・(^^;) てなわけで、決定していたVSものを抜粋し、必死こいて書き上げてみました。 ※一応流れ的には、ゲーム説明が終わり、今まさにゲーム開始といった場面からです。 制作者:密林jungleさん (……こんなゲーム、生き残ることぐらい造作もないことですね……) 静まり返った教室の中、緑色のスリムなボディをしたレプリロイドが一人静かに口を歪めた。 足を組み、長い尻尾を遊ばせているその態度には、これから起こるゲームの恐ろしさなど微塵も感じさせなかった。 アシッド・シーフォースと呼ばれるこのレプリロイド、教室内に仲間こそいないものの、彼にはこのゲームを生き残る『自信』があった。 彼は特別に攻撃能力が優れているわけでもなく、ましてや敵の攻撃に長時間耐えられるほどの耐久力を持ち合わせているわけでもない。 だが、彼には他のレプリロイドが持っていない、ある特殊な能力を身に着けていた…… 「出席番号3番、アシッド・シーフォース君」 スピーカーから響く無機質な声を聞き、シーフォースは黙って立ち上がった。 周りに座っている恐怖に怯えたレプリロイドを愚かに思いながら、ゆっくりと教室の前へと歩き出した。 途中、恐怖のあまり泣き出してしまっているキノコ型のレプリロイドを見かけたとき、再び彼の口がにやりと歪んだ。 活路を見出せないでいるレプリロイドを見て、一種の優越感に浸ったのである。 (……愚かなレプリロイドめ……生き残るのはこの私だ……!) 入り口のところで、メカニロイドから供給袋を受け取り、板張りの廊下へと足を踏み出した。 長く続く廊下の先、分校の出入り口を見つめ、シーフォースは『自信』の根本をもう一度確認しつつ歩き出した。 (……このゲーム、出合った敵全てと戦い、殺していくのは合理的ではありませんね。 メンバーを見渡してみても、私より腕の立ちそうな連中がたくさんいましたし、 彼らと戦っていたら、私の命がいくつあっても足りない…… ならば、奴らの数が減り、弱りきるのを待てばいいだけのこと……! 48体のレプリロイドがそれぞれ殺し合いをすれば、たとえ腕に自信がある者でも、かなりの深手を負うはず…… 私は残った『その1体』だけを殺せばすむわけです…… それまで私は『隠遁』を決め込むまでですよ…………クックック…………! ) 彼の『自信』の源。全ては彼の体を構成するリキッド・メタルと呼ばれる金属にあった。 リキッド・メタルは別名、液体金属とも呼ばれ、文字通り液状に変化することのできる金属なのである。 この能力を使えば、水辺や沼地などに身を潜めることもできるし、 細く狭い岩と岩の隙間や、建物のパイプ管など、それこそどこにでも隠れることが出来る。 そこで時が過ぎるのを待ち、頃合いを見て殺戮に乗り出そうという計画が彼の『自信』だったのである。 自分のその計画に酔いしれながら、彼は手荷物の中から地図を取り出した。 身を潜めるのに最も適した場所を検討するためである。 見ると工業地帯や森林など、隠れるのに最適な場所が次々と見つかった。 もはや自分の勝利は確実なものであると信じ、彼は分校の入り口を『自信』にみなぎりながら通過した。 ガラスを踏みつけたような鈍い触感が右足元に伝わり、暗闇を引き裂く鋭い音があたり一面に広がった。 シーフォースは気にすることもなく、再び歩み始めようとするが、足が重く、地面から離れることが出来ない。 まるで杭で打ちつけられたようにびくともしないのである。 ……その瞬間、シーフォースの体から一気に血の気が抜けた。 あれほど『自信』にみなぎっていた顔も、目を見開き、アゴを震わせ、依然とは打って変わって恐怖の表情に歪んだ。 予想もしなかったこの些細な出来事こそ、彼が最も恐れていた事象だったのである。 液体金属故の弱点…… 金属といえど液体がベースのリキッド・メタル。 ひとたび氷に触れると、たちどころに全体が凍り始めてしまう。 このゲームにおいても雪上地帯などの温度の低いところだけは避けようと心に誓っていたシーフォースであったが、まさかこんな場所に氷の欠片が落ちているとは夢にも思わなかったのである。 彼は今までに味わったことのない焦りを覚えた。 もたもたしていては全身が凍り付いてしまう。 足元の氷を供給袋に入っていたエネルギータンクで殴り付け、破壊しようとするが、 破壊するスピード以上の速さで、たちまち右足の付け根まで凍りついてしまった。 (……グッ! まずい、このままでは……!!!) そのときシーフォースの脳に、高らかな笑い声が響き渡った。 「ヒャーーッハッハ! 間抜けな奴だなぁ? こんなトラップに引っかかるなんてよぉ?!」 焦るシーフォースの目の前に、小柄なレプリロイドが暗闇から姿を現した。 にやにやと笑いながら近づいてくるそのレプリロイド、名をアイシー・ペンギーゴといった。 攻撃的でずる賢い彼は、入り口に氷の罠を仕掛けていたのである。 (もっとも、彼自身シーフォースの弱点が氷と知っていたわけではないのだが……) 足止めとして使い、その隙に殺そうと企んでいたのだが、予想以上の効果に本人も少々驚いていた。 (……ここまで効果があるとはねぇ……どうやらこいつ、氷に弱かったみたいだなぁ……ヒャッハッハ!) シーフォースに先程までの冷静さはすでになく、敵を目の前にしてもはやパニック寸前であった。 「き、貴様か! こ、こんな真似をしたのは!!!」 「ヒャッハッハ……! だったらどうするよ?!」 言うや否や、ペンギーゴはシーフォースの左足元目掛けて氷弾を発射した。 見る見るうちに左足も凍りつき、シーフォースの半身は完全に凍り付いてしまった。 ここまで凍り付いてしまっては、シーフォースに生き残る術はない。 もはや脱出の道を完全に失ったシーフォースは、だらりと肩を落とし、持っていた袋をどさりと地面に落とした。 ペンギーゴが近づき、小さく呟いた。 「……へっ、こんなに『あっさり』やられてくれる奴ばかりだったら楽なのによーー…………ヒャーッハッハ!」 そのときシーフォースは教室での出来事を思い出した。 成す術もなく泣きじゃくるレプリロイド。 それを蔑む自分。 今となっては立場は逆転し、絶望の淵に立っていたのはシーフォース本人であった。 体全体が完全に凍り付き、氷の彫像と化したシーフォース。 意識が薄れる中、最後に感じたものはペンギーゴの殴打の衝撃であった。 胸部から入ったヒビは体中を伝わり、彼の体は次々と砕け始めた。 ご自慢のスリムボディも真っ二つに割れ、美しい流線系の頭部は首の根元からボキリと折れた。 地面に落下した衝撃でパーツのほとんどが粉々に砕け散り、もはや原型が誰なのかも分からなくなってしまった…… こうして最もゲームに『自信』を持っていた男、アシッド・シーフォースは死んだ。 | ||
制作者コメント 管理人コメント |
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