超ミステリアスサスペンス長編(大嘘)
「裁きの刻」
その悲劇は、ホテル「ラグズランド」で起こった。
ホテル内の大浴場に、一つのホトケさんが転がっていた。
ホトケさんの名はシグマ。ホテル側が雇った「半田(はんた)清掃局」の
第十七課課長である。彼はご自慢のモップを強く握り締め、
浴槽の中で倒れていた。その光景を見たのは、「ドップラー精機」の
エリート社員ヴァジュリーラ君。社員旅行で日ごろの疲れを流そうと
いの一番に浴場にきたばかりに、彼は悲劇に立ち会ってしまった。彼の悲鳴を
聞きつけ、多くの人間が浴場に集まる。そこには、被害者の部下の姿も数名見られた。
エックス「ひ、ひでェ・・・何で課長が・・・!」
ゼロ「誰がこんな事をしやがったんだ!」
スタッガー「でもこの人あんま良い人じゃなかったしなァ」
ゼロ「そういやそうだな」
ヴァヴァ「どうでもいいんじゃねェの?」
マンドリラー「そうだなァ」
エックス「帰るか」
????「まてェい!」
その場を去ろうとする群衆を、大きな一声が止める。
声の主は、レプリフォース警察署のストーム・フクロウル警部。
署内では色々と噂の老紳士だ。隣には同じく警察署のペガシオン刑事。
助手として使われている若い苦労人だ。
フクロウル「この中に殺人犯がいるかもしれないので
誰一人動いてはならん!」
ペガシオン「あの・・・すみません皆さん」
フクロウル「鑑識の連中はまだかねペガシオン君」
ペガシオン「さァ・・・もうそろそろでは」
その刹那、足止めされている群集が突然吹っ飛んだ。
吹っ飛んだ者は赤い炎に包まれ慌てふためいている。群集の中から
二つの大きな炎が現れた。炎の中には人影が見える。
ディノレックス「おらァ! 鑑識様のご到着だぜェ!!」
ヒートニックス「オラオラ!ホトケさんはどこだコラァ!?」
マンドリラー「なっ、なんだァコイツら!?」
エックス「ゼローーー! 大丈夫かーーーー!!?」
突然現場が慌しくなる。そんな状況に目もくれずフクロウルは
二人を遺体に引き合わせる。鑑識と名乗っていながら
二人は何の準備もなくただ遺体を見つめ続けた。
ヒートニックス「あーもっ全ーー然わっかんねェーーー!」
ディノレックス「風呂場だし、溺死で決定! 終わり!!」
ヒートニックス「鑑識終了! じゃァな!」
そう言い放つと、二人はまた群集を吹っ飛ばしつつ現場を去った。
相変わらずフクロウルは気にも留めない。ただペガシオンが
群集に対し頭を下げるだけ。
フクロウル「ふふ、相変わらず俊敏にして的確な鑑識よ・・・」
――――――――
事件発生から一時間。この一時間は、ただ沈黙のうちに
過ぎていった。耐え切れずこの場を去ろうとする者には
逃げるなの一言と同時にダブルサイクロンをぶちかまして止める。
つまり、一時間前集まったヤジ馬連中は皆この場に留まったままなのだ。
フクロウル警部はただ遺体をながめるだけ。無駄な時間が過ぎていく。
とうとう誰もがしびれをきらし―――しかし警部には逆らえないので
誰か適当な者を犯人に仕立て上げるという暴挙に出た。
スタッガ−「こんなトコもォヤダよ! 誰かさっさと犯人だって名乗っちまえよ!!」
ゼロ(焼身)「なら貴様が名乗れ」
スタッガー「何ィ!!」
ギーメル「ミーとしては、この前科17犯の殺人鬼シュリンプァーさんが怪しいと・・・」
ザイン「何でそんなヤツがこんなトコにいるんだ!!」
ペンギーゴ「あんたオーナーだろ! 何とかしろよ!」
ベルカナ「アタシに逆らう気? 魂盗るわヨ?」
ペンギーゴ「・・・・・・ゴメンナサイ・・・・・」
ヴァジュリーラ「なんで社員旅行でこんな目に遭うんだ・・・」
マンダレーラ「・・・・」
ドップラー「・・・・・・・・スマン」
その時。ロックマンシリーズおなじみボス選択画面の曲が、電子音で
流れてきた。着メロらしい。それはフクロウル警部の懐から聞こえてくる。遺体を眺めているうちに
いつの間にか眠ってしまっていた彼は、ハッとなって携帯を取った。
フクロウル「ふぁい・・・もしもし? ああスパイダス? なんだ・・・?
何! ナイトメア病院で事件発生!? ガイシャは名医で知られた
ゲイト氏だと! よし解った、すぐ向かう!!」
周りがざわめき始める。フクロウルは突然荷物(?)をまとめだした。
助手のペガシオンもよく解っていないらしい。突然走り出すフクロウル。
ペガシオンも―――何も解ってないのに、条件反射でつい一緒に走り出してしまう。
フクロウル「聞いたとおりだペガシオン君、急げ!!」
ペガシオン「ええ!? 僕何も聞いてな・・・」
アイリス「あら、ペガシオン・・・」
ペガシオン「ああっ! アアアアアアアイリス!?(ウェイトレスだったのか・・・!)」
フクロウル「早急に鑑識に連絡を取ってくれ!」
ペガシオン「アイリスーーーーーーー!!」
ディノレックス「鑑識参上! ホトケさんはドコだーーー!?」
ヒートニックス「ゲイトさん! 今行くぜェーー!!」
ペガシオン「どっから湧いてきたーーー!?」
フクロウル「急げーーーー!」
――――――――
妙な警察達にまどわされたラグズランドの人々。誰もが唖然となったままである。
感覚的にまだ取り残されているらしい。しかし、さっきまでの騒動とのギャップから
皆ふと我に帰る。
エックス「や、やっと終わったのか・・・」
ヴァヴァ「何だったんだヤツらは・・・?」
ヴァジュリーラ「や、やっと社員旅行が始まる・・・!」
マンダレーラ「・・・うむ!」
アイリス「あ、ゼロ! ・・・何かあったの?」
ゼロ「ん、いや・・・そのカッコ似合ってるぜ」
アイリス「そっ、そォ・・?(赤面)」
ギーメル「ああああ! ミーの相棒がシュリンプァーさんにーーー!」
ザイン「助けてくれーーーーー!」
マンドリラー「ペンギーゴの魂が抜かれてるぞーー!」
スタッガー「オーナーあんた何しやが・・・ああ!居ねェ!!」
苦悶の時からやっと開放され、改めて快適なホテルライフを満喫する
宿泊客達。仕事に戻る清掃業者にホテル従業員。全てが何事も無かったかの様に
過ぎていった。ただ一人を除いては。
――――被害者、清掃局十七課課長シグマよ安らかに――――
(終?)
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