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投稿小説

サクリファイス
制作者:D-sideさん


『龍神村』―
今では地図にも載っていないこの村での出来事―

〜〜〜

(―ここは何処だ?)
 ゆっくりとまぶたを上げると、淡い日差しと共に一人の女性が目に入った。
「良かった、気がついたんですね…」
 その女性は濡れ羽色の長い髪を軽くかき上げて、安堵の笑顔を見せた。
「―ここは一体…? あなたは?」
「あっ、動かないで! まだ修理が終わっていないわ!」
「!?」
 自分の体に目をやると、所々破損しているようだ。
「な、なにをしている!!」
「あっ!」
 即座に女性の手を振り払う。
「私のボデイには、装甲の一部に強酸が含まれているんです! 下手に触れると…!!」
「…大丈夫ですよ、多少の知識はありますから。 それにわたし、レプリロイドですから」
「………」
 確かに改めて見ると彼女はレプリロイドだった。
 しかし それにしても―
「美しい…」
「え?」
「…いえ、何でもありません…ところで、名前を伺っても…?」
「わたしはアルカ。 あなたは?」
「私はシーフォース…アシッド・シーフォースです」
「シーフォース…さん、なぜこの村の湖のほとりに倒れていたの…?」
「………わかりません………」
 目を閉じるシーフォース。
「何もわかりません…名前しか…何処で生まれ、何処から来て何処へ行くのか―名前さえ、いつからこう名乗っているのか覚えていませんよ…」
 しばしの沈黙。
「…はい、修理は終わりよ。 立てるかしら?」
 立ち上がるシーフォース。
「有難う―…アルカ。」
 軽く目を合わせ、お互い微笑む。
「外へ出ましょう。 村を案内するわ…」

〜〜〜

「ここは『龍神村』…人口約200人の小規模な村よ」
「何と言うか…この景色は…歴史に取り残された、とでも言おうか…」
「…見て、あの大きな木…」
 アルカの指差す方には、高さ7、80mはあろうかという巨木がそびえていた。
「あの木の幹に掘ってあるのが、この村の人々が信じてる『竜神様』よ。…シーフォースさん、あなたに似ている…」
「…………」

〜〜〜

「この村ね、この地にダムを作るっていう計画があって…でも村の人達は、竜神様の恵みあるこの地を離れるわけにはいかないって、問題になっていたの」
「非科学的ですね」
「もっとも科学が進歩していながら、科学で解明できない生き物、それが人間なのよ…」
「……さっき、『問題になっていた』と言いましたね?」
「ええ」
「もう解決した…と解釈しても?」
「………」
 足をとめるアルカ。
「昔から…川が増水したり、作物が取れなくなったりしたときは、竜神様の怒りを鎮めるためにやっていたそうよ…」
「…人柱、か?」
「レプリロイドのわたしがいながら村人を犠牲には出来ないの。幸い、わたしは村の人たちに仲間と認められているから…」
「私にはあなたの想いが正しいのかどうかは判断しかねます…」
「…」
「ただ、もし私があなたの言うように、その『竜神様』なのだとしたら…あなたと共に、この地を永遠に見守りましょう…」

〜〜〜

『モナークダム』―
世界最大の規模を誇る巨大ダム。

そのダムの底に、メタルリキッドに抱かれたレプリロイドがやさしくたたずんでいる事を知る者はいない―




制作者コメント
アルカと言う名前は、シーフォースがアシッド(酸)なので、反対の…わかりますね?
本編が、あえて謎を秘めたエピソードになっているので、こういう創作をヨシとしない方もいるかと思いますが…あの話の裏なのか、それとも別の世界なのかは読んだ方の想像にお任せするとします。


管理人コメント
岩本先生ネタで来ましたか! 私もいつかやろうと思っていたんですが、先越されちゃいましたな。
でもいい感じに仕上がってますよ。神秘的な話、結構好きです♪
アシッドだから、アルカ(リ)・・・なるほどって思いました(^^)
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