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制作者:D-sideさん ……つい来てしまった……ボクは一体何をやってるんだ…… 「ん? ペガシオンじゃないか……お前、今日は休暇じゃなかったのか?」 ボクに気付いて声を掛けて来たのはスパイダスだった。 そう、彼の言う通り、ボクは休暇だと言うのにレプリフォースのベースへと来ていたのだ。 余計な事を言われない様にしたいものだが…… 「あ、ああ……そうなんだが……何となくな」 「ハッ! てっきり間違って日曜日に学校に行く人間みたいな大ボケかましてくれたのかと思ったぜ〜 仕事の虫も程々にしないと、参謀長様みてぇに堅物扱いされちまうぜ?」 「おい、クチを慎め!」 「まぁそう怒んなって……ま、皆のジャマだけはするなよ! じゃあな」 いつもながら一言多いヤツだ。 ……しかし、仕事の虫、か。 そう。 憧れのレプリフォースに入隊が決まり、それからは仕事を追いかけ、追われる毎日。 そんな中で順調に成果を挙げ、気づけばレプリエアフォース長官。 異例の出世スピードらしい。 少し照れくさいが、プリンスと呼ぶ人までいる。 だが、ボクがここまで真面目に頑張ってこれたのは、もしかしたら、仕事とは別な目的……たった一人のためなのかも知れない。 ……今日、ほとんど無意識の内にココへと足を運んで来てしまったのも、その人に会うためなんじゃないだろうか……? 「あれ? ペガシオン?」 上の空だったボクの目の前に突然現れたのは、亜麻色の長い髪を腰の高さで束ねたレプリロイドの少女。 「あ、あぁ!」 驚いて、咄嗟に言葉にならない声が出る。 「どうしたの? オヤスミだって聞いてたけど」 「い、いや……何て言うか、ココにいると落ち着くと言うか……さ」 ―『キミに会いたかったから』―なんてセリフは、躊躇いなく飲み込む。 「あ、そうだ! 私も今、仕事が一段落ついた所だから、ちょっとだけ、いいかな……? 一緒に話でもしない?」 「え? も、もちろんだとも!」 自分で言っていて情けなくなる程に不自然だ……彼女は笑みを浮かべてボクの方を覗き込んでいる。 「キミはまだ仕事が残っているんだよね……あまり遠くには行けないね」 ボクは出来るだけ平静を装いつつ、彼女と一緒にベースの外へと向かった。 「ねぇ……ペガシオンは、したい事とかって、ないの?」 「え?」 「だって、せっかくのオヤスミにまでココに来るなんて・・・『たまには仕事を離れて、こんな事をしたい!』 とか・・・」 「したい事……ボクは……(キミとこうして――)……特に無い、かな」 「……あら、そう?」 「そう言うキミは?」 「ん、私はね……今のままが一番いいの。」 「今のまま?」 「うん、今のまま」 彼女はそう言うと、一度頷いてから、自分に言い聞かせる様に次の言葉を続けた。 「私がアレをしたい、コレをしたいって言ってる時間があれば、その時間で、どれだけ人の役に立てるだろうって思うから……」 「たまにはワガママも言った方が、カラダにもイイと思うけどな」 「……うん……」 「ボクに出来る事ならなんでもしてあげるから、さ」 「ありがとう……でも、今は本当に大丈夫だから」 ……『大丈夫』……か。 やっぱり何か我慢してるのかな。 「じゃ、私、まだ仕事があるから、また今度ね」 「あ、うん、そうか……つきあわせちゃったみたいですまないね」 「そんな、誘ったのは私の方だし……楽しかったから気にしないで」 そう言って、彼女は笑った。 ここで一つ、普通は最後に何か……気の利いた言葉を掛けるモノなんだろうな。 だがボクは軽く手を振るだけだった。 彼女の笑顔のせいだ。 ヘタに何か言おうとしてシドロモドロでは、それこそカッコ悪い。 ベースに向かって歩き出した彼女の後姿を少しだけ見送って、ボクも帰ろうとしたその時、背中の向こうから彼女がボクに言った。 「『たまにはワガママも言った方がイイと思うよ』……あなたも、ね」 一瞬、時が止まる。 ハッと気がついて振り返ったが、彼女はもう遠くに小さい。 「……ボクがワガママを言うと、『今のまま』じゃなくなっちゃうんだよ」 すでにベースの中に戻ったのか、もう姿は見えなくなった彼女の方に向けて、つぶやいた。 「今のまま、か……確かにそれが一番なのかも知れないな…………ボクはキミを想う……届かなくてもいいんだ ……いや、届かない方がいい、のか……」 ボクの心にはキミしかいなくても、君の心にいるのは、ボクじゃないから…… ……そう自問自答していて、ふと気付く。 彼女はやはり、我慢しているんだと。 そしてそれは、自分と同じ…… 「…………さぁ、明日もまた仕事だ! 頑張るぞ!」 ペガシオンは、声に出してそう言うと、真っ白な翼を広げて飛び立った。 翼の下を、風が吹き抜ける。 ― 『今のまま』が、長くは続かない事を暗示する様な、螺旋の風が ― | ||
制作者コメント 管理人コメント |
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