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制作者:D-sideさん とあるラボラトリー、二人の科学者レプリロイドが机をはさんで向かい合い、話している。 「話は終わりですか?」 「……やれやれ……君には何を言っても無駄なようだな」 「答えが出るか出ないか、あなたは答えを出した。これ以上何を話し合うと?」 「とにかく私は君の研究に協力する事は出来ないし理解も出来ないよ、ゲイト君」 「そうですね、所詮あなたも他の低脳なやつらと同じだったと……残念です、ジム博士」 「……失礼するよ」 「待って下さい、ボクが客人のために珍しくティーを出したんだ……一口くらい、礼儀ってものです」 「……」 二人の科学者レプリロイドの内、穏やかな紳士の物腰を持つ…… ジム博士と呼ばれたレプリロイドは、目の前に置かれたカップを手にとると、 一口に飲み干すと、手際よく傍らのカバンとコートを取り立ち上がる。 もう一人の、妖しげな青年風な……ゲイトと呼ばれたレプリロイドが、 追って彼を引き止めるように立ち上がり声をかける。 「ところで、明日のあなたの護衛はシールドナー・シェルダンだそうですね?」 「君が製作したレプリロイドの中でも彼は非常に優秀だ。彼に護衛してもらえると思うと安心できるよ」 「……有難う御座います、褒め言葉と受け取っておきますよ」 「皮肉だよ」 「フッ、でしょうね……それじゃおやすみなさい、ジム博士」 「……まだ夕刻だよ。研究所にこもりっきりでサーカディアンリズムも狂ったかね?」 「送りましょうか」 「いや、ここで結構」 「Dr.ジム、お体の調子が良好ではない様に見受けられますが、大丈夫ですか?」 「シェルダン君、心配させてすまないな。私は大丈夫だよ」 (昨日ゲイトの研究所を後にして……それから体の調子がおかしい……今回の仕事が一段落したら、一度メンテナンスを受けてみるとするか……うぐっ?) 「うおお……ッ!」 「Dr.ジム!?」 「ううううう」 突然うつむいて唸り声を上げながら、ボディを小さく震わせている。 明らかに尋常ではない事が見て取れる。 「Dr.ジム、聴こえますか! Dr.ジム!!」 シェルダンがジム博士に呼びかけるも、反応は無い。 そして次の瞬間、ジム博士は小さく後ろに飛びのくと、近くにあったベンチにボディをかすめた。 するとなんと、ベンチが弾き飛ばされたのだ! 「うわぁっ!?」 「な、何事だ!」 付近の一般人が騒ぎ出す。 「あのパワー……ベンチを破壊したダメージがDr.ジムのボディにも及んでいる……思考回路が正常に作動してるとは思えない」 ジム博士はそのまま体を翻すと、近くの一般人に向けて拳を振り上げる。 「きゃああ!」 「『ガードシェル』!!」 間一髪、二人の間にシェルダンが割って入り、肩に装備した大型のシールドでジム博士の攻撃を防いだ。 「Dr.ジム、貴方をイレギュラーと認定します……失礼……『パールショット』!!」 シェルダンのシールドは受けたダメージをエネルギー弾に変換し、放出する事で攻撃できる。 放たれたショットはジム博士の胸部を直撃、ジム博士の機能は停止した。 「シ、シェルダン君! なんて事を!」 ジム博士と共にいた助手数人が駆け寄る。 直後、シェルダンの真上から声がした。 「シールドナー・シェルダン、Dr.ジム殺害によりイレギュラーの容疑あり」 「何ッ!?」 戸惑い振り返るシェルダンの眼に、天井から徐々に姿を現しながら着地するレプリロイドの姿が映る。 「イレギュラーハンター……その能力、噂に聞く第0特殊部隊の者か」 「シールドナー・シェルダン、真に失礼ではありますが……貴方の製作者がゲイトと言う事で、上層部の配慮により極秘に監視していました」 「何だと…ッ」 「動かないで下さい、貴方の処分はこれから決まります。ひとまずはハンターベースにご同行願いましょう」 気付けば、今話し掛けているレプリロイド以外に3体のレプリロイド-第0特殊部隊隊員-がシェルダンを取り囲んでいる。 「待ちなよ」 そう彼らに声をかけたのはゲイト……ゲイトがその場にいたのだ。 「ゲイト様!」 「……貴方はゲイト、なぜ貴方がここにおられる?」 「ボクがどこにいようが勝手だろう? さぁ、シェルダンを放しなよ」 「何を言われますか、ここに居たのなら貴方も見たはずです、シェルダンがDr.ジムを破壊するのを」 「ああ、確かに見たさ……イレギュラーから人間の安全を守るのはレプリロイドの義務だからね」 「Dr.ジムがイレギュラー化したという証拠はありますか?」 「何……? おい、ちょっと待てよ、シェルダンがとち狂ってジム博士を破壊したとでも言いたいのか?」 「その可能性も否定できないと言っているんです。丁度良い、どの道シェルダンの製作者である貴方にもこの話は及びます。今からハンターベースにご同行願えますね?」 「ふざけるなよ、なぜボクがお前ら下っ端の命令を聞かなくちゃならないんだ?」 そこにジム博士の助手が口をはさむ。 「この現状では仕方ないな、ここで彼らに逆らえば君やシェルダンの立場が悪くなるだけだよ」 「そうだ、それにジム博士はエネルギー研究における権威のお一人。なんとか破壊せずに動きを止める事も出来たのでは」 「好き放題言ってくれるじゃないか……もし逆の立場で……殺されたのがボクだったとしたら、誰も文句はたれないんだろうな」 刹那。 シェルダンがハンターの手からビームダガーを取り上げた。 「何……いつの間に! おい、妙な真似はよすんだ!」 「そうだ、貴方のガーディアンとしての能力は高く評価されている! おそらく処分はゲイトだけに及ぶだろう、貴方は自分の立場を悪くしない方が良い!」 「……」 そのときゲイトに軽く視線を送ったシェルダン。 その顔はかすかに微笑んでいるようにも見えた。 「シェルダン……?」 「私も心ある一人前のレプリロイド。自分の行った事への始末は自分でつけましょう。」 「おい、何してる! 早くシェルダンを取り押さえろ!」 「どうか、この私の一命を持ってこの場は…!」 そう言うと、シェルダンは自らの胸にビームダガーを突き立てた。 膝をつき、その場に倒れ伏すシェルダン。 場が一瞬凍りつく。 彼は自害した。 ゲイトはその場に伏したシェルダンの傍らに屈みこむと、彼の額のクリスタルパーツを取り外し、白衣のポケットにしまい込んだ。 そして立ち上がり、その場のハンターやジム博士の助手達に向き直り、言い放った。 「これで満足なのかい?」 「何!?」 「話は解決したろう、ボクは帰らせてもらうよ」 「ま、待て、ゲイト……!」 ゲイトは誰の静止も聞き流し、そのまま空港から出て行った。 「……なんて奴だ、目の前で自分の作ったレプリロイドが自害したというのに顔色一つ変えずに冷静に……」 「使えそうなパーツだけ手際よく抜き取っていった様に見えるな、研究が第一か」 「あれでは誰にも認められずに一人で研究所にこもっているというのも納得がいくな……最低な男だ」 「……シェルダン……」 パーツを握り締め、呟くようにシェルダンの名を呼ぶゲイト。 そしてパーツをポケットにしまうと、再び歩き出した。 フン! ゲスどもめ……何とでも言うがいいさ。 ボクの心なんて、お前らの低能なブレインじゃ理解できるはずもないよ…… いずれ思い知らせてやる……お前らを……人間もレプリロイドも全て! 見下ろすのはボクだと言う事をね……! | ||
制作者コメント 管理人コメント |
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