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制作者:アレイズさん 「バトルシップの鎮圧、完了しましたぜ、リーダー」 果てしなく広がる大海原。その真ん中ともいえる場所で、オレは通信機にこう話しかけた。すると、 『そうか、ご苦労だったな、ウオフライ。また派手にやっちゃいないだろうな?』 通信機の向こう側から「リーダー」が、不信感だらけな声で、オレに質問してくる。 「とんでもない。だいぶ地味にやったつもりですぜ…………リーダー」 『……そうか、それならいい。なるべく早めに戻って来いよ。』 「へへへっっ、了解しやしたよ、リーダー」 オレはそう言って通信を切ると、後ろを振り返り、にやりと笑って言う。 「まあ、オレとしては、って話だけどな………」 そこには、不幸にも油血で真っ赤に染まってしまった哀れな大型戦艦の姿があった。 ―――オレの名はスプラッシュ・ウオフライ。通称「卑怯者」だ。なぜ「卑怯者」なのかはオレ自身にも分からねぇ。 「やあ、卑怯者」 その時だ。突然オレの頭の後ろから、気にくわねぇ言葉が聞こえてきた。オレは驚いて後ろを振り返る。するとそこには、 「なっっっ?! て、てめえ、アクセル!! 何でてめえがこんなとこに!!」 オレはアクセルをにらみつけると、あいつは全く悪気がないような笑顔でこう答えやがる。 「レッドの頼みでさ、ウオフライのやつが何をしでかしてるか凄く心配だから、様子見に行けって指令があったんだ。あれれ、またまた派手にやっちゃって…………」 アクセルは、血まみれと言っても過言ではないこのバトルシップを見ても、全然構わねぇみてぇだった。ガキのくせにやけに一人前のハンターになりやがって………… 「へっっ!! どうせてめぇも同じ様なことしてんだろ、いつもリーダーにくっついてよぉ!!」 オレはこう言ってアクセルから視線をそらした。どうもこいつを見ているとイライラしてくる。ガキのくせに、いっぱしリーダーに認められてるとこが特にな。 「レッドはオマエほど派手にはやらないよ、卑怯者。それに、ボクはもう独り立ちしたからレッドとはイレギュラーハントしてないよ」 アクセルは半分バカにしたような目つきで、オレを睨みつけた。オレも、それに負けじと睨み返し、 「うるせぇ!! この未成年が!! 生意気なんだよ!! とっとと帰れ!!」 「それは無理な話だなぁ……レッドにこの現状を報告するには、もう少し調べが必要だからね…………」 アクセルはどうやらオレに挑戦する気らしい。どこまでも気にくわねぇガキだ。 「帰らねぇっつうんならこっちは本気で追い返すぜぇ………………」 オレはナギナタをアクセルの目の前でぶん回して見せる。だがアクセルはそれにも臆すことなく、オレにこう言いやがった。 「へぇ、僕と戦ってくれるの? それなら言っとくけど本気出してよ。手加減苦手だからね」 アクセルも、バレットを数発、空に打って見せやがった。その表情からは、遊び心が見え見えだった。オレの腹ン中はその一言で煮えくり返った。 「てめぇぇぇぇぇ………!! その余裕、絶対に後悔させてやらぁ!!」 オレはアクセルに容赦なく飛びかかっていった。 「て、てめえぇ………ま、まだくたばらねぇか!!」 しばらく戦って、オレはもう息を切らしていた。無理もねぇ。何時間も戦い続けたからだ。 「そ、そっちこそ、そろそろ降参したらどうかな? 卑怯者…………」 どうやら、アクセルのガキもオレと同じで、体にガタが来てやがるようだ。こんな時いつものオレなら、『いったん潜水し、後ろに回り込んでナギナタで痛めつける』のだが、アクセルのガキはオレにそうさせようとしねぇ。ガキはいつでもオレを狙い撃ちできるだけの射程を保ち、照準をオレに合わせてやがる。オレが後ろを向いて潜水しようとした瞬間、アクセルのガキはオレを撃ち抜くだろう。 だがアクセルのガキも、動く気配はなかった。オレは、ガキのバレットを、ほぼ完全に無効化できる。うかつにアクセルのガキがバレットを撃てば、オレはそれを跳ね返し、そのスキにガキの後ろに回りこめるって寸法だ。 だから、オレもアクセルも全く初めの場所から動けなかったってわけだ。ただ立ってるほうが、動くよりも倍の時間で疲れる。 オレは不覚にも、もうこれ以上続けてもしかたねぇと思っちまった。だが、それは本当のことだったし、もうコイツと勝負してるのも面倒になったので、ここいらでケリをつけることにした。 「ふん。今日はここまでにしといてやるよ。アクセル。だが次はないぜ?」 オレがこう言うと、 「あれれ? もうおしまい? もしかして限界なの? 卑怯者」 アクセルはそう言いながらも、しっかり息を切らしてやがる。まったくどこまでも腹の立つガキだ。 「へっっっ!! それはそっちのセリフだろ!! 見逃してやったんだよ!! てめえはガキだからな!!」 オレはこう言った。するとアクセルは、 「ふうん…………じゃあぼくの勝ちだ………」 と、言ってバレットをしまった。今だ…………!! 『ゴンッッッッ!!』 オレはここぞとアクセルを一発ぶん殴ってやった。はじめから、これが狙いだったのだ。 「いて!! 何するの!! 戦いはオシマイなんでしょ!?」 「ひゃははははははは!! 勝負は最後まで分からないってなぁまさにこのことなんだよ!! ガキィ!!」 オレは勝手にさっきの勝負と結びつけてやった。これで全てにケリがついた。オレはこういうところで卑怯なのだ。 「さっきオシマイだって自分で言ってたじゃないか!! 卑怯だぞ!! 正当にもう一回勝負しろぉ!!」 アクセルは本当に痛そうな顔をして、片手で頭を押さえながらオレに指をさしてきやがる。オレはここで不敵に笑ってこう言ってみせる。 「ふん、いいかぁ、てめぇ!! 勝負ってのはなぁ、二度三度やっても結果は変わらねぇんだよ!! わかるかぁ!?」 「分からないよ!! さては逃げる気だなオマエェ!! もっかいだもっかい!! ああ、どこ行くんだよ!!」 オレはアクセルの言葉を皆まで聞かなかった。聞いててもしょうがねぇと思ったからだ。オレは怒り続けるアクセルを一人残して、アジトへの帰路についた。 | ||
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