「リック。今日は流星群が降るんだよ。」
ナナスは俺に対して言った。
ながれぼしふるふる
ママトトへやってきて早数年。その時に俺はママトトへやってきた。ココへ行けば
両親の存在が見つかるかと思ったからだ。
『あれ……君、ママトトに用事?』
理知的な瞳を宿すのはナナスであった。
『ああ……。それより一体誰なんだ――?』
『僕?僕はナナス・アルフォリアだよ?』
『あ、あなたがカカロ王の息子――』
カカロ王の息子とは到底思えない。しなやかな体作りはそこらの女よりもずっと
美しかった。
『うん。もしかして父上に会いたいの?』
『はい――』
『ちょうど僕もそっちに向う予定だったんだ。一緒に行こう?』
ナナスはリックに手を出す。リックはその手を大人しく取った。
『えへへ、手繋ぐのなんて随分と久しぶりだな。』
『……。』
俺はただ黙るばかり。
『でも君、運イイね。ココらへんだと丁度明日やってくる流星群が綺麗に見えるんだ。』
俺がこの場に留まることを想定しての話しを彼は始める。
――数年に1回、この地方に流星群が出るんだって。僕も昔見たキリだから見れると分かって
嬉しくてね。
『ココにいたのでは――』
『違うよ……。この地方を出ればもう終わりなんだ。』
俺はナナスの言ったことを理解したのか小さく、ああ、呟いた。ココを出れば大陸の端に
追い込まれてしまう。
『でも――ママトトに何の用事?』
『いや……ちょっと。』
『言いたくなければいいよ。』
ナナスぅ、と彼を呼ぶ名前が聞こえた。1人の少女が手を振っている。
『僕は君を歓迎するよ。ようこそ、ママトトへ――。それより君の名前は?』
『俺は……リック=アディスン。』
ナナスが世界を制覇した後、俺は出て行こうとするナナスを止めた。
『僕は戦争のない世界には必要ないんだよ。』
諦めたような声を聞いて、俺は苛立ちを覚えた。普段のナナスからは考えられない位
弱気な言葉。
『大賞、あなたの力は戦争をする能力ではありません。人を統治する能力です。』
今にも泣きそうなナナスの顔を俺は子供のように撫でた。
『そう……かな?』
『そうです。』
きっぱりと断言する。
『それに俺、ナナスがいないと生きていけませんから。』
ぎゅっとナナスを抱きしめる。
『リック……?』
『大将がいないと、ストーリンも、ミュラも悲しみますよ。』
『そ、そのリックの気持ちは分かったから……いきなり僕の名前で呼ばないでよ。』
照れるじゃないか――と顔を赤らめてナナスは恥ずかしげに言う。――ヤバイ。
『可愛いな。ナナスは。』
『可愛くないよ!』
『可愛いよ。』
真顔で言うと、ううっと唸り声をあげて俺の服を引っ張る。
『分かったよ……残るよ。こんなに心配されると行きにくくなる。』
『それが良かった。それと――数週間後に出るんだよ。』
流れ星……とナナスは言う。
『もうそんな時期なんだ――。』
『祈りは祈ることしかできない。星は人の願いを叶えてくれるわけではない。でも――祈って気持ちが
楽になるのであればそれはそれでイイんじゃない?』
2人で祈れば――その分願いが叶うわけではない。でも……祈って楽になるのであれば俺は
祈ってあげよう。
彼に幸せが訪れるようにと。
後書き
『ながれぼしきらきら』と対になりますね。コッチを先に読んだほうがイイかも。てゆーかあんまり流れ星
関係ない……。本家リックよりコッチ派です。いや、兄貴分で非常に宜しいのです。主従関係万歳。
ナナスサイドを反面している作品となりました。