レインボー王国はほぼ陥落した。城は半壊、マグナムはヒーリングより
動けるまでには至った。


クリアが起きると、おはようございます、と声をかけられた。
「おはようございます……って――ライン、さん?剣と伊月さんは
――それより父上……ミルキィ!」
布団から飛び上がろうとするが抑止される。
「暫く休んだほうがいい。ヒーリングで大方回復はしていますが。」
ラインから声をかけられ、クリアは大人しく布団の中にまた入る。
「――あの、どうして此処にいるんですか?」
「救護隊が全員マグナ――いや、国王様のほうにいるからですよ。
研磨に残れって言われて。」
「剣が?生きてたんだ……。」
安堵の声が聞こえる。クリアの声も幾分か落ち着いたようだ。
「あの、さっき父上のこと呼び捨てでしたよね?」
ラインは黙ると、重い息を吐く。
「嫌いなんだよ。国王のこと。」
「父上のことを?」
クリアはラインの話に耳を傾ける。
「ああ。あの国王を支持する人は多いのに、だ。」
「でも父上は尊敬に値する人ですよ。」
クリアの声が激しくなっていく。
「それは分かってますよ。ただ――。」
「ただ?」
「時折見せる眼光は輝いているけれども濁っている。そう見えるんですよ。」
「光っているのに――濁っている?」
忘れてくれ、ラインは手で振り払う。クリア暫くその意味を考えていた。
「忘れるなんて出来ませんよ。」
「ん?」
「それって怖いです。輝いている理由は果て無き欲望や野望だとしたら
――怖いです。人の野望や欲望は望めば望んだ分だけ深く、恐ろしくなります。」
クリアの目が伏し目になる。クリアは得体のしれない感情をミルキィに持っていた。
あの時必死になったのは兄、だからではない、男、としてなのだ。
ミルキィを抱きしめたい。その望みは今なお尽きていない。
兄としてミルキィを心配しているのではない。男として心配しているのだ。
何時の頃に、どんな理由でその感情を抱いたのかは分からない。
ある日気付いた感情だったから。
誰にも言っていない感情は日々募るばかりだった。
もしかしたら――隔離されたからこそこの気持ちが芽生えたのかもしれない。
近すぎないところに2人はいなかったから。
「――いや、すごいな。王子は。」
「凄い――僕がですか?僕は凄くなんてないです。」
実の妹に恋をしている身なのだから。凄くなんてない。
「本当に国王の息子だとは思えないな。」
「僕、体も華奢なほうだし、顔も男の子っぽくないし――。」
「いや、そう言う事じゃない。」
確かにそこも似ていない部分なのだが。ラインは違和感を覚える。この少年は、本当にマグナムの
息子なのかと。あの国王は優しいというイメージより力強いイメージが強いためなのだろうか。
――久しぶりに、興味の沸く物が目の前にある。銀髪の少年に対して。
「ラインさん?」
「んぁ?あ、何。」
ぼーっとしていたから。
「そう見えたのか。」
「何か考え事、ですか?」
「いや、何にも。」
嘘をつく。何が何にもだ。目の前の少年に興味があるくせに。
「王子、そろそろ行こうか。」
「あ、うん。」
ベットから降り、靴を履く。たどたどしい動きだが。それを見かねたラインはクリアが
履いたのを確認すると一言申し入れて負ぶった。
「ちょ、ちょっとやめて!」
クリアの声が最後、裏返る。
「王子、足痛いですか?」
「足……痛く、なんてそんなわけないです。」
「ホントにぃ?」
ラインは片手でクリアの膝に軽い刺激を与える。クリアの体が反応したのかビクリ、と面白いように動く。
「強がりは駄目だって。」
陽気な声を出し、扉を開ける。やけに開くのが早いと思うと目の前には無表情で無言の睨み。
流石にクリアやラインも固まった。歳の割りに随分と威圧感が感じられる。
「何をしている?」
「何って王子を負ぶってるんだよ。足が痛いからって。」
僕何も言ってない、とクリアは言おうとしたが、言葉を発する寸前に足を押さえようとする。
「クリア?」
「王子?」
「僕、やっぱり負んぶしてもらう。」
ラインの肩を強く持つ。剣はラインに悔しさに似た視線を送ると先へと向う。ラインは何処か
勝ち誇った顔をしてクリアをマグナムの元へとエスコートする。クリアの足はズキズキと
不協和音を鳴らしていた。
「あの、ラインさん。」
「何ですか王子?」
「その……ありがとう。」
気遣ってくれて、と言う言葉を添えて。


「父上!」
父の姿を見た途端、クリアは足の痛みが吹き飛んだ。ラインから降り駆け寄る。久しぶりに
見た父の顔は前よりもやつれていた。
「ご無事で何よりです。」
「お前も……よく生きてくれた。」
「はい。」
目元が熱くなる。マグナムはクリアの頭を撫でる。
「父上……。」
「すまなかった。」
「え?」
「お前を地下室などに閉じ込めておいてすまなかった……。」
撫でる手を止める。クリアはマグナムの言葉の意味を理解すると首を振る。
「いえ、父上には何か考えがあったのでしょう?」
クリアは口を閉ざす。
「父上。」
目つきが変わる、空気が変わる、調子が変わる。その場の雰囲気は一転する。
「ミルキィを取り戻してきます。」
眼光は光、嫌でもマグナムの息子だと周りの人々は思い知らされる。
「………分かった。だがお前1人では到底不可能だ。護衛をつける。ライン。」
「はっ。」
「剣。お前ら2人にクリアの護衛をしてもらいたいと思う。」
「御意。」
「分かりました。」

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