ハンティたちのクリスマス




12月24日――世間一般ではクリスマスイブと言われている。
プレゼントを交換したり、夜になると良い子にはプレゼントを
くれるサンタクロースという人物がいたりするのだが・・・それが
嘘なのか、本当にいるのかは誰も知らない。




「じゃあね、おやすみ。」
ヘルマン北部。ただでさえヘルマンは寒気が酷いというのにココは
北部。豪雪地帯とも言われる所。ハンティは顔だけ後ろのほうへ
向け、3人――パットン、ヒューバート、フリークに挨拶をする。
「ああ、おやすみ。」
ハンティに言葉を返すパットン。ハンティは少しだけ唇の端をあげると
1人、テントのほうへ戻っていった。
「・・・・・・さて、準備でもするかのぅ。」
ハンティがテントの中へ入るのを確認すると、鉄魔匠フリークは
浅黄色をした袋の紐を引っ張った。




12時頃――雪は先ほどよりは弱まっている。シンシンとゆっくりと、
静かに雪は下へ下へと落ちてゆく。――幻想的な風景だ。
「しかし・・・パットン。お主がこんな事をするとは思ってもいなかったぞ。」
フリークは着替え、上下ともに赤い服。トレードマークの赤い帽子を身にまとう。
残りの2人――パットンとヒューバートは気ぐるみのような物を着ていた。
そして、鼻には赤い物を。
「・・・・中々似合ってるぞ。」
笑いたいのを背一杯堪え、フリークはパットン達を見ていた。今の彼らは
相当マヌケだ。パットンはヘルマン皇子で、ヒューバートはヘルマンで、否
人類最強とも言われたトーマ・リプトンの息子だ。こんな2人がトナカイの
気ぐるみを来て、鼻には立派なことに赤い鼻。あの真っ赤なお鼻のっ、トナカイ
さんは〜♪と続くような服装をしている。
「うるせ――!」
パットンは顔を赤くして、うるさい!と言おうとしたがあまりの大声のフリークと
ヒューバートはパットンの口をすかさず塞いだ。
「ふがふがふがー!」
「この馬鹿っ。ハンティに気付かれたらどーすんだよっ。」
小声で、ヒューバートがパットンに忠告する。酸欠状態寸前なのか、
パットンの顔が赤い。
「ぷっはぁ・・ぜえぜえ。」
息を荒げる。ヒューバートは溜息を1つつくと、ハンティがパットンに言うように、自分も言う。
「お前が日頃ハンティに世話になってるからプレゼントを渡すために、態々手伝って
やってるんだろーが。発案者のお前がヘマ起こしたらパーだろ?」
「そ・・・そーだけどよぉ。」
大人とは到底思えない情けない声を上げた。
「じゃ、早く渡すぞ。。」
「あ・・・ああ・・・。分かったよ。」
パットンが小奇麗に包まれた小さな箱を手にした。ハンティのいる――テントへ。
3人は美しい処女雪に、大きな足跡を刻んだ。



「失礼しまぁーす・・・。」
小声で一言断りを何故か入れてしまうパットン。スヤスヤと寝息を立ててハンティは
熟睡している。普段は自分達を包み込む位の母性を、力を持つ彼女は――寝ている姿は
少女のようだった。
「ハンティよ・・酒の飲みすぎじゃ・・。」
何処か酒臭く、顔が僅かだけ赤い。
「そーいえばアイツ、酒、沢山飲んでいたもんなぁ。」
苦笑して、ヒューバートはクククと小さく笑う。
(あー・・・マジでハンティの寝込みを襲ってる感じだな・・。)
もしもハンティが自分達の存在を気付いていたら今頃メタル・ラインでも放たれていただろう。
「早く渡せよぉ、パットン。」
「分かってるよ。」
肘をぐいぐい自分の腕を押すヒューバート。パットンはハンティのもとへ近づき、
そっと音を立てぬように寝ているハンティの右横にプレゼントを置いた。
「メリークリスマス。」



幼い頃に、プレゼントを両親からもらった。その時、たまらなく嬉しくて翌年から両親にあげた。
普段、あまりかまってくれなかったから、褒められた時にいつも童心が跳ね上がるほど嬉しかった。
でもハンティは――決して自分の前で、自分を褒める事は滅多にない。まだ自分がハンティを
見上げる位幼かった頃、時々悲しげな顔を――一瞬だけ見せた。


きっと、プレゼントを上げることができなかったのは、あまりに近づきすぎたから。どんなに
強くなっても決してハンティに叶う事はない。レベル神に聞いたとき、似合わないくらい
悲しくなった。ようやくハンティの身長を抜いた時でも、絶対上げようとは思わなかった。
だから――クリスマスはあまり好きではなかった。意地っ張りな感情(気持ち)がいつも
邪魔した。でも――両親のように笑ってくれるのなら。



小声でハンティの前で言うと、パットンは満足にへへっと子供のように笑った。
「んじゃ、俺達も寝るとすっか。」
「ああ、そうだな。」
テントから3人はそそくさと出て、満足そうな笑みを浮かべた3人は自分達の
テントへ戻っていった。

「朝起きてみたら横に置いてあったんだよ。」
上機嫌な声でハンティはマフラーと手袋を身につけていた。雪色のマフラーと
手袋は彼女によく似合っていた。
「丁度欲しいと思ってたしね。」
「でもよ、プレゼントもらえる年齢じゃねーだろ?」
「ヒュー、私に年齢聞くなんていい度胸してるね。」
「すんません。」
ハンティの冷たい視線を感じたのかその場で土下座する。
「まっ、今日も準備しねーとな!」
「もう少し休もうぜぇー。」
「ヒュー、弱音を吐いてはいかんぞ。」
「嫌だ、俺は休む。」

3人のやり取りを見て、ハンティは目を細めた。
(ごめんね。実は狸寝入りしてたんだ。でもね・・・ありがとう・・・・フリーク・・・ヒュー・・・・パットン。)
口元と、僅かに緩ませると忘れかけていた気持ちを思い出した――気がした。


12月25日
――後1日だけ、ぱーっと盛り上がっても良いかな。




+後書き+
こんにちわ。クリスマスの小説としてUPさせてもらいました。そして、PLANETZONE初の小説と
なります。本当はこれをマンガ風味にする予定でしたが時間がないのでこのような発表と
なりました。自分の思ったものがかけて、とても満足です。


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