キス


窓の外にキラキラと宝石のようなネオンが見える。ゴールド、シルバー、ブルー…。
眠らない街の放つ輝きは、その街自体のエネルギーを示しているかのようだった。
ドアの開く音がして、中里はその方向に目を向けた。
そこには、シャワーを浴びた啓介がいた。
髪から滴り落ちる雫が啓介の火照った身体を伝っていく。中里は、目のやり場に困り目をそむけた。
男の身体見て緊張するなんてどうかしてる。艶っぽいと感じてしまうなんて。

啓介はまるで気にしていない様子で、冷蔵庫を開けて物色している。
「なぁ、本気か?」
中里は言った。
啓介は、クスっと笑って言った。 「いまさら何言ってんだよ。こんなとこまで来て」

夕方、中里が妙義を走っていたら黄色のFDが来た。 車から降りた啓介は何か苛立っている様子だった。あまりめんどうには関わりたくないと思いながらも、中里は啓介に声をかけた。
『妙義に来るなんて珍しいな』
気晴らしか?愚痴を言いに来たのか? 少しぐらいだったら付き合ってやろう、そう思っていた中里だったが、 しかし次に啓介の口から出てきた言葉は全く予想していなかったものだった。
「なぁ、ヤらねぇ?」

そして、今。
2人は繁華街に近い高級ホテルのスイートルームにいた。
あの後、中里は言葉がすぐには出なかった。
暫く啓介の目を覗き込んで様子を伺って沈黙していた。
すると、じゃぁ、他当たる、と言い出した。
中里は、とりあえず啓介を止めなければと思い、自分が話を聞くからということでここに来た。

「今日は一体どうしたんだよ?」
冷えたミネラルウォーターを飲んでいる啓介に言う。
「だから、さっきも言っただろ。お前とヤりたいんだって」
啓介はケロリととんでもないことを言ってのけた。
今日は会ってからずっとこの調子だ。何回同じ質問をしただろうか。
「おまえ、男と寝て楽しいのか?」
「楽しいよ」
きっぱりと即答する啓介に中里はもう何を言っても無駄だと感じた。
「あ、おまえもしかしてオレじゃ勃たないか?」
いきなり啓介が側に来て中里の顔を覗き込む。
「男とやったことないか…?」
「・・・あたりめーだろが」
中里はもう呆れて言葉が出てこなかった。

正直、中里は啓介に対して欲情しないのではという心配は必要なかった。
今、バスローブ1枚の目の前の啓介に対してでも、自分の少し間違えている理性を抑えるのに必死だった。
(ほんと、どうかしてんな、俺。)
啓介がいきなり手に持っていたボトルを中里の頭の上でひっくり返し、水をぶっ掛けた。
「ってめ、冷てぇだろうが!!」
そういって睨みつけた相手の瞳を見て、挑発しているのだと判った。
「小さいことは気にすんなよ、中里」
啓介の手が中里の髪に伸び、水滴が髪から指先へと伝う。
中里は衝動に駆られ、啓介を押し倒した。
腕のなかの啓介は言った。
「お互い、気持ちよくなろうぜ」

ベットの上で中里が啓介の肌にキスを落とす。
首筋、鎖骨、胸…。上からだんだん降りていって、ピンクいろのしこりに当たる。
「んっ」
中里はそのしこりに吸い上げるように何回もキスをする。
「ふァ…ン」
腕の中で啓介が小刻みに跳ねる。
中里はたまらなくなって唇にキスをした。
軽い、キス。
唇のキスは、特別だ。
啓介は中里の首に腕を回し、もう一度キスを求めた。
舌が歯をはって入り込み、口内を動き回る。
「…っフゥ…ん」
呼吸をしようとする啓介と、キスを続けようとする中里の舌が絡んでチュクチュク音がする。
唇を解放してやると、中里は啓介の脚と脚の間に手を伸ばした。
「あ・・・」
触ると、熱を帯びていた。啓介は余程敏感なのか、自身に指先をツーっとやさしく滑らせると、大きく反応した。
「はぁ・・・あぁん!」
面白いくらい反応するカラダ。一体啓介は何人の男に触らせたのだろう。啓介に誘われて断ることのできた男はいるのだろうか。
中里は低く甘い声で言った。
「いつもこういう事、してんのか?」
啓介は荒い呼吸の中で声を出す。
「ぁ・は、気持ちイイことは大好きだぜ・・・」
啓介は愛撫を受けながら言う。
「…なぁ、俺が誰とやってんのか知りたくねぇ?」
啓介はイジワルそうに言った。
「…誰としてんだよ…」
「…知りたいか?」
中里は眉を少し動かした。
「…別に」
「教えてやるよ…オレの相手は、あ、ン、」
啓介が言葉を発しようとした瞬間、中里はキスで言葉を飲み込んだ。
「んぅ・」
啓介は苦しくて目尻に涙を浮かべた。
「関係ねーな、そんなことは」
中里は啓介を正面から見ていった。
それを見て、ふっ、と笑うと、啓介は中里にしがみついた。
そんなやりとりをしている間に、啓介のモノは中里に弄ばれて液体が流れ出していた。
中里の手も濡れている。
「あァ…ン!あっは…ァ、も…」
啓介はもう迫ってきていた。
「いいぜ、イっても。気持ちよくなれよ」
中里は啓介の果実をペロン、と舐めてやる。
「あァ…!」
舌の先で、先端から双球に向かってゆっくり辿ると、微妙な刺激に耐えられず、啓介は反り返った。
「!!」
ピュッ、と白い液体が中里の顔にかかる。
「ア…ぁはっ」
その液体を指でとり、舐めてみた。
苦くて独特の匂いがした。
中里は、啓介の秘部に指を移動させ、そこを拓かせようした。
「ま…って」
啓介が起きて、中里に体重をかける。
「オレも、やるから」
啓介は中里の顔を跨ぐようにして、中里を舌で愛撫し始めた。
中里もまた、啓介の蕾に舌を入れ、空いている指で啓介に刺激を与える。
「んぅ…は…うんん」
「はァ…ン」
グチュグチュといやらしい音とダイレクトに伝って来る快感が二人を捕らえる。
「は・…ァ、いい…」
「…ん・?」
「中里ォ、気持ちイイ…っ」
「ん・オレも…だ」
二人は自分の快感を貪るように相手に愛撫した。
啓介の蕾が湿ってヒクヒクしている。
中里の性器を押し当てると、プチュ・っと液体が弾けた。
余程感じているのか、啓介の身体は心なしか小刻みに震えていた。
「いいか?」
啓介は頷いた。
「んぁあ!」
中里が内部に入る。
啓介は男と寝るのが楽しい、と言い切るだけあって、想像していたよりもすんなりと奥へ入った。
中里は初めて感じる締め付けに頭がボーっとした。
夢中で腰を動かし始める。
啓介の額には汗が浮き出ていて、イタイのかイイのか、きつく閉じられた目と止めどなくあふれ出る声。
「あ、ン、ああっ・…ああ…もっ・・・・ああは、」
揺さぶられる啓介は、無意識に自身の股間に手を伸ばし、扱き出す。
その淫乱さに中里は煽られ、激しく突く。
「ん、な…かざ・・・っ」
「高橋…」
中里が啓介の扱いているモノに手を添え、さっきまでとは違う、優しい刺激を加えた。
「…ぁ…もっと強く…」
啓介の内部を中里のモノが刺激する。
「あ…!」
啓介のイイところを見つけた中里はソコを集中的に擦ってやった。
「っ!」
啓介が一瞬ぎゅっ、と縮んで、果てた。
啓介のイった顔を見て、中里も啓介の中に痛いくらいの勢いで吐き出した。


「ほらよ、」
中里は啓介に冷えたペットボトルを投げる。
受け取った啓介はカラダが火照っているのか、それを頬にあてて気持ちよさそうにしている。
中里が隣に腰を降ろすと、言った。
「…なんでオレだったんだ?」
「なんとなく…」
「はぁ?」
中里は啓介を見る。
「なんとなくって…なんだよ。なら、今まで相手してもらってた奴にでも頼めば良かったんじゃねぇのか」
中里は、自分は酷いことを言っているんじゃないのかと思いながら、立ち上がって啓介に背を向けた。
啓介はボソリと言った。
「…今まで相手してもらった奴なんて、居ねぇ」
「…あ?」
「お前が初めてだっつってんの!」
啓介は顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
中里は、その意味を理解するのに時間がかかった。
「あはははっ!!」
突然大きな声を出して中里が笑い出す。
啓介は驚いて、「何だよー…失礼なヤツだなー…」とぼやいた。
中里は思い出していた。今日、自分を誘いに来た啓介と、さっき自分にでキスを求めてきた啓介と、

そして、腕の中で愛しいほどに震えていた啓介を。



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