昔、というより結構前。
ポケモンは150種類程度だと学会でも認知されていた。


それから数年後。
200種類以上はいると学会で以下略。


それから…


もう少しすると、ポケモンは300種類近くいるということが分かった。


多くのポケモンが世界中にいる。


海の中、山の中、くさむら。


時には、研究所のばいようえきの中――


色々な生まれ方はするものの、ポケモンはポケモン。ぽけっともんすたーである。


そのポケモンに夢をはせ、またはポケモンに野望を乗せ。ポケモンを操るのがポケモントレーナー。


そんなポケモンとポケモントレーナーにまつわる話をひとつ。






不協和音
   ...プロローグ――「お客様」...







舗装もされていない砂利道を、黒いワンピースに身を包んだ少女が駆け抜けていく。
後ろからは、これまた黒い服を着込んだ男達がその2人を追いかけていた。
男達は「ロケット団」。かつてカントー地方で悪名轟かせた悪の秘密?結社である。
しかし今はリーダーのサカキもいなくなり、残党があちこちでセコい悪事を働いているのみである――という印象なのだが。

「ちくしょう…!!逃げ足の速い奴らだ!!」
「アンタ達の運動神経がミルタンク並じゃぁないのー?ウフフ、とにかく『コレ』は頂いておくから…」

少女が腰からひとつのモンスターボールを取り出し、宙に放り投げる。中からはピンクで丸っこいポケモンが出てきて、みるみる膨らんでまるでアドバルーンのようになった。

「じゃあねー☆」

手を振る少女を見上げ、男達は悔しそうに舌打ちした。

































一方こちらはホウエン地方・ミシロタウン。
町外れのくさむらで、赤いバンダナとシルバーの髪が何やらごそごそと動き回っていた。
赤いバンダナの方がひょっこり顔を出す。鼻の頭に土が若干こびりついていた。見た目10代半ばくらいの少女だ。

「ユウキー…ほんとにほんとでこの辺りなのー!?」
「…多分。」

ユウキ、と呼ばれたシルバーの髪の方が顔を上げ、困ったなー、という感じで頬を掻く。少女と同じ年頃の少年だった。
実は先程、このユウキという少年がこのくさむらで大切なポケモンのデータが入ったディスクを落としてしまったのである。
ディスクというも、技術の発達によって大きさはフロッピーディスクの4分の1程度。ちなみにこのくさむらは整備されていないせいか、身長が165cm近くあるユウキの腰の辺りまで草が生い茂っている。
水の中から無色透明の小さなガラス片を探すようなものだ。

「私がみっけたらスーパーボール10個。」
「……(絶対自分で見つけてやる…)」

人知れず心の中で誓うユウキ。
相変わらず草はぼーぼーで、足元は悪くて、おまけに…

「まただ…!!」

野生のポケモンの宝庫である。
2人はモンスターボールを手にすると、同時にくさむらから飛び出した。
それを追うかのように、黒い犬のようなポケモンが飛び出してくる。

「ポチエナか!」
「ユウキ、ここは私がもらうわね!」

少女が1歩前に出て、ボールを構える。ユウキは後ろでそれを見つめる。

「よーし…いっくわよアチャモ!」

投げられたボールから閃光がほとばしり、トリのようなえんじ色のポケモンが現れる。
アチャモだ。小さな羽をいっぱいに羽ばたかせ、相手に不足なし、といった感じでふんぞり返る。
その姿に苦笑しながらも、少女はポチエナを指差した。

「アチャモ、ひっかけぇー!」
「ピーッ!!」

勢い良く飛び出したアチャモが、鋭いツメでポチエナをひっかく。
ポチエナは背中をひっかかれ、毛が剃られてそこだけ地肌が見えてしまった。
きゃんきゃんと吠えながら逃げていく後姿を見、あちゃぴーは更にふんぞり返った。

「はいはいアンタは偉いわよ…ほら、ボールに戻って。草燃やさないうちに。」

前例があるらしい、意味深な言葉にアチャモはぶーと膨れるも、てこてこと少女の元へ歩いてきて自らボールに入った。

「ハルカも甘いよな…何で倒さないのさ?」
「だって可哀想じゃんかぁー。」

少女――ハルカは先程のあちゃぴーに負けず劣らず頬を膨らませ、ポーチから「むしよけスプレー」を出すと自分に向かって吹きかけた。

「ほら、日が暮れないうちに探すよー。」
「…そうだね。」

気付けば日差しは随分低くなってきている。このまま野生のポケモンを相手に奮闘していれば、あっという間に日が暮れてしまうだろう。
再びくさむらに分け入ろうとする2人だが、くるりと振り返った瞬間、何かにぶつかってべたりとその場にしりもちをついてしまった。

「きゃっ!」
「…!?」

腰や尻を擦りながら恐る恐る目を開けると、目の前にピンク色の丸っこいものがそびえ立っている。
口を開けたままぽかんとそれを見あげる2人の前に、丸っこいものから飛び降りてきた人影が現れた。

「あら、ごめんなさい、おどかしちゃった?キミ達が探してたのって…これじゃないかしら?」

人影――黒いワンピースを身に纏った、ブラウンのロングヘアーの少女はディスクを手に、ユウキとハルカに向かってウィンクして見せた。

「ねぇ、この近くにオダマキって人がいるって聞いたんだけど…キミ達知らない?」

突然の訪問者と半日かかって探したディスクが目の前にあることに、2人は目を丸くするだけだった。

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