01. 愛
「……愛ってなんやろ」
独りごちる。
苦い物が心に満ちていた。
どこか優越感に似た気持ちがあったんじゃないか。
親友の相談に乗る自分。
恋も愛もロクにしらないのに、知ったかぶって。
そんな自分が嫌だった。
あいつのように純粋ではないから。
彼女を忘れる為に、他の女と付き合い、偽りの夜を過ごす。
こんな俺の姿を誰も知ることはない。
「偽善や」
結局は、ええかっこしいなんや。
そう気づいたら自分が酷く醜いものに思えてならなかった。
「アホやな、俺」
側にいるのが本当は辛い。
親友も彼女も俺の気持ちを何も知らない。
言うつもりはないし、悟らせる失態など侵さないが。
「時間が解決してくれるんかな」
覚えた煙草に手を伸ばす。
煙草を吸っていることは誰も知らない。
自分の部屋の窓際に佇み、手を伸ばすこの煙草は、
酷く苦く、美味しいと感じられなけれど、手を伸ばしてしまうのは、
どうしてだろう。行き場のない気持ちをどうにかやり過ごす為なのか。
「……あ」
知らず涙が溢れていた。
茶番は終わりにして、付き合っている女に別れを告げよう。
忘れられないのなら、距離を置こう。
春の日差しのような屈託のない笑顔をくれる彼女は、
親友の恋人であるのが一番なのだから。
滑稽な自分を嘲笑しながら、煙草の火を揉み消した。
灰皿に微かに溜まった灰。
逃げているとしか思えないこの行為を止めよう。
「俺がお前に愛の意味聞いたら笑うやろ? 」
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