011:voice
あなたの声… いつも私を惹きつけて ぜったい放さないの
「ー、次歌えば?」
「え、私?」
「そーそー。全然歌ってなくない?」
「私はいいよ、歌える曲ないし」
「んなことないでしょ。ほら、歌う歌うー」
友達からマイクを回されて、…私は悩む。
ホントに歌える曲がたいしてないのも事実だけど、なにより…
この場で歌う事自体が、問題なんだ。
…だって君、いるんだもん。
君はウチのクラスの中でも、…ううん、学校全体で見ても一、二を争うほど歌が上手い。
クラスのメンバーでカラオケ来てるんだからいて当たり前なんだけど、
でもやっぱり君の美声の前で私なんかが歌うのはかなり抵抗があるし。
っていうか。
正直、君の事を好きな私は、下手な歌聞かせて恥をかきたくないわけで。
「もう、遅いなぁ!こないだ歌ってた奴勝手に入れるよ?」
「あ、ちょ、ちょっとー!」
そんな私の葛藤なんか知らずに、友達が勝手に私の歌う(らしい)曲を入れた。
…この間ちょっと試しに歌ってみただけの曲なのに!
え、しかも…割り込み!?
「ちょ、なんで割り込みするの!?」
「だってまだ一曲も歌ってないじゃん?いいよねー、みんな?」
平然と開き直ってる友達の周りで、他の子達が同意の声をあげる。
ああもう。
歌えない、って言ってんのに!
困る私の気持ちなんかお構いなしで、イントロははじまっちゃうしマイクのスイッチ勝手に入れられるし。
さすがにどうにも逃げられなくなって、私は仕方なく歌いはじめた。
このままずっと いつも一緒 …夢見てた
叶うはずがないこと ホントは 気付いていた
明日の光 僕を呼んでる
もう行かなくちゃ でも伝えたい 本当の僕の声
そこまで歌ってサビに入ろうとした瞬間。
「「どんなに 遠く離れていても 僕らは 一人じゃない」」
(…!!)
突然、私の歌うメロディーの下に、よく響く低くて甘い声が入ってきた。
聞き覚えのあるその声は、確かに、…君の声で。
はっとして向かい側に座ってた君を見ると、君がにっこり笑って目で歌い続けるように伝えてくる。
「「Ah この空の向こうから いつでも 会いに来るから……」」
歌い終わったあとで私がさっと座りこむと、みんなまた何事もなかったかのように歌い続ける。
…だれも私の方みてなくて良かった。だって顔赤いもん。
みんなの歌ってる最中、バイブがなったから私はこっそり携帯を開いた。
「さん歌上手いね。勝手にハモり入ってびっくりした?ごめん!」
……君だ。
歌上手いなんてお世辞に決まってるのに、やっぱり顔が赤くなる。
よかった、薄暗くて。じゃなきゃ私が君のこと好きなの、クラス中に知れ渡っちゃう。
「全然。君こそホントに歌上手いよね。尊敬しちゃう。こんな歌うまい人と一緒に歌えて光栄だよ(笑)」
こっそりメールを返したら、君と目が合った。
…至近距離でメールするからこんなことになるんだけど、やっぱり恥ずかしい。
一応平然としてるつもりだけど、顔、赤いし。
本人に私の気持ちバレちゃったらどうしようって動揺してるから、挙動不審かもしれないし。
とにかく気が気じゃない私の所に、もう一通メールが来る。
「ホントに?結構素で嬉しいかも(笑)…あ、このあとヒマある?」
…そのメールには、なんだか必要以上にスクロールがあって。
最後までメールをたどっていった私は、…頭が真っ白になった。
「もしヒマなら、ちょっとどっかで話さない?
…ってか、正直言うと、俺さんに告白したいんだけど」
「…………え……?」
携帯から顔をあげると、正面には真剣な表情の君。
口だけ動かして「ダメ?」って聞いてくる。
当然、私の顔は限界まで真っ赤になってるし。
嬉しくて嬉しくて、自然と笑顔になっちゃうし。
「ダメなわけないよ。…好きな人に告白されるチャンスだもん」
私のメールを見て、君がにこっと笑った。
「じゃあカラオケ終わったら俺の事待っててね。約束だよ?」
「うん、約束」
みんなの歌う声にまぎれて、私達の出発したての恋が始まった。
お正月になるたびに、友人(女ばっかですけど)とカラオケに行く黒川。
今年も行ってきました…受験生なのに;
歌の上手い男の子っていいですよね。…ウチのクラスにも一人いますけど、その人とか
あとは平井堅さんとか(爆)…鑑賞用に(ぇ)一人欲しいですv
ちなみに文中の歌詞っぽいもの、著作権侵害はありませんのでご安心を。…いえ、正直あんな歌存在しません(笑
新年早々妙な話でしたが皆様今年もよろしくお願いします。