些細な駆け引きのお話



まだ若い学生が浮き足立つのは仕方ない、そういう策略のもとに作り上げられたイベントなんだから。
そんな言い訳を頭の中で繰り返す俺は相当間抜けだ。
だけど学校中見渡してみろ、そんな間抜けな姿をさらしてるのは決して俺だけじゃない。
寮生なんかもっとひどいぞ、女子寮生に義理でいいからくれなんて懇願して、もはやハロウィンと区別がつかないじゃないか。

馬鹿みたいなことを考えて気を紛らわそうとしている俺は、今現在、わりと落ち込んでいる。


それは今朝、授業が始まる前のこと。
教室に入るなり、廊下側の席で雑談してる奴らの会話が耳に飛び込んできたのが原因だ。


「ねえ、も一緒に行かない?うちら今日、チョコの材料買い出しに駅まで行くんだけど」
「えー、うち駅から遠いもん。パス」
「良いじゃん1年に1回しかないイベントなんだからさ!だって作るでしょ?本命とか友チョコとか」


はしゃぐ友人にとりかこまれたが、肩をすくめて笑う。


「何言ってんの、バレンタインなんて私には関係ないよ。本命も義理もないし、友チョコもしないから。」
「えー、なんで?」
「私そういうキャラじゃないからさ。あ、でもくれるものはもらうけどね」


冗談めかしてあっさり友人達の誘いを切り捨てたが、いかにも面倒そうな顔で続ける。


「手作りなんて無理無理。そこまでしてチョコ渡したい人もいないし、そんな面倒なことする気になれないもん」


…つまり、そういうわけだ。
可愛いくせに気取るどころかほとんど飾り気も無い意中の奴が、バレンタインにまったく興味を示さないでいるところを目撃してしまった。
俺じゃなくても、テンション下がるだろう。多分。
本命がいないらしいことだけが唯一の救いか、なんて負け惜しみ的なことを考えていたせいで、今日の授業の内容は半分くらい聴いてなかった。



…と、まあ。
そんな状態だった俺が、さらに叩きのめされるとは。
いつもどおりにサークルが終わって、晩飯の調達に立ち寄ったスーパーで俺が見たのは、
携帯を片手に製菓材料のコーナーを行ったりきたりするの姿だった。
たぶんレシピか買い物メモなんだろう、時々携帯をチェックしては品物を手にとって、難しい顔をしてはカゴに入れたり棚に戻したり。
正面から俺が見てることにも気付かずに真剣に品定めしてるの姿に、俺はなんともいえない気持ちになった。

面倒だとか、関係ないとか言ってたくせに。
なんだよ、
俺の知らないところで、好きな奴がいたなんてさ。
そいつのために、こんな真剣な顔しながら準備してるなんてさ。反則だろ。




ようやく買いたいものがそろったのか、製菓売り場を後にしたの後についていくように、俺は歩き出した。
こうなったら、せめてからかってやらないと気がすまない。
望みもないのに、あんな可愛い所を見せ付けて俺を虜にした罰だ。
からかったついでに、口止め料とでも言って試作品を巻き上げてやる。
誰だか知らない本命の奴より先に、の作るものの味を知ってやることくらい、俺にだって許されるはずだろ?



「あれ、
「え?」


悪いな、。これくらいの抵抗は許してくれ。

からかう笑顔を貼り付けて、俺は狼狽するに近づいた。


バレンタインネタ第2弾。すっかり策略にはまってますよこの人。

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